野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
調度品なんてろくにないけど。
掃除だけはキッチリしている大部屋。
そこに天上界からの使者の一団を通した。
毛皮のカーペットの上に腰を下ろすスプリス。
向き合う位置で腰を下ろすケノ。
「君がレッサーヒューマンの指導者なのかな?」
開口して。
スプリスがそう、ケノに訊ねた。
ケノは
「いいえ。動かしているのは実質私ですが指導者ではありません」
そう返答。
するとスプリスは片眉を上げた。
……驚いた表情に見えた。
「ほほぅ。君らは集団の指導者と、集団の運営者を分けているのか」
我々と同じでは無いか。
素晴らしい。
スプリスの賞賛。
……確かグレーターヒューマンもそうなんだよな。
政治は普通に議員がやってんだ。
選挙で選ばれたやつだ。当然だけど。
ただ、選挙権があるのは上級国民と中級国民だけで、下級国民には無いんだけどな。
「何故そこに思い至った? 指導者と運営者を分けることで、運営者にその才能が無い場合に速やかに交代を検討できる。指導者が変わらなければ、始祖たちへの義理を損なうことが無い。極めて優れた……」
「そこはどうでもいいでしょう。お話を」
スプリスが、ようは立憲君主制めいたこの政治システムへの賞賛を口にしようとしたとき。
ケノがそれを遮った。
……まあ、この会話で洩らさなくていい情報を洩らすかもしれないし。
そもそも、そんな話をするためにここに入れたわけじゃないしな。
スプリスは咳払いをする。
……この人、知りたがりか。
まぁ、
「……では本題に入らせて貰おう。我々としては、この天上界の外に、他の国が出来ることは許容できん」
スプリスは堂々とした声音でそう言う。
彼は続ける。
「……始祖の言葉で、決して広がろうとするな。広がり世界中に満ちることは不幸を呼ぶ。これがあり……」
我々は2000年間、これを護って来た。
……そうなのか。
グレーターヒューマンが外に出ないのは知ってたけど、その根拠までは知らんかったからな。
宗教上の理由は、始祖の言葉ってヤツが根拠になってるのか。
「それは何故ですか? まさかその言葉の裏の意味を考えもせず、愚直に護って来たわけじゃないんでしょう?」
そこにケノの言葉。
スプリスは微笑んだ。
「……キミは素晴らしい女性だな。グレーターヒューマンであれば求婚しているところだ」
「それはどうも」
スプリスの言葉に、礼を言うケノ。
ただ、そこに愛想は無い。
スプリスは
「……私が思うに、国が広がりすぎると、必ず分裂が起き、分裂した国は他の国になり、将来的に敵になる恐れがある。……おそらくそういうことだと考えている」
「ようは外に敵国が誕生することが嫌なんですね?」
ケノがスプリスの言葉の要所を突いた。
スプリスが頷く。
するとケノは
「そんなことは、私たちも必要以上に広がることを禁止し、他国をこれ以上生まないことを遵守すれば解決します」
そう、言い返した。
スプリスは、ほぉ、と思わず声を洩らした。