「おっし、着いたぞ。ここがアタシらのホームだ」
未明、チームメイトが遠隔操縦する車に乗って、セーフハウスで着替えた
「い、色々とデカくてケバい……」
ビカビカとピンクや紫色等のネオンで彩られている巨大建築物に気圧される金髪の少年を見て、銀髪の彼女は軽く肩を叩く。
「おう、いやらしい雰囲気だろう?」
「だ、ダル絡みやめて下さいよ! それにセクハラですし!」
「オメエが先に吹っかけてきたの、忘れてねえからな」
「いや、俺だって自分がせ、せっ……精……液ぃ……が必要なホムンクルスだって信じられてないんですから!」
「それも
「付け加えないで下さいよ!」
「大分必要な事実だからしょうがねえだろ。ったく、そろそろ入るぞ」
そういって荒子は連れて行こうとする。
「……ほ、本当にここなんですか?」
「アタシにケツ掘られたクセにこういうことでビビんな」
「明らかに十八禁な施設ですよね⁉︎」
「今時珍しい貞淑さだな」
「そういう倫理観は肯定されて良いと思うんですけど!」
「犬ッコロともヤれる時代なんだ。テメエの方が少数派だぞ?」
「ウワッー! ズーフィリア!」
そう往生際の悪いマイルズの首根っこを掴んで、彼女は娼館の従業員用裏口をくぐった。
「
「別にいいよ。僕も気になることがあったし。で、ソッチが例のホムンクルス君?」
荒子は『
その照は謝罪よりも彼女が連れてきた少年に興味があるようだった。
「は、はじめまして。マイルズ……といいます……」
「よろしくマイルズ君。で、荒子のチンポは良かった?」
「うわぁああ! いきなりセクハラ!」
マイルズはいきなりの質問に赤面と驚愕をしてしまう。
「だって、荒子直々に『セックスするから合流予定をズラしてくれ』って連絡があったんだもん。ナニの具合を聞くくらいの役得は有ってもいいじゃん?」
「だからって……、初対面に聞くことじゃないです!」
「えー、もう僕ら竿兄弟なんだから」
「トコロテンする程度には善がってたな」
「わぁああ⁉︎」
と、恥ずかしがっている少年を尻目に彼女は肛門交合の快感で射精していた当時の彼を振り返る。
「なんだ、良かった。荒子が上手なのもあるけど、体にそういう才能があると楽しいよ」
「嬉しくないアドバイス、有り難う御座います!」
そうマイルズは、顔を真っ赤にして皮肉を返すのであった。
「さて、アイスブレイクも済んだし、上がってよ。今後の情報交換といこうか」
今までのセクハラ会話がワンクッションであったことにマイルズは半目になる。
「おう、進展あったか?」
「んー、今回の依頼人と連絡取れなくなったのが一番大きな進展かな」
そんな彼を気にせず、金髪をつれた銀髪と黒髪は情報の擦り合わせに、部屋の居間に上がる。
洋風の居間にはテーブルが置かれて、普段使いされている二脚と来客用に一脚。テーブルの上にはソイベースの茶請けがあった。
「んじゃ、
「そうだね。ちょっとコトが大きくなりそう」
「アイツ、学校の単位落とさなきゃいいんだがな」
「僕もそこら辺はサポートするつもりだから大丈夫。元より情報精査はフィクサーの仕事だし。それよりマイルズ君のコトを考えよう」
「お、俺、ですか……?」
「そ。今のところ、君は素性不明、身元引受人不在の
「偽造証書とかは追々として、ココではどうするつもりだ?」
「それはもう済んでる。僕の小間使いにするって
「お、俺不在で話が進んでる……」
「しょうがねえだろ。後ろ盾もねえガキがなんか出来る方がおかしいしよ」
「ガキって言わないでくださいっ!」
「まあまあ、僕らの手元に置いておきたいってのもあるね」
まー、お客さん取らす訳じゃないから気楽に気楽に、と照は個包装のソイベース菓子を茶請け皿から二つ取ると、一つを開け、もう一つをマイルズの前に置いた。
