※この作品はR-18です。

ゴールドクリムゾン・フルボディ   作:揚げた孫(ハメるの姿)

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第三章

「出来るか? 無理なら照が面倒見っから」

「だ、大丈夫です。事前の纏憑依(オーバー・ポゼッション)の練習と同じですから」

『二人共、こっちは準備完了だよ』

 照から、所定の位置に着いたと念話にて荒子とマイルズに連絡が入る。

 大都市ヨコハマ、その外縁画の一つ、OMI(オリュンポス・マルチ・インダストリー)が所有してるとさ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)一画を荒子とマイルズが手を繋ぎつつ、それらを遠巻きに見ていた。

「いくぞ」

「はいっ!」

 少年が目を閉じて、自分を分解するイメージをする。

 自分を構成するモノが部品だとして、その一つ一つがほどけていく。

 ほどけたら、それらを手繋いでいる女性に向かわせるのを意識。

 そうして、荒子全体を取り囲む部品達から、とても細い糸を伸ばすイメージで、織られている衣服の隙間をすり抜けて地肌へ向けて、それらの糸を接続する。

 そうして、鋭角的で紅が特徴の生体鎧を纏った一体が現れた。

『うっし、練習通り纏憑依(オーバー・ポゼッション)出来たな』

『憑依数値、安定域で推移を確認。二人共の肉体・精神・魂の安定も確認。いやー、サイバネ使わずともこういう心身拡張技術があるのは相変わらず驚きだね』

 照は念話と遠視(とおみ)の応用で、マイルズを纏った荒子をモニタリングする。

『アタシ自身の調子もアゲてくれるからな。重さを感じないし、体が軽い。マイルズ、そっちはどうだ?』

『はい、問題無く。行動主導権こそ、荒子さんに移ってますけど、俺の感覚はハッキリしてます』

 そいつは重畳、と女が返せば、両肩両腰に一基ずつ、計四基のスラスター全てを下方に向け、噴射した。

 轟ッ! と音の壁を何十枚も破る垂直飛行の一瞬で、成層圏まで彼女は容易く届き、その位置でホバリング噴射で待機する。

『感覚共有、目標建造物マーキングと拡大、区画ハッキングはおおかた終わり、目標建造物の連絡遮断ももうちょい』

 念話越しに黒髪の美丈夫は、仕事仲間の月詠(つくよ)が現在進行形で各区画の電子的セキュリティのハッキングと目標建築物が外部と連絡を取れないよう電脳網(マトリクス)を遮断している画面を、紅の鎧と共有している。

 黒髪の魔術師は、電子戦を仕掛けている仲間の手助けと演算リソースの提供を行いつつ、空で待機している二位一体の男女にもうすぐ仕掛け時であるのを知らせた。

『……チョイと早いが、仕掛けるか』

『なんか見えた?』

『コトがスムーズなら、速戦即決してカタした方が後々対応出来るだろ? って話だ』

『……オーケー。マイルズ君の助力もあれば多少の増援はさばけるか』

『そういうこった。月詠には今度飯奢ってやるって伝えといてくれ』

『あいあい。じゃ、いってらっしゃい』

 生態鎧を纏った荒子はスラスター全基を上方へ向ける。

 そして、自由落下に合わせて出力全開で噴射した。

 

 ***

 

『このラリク基地がマイルズ護衛の依頼(ラン)を襲撃してきた下手人共の拠点っす』

 場面は遡って、荒子達がその基地を強襲する一週間前の夜。

 荒子の自室にて彼女、照、マイルズが集まって、電脳網(マトリクス)から通信している八坂(やさか)月詠(つくよ)からの報告を聞いていた。

 荒子、マイルズが物理接続媒体のチョーカーで、照がチャネリングの要領で、仕事仲間の紫髪美少女アバターが作成した電脳網上のプライベート・エリアに招待されている。

「あのