※この作品はR-18です。

野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第59話 タケミカヅチの猛攻

「何が神だ! ふざけるな人間のクズッ!」

 

 ケノの啖呵を装った情報誘導で、チフユが激昂する。

 

「神の愛は我らグレーターヒューマンにのみ与えられるもの! 神技(シンギ)はその証ッ! それを私たちから盗み取り、その上神の意志を語るなんて……!」

 

 そしてケノを指差して

 

「許せない所業よ! 神を冒涜するにも程がある! このケダモノがぁ!」

 

 ……突っ込んで来た!

 地を蹴り、まるで獲物を狙う猛禽類のように。

 

 この女の称号は確か、霊鳥。

 

 意図してのものじゃないかもしれないが、それに相応しいと思える動きだった。

 

 ケノは目を見開き、奥歯を噛み締めた表情で。

 その指先をチフユに向ける。

 

 リョウメンスクナの念の矢だ。

 指先から、念で作った矢のようなものを飛ばす。

 

 半透明で、目を凝らせば見えるけど。

 突然撃たれると、まぁ分からない。

 

 だけど。

 

 ケノの放った念の矢は、チフユに命中したと思うんだが。

 ……全く、何の効果も齎(もたら)さなかった。

 

 刃物無効による、弓矢無効は……

 念の矢にも有効なのか……!

 

 この分だと、リョウメンスクナのもう1つの武器「念の刃」も通じないだろう。

 普通だと、ケノは手刀の切れ味を刀と同等に出来るのに。

 

 ただの女の子のチョップにしかならない。

 その可能性が非常に高い。

 

「この獣人女! 叩き殺してあげるから地獄で反省するのよ!」

 

 そしてチフユがケノの間合いに到達し、その拳を振るう。

 やられる……!

 

 そう思ったけど。

 

 今度は俺が我が娘ケノに対して驚くことになった。

 

 ……当たらない!?

 

 どうして、と思った。

 だけど

 

(ああ、360度の死角がない視界と、同時に2つのことを集中できる特殊な思考構造……)

 

 リョウメンスクナは、頭の前と後ろに顔があったと伝えられる鬼神だ。

 そこから来る能力。

 

 ケノは神技の効果で死角が無いし。

 思考を2つ持つことが出来るせいで、防御に全振りした場合フェイントが効きにくい状態になる。

 

 そして

 

 すぐ叩き伏せて仕留められると思ったせいで、チフユは苛立ち、尚も苛烈な攻撃を繰り出していく。

 その意識がケノに向いていき。

 

 そのときだ。

 

「がぁっ!?」

 

 横合いから飛んできたものに、チフユは吹っ飛ばされる。

 

 吹っ飛ばされて、地面をゴロゴロ転がって。

 そして素早く身を起こし、見た。

 

 自分を吹っ飛ばしたものが何なのか。

 

 ……そこには

 

 右拳を突き出した姿勢で、佇んでいる犬面の人影。

 長男・ソウスケ……

 

 繰り出したのは、アマツミカボシの流星拳だ。

 

 念で作った流星を、拳に合わせて繰り出す技……

 

 刃物は効かなくても、打撃は効くのか。

 身を起こしたチフユは、一撃を喰らったと思しき脇腹を押さえていたから。

 

 ダメージを負ったらしいチフユは怒りに燃えた目で、ソウスケに凄まじい視線を向ける。

 

「……どうやらアンタは私の脅威になるようね……! でも逆に言えば、おそらくお前さえ倒せばお前たちに勝機が無くなりそうね!」

 

 怒りに震えても、冷静さは失わない。

 そこに、チフユという女の厄介さを俺は感じた。

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