「精液で生きれるからって、味覚がないわけじゃないでしょ?」
「い、いただきます……」
彼は一言感謝して、開けて口に運ぶ。
「美味しい……、です」
「でしょ? 色々緊張してただろから、甘いのが良いだろうなあって」
ちゃんと天然糖が使われてるヤツだよ、と照は言う。
「高いお菓子なんじゃあ……」
「それ一個で百神円(一神円につき旧貨幣の十円する。ようは個包装の一個千円もする高級菓子である)だぜ」
ぶふぉ! と金髪の少年は吹き出してしまう。
彼の失った記憶の中に僅かながら残されていた『常識』という意味記憶が正しければ、先の戦争でが農耕地が激減したこの『神企業秩序』において、人工甘味料以外の味付けで天然糖を使用した菓子を日常的に食せるとなると、下手な
「んー、そうだけど、それに見合う仕事はしてるし、しばらくは手伝ってもらう仲でもだし。こういう小細工はどんどん仕掛けていくから慣れていくように」
「意外と即物的な手段に出ますね……」
「処世術みたいなモノだよ。モノで釣れるなら、そっちの方が手早く済むからね」
「
そう言って荒子も菓子をつまむ。
「アタシらの手元に置いとくからには、それなりの処遇は提供してやっから安心しろ」
「こんな偉そうなコト言ってるけど、面倒見るのは僕だから、なんかあったらコッチについた方がオトクだよ」
そう照は見え見えの耳打ちをマイルズにする。
「はんっ、別にいーだ。抱いてやる頻度減って泣き付かれても知らねえぞ?」
「そんな甲斐性なしじゃないでしょ」
「あれ? 俺、今ノロケ話聞かされてます?」
と、少年は何気なく男女のダシに使われたことに唖然とするのだった。
***
「ここの部屋使っていいからね」
マイルズが照の小間使いに決定したあと、彼は家主に連れられて一人部屋に案内された。
ちなみに荒子は「
「ざっくりと日用品とか揃ってるはずだから、何か足りないモノがあったら、買い足していこう」
「……こういうことって、初めてじゃないんですか?」
「意外と察しがいいね。マー、仕事柄、なんかあった時用に人一人分匿えるくらいの余剰スペースを確保してるんだ」
「ここの男娼だけじゃなくて、
仕事人。
神企業法律《コンプライアンス》の外の仕事を請け負う、都市群の裏側を走る人々の総称。
マイルズには自身の背景やそれらに関するエピソード記憶がない。
しかし、常識や知識の意味記憶は残されていた。
そこからと今まであった出来事を総合して、荒子や照らが仕事人という推測を行なっている。
「正解。僕らクラスだと舞い込んでくる
黒髪の美丈夫は改めてベッド周辺の具合を確認しながら、自分達の素性を明かす。
「そんなあっけらかんな……」
「んー、バレても問題ないし、隠蔽出来るだけのツテもあるし、仕事で知り合った人がお客さんとして来ることもあるから、このネームバリューは気に入ってるよ?」
照はシングルベッドにかけてある毛布を近くの椅子に置いて、下のベッドシーツの具合を確かめる。
洗濯糊がきいた黒のシーツには目立った汚れやシワがなかった。
「出歩くとかの不自由をさせちゃうのは申し訳ないけど、その代わり衣食住その他諸々はしっかり保証するから、コトが確定するまで付き合ってもらえると有り難いな」
例えばこの部屋とか、とベッドに座った彼は少年に隣に座るよう指をさす。
金髪のホムンクルスはおずおずと座ると、
「……もしかして、このベッドもかなり良いヤツです?」
「来客用だしね。
メンテナンスもしっかりしてるから寝心地抜群! と、照は背中をベッドに放り投げる。
「OMI社っていうと、『箸から宇宙船まで』っていうマルチなサービスで有名なあの
