野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「悪魔の化身め!」
普段は無口なドウセツが怒りの声をあげた。
それほどの怒り。
この女が許せないのか。
気持ちは分かる。
お前は仲間を大事にする子だものな。
ドウセツの手から複数の蜘蛛の糸が発射されて、チフユを襲う。
チフユを拘束して、動けなくしてからゆっくり料理する……
そういう意図か。
それは間違ってない。
正しい選択だと思う。
だけど……
チフユは両手を手刀の形に構えて、縦横無尽に振るいまくった。
それだけで……
ドウセツの放った土蜘蛛の糸が全て切断されて、粉々になってしまった。
絶句するドウセツ。
「くだらない神技ね。所詮は人間のクズの仲間だわ」
とても冷たい目で見まわして、チフユは言った。
「……人間のクズたち、とうとうその卑しさが外見に出たのかしら? 半分犬みたいな姿ばかりね。それと引き換えに、神技を得た……?」
あまりにも屈辱的なその罵り文句。
皆は悔しさに顔を歪めた。
俺は一瞬、チフユに言い返して重要な情報……自分たちは犬と人間のハーフである……を吐いてしまわないかと思ったけど。
それは、誰もしなかったんだ。
黙ったのだ。
怒りに燃えても、最後の一線は超えない。
そのことに、俺は自分の家族へ尊敬の想いを持った。
しかし
「アタシたちの母が神から授かったのよ!」
だがそこで。
ケノが言ったんだ。
怒りの表情で。
一瞬、お前は何を言ってるんだと思ったが。
続く言葉で、驚かざるを得なかった。
「母の祈りが! アタシたちを産んだ! アタシたちはお前たちの暴虐を止めるため、神が遣わした正義の使者だ!」
……外見から、万一にも俺に辿り着く可能性を下げるためだ。
そのために、大まかな真実の決定的な部分にオカルトを混ぜた嘘の言葉を言ったんだ。
グレーターヒューマンの科学でも、人と犬の間に子供は絶対出来ないと分かっている。
だから真の真実を覆い隠す嘘としては悪くない。
そもそも、真実の方もあり得ないんだ。
……さすがケノだ。
俺が手塩を掛けて育てた次女だよ……。
ケノの視線が一瞬俺に向いたので、その意図を察し。
俺は成り行きを見守る。
……果たして、我が妻と我が子たちは、この女を撃退できるんだろうか?
俺の仕事は、撤退に追い込まれた場合にこの女についていくことだ。
そして、彼らの社会の中枢に入り込み、もっと核心的な情報を取って来る……。
あと……できることなら
俺は、唾を飲み込んだ。
……この女となんとかセックスに持ち込み、妊娠させてこっちに引き込む。
人類将……アークヒューマンを味方に引き込めれば、これほど心強いことはないじゃないか……!