西暦二XXX年、極東の大和国、港湾大都市ヨコハマ、その幹線道路、深夜、一区画にて。
『
「誰に言ってる!」
大柄な褐色肌で銀髪ショートの女性──
死ぬ為ではない。
「確認した! 見えてる追っ手の数は三十以上! 全部黒塗りだから所属は分からねえ!」
周りの車両と同じ速度か、
護送している無人自動運転の大型トラックの後方からヘッドライトを飢えた獣の眼のように光らせる鋼鉄の群が迫る。
その中の前方に位置する車両の窓からは、身を乗り出して銃火器を構えている影があった。
「
『駄目だ! 術的防護されてる。中身も分からない!』
「オーケー! 解析は後回しだ! アタシの援護頼む!」
了解、とインカムから照と呼ばれた男性の声と
トラックを先導している改造装甲車両から白い霧のようなモヤが溢れ出た。
「──ッ!」
車窓から身を乗り出して、黒い装束にスモークされたヘルメットを被っている人物達は急速に視界がモヤに遮られる。
車両も似たようで、前方数メートルも見えないらしくハンドルを切る操作が不安定になっていた。
「ひとつっ!!」
荒子がトラックの一番近くいた四輪を
彼女は白いモヤの中に消えていった車両が他のそれらと激突する連続音を聞いた。
「照! マーキングは出来たか?」
『今出来た! 感覚共有、広域知覚術式行くよ!』
「──うっし! 数は今の合わせて五十か! 気合いの入った連中だ!」
感覚共有と高域知覚という術式で荒子の視界が開ける。
映る景色にはモヤは無く、ハッキリとした夜空の下に一つ減って四十九の車両が赤くマーキングされていた。
「手早く済ますぞ!」
前の車両の異常を察知した付近のそれらが今度はブラインド・ファイアにて弾をばら撒く。
響く銃声。
何発かは荒子に届く。が、
「スマート・ミサイルでも持って来な!」
彼女はそれなり以上であるはずの七.六二弾を意に介さず手近な車両に突撃する。
そして、殴り飛ばした。
「ストライク!」
ボーリングのように投げたボールがピンを次々倒す様のように、飛んで行った車両が後続の車両に次々とぶつかっていく。
巻き込まれて大破し、燃料タンクが破れて爆発炎上する。また、モヤのせいで前方確認が出来ず他の車両と追突するモノもある。
瞬く間に幹線道路が戦場となった。
「
『お相手さん方、スタンドアロンでムリっぽいっす! 相当電子ハッキングを警戒してるっすね!』
「ならこっちのアシの操縦に集中してろ!」
了解! と、インカムからは月詠と呼ばれた少女の声が聞こえた。
「照! 残りは⁉︎」
「三十九! 何台かは霊視が出来てるみたい」
「ならそれっぽいのからマーキング変えてくれ!」
荒子がそう言うと、視界に映っている赤くマーキングされた車両の内十台が緑色に切り替わる。
「しゃっ!」
彼女は一番近くの緑の車に飛び乗る。
乗車、ではなく、フロントに乗る、のである。
「ようっ! 目が合ったな!」
防弾ガラス越しに操縦者へ向かって手を突き出せば、豪快な破砕音を伴って、それを引きずり出す。
助手席側から身を乗り出していた黒ずくめは荒子に向かって発砲するが、
「オメェもだ!」
弾丸をものともせず、それも掴み引きずりだす。
乗られた車両が乗り手を失い速度を大幅に落とした。
そうすればその一台を避けるように流れる車両群に紛れ込むことになる。
彼女の狙いはそれであった。
「食らっときな!」
両手に一人ずつ持つ人間を、緑に映る車両に投手のごとく投擲する。
鍛えている成人男性は平均して八十キログラムあるという。
それをライフル銃の初速で投げればどうなるか。
投擲された者はGで即死し、防弾・高強度性を重視したアラミドで構成された車体はそれが貫通して、その下のアスファルトに大きな痕を残すのに十分以上の破壊力となるのである。
「一石三鳥ってなぁ!」
彼女は乗っている車が反動で跳ね上がる程のジャンプで次の緑に飛び移る。
無論、跳ねた車両は別の緑に向かうようにして跳んでいき、それを合わせて三両が巻き込まれた。
そうして、飛び乗れば、
「へぇ! 根性あるじゃねえか!」
向けられていたのは、本来ならば先行しているトラックに発射されていたであろう、