「そそ、『ここで買っとけばとりあえず外さない』が大きいからねー」
「それもですか?」
「いいや、これは僕が調合したハンドメイド。色々融通がきくから、リクエストしてもらえたらお好みのを用意出来るよ」
これはお試し用、と照は瓶を開けてスティックディフューザーを広げて挿せば、部屋にほんのりと香りが漂った。
「イメージは森林系。花も少しある感じに調合してる」
「……」
しばし、固まるマイルズ。
「どうしたの?」
「いや、なんか趣味が随分可愛らしいなぁ……って」
「まあね、大母支配人の影響があるよ」
「ああ、身の回りをしっかりしろ、的な」
「そそ。それに魔術の師匠でもあるからね。こういう環境を整える系の小物はお手のものだよ」
ブフッ、と吹き出す少年。
「そういうのって隠すモンじゃないんですか⁉︎」
魔術師。
『神魔覚醒戦争』の最初期にもたらされた、人類がそれまで証明出来なかった技術を扱う者達の総称である。
様々な方法や触媒、儀式によって超常の秘術を行う存在だ。
それをシレッとバラされてマイルズは驚いてしまったのである。
「んー、仕事人って割れてるし、これから生活をしていけば自然と分かるだろうから、今のうちにバラしても問題無いでしょ」
「ゆ、緩い……」
「それに僕にとって魔術って求道っていうより、手段や道具って感じだから」
「なんの目的で……」
「強いて言うなら、好きな人と一緒にいるため、とか」
「……荒子さんもそうでしたけど、照さんも大概ノロケて来ますよね⁉︎」
「まあね。お互い小さい頃から一緒に色々味わってきたから」
「……ノロケるならまたの機会にお願いします」
「ちぇー。まあ隙があればガンガンやってくつもりだから、その辺ヨロシク!」
うわぁ、と半目になる少年。
それを尻目に、美丈夫は懐から黒いミサンガを一本取り出す。
「はい、コレ。低出力の認識阻害の御守りとして巻いといてね。どのお客さんがマイルズ君をチクるか分からないから、その保険として、ね」
「準備がいいですね……」
マイルズはどこか諦めたように、それを受け取って利き足の右に巻く。
「……」
「……どうかしました?」
「えーっと、特に迷いなく利き足に巻いたからちょっと驚いてる」
「……って、あっ、ホントだ⁉︎」
「無意識にやってたんだ。まあ、ホムンクルスっていうくらいだからその辺の知識があったんだろうけど、記憶喪失っていうのも時間があったら詳しく調べた方がいいかもね」
ちなみに、黒のミサンガを利き足に巻く、となると、強めの魔除けになる、という意味合いである。
「……俺って、何者なんでしょう?」
「それについて僕は責任のあることは言えない」
その代わりに、と照は椅子に背もたれを彼から見て前にして座ると、
「面倒は色々見てあげるから、気楽に自分探しをしようよ」
笑って提案する。
「じ、自分探しって……。そんな不安定な二十代じゃないんですから……」
「記憶探しも似たようなモノだと思うよ? 記憶あっての自分なんだから」
「だからって手のかかる子供扱いは心外です」
「あー、荒子にガキって言われたの気にしてるの?」
「そ、そりゃ、お二人から見たら俺は子供かもしれませんけど……」
「まあ、あんな風に憎まれ口叩いているけど、甲斐性はあるから心配しなくて大丈夫だよ」
「甲斐性って……。マッチョっぽい言動の人だなって感じましたけども」
「それに性豪だから問題なく抱き潰しててくれると思うよ?」
「ちょっと⁉︎」
マイルズは思わず顔を赤くする。
「いやー、荒子ってチンポ大きいし、ザーメンプリプリだから気絶するまでセックスした後は調子が良くてねえ……!」
「うわーっ! 直球のセクハラノロケ!」
