※この作品はR-18です。

野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第86話 非常事態

「雷撃の使い方が洗練されてないね。サカザキさんの足元にも及ばないよ」

 

 神獣シュウ・ヴィリアスが上空でダイカクと戦っている。

 ダイカクの突き出した手から迸る雷を、シュウは優雅に回避する。

 

「……飛行能力を持つ相手を想定した訓練を積んでいないね? 甘いよ」

 

 笑みさえ浮かべている。

 

 ダイカクは答えない。

 ……イッパイイッパイなんだな。

 

 あの子は末っ子のせいか、仕事を与えられる頻度が低くて。

 あまり家族に頼られたことが無いから。

 

 こういうことに慣れていない。

 

 ……クソッ

 

 何もできない俺がもどかしい。

 

「さあ、覚悟するんだね犬っころ」

 

 シュウは飛行速度を増し、ダイカクに向かって手刀を振り上げる。

 おそらく刀の鋭さを持つ手刀だ。

 

 ダイカクは雷を発しつつ、回避行動を取るが……

 

「甘いよッ!」

 

 まるで捉えられず、その手刀がダイカクの背中を捉えようとした。

 そのときだ。

 

 シュウの動きが急停止し、方向転換をしたんだ。

 

 そこを……

 

 地上からの数発の念の矢が行き過ぎて行く。

 

 シュウが視線を地上に投げる。

 ……そこには

 

 厳しい表情を浮かべた、眼鏡を掛けたボブカット犬耳美女……次女のケノがいた。

 

 ケノは

 

「ダイカクッ! 毒ガスの準備が出来たわッ! 引きなさいッ!」

 

 そう、鋭く叫んだんだ。

 

 

 

 毒ガス。

 

 その言葉は、人類将(アークヒューマン)たちを緊張させたらしい。

 明らかに表情が変わったんだ。

 

 本当に作っていたのか。

 大変なことになった……!

 

 そういう気持ちに溢れていた。

 だけど……

 

 そこからの行動は速かった。

 ケノの言葉通りに撤退していくレッサーヒューマンたちを放置して。

 腰のポーチに入れていたアイテムを取り出し、顔の下半分に素早く装着したんだ。

 

 それはプラスチックとゴムみたいな材質で作られたアイテムで……

 

 見た目は鳥のくちばしにちょっと似ていた。

 

 ……おそらく、これがグレーターヒューマンが開発したガスマスク……。

 

 万一、レッサーヒューマンが毒ガスを作っていた場合に備えて、作っておいた安全策……!

 

 正直、驚いている面もあった。

 毒ガスと聞いて、この短期間でイチからガスマスクを開発して来るなんて。

 

 これが聖亀スプリス・ビルドの神技(シンギ)「超頭脳」の恐ろしさか……!

 全面戦争になったら恐ろしいことになる。

 その場合、真っ先に暗殺を考えないといけない相手だな……!

 

 防御体勢を整え、彼ら3人は動きを止めた。

 毒ガスの動向が気になるのか。

 

 そのとき

 

「これで我らの勝利ぞ!」

 

 突然。

 竜神サマリー・ガルシアが拳を高く掲げ、勝ち誇ったんだ。

 

 他2人が呆気にとられたような仕草を見せる。

 

「ガルシアさん……?」

 

 チィちゃん。

 

「サマリー殿……?」

 

 シュウも困惑気味の声をあげる。

 

 いきなり何?

 今、勝利宣言?

 

 彼ら3人は動かず、いや……動けず。

 

 そこに

 

「サマリーさまー!」

 

 ヤマモト氏が、この戦場に駆け込んで来た。

 

「ヤマモトさん!?」

 

 チィちゃんが驚く。

 この戦場に……

 

 ガスマスクも装着していない想い人が駆け込んで来たからだ。

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