野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
一夜明けて。
情報交換が終わった俺は、鉱山を去ることになった。
ケノとソウスケ曰く、鉱山に近づく人間にはライフル狙撃を喰らわせて威嚇しているので、おそらくこの鉱山訪問はバレていないはず、という見立て。
まあ、犬が人間の知能を備えてて、そいつがメッセンジャーをしてるなんてまず考えないから、多分大丈夫だとは俺も思うけどさ。
それにいざとなれば首輪を外してただの犬を装えば、俺は逃げる目は大体あるし。
……俺よりも、苦労を掛けているのは子供たちだ。
特にシノには危険な役目を押し付けているからな。
正体がバレたら、命が危ない。
一応、他の誰かの身体に乗り換えれば生き残る目はあるけど……
敵陣ど真ん中に潜入している事実は変わらんし。
「姉様には気を付けて下さいとお伝えください父様」
別れ際、フセと一緒に見送りに出てくれたケノがそう俺に言った。
姉妹間の仲の良さは親としては嬉しい。
「あなた、気を付けてくださいね」
そしてフセは俺に注意を促す。
まあ、俺は大丈夫なのは頭では分かってるはずなんだけど、妻としては先にそれを言いたいんだろうな。
この場に居るのは俺だけなんだし。
俺は大丈夫だ、という意味を込めて軽く1度吠える。
その後、俺を鉱山の外に出すために。
6男ダイカクが俺を両手で抱いて、
「それじゃお父さん、姉さんによろしく」
鉱山の壁を乗り越えて、外で下ろして貰い。
ダイカクにそう見送りの言葉を貰った。
ああ。
任せろ!
俺は一応、シノinヤマモトがぼっちキャンプをしている場所には直行せず、回り道、迂回をして戻って行った。
ソウスケの不運予知は高性能だけど、それに胡坐を掻くわけにはいかんよな。
しかし……
アサとヒール……
この2人の出産に立ち会えなかったのは、いくらなんでも申し訳なく思うよ。
無理矢理仲間に引き入れておいて。
一応、フセに次ぐ高い地位を与えてはいるけれど。
……この戦いが終わったら、せめて子の出産に立ち会うことは、牝を孕ませた牡として果たしていきたい。
「父上、ご苦労様です」
そして昼をだいぶ回った後に。
俺はシノinヤマモトのぼっちキャンプ場に戻って来た。
ヤマモトという男の身体に入り込んだ娘は、荒野で薪を燃やし、お湯を沸かしてコーヒーを淹れて飲んでいた。
俺はただいまの意志を込めて吠えると、首輪に挟んだメモを娘に取らせる。
娘はそれを広げて読み。
自分の手帳に書き写し。
その後、メモを燃やしてしまう。
「……ケノからの指示、理解しました。責任重大ですよ父上」
そして手帳を鞄に仕舞った我が娘は、厳しい表情を浮かべてそう呟いたんだ。