「マイルズ君だって味わっただろうし、これくらいは想定してて欲しいなー!」
「だからって臆面もなくセクハラしてくるのはどうかと思いますよ⁉︎」
「竿兄弟なんだからその辺は共有していこうよー」
「だ、抱かれたくて抱かれた訳じゃ……!」
「じゃあ、コイてもらったヤツを浣腸器とかで注入する?」
「そ、そりゃ、それのがプライバシー諸々は守られますけどぉ……」
「けど?」
照はあえて踏み込んで質問する。
「抱かれるのが気持ち悪かったわけじゃなくて……」
うんうん、と美丈夫は聞き手に回っていた。
「だから……、その……、いやそうじゃなくて……」
「……」
隣の黒髪の家主は頷いたまま黙っている。
「……ああ、もうっ! そうですよっ! 抱かれて気持ち良かったですっ!」
「よっしゃー! 言質取ったー!」
「だーっ! 性格悪いですよっ!」
「自分の気持ちに素直なのが一番だよ。変に取り繕って蓋をしようとしないこと」
「……うぅ、誘導尋問された気分です」
金髪の少年は両手で顔を隠す。
照の手のひらの上で転がされて本音を引きずり出されたのが応えたらしい。
「見栄張ったり隠そうとしたりするのも良いけど、自分が記憶したことに対して素直だと色々楽しいよ」
「……記憶がないのに?」
「記憶がないからさ」
黒の美丈夫は立って窓のカーテンを開けると、ビル群の隙間からさす太陽を部屋に入れた。
「もしかしたら、そもそも君には記憶なんてモノは最初から無いのかもしれない」
彼は伸びをして、まるでさっき起きたばかりのような仕草をする。
「その時、手繰り寄せるべきは『無い』ことの絶望じゃなくて、それまで積み上げてきた『有る』ことの確実だよ」
「……お説教ですか?」
少年は少し不満げに口を尖らした。
そうとも言う。でもね、と美丈夫は続ける。
「あらかじめ言葉として覚えておけば、もしそうだった時の心構えにはなるんじゃないかな? 最終的な答えはマイルズ君自身が出す必要があるけど、その答えの為にもここで色々積み上げていこうよ」
「……なんか良い話風にまとめてません?」
「ウダウダネガに染まられても困るからね。強引でもポジに持っていくのが僕らの方針だ」
「荒子さんもなんですね……」
「荒子はもっと凄いよー。体で分からせられるから。油断してたらガバりだよ」
「……心に留めときます」
「僕らと付き合う以上、悲しいなんて暇はあげないから。覚悟しておくように」
さ、と照は一言呟き、手を差し出す。
「……」
マイルズはしばし迷うが、
「よろしくお願いしますっ!」
パチンと、ハイタッチするのであった。
***
『
「おう、
荒子が自室の物理モニターとヘッドセットで通信先の紫髪の美少女アバターの相手──
『相変わらずバケモンじみた耐久力っすね』
「その代わりに手術メスが通らねえからこうして物理媒体でしか
神魔覚醒戦争以降に発達したネットワークを指す。肉体や脳に機械やナノマシンを入れることで、より直感的にアクセス出来るようになった神企業時代の象徴でもある。
『
「ま、お互い伊達に修羅場はくぐってねえって話だ。ま、そろそろ本題といくか」
荒子はヘッドセット越しに聞こえる別室の会話にも気を払いながら、電脳網にいる月詠と話す。
『で、撃たれた銃弾の威力と感触的にOMI社製と判断してる、と』
「あとまあ、直に
『コッチで回収と解析した車両とか通信機器とかのログからも、OMIに言及してたっすね』
「あとは照は妙な弾頭から出た波長もオリュンポス系だって言ってたな」
彼女は自身でサバ折りした、火薬の代わりに術式波が仕込まれていた弾頭を思い出す。
『……申し訳ねえっす』
「気にすんな。
神話に名高き神通力はこの現世においても健在であり、まず関わってはいけない勢力である。