それが荒子に直撃する。
爆発で車両も荒子も吹き飛ぶ。
車自体は爆熱で火達磨となり、搭乗員は全員死ぬ。
だが、砲手は彼女を道連れにした方が釣りが来ると確信していたのだ。
しかし、
「かーっ! キくねぇ!」
顔を煤まみれにしているが、血の一滴も流してない怪物が着地して走り出していた。
着ていた衣服は爆風と爆熱により大半が燃え落ちていたが、特別製のインナーで全裸とはならなかった。
同年代の女性と比べて幾つも上の豊満なバストとヒップをインナーと共にさらけ出してはいるが、荒子は全く気にせず、素足で道路を疾走する。
(赤の連中は脱落したっぽいな)
走りながら失速したらしいマーキング済みの車両を目端で捉えて、先ゆく緑の車両に追い付く。
ライフル弾を受けながらも気にせずリアバンパーを鷲掴めば、今度は後方に放り投げて脱落させる。
その際にバンパー部分を引きちぎってたので、それを槍投げの要領でマーキングされた車両へと投擲。
最早砲弾と言って差し支えない一撃が入り、それは車内部品を盛大にブチ撒けながら失速する。
『二台は焼いといたよ』
「助かった!」
『それより、またインカム壊して! 月詠ちゃんとの通信が面倒だから、イカンムにしてるのに! 報酬から差っ引いておくからね』
「しょーがねえだろ!」
インカムを失って通話出来るのは照と呼ばれた術師が念話という魔術で荒子と連絡を取っているからである。
「ちっ! またか!」
彼女が最後の一台へ向かう前に、それは携行式対戦車擲弾砲を構えていた。
『待って! 当てる気がない……⁉︎』
よく見れば砲を走行方向と平行させるのではなく、上空へと向けていた。
「榴弾か!」
降り注ぐ鉄片でトラックを仕留めようというのだろうか。
そして、それが発射される。
「させるかっ!」
荒子は脚のギアを跳ね上げて、砲弾の内容物がばら撒かれる寸前の位置まで跳ぶ。
「どうだ!」
キャッチすれば抱きかかえて、腕の中でサバ折りにする。
すると、
「破片じゃない……?」
ぱしゅぅ、と弾頭から気の抜けた音がしたかと思うと波のようなナニかが辺りに舞ったのだった。
砲手を乗せた車は既に離れており、はるか後方へ去っている。
(BC兵器か⁉︎)
と、荒子は警戒したがそれら特有の不快感はなく、ただ謎の波の痕跡が舞うだけだ。
「照、周りになんか異常はあっか?」
『いや、化学汚染や術式汚染の類いは無いよ』
同じく警戒していた照はその波動を術式解析にて調べていた。
なんだなんだ、と彼女はインナー姿で着地して護送している自動運転のトラック後方を走る。
『うーん……、何か特殊な術式的波紋が流れたというか……、見たことあるヤツだったような……』
「とりあえず今は他の追っ手が来ない内に
『そーする……、って人の生体反応⁉︎ トラックの積荷から⁉︎』
「いきなり何だ⁉︎ って今度はヘリかよ!」
照が術式感知によって護送中のトラックの中から
想定外に次ぐ想定外であった。
「照、トラックの積荷の確認。月詠には積荷のロックの解除を急がせろ。ヘリはアタシがどうにかする」
『りょーかい! そんな訳で月詠ちゃん、トラックの積荷のセキュリティハッキングよろしく! 僕は霊身投射で中身見てくる!』
荒子は照を介して命令。
それぞれがやるべきことを迅速に取り組むことにした。
彼女達はペーペーの即席チームではないのだ。
「まず一機!」
荒子は手始めに跳び、一番近くにいた攻撃機に取り付く。
彼女の視界には全部で五機が霊視が出来るという意味で、緑にマーキングされており、照の仕事の早さに感心するのであった。
異常を察知した操縦者はソレを振り落とそうと機体を大きく揺らす。
だが、女は意に介さずキャノピーガラスを易々と貫き、腕が操縦者の命を刈り取る。
「ったく、判断が速えなあ!」
彼女が毒づくのは他機から機銃を向けられたからだ。
他の攻撃機は荒子に取り付かれた僚機に容赦なく機銃を掃射する。
瞬く間に蜂の巣になり、燃料タンクに火が付き炎上大破。
荒子は飛び降りて回避を選ぶ。
(頭を押さえられるのは、ちと厄介だな……!)
