野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「お前たちは人間のクズ! 人間の劣等種! その自覚も持たず、思い上がるな!」
……チフユの顔には傲慢な表情は浮かんでいない。
本当に許せないこと言われた。
正の怒り。そういう気持ちが溢れている。
ああ、この女にとってレッサーヒューマンは本当に動物と同じなのか。
それがどうしようもなく分かってしまった。
猿が「親を殺された!」といって、自分じゃない誰かへの恨みで襲ってきても。
人間としては気の毒だがそんなの知らないよ、そいつを襲えや、だろうし。
その後人間全体を「猿より酷い生き物だ」って言ってきたら……そりゃ怒るだろ。
人間として聞き流せないわ。
何で人間の下層民の行いで、人間全体が否定されなければいけないの?
そう思うだろ?
人間にはとんでもなく悪い奴がいるけど、そいつの悪行の責任を人間全体に押し付けられるなんて。
許せんよな。そりゃ。
自分はそんな酷いことしてないし、そもそも猿が人間様に意見するなんて身の程を知らなすぎ。
そんな気分にもなるだろ。
……でもさ
フセの顔が憎悪に染まる。
子供たちの表情も変わった。
……男の子は犬顔なので、家族以外表情変化は気づかんだろうけどね。
グレーターヒューマンは敵。
今、その認識が決定的なものになったんだ。
チフユは自分の発言が、レッサーヒューマンを一切認めないと言ってるのと同然であることには気づいていないようだ。
むしろ、彼女でも表情変化が見て取れる、ケノやフセの顔を見て
「……何? その表情……? 怒ったの……? 人間のクズの分際で?」
さらに不機嫌になる。
そして
「1匹ずつ掛かって来るのは止めなさい! まとめて来るのよ! 面倒くさいし、その方がその生意気な自意識をぶちのめせるものね!」
大きく腕を広げながら。
そのまま彼女は堂々と
俺にとって、衝撃的な言葉を放った。
「私の神技はタケミカヅチ! それがお前たちを打ちのめし、裁く者の神技《シンギ》の名よ!」
この女にとって、神域の神技名は「馴染みのない言葉であって、その意味は分からないもの」という認識だから。
神技名公表が相手にとって有益な情報になるとは思っていないんだろうな。
だから俺はこの女のこの言葉は信頼できると思った。
……だから衝撃を受けたんだ。
タケミカヅチ。
国譲りの際、大国主に全領土の天津神への引き渡しを認めさせた武神の名前じゃないか……!?
創造神である
天津神の地上世界取得計画の最終手段として送り込まれた神で、神話に本格登場したとき、柄を下に逆さに立てた剣の切っ先の上に胡坐を掻いて座っていたという。
……この辺からだろうな。
このチフユという女に刃物が一切効かないのは。
そして名前の字面を見ると分かる通り、雷神の性格も持ってる。
だからダイカクの雷撃も無効化するんだな……
あと……
神話において、大国主の息子である
身体能力で圧倒的に上……
つまり、なんというか。
おそらくこの女の神技は……フセのタケミナカタの完全上位互換だ……!