『
「だからあんまりテメェを責めんな。逆に考えろ。なんでそんな連中が、アタシ達みたいな裏側に謎の依頼をふっ掛けてきたか? にだ」
彼女は落ち込む表情をする画面上のアバターを励まして、今回の出来事の発端を振り返る。
「取り次いだヤツは誰だ?」
『
「接触した人間ごと消すのはアイツらがやりそうなことだな。で、だ。重要なのは
銀髪の女は電子の海に漂っている仕事仲間の思考を促す。
『受けた当時の内容は『貨物の護衛』っすね。貨物の中身がアレだったのは驚きっす』
「同感だ。けど連中の目的がアイツだろうっていうのは分かるが幾つか解せねえことが多すぎる。なんでOMIがアタシらに貨物──マイルズの護衛を依頼しておいて、わざわざソレの襲撃しに来たのか? だ」
『まず、奪うのであれば過剰戦力ってコトっすね』
「だな。四輪数十台に戦闘ヘリ五機は奪うつもりの装備でも、多すぎるし、荷物のことを考えてなさそうだったな」
護衛を担当した本人は当時の相手方の装備類と攻勢を思い出して、襲撃者達の思惑を図る。
「恐らく連中は、マイルズが手に入っても入らなくても良かったんじゃないか?」
『手に入ればヨシ、殺せてもヨシってコトっすね』
「次になんでアイツを起こしたのか? だな。起こし方自体はあの榴弾に偽装した弾頭からの術式波だろうが」
『そもそも、彼、どこの所属なんすかね?』
「そっちでもまだ足取り掴めてないか」
『残念ながら。姐御の報告からして、なんらかの生体兵器っぽいんすけど』
「両性具有者の精液が燃料で生体鎧になるホムンクルスってなると、思い当たる神話や逸話がねえな」
『要素を絞るっすよ。精液が逸話だと該当が多すぎるんで、両性具有者の方から考えてみやしょう』
「それもそれで多くねえか?」
『いや、オリュンポスで両性具有ってなるとヘルマプロディトスやヘルメスとかに絞り込めるっす』
二柱とも両性具有関係に逸話があり、かつ近しい親類関係である。
さらに、
「……トリックスター神か」
『ココが関わってくるとなると……、話がややこしくなるっすね』
現実側にいる荒子と、電子の画面に映っている月詠のアバターの眉間にシワが寄る。
トリックスター。
神話においては、人々に文化などをもたらす一方、その秩序を破壊する役割を持つこともある一癖も二癖もある神である。
「お前が騙くらかされた、っていうのも分かるヤツが来たな」
『ソレで飲み込めたら良かったんすけどね……。まあ、元の疑問に立ち返るっす。なんでOMIがウチらに貨物──マイルズの護衛を依頼しておいて、わざわざソレを襲撃しに来たのか? っすね』
「OMIからすると、アイツは殺しても奪っても良かった存在っていうのが現状から分かってることだな」
『……マイルズの素性が分かれば利害関係だとからで、単純になると思うんすよねえ』
「当の本人がどこにも記録のねえ
『そうなると、OMIやその他の神企業から
「存外エラいことに首突っ込んだのかもな」
『そ、そんな縁起でもない……』
「まあ、マイルズが思い出すか調べて分かるようにするしか、今やれることはねえか」
『そうすっね。闇医者とかの手配は受け持つんで、そっちはしっかり見張っといて下さいっす』
「へいへい」
荒子は何本目かになるソイバーをカジりながら、了承する。
「月詠もこれから学校だろ? 単位はしっかりな」
『そ、そこは分かってるっす……!』
と、彼女のアバターが露骨に目を逸らしたのを見て、年長者として少し心配する荒子であった。
***
「お疲れ、荒子」
「おう、オメエもな」
荒子が月詠に報告を終えた後。彼女と照の共用の寝室にて。
「マイルズはどうだ?」