普通の人間であれば一発で血煙になる大口径弾丸を複数発被弾しながら、彼女はケロリと戦闘を継続していた。
(捕獲用のワイヤーアンカー付きとなると、トラックにミサイルは無い、か……?)
一機に構っている間に、他機がトラックを捕まえて逃げられるのが、荒子達にとって面倒なストーリーだ。
と、思いきや四機の内一機のミサイルポッドから飛翔物が一斉射される。
「いっ⁉︎」
荒子は堪らず道路のアスファルトを踏み抜き、アスファルト塊を複数個跳ね上げ、それらを突きや蹴りで撃ち出し、ミサイル群への弾幕とした。
アスファルト塊が信管に突き刺されば、中の爆薬に着火し、空中で鉄片をばら撒く花火が上がる。
「照、中身はどうだ⁉︎」
『一人だけ! 眠ってるっぽい!』
「ロックはどうだ⁉︎」
『月詠ちゃんが外してくれた! 離脱する?』
「積荷のヤツだけ運んでトンズラする! ヘリ四機の連携はチョイと厄介だ!」
オーケー、と念話が切れ荒子は道路一帯を震脚にて跳ね上げた。
支柱の端を跳ね上げたので幅何十メートルもある道が、テコの原理で空を遮る。
「あーばよっ!」
と、彼女は編隊が崩れた隙をついて一息に跳ぶ。
着地地点はトラック上方だ。
「あらよっと!」
金属板が断裂する破壊音。
素手によって引き起こされたソレはトラックの重心を大きく揺さぶる。
無人自動運転故に想定外の揺さぶりがかかれば無論、走行は無茶苦茶となった。
だが、荒子はそんな不安定さを気にも留めず貨物内に降りる。
そして、積荷と対面した。
「男……だな?」
女顔の美少年が
彼女はロックの外れたケースにいたその人の状態に少々訝しんで眉をひそめるが、他に荷物が無いことを確認すると、かつごうと手を伸ばす。
そして、
『荒子⁉︎』
焦る照の声が彼女の頭に響く。
しかし、今の荒子は体から溢れ出る奔流に気を取られていた。
『うぉおおお⁉︎』
光が収まれば、彼女は鋭角的なシルエットの鎧を身に纏っていた。
手甲に具足、両肩両腰にそれぞれ二対四機のスラスター、そして先程まで外気に晒していた地肌部分は全て紅の外殻に染められている。
『ミサイルレーダーを探知。ミサイルと認定』
荒子の頭の中で念話に似た少年の声が聞こえれば、外では編隊を崩された四機のヘリの内一機がいち早く立て直し、対地ミサイルを放っていた。
(ミサイルって言ったか……⁉︎)
彼女は自分の体が自分でないような感覚に陥るが、どう動きたいかの考えはズレてはいなかった。
貨物室部分にミサイルが迫っているのである。
ならば、すべきことは一つ。
『回避──!!!!』
十数発の飛翔物が直撃する寸前でスラスター全機を下方へ向け、推力を跳ね上げる。
『おお──おおい⁉︎ 飛ぶなぁ⁉︎』
瞬きにも満たない時間で五百メートル以上は飛んだ。
目下には爆炎に包まれ横転するトラックと先を行く改造装甲車両、後には体勢を立て直したヘリ群がある。
『所属不明の攻撃ヘリ四機を確認。武装形成』
年端のいかない男の声が脳内に響けば、荒子の手には一本の紅の槍が出現する。
『訳分んねぇが、今は有り難え!』
投擲。
赤い
彼女は体勢を整えて、スラスターを今度は上方に向ければ、自由落下と推力の加速を得た、音を何十枚も超える蹴りを編隊の内一機に浴びせる。
『槍は品切れか⁉︎』
『否定。生成します』
荒子はとりあえず確信はなかったが、頭の中に響く声が返ってくることを期待して問う。すると、返事が帰ってきて、戦闘の補助をしてくれるらしいと感心する。
超速落下で高架アスファルト下までヘリごと突き破ったので、今度は高架下から上に向かって緑にマーキングされている(荒子はこの謎の声と照との感覚共有が同居しているのを驚いていた)のを頼りに、槍を構えて吶喊。
