野良犬転生~犬に転生して人間の女の子をお嫁さんにし、被差別種族を救ってしまう男の話~ 作:XX(旧山川海のすけ)
そしてさらに数か月経過して。
出発の準備が整った。
例によって、鉱山の外だ。
正門を開け、俺とフセとケノに連れられ竜神サマリー・ガルシアと神獣シュウ・ヴィリアスが出て来る。
彼らの中には、シノとゲンパチが入っている。
鉱山の外には、聖亀スプリスが待機しており。
「やぁ、久しぶりですねケノさん」
「お久しぶりです」
表面上はにこやかに挨拶するふたり。
「出発はいよいよ来月ですね」
「ええ、ご協力感謝致します」
そして挨拶を終えた後。
いよいよ、最後の捕虜の解放がはじまった。
カパッと、サマリーが大口を開く。
そのサマリーの目は……
白目を剥いている。
異様な光景……
スプリスが息を呑む。
すると……
にゅっ
サマリーの喉奥から、這い出して来る人影。
それはケノとよく似た顔の犬耳美女で……
ここ数カ月、ずっとサマリーの体内に潜んでいた我が娘シノだった。
「よっ」
ひらり。
サマリーの身体から這い出して。
飛び降りる。
その最中に身体が拡大し。
地面に着地するときには、元の大きさに戻っていた。
グラリ、と傾くサマリーの身体を、スプリスが慌てて支えた。
そのままサマリーを寝かせる。
その後。
続いてシュウの解放だ。
シュウも大きく口を開き、その口から不定形の物体が飛び出して来る。
不定形の物体は、地面に降り立ち人の形になり。
次の瞬間、それは犬面の人影に変化。
無言で立ち上がった。
俺の3男・ゲンパチだ。
ゲンパチが立ち上がる。
「……久々に生身で外界だね。姉さん」
外に出てすぐ。
さりげなくフセの影に隠れた姉をサポートするため、自分も移動するゲンパチ。
スプリスはシュウも受け止め、そのまま地面にゆっくりと寝かせる。
これにより……
「
ケノの言葉。
スプリスは
「ええ。確かに」
内心はどうか知らないけど。
彼は穏やかにそう返した。
「……むぅ」
そして。
最初にサマリーが。
次にシュウが目を覚ました。
ゆっくりと起き上がり、周囲を見回す。
確か自分は、レッサーヒューマンと戦っていたはずなのに。
そういう思いがあったかもしれないけど。
「サマリー殿、シュウ殿。残念ですが、オリハルコン鉱山奪還作戦は我々の敗北で終わりました。戦いは終了です」
冷静なスプリスの言葉。
それを耳にし
驚愕する2人。
そして
「……承知した」
「……分かったよ。すまない」
2人の
大人しくスプリスの言葉に従ったんだ。
ここで敗北を認めず、暴発すれば。
それは
それがキッチリ分かってるんだな……。
なんというか。
敵の身でなんだけどさ……
俺はこの人たち、嫌いじゃ無いわ。
その後2人は終始暗い顔をして。
帰って行く。
言い訳じみた発言は一切しなかった。
そして
「では、次は来月の出港の日に」
お見送り致しますゆえ。
そう言い残し。
スプリスは仲間の解放を見届け、その2人と一緒に。
天上界へと帰って行ったのだった。