「寝てるよ。色々あって疲れちゃったんだろうね。寝付きの良くなるおまじないかけたら、コロって感じ」
クイーンサイズのベッドに二人腰掛けて、美丈夫の方は褐色の女の肩に寄りかかって深夜から朝までの時間に起きた仕事の顛末を互いに共有していた。
「今回の
「
「ま、やる事は変わんねぇ。相手の裏取ってシバくだけだ」
「神様相手に強気だなあ」
「この稼業、ナメられたら終わりなんだ。それともなんだ? 神だからってヤリ返しちゃ駄目ってか?」
「いやいや、いつもの荒子で安心したよ」
長髪の男は銀髪の女によりもたれかかる。
彼は委ねることを拒まない彼女を好いていた。
そして、それは委ねられる女の方も同じである。
「ん……、今日はどうする?」
「そうだな。マイルズが起きたら大母支配人に面通しさせよう」
「ふふっ、荒子、ガラは悪いのに真面目なんだから」
「……あ、悪りぃ。そうだよな。今はアタシ達の時間だったな」
荒子は体勢を変えて、照を抱き寄せる。
「そんなにあの子が気に入ったの?」
「まあな。シマリは良かったし、反応も悪くねえ」
「僕より良かった?」
「それは……、お前の頑張り次第だ……、あむ……、ちゅる……」
褐色の女は透き通るような手入れの行き届いた肌の男を引き寄せ、口付けをする。
唇と唇を重ねるだけでない。彼女はそこから舌を侵入させた。
「らむ……♡ あちゅ……♡ そっか、じゃあ……♡ 頑張らないとね……♡」
舌を入れられた男も、それを同じ器官で出迎える。
一方的に受け入れてるようで、しかし、入れられた側はそれを巧みに舐め回していた。
舌と舌を絡めるだけでなく、照の方が荒子の肉を歯肉や上顎に誘導したりもする。
「ちゃむ……、こういうキスは、はちゃる……、してねえな……、あらるぅ……」
「ぴちゃ……♡ そうなの? じゃあ……♡ まだ、僕の方がいい? れらぁ……♡」
「胸……、はぁ……、上手く、揉まれながら、キスすんのは……、あっ……! お前の方がまだ……、いい、な……!」
気付けば体を近づけている男の方は、女の服の下に両手を潜りこませ、ブラジャーのフロントホックを外して、その大きな双丘を揉みしだいていた。
「はぁ……、あちゅる……! 乳首ぃ……! カリカリ……! いい……!」
「れらぁ……♡ 荒子って♡ 体の感度♡ 良いよね……♡」
ディープキスで男が口を
「あぁ……! お互い、どこが良いのか……! 分かってるのは……! 楽しいよな……! はぁあ……!」
「ひゃあん♡ 耳ぃ♡ 美味しい……?」
褐色肌の方は唇を離すと、今度は綺麗な肌の相手の耳を舐め回す。
対する方は乳房の先端、乳首を触るか触らないかのフェザータッチから強弱をリズミカルにつけつつ摘んでいた。
ベッドの上で互いの肉を貪るテクニックを味わう二人。
それは荒子がマイルズとしていた一方的なセックスとは対極にある、お互いの弱い部分を知っているからこそ出来る愛の確認方法であった。
「らろぉ……! ふぅん、相変わらず手入れが行き届いてて、舐めるのか楽しいな……!」
「これでも♡ やぁ♡ 維持するの♡ ふぁ……♡ 大変なんだからぁ……♡ ひゃあだぁ♡」
「大変なのに……! 一生懸命……! あむ……! 手入れしてんのは……! れらぁ……! なんでだろうなぁ……!」
荒子は照の外耳から内耳をなぞる音をわざと響かせるよう舌を大げさに纏わせる。
「もう……♡ 意地悪……♡ なんだからぁ……♡ はひゃあ♡」
彼女は抱き締めている両手を解くと、押し倒して、それらで彼の服を掴み、まくり上げた。
諸手の標的は無論、乳首である。
「お前も感度の良さだったら……! 負けてないだろう……!」
「ふゃあ♡ それは♡ 荒子が開発する♡ からぁ♡ あひゃいぃ♡」