土台と鉄筋コンクリート、砂、アスファルトを易々とブチ撒けながら、音速超過の閃きが残り二機の内一つを貫く。
スラスターを吹いてホバリングすれば残ったヘリ一機と対峙する。
それは逃げる訳もなく、向き合えば紅の人型に機銃とミサイルを一斉射。
大抵の陸上兵器であれば火達磨になり大破する鉄風雷火は、その紅を飲み込んだかに思えた。
「────!」
ヘリの操縦者は爆炎が晴れて視界に映る光景に驚愕していた。
『へえ……! こういう使い方もあるわな……!』
両肩のスラスターを前方に向けていた。
豪ッ! とスラスターから爆炎が噴き出ていて、何をしたかと思えば、スラスターの推炎を攻性の防壁としたのだ。
そして、青白い噴炎を後方に向ければ、今度は全速突撃の推力となる。
『照! 聞こえるか⁉︎』
『やっと繋がった! 何があったの⁉︎ 急に応答しなくなってビックリしたんだけど!』
荒子は最後のヘリを墜とした後、念話が繋がるかどうかを確認する。
無事繋がり、少々ご立腹な照と今後の話をする。
『それは悪かった! けど、なんだこれは? 照の方からモニター出来るか?』
『出来ると思うけど、今はズラかろう。詳細は後々。落ち合う場所はいつものセーフハウスね』
『了解だ。じゃあ、後でな』
『後で』
念話が切れれば、彼女は目的地に向かってスラスターを吹かそうとする。
が、
『ん⁉︎』
推力が弱くなったと思ったら、というより、それどころか無くなり、地に落ちていく。
落下しながら光が身を包んだかと思えば、先程寝ていた少年と手を繋いでいるではないか。
「うぉおおおおい⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
荒子は突然のことながらも、咄嗟に彼を抱えて着地した。
「おーい! 大丈夫か?」
「リソースの不足を確認。至急、
「っておい! 何を言ってんだ⁉︎ アタシだっていきなり『ハイどうぞ』で出せるモンじゃねえぞ⁉︎」
少年の突然のセクシャルハラスメントに驚く荒子であった。
「疑問。不可能ではない文脈。貴女は両性具有者か?」
「そりゃそうだが、こんな道端でボロンする訳にはいかねぇだろ!」
「追加で疑問。精液の提供自体は可能か?」
「別にザーメン欲しいなら構わねぇけど、なんでいきなり」
と、そこまで話していて、後方からエンジン音が鳴ってきた。
追手の車両だろう。
「あー! もう! 詳しいことは道中聞く! 今はトンズラすっぞ!」
「肯定。加えて早急な精液提供を要求」
「わーったから! しっかり掴まっとけ!」
インナー一丁に全裸の美少年を抱えて、荒子はその場を離脱した。
***
「んで? 特製ホムンクルスだからエネルギー源も特製、と?」
「部分的に否定。正しくは戦闘時に生体鎧形態移行と生命維持に必要なリソースとして天然両性具有者による精液を必要する」
照よりひと足先にセーフハウスに着いた荒子は道中でホムンクルスと名乗った美少年の説明を飲み込もうとしていた。
「そりゃ、確かにアタシは
彼女は疲弊している少年型ホムンクルスを備え付けのベッドに休ませておいて、なにやら桶にぬるま湯を注いでいる。
「天然両性具有者、というのが重要。得られる体液には術式的に価値の高いリソースとなり、また生命を造る源である精液となれば価値は歴然」
「あー、照もなんか『有り難いよー』って言ってたなあ……」
「加えて疑問。貴女は今何をしている?」
「何って、ナニの準備だよ」
と、銀髪褐色肌の女は戸棚からなんらかの器具と何やら液体の入ったボトルを取り出した。
「……宣言。覚悟はしている」
「
荒子はプラスチックで出来た器具──浣腸器に桶に入れたぬるま湯を注入する。
「うっし、挿れるぞ」
「んんっ……」
彼女は全裸の少年の股を開けて、きめ細かい柔肌の尻の境の奥、肛門に浣腸器の注入口をあてがう。
慣れた手つきで、窄んだ肉穴と器具が垂直になるよう角度を調整。
なるべく負担のない位置になれば、優しく先端を菊座に挿入する。
「──報告。一息にされても問題ない」
「気にすんな。もとよりそのつもりだ」
「んんぁ……」
少年は吐息が押し出されたかのように、ぬるま湯を直腸内に受け入れた。
腸内洗浄である。
「立てるか? 肩貸すぞ?」
「……受諾。下腹部の未知の感覚に混乱して、足が覚束ない」
「正直なヤツだな……」
そのやり取りの後に、二人が向かった場所はトイレだ。
理由は挿れたぬるま湯を排泄する為である。
「疑問。何故貴女までトイレ内に?」
「そりゃ、中身がちゃんと出てるか確認しねえと駄目だからだろ?」
「……、……受諾。居ることに問題はない」
「なんか葛藤があるのは分かるけど、アタシだってブツ塗れの中に挿れんのはゴメンだからな? 照──彼氏だって出すトコ確認すんの付き合ってくれてんだぞ?」
「疑問。何故貴女と貴女の想い人との情事内容を聞かされたのか?」
「あーん? そんくらい互いに衛生観念がしっかりしてるって話だろ」
「……疑問。話をズラされている感覚」
「ったく、ケツメド洗う手順踏んでザーメン恵んでやるっていうのに、いちいちうるせぇな」
おら、そろそろだろ、と荒子は少年にぬるま湯の排泄を促す。
「受諾。排泄する」
少年型ホムンクルスのいきむ声が漏れれば、洋式便器に注入分の液体が勢いよく噴出する。
「なんも食ってなかったみてえだな。挿れた分しか出てねえ」
「肯定。当個体は初期活動分のみのリソースしか
「……マジで手ぇ出していいのか?」
「肯定。互いにとって当個体の生存は益になるはず」
「そりゃ品物が生体で、管理不足で死なせました、は依頼主とかと色々問題になるけどよぉ? セックスしてフタナリザーメンで延命します、はどう考えてもハニトラの臭いがな?」
「……開示。当個体には目覚める以前の背景記録が存在しない」
「……記憶喪失まで提示されたら余計怪しさが増すだろ⁉︎」
「肯定と否定。それでも当個体は生存を望んでいる」
「……はぁ、しゃーねえ」
と、褐色銀髪の女はため息をつく。
そうして、洋式便器に座っている少年を抱き抱える。
「とりあえず一回だけ付き合ってやるよ。まあ、インチキ臭え依頼掴まされたんだ。役得ってことにしといてやる」
「……感謝。貴女の配慮、痛み入る」
「幸い、ツラは好みだし、ブス抱くよりマシだろ」
と、荒子は憎まれ口を叩きながら少年とトイレを出た。
「疑問……! ここまで……、する……、っ……必要は……、はぁ……、あるのか……! ……っぁ」
「純粋自慢でアタシのチンコがデケェから、ちゃんとほぐさないとお前のケツが危ねえ」
荒子はベッドに寝かせた少年型ホムンクルスの菊門をたっぷりのローションをまぶした指で丹念にほぐしていた。
「疑問……っぁ……。分かるが、楽しんでいる?」
「そりゃ、こんだけ感度良く反応してたらな。おぉ、前立腺まである」
彼女は感心しつつも、高潤ローションで摩擦の減った人差し指で、菊座の皺一本一本を丁寧にほぐしていく。
その度に少年が「ふっぅ……!」や「はぁぁ……!」などと甘さの混ざる吐息を漏らすので、施術している身としては、その感度の良さを楽しんでいた。
「うーん、一応聞くが童貞処女だよな?」