褐色肌が見つけるのは、よく知った場所にある何度も見てきた綺麗なピンクで一対の肉芽だ。
手で触れて、見て分かるのは、それらがぷっくりと充血して勃起していることである。
「ふふっ、また胸に肉が付いたんじゃないか……!」
「こんなに♡ 揉まれたら♡ そりゃあ♡ 大きく♡ ふひゃあ♡ なるよぉ♡」
彼女の手は親指、中指、薬指、小指で彼の乳房を下から揉みつつ、人差し指は勃起した乳首を掠めたり、乳輪を触れるか触れないかのタッチでなぞっていた。
男の方も女の褐色巨乳を揉みしだく手を休めてはいなかったが、明らかに動きが鈍っている。
「ほうら……! そんなに休んでいると、余計激しくなるぞ……!」
「やあ♡ おっぱい♡ 弱いの知ってるクセにぃ♡ ああんぁ♡」
荒子は照のマゾヒスティックを熟知しているが故に、意地の悪いことを言ったり、押し倒してセックスの主導権を握るなどしている。
無論、彼女のサディスティックな部分も大きくあるが。
「れぁ……、ふふっ、可愛く勃起してるのは乳首だけじゃないじゃないか……!」
「ひやあ♡ オチンチン♡ まだぁ♡」
「こんなにガマン汁垂れ流しておいて……! なにがまだなんだ……⁉︎」
銀髪は黒髪が履いているズボンとパンツを片手で脱がすと、その手で見事に勃起している彼の逸物を掴む。
されている側の脚は既に大きく開かれて抵抗の声をあげてはいるが、その両手はしている側の胸を弱々しく揉むのが精一杯だった。
「ひやあだ♡ オチンチン♡ シコシコしないでぇ♡」
「そうは言うがな……! そんな甘ったるい声だと、虐めたくなって仕方ない……!」
乳と男根を弄ぶ女。
乳を摘む手はぷっくりとした肉芽を二指で、男根を掴む手はただ上下させるのではなく左右の回転運動も加えて。
器用に両手それぞれが違う動きで、蕩けた嬌声をあげる美丈夫を責め立てる。
「ああ、素直に善がってる声はいつ聞いてもいいな……!」
「荒子もぉ♡ 乳首♡ 勃ってるぅ……♡」
「どうした? こんなんじゃ、いつまで経ってもアタシをイカせることが出来ないぞ……⁉︎」
「じゃ♡ じゃあ♡ ここで♡ イッてぇ♡ はっはぁ♡」
照は胸を揉む手を離すと、その二つを自分の股間に移し、ヒクヒクと脈打つ菊座を広げた。
「ちゃんと♡ 綺麗に♡ してきたよっ♡」
「準備が良くて結構! そろそろアタシも気持ち良くなりたかったからな……!」
荒子はズボンとショーツを一緒に脱いで、両性具有器を両方露出させる。
無論、目を引くのはその並の男なら素足で逃げ出すようなサイズの男性器だ。
「ふふっ♡ エッチなオツユ♡ 荒子も垂らしてた♡」
その巨木といっていい赤黒い性器の鈴口からは、ドクドクと透明なカウパー腺液が垂れ流され、待ち続けていた期待の大きさを物語っている。
「そら、尻を向けろ。今日はバックでヤリたい」
「いいよぉ♡ ふんっ♡ あんっ♡ もう限界♡」
黒髪の男は、ベッドの大きさゆえに雑な動きでも四つん這いになれるのを良く思っていた。
「来てぇ♡ 縦割れケツマンコ♡ もう準備万端だからぁ♡ ああんっ♡」
銀髪の女は突き出されている腰を持ち上げると、度重なる肛門交合で彼女の剛直をすんなりと飲み込める菊門にソレを当てがある。
「さあ、力抜けよ……!」
ズブブ……! と空気の漏れる音は、肉竿が括約筋を押しのける音だ。
「はぁん♡ オチンポ♡ きたぁ♡」
美丈夫は両性具有男根の一番太い部分が肛門を割り、そこから少し奥下の臓器──前立腺を圧迫される快感に善がっていた。
「相変わらずココが好きなんだな……!」
女は男が子宮の名残りの部分で抜き差しされるのを好いているのを知っている。
よって、太さのある部分の亀頭でそこを耕すように腰を前後させる。
「はぁん♡ やぁん♡ ひゃだあ♡ もおぉん♡ メスイキするぅ♡」
性感として弱い部位の一つである前立腺を、太い部分である亀頭で前後されれば、ペニスからの射精を伴わない絶頂に達する。
「ははっ! いい勢いでビクビクっていってるな……!」
荒子は敢えて浅い位置で挿入し、腰を前後させたり円を描くように動かす。
前立腺の快楽の痙攣を、亀頭で感じ取ってはその『イカせた』征服感に酔う。
「ヤるのを酒に例えるのがあるが、酒に酔ったことがねえから分かんねえんだよな。それともこの脳汁がその『酔う』ってヤツか……⁉︎」
「もうっ♡ シてる時にぃ♡ ひゃああん♡ ひゎう♡ そういう♡ 説明すると思ってるのぉ♡」
「おおっと、悪い! ちょいと野暮だった! そらっ! その詫びだっ!」
ズンッ、といったふうな腰の突き出し。
そうすれば、
「ひゃあん♡ ああんぁん♡ 奥ぅぅ♡ オチンポ♡ キスしてる♡」
一気に直腸の最奥であるS字結腸を、海綿体をパンパンに膨らませている男根が貫く。
直腸の上(バックの体勢であれば下)は男性であれば性器に関する内臓──前立腺や精嚢が集中している。
それを、そもそも開発によって直腸そのものが性感帯になっている者が太く固い男根で刺激されればどうなるか?
「ひゃあぁぁぁぁあ♡ イクぅぅぅぅ♡」
単純明白、全身を仰け反らせる勢いで絶頂するのである。
「んむ……! あむ……! ちゃんとキス出来て偉いぞ……!」
荒子は仰け反りで上向きなった照の顔を、片手で調整してキスをする。
「いやぁぁぁぁ♡ 優しくされるとぉ♡ またイッちゃうぅぅぅぅ♡」
「キスすると締まりが良くなるな……!」
バチュン、バチュン、と両性具有の女はその長さを活かしたストロークで男を責め立てる。
責められている方は一突きごとにビクビクと体を震わせては、嫐られる悦びを味わう。
両者が両者のどこをどうすれば善がるのか、どう反応すれば悦んでくれるのか、を知り尽くしたやり取りだ。
「そろそろ……! アタシも……! イクぞ……!」
「きてぇ♡ 僕も♡ イクからぁ♡」
腰の動きにスパートがかかる。
バチュバチュと鳴る肉と肉がぶつかる音の感覚がどんどん短くなった。
腰を早く振る女は吐息を荒げ、絶頂する男は達しながらも締め付けを忘れない。
「
「ああああぁぁぁぁん……♡」
褐色肌の女の男性器が、綺麗な肌の男の直腸最奥で一番大きく膨らむ。
ドグンドグン……! と突き刺す腰が力強く脈動する。
射精を直腸にブチ撒けたのだ。
「〜〜〜〜はっああああ♡」
そして、射精したのは彼女だけではない。
「は……! お前も善かったみたいだな……!」
照のノーハンド射精を導けた荒子は満足そうに彼にもたれかかる。
「ふふっ♡ 荒子も善ったみたいだね……♡」
男は女の乳房が自分の背中で潰れながらも、その先端が興奮で勃起しているのを感じられるのが大好きだった。
彼女の大きな肉果実を絶頂で敏感になっている神経で大きく感じられるからだ。
「おっぱいも感じられるし♡ ザーメンもあっつい……♡」
事後の余韻──詳しくいえば、直腸奥に感じる火傷をするんじゃないかと錯覚するほど熱い精液を受け止めているこの時間も大好きであった。
「ああ……! やっぱり、照の体は格別だな……!」
荒子は感慨深く腰を押し付けて、尿道に残っている精液の一滴まで照に押し流す。
「んもぅ♡ あん♡ また固くなってる♡」
「マイルズのことで拗ねられても困るしな。今日くらいは甲斐性見せねえと」
「本音は?」
「お前のエロい声聞いてたら、ムラムラが止まらない……!」
「んもぅ♡ だったら♡ いっぱい鳴かせて♡」
おねだりを境に二人の時間は更に流れていくのだった。