「肯定……ふぁ……! ふっ……! ふぅうん……! 当個体にはそうった経験は……、はぁんぁ……! 記録、されて……、はぅ……、ないぃ……!」
「この感度で『処女です』っていうのは都合の良過ぎる夢みてぇだな」
まあ『お手付きです』でもやることは変わらないんだが、と男性器が生えている女はボヤきつつも、少年アナルをほぐす指は休めていない。
「疑問……。な、慣れているのか?」
「そりゃな。さっきも言ったが彼氏が理解あってな。尻使わせてくれるから、それ相応のもてなしは心得てる」
「納得……、ぅんぅう……。あ、貴女が手慣れていて、良かっ……はぁん……!」
「やっぱ感度良いって楽しいな」
挿れる側の女は人差し指一本から中指を一緒に使う。
「はうんぁ……」
彼は肛門拡張に意識がいって、二本目を感じると、より艶のある声が漏れてしまっていた。
「分かるか? このコリコリしてるトコが前立腺だ」
「はっ……、はぁ……! 認識……。もどかしい温かさ、はっ、が、あるっ……!」
アナル奥深くに挿入された二本の指は第二関節を曲げ、指の腹でその内臓を丹念にマッサージする。
「照もこうするとすげぇ善がってな。感度の良いお前なら、なおのことだろ」
「肯、定……! はぁぁ……!」
見ればホムンクルスにも付いていたペニスは小ぶりながらも、主張を強くして、先端から腺液をとめどなくあふれさせていた。
「三本目、挿れるぞ……」
「ふぅぅん……! はぁあん……!」
縦に挿入された人差し指、中指、薬指。
それらは右回転と左回転を交えながら、ゆっくりと、しかしリズミカルに肉穴を拡げていく。
「はぁっ、はっつ……! ははあっ……!」
本来出すだけの器官に異物が入り、あまつさえそこを拡げるという行為。
彼女の両性具有の男性器側を受け入れる為とはいえ、その拡張は彼の脳髄にえも言えぬ快感を伝えたいった。
「……よし、これだけ入れば充分ほぐれただろ」
ローションと腸液でぬめつく指を引き抜けば、その雄穴はヒクヒクとモノ欲しげに開閉する。
「催、促……。そろそろ、当個体も、限界に、近い……」
「おう、お望み通りくれてやる」
そう荒子が言うと、仁王立ちから男根が隠れている下のインナーを脱いだ。
「……驚愕。本当に、サイズがある……!」
「おう、見て驚け。これがアタシの自慢の一本よ……!」
ボルンッ! と、いうような擬音語が似合う屹立する怒張は、我慢からの解放を望んでおり、彼女の腹に亀頭が付く程に反り返っていた。
「さっきから良い声で鳴くモンだから、こっちもガマン汁でビチャビチャでなあ……!」
彼女は片手間にアナルプレイ用のローションをその肉竿にまぶした。
そして、片方の手で少年の脚を広げ、もう片方の手で大きく勃起した逸物を彼の菊門にあてがう。
赤黒く淫水焼けしている彼女の肉槍は、使い込んだことが無いであろう彼のペニスと比較にならない大きさをしていた。
「……了承。いつでも構わない」
「おう、じゃ、イクぜ……!」
充分にほぐされた男の菊門に、女に非ざる逸品が一気に挿入される。
「────ッ!」
少年は達した。
まだロクに抽送されてもいないのに、奥深くまで挿入されただけで、その貧相なペニスから白濁の体液を吐き出した。
思考は射精の快感に押し潰され、下半身は入ってきた剛槍の一撃でガクガクと痙攣する。
「おいおい、気が早ぇなあ。こっちはまだ満足してしてねぇ、ぞっ!」
荒子は、正常位故に少年型ホムンクルスの射精をまじまじと見届け、その感度に仄暗く粘り気のある悦びを覚え、挿入している男根をカリ首ギリギリまで引き抜いて、もう一度奥深くまで突く。
「──はっ、──!」
彼は今、自分が何処にいるのかを正確に判断出来なかった。
そこまで混乱するほどの快感が脳を焼いている。
証拠に二撃目の抽送により、再び呆気なく達してしまう。
「そんなに
彼女は次に直腸内にある肉竿を浅い位置まで引いていた。
「──。はっ──、まっ……!」
少年は制止の言葉をかけようとして、その次が出なかった。
何故なら、この性交の主導権を握っている人物が、浅い位置──正確に言えば彼の前立腺の位置で腰を振り始めたのだ。
「──! ──っ! ──はっ!」
指でそこを弄られた時とは比べ物にならない圧迫感と快感信号が脊髄を駆け巡った。
声にならない声で、言語化出来ない悦楽を叫ぶ。
それは自らの小さなペニスでも同じで、白濁液がその内臓を擦られるタイミングに合わせて噴き出ていた。
「良い声だ。これだから犯すっていうのが良いんだ……!」
銀髪の女は感慨深く腰を振っては、目の前で顔からもみっともなく体液を振り撒いている少年を視姦していた。
「──あっ! ──ああっ!」
「そんなに良いとザー汁吐き出してやるのを忘れて、どこまでイクのかを試したくなるな……!」
と、言ってはいるが、本来の目的は忘れてはいない。
性的嗜虐心をそこそこ満たしつつ、当初の目的である、『直腸内にて彼女、両性具有者の精液を受け取る』為の抽送にしていく。
「──やっ、──いゃ、──っ」
しかし、荒子のモノが太く長いので必然的に長いストロークになり、その動きが少年の更なる快感を
直腸最奥、S字結腸まで届く
「──ひゅっ、──ひゃ、──は」
そうして、生まれる悦楽は名状し難く彼の脳を焼くのであった。
「さあっ……! そろそろ……!
そんな彼の痴態に暗い愉悦を覚えながらも、彼女は当初の目的を果たそうとする。
恥骨と恥骨がぶつかり合う間隔が狭くなるのは、ストロークを最高潮に持っていく為だ。
そうして、
「
「──はぁっ」
一際強い突きが最奥に刺されば、子種汁がホムンクルスの直腸内にブチ撒けられる。
***
「はぁっ……!
「……」
「ん? 大丈夫か?」
あまりの快感で失神したか? と普段シている相手を思い出しながら、逸物を抜いた荒子は黙っている少年を見る。
「生体波形認証。初期登録完了。コミュニケーションシステム初期化完了。認証規定の通り再起動します」
「何言ってんだ……⁉︎」
「……」
なにやら、不穏な言葉が連続して出てきたと思ったら、彼は目を閉じて、数瞬押し黙る。
「おーい! 大丈夫か?」
ペシペシ、と彼女は頬を軽く叩いて返事のないホムンクルスを起こそうとした。
すると、
「え、あ、はい……! 起きます、起きますから叩かないでください……!」
返事が返ってくる。
(ん? こんなフランクだったか?)
起こそうとした張本人がその言動に違和感を持つと同時に、その人が目を開き視線が合う。
「はい! 起きまし──って、うわぁぁぁぁ! 裸ぁ! うっわ、俺も裸ぁぁぁぁ⁉︎」
と、少年は先程までの機械のような受け答えはどこにいったのか、現状の互いの全裸を見てリアクションをする。
「……どうなってんだ?」
ワー、キャー! とする彼を尻目に
***
世界各地の神話存在が現実に現れ、超人めいた覚醒人類も現れ
各勢力が信仰と利益・利権を争った『神魔覚醒戦争』終結から十年。
生き残った神々はそれぞれ戦争で得たリソースから大企業を興した。
百億以上いた人口を十分の一にまで疲弊せしめたその戦争を教訓として、神話勢力達は不可侵条約を締結し、
しかし、神々も疲弊したとはいえ、現実の企業利益に新しい価値を見出していた。
そして、それは人も同じであった。
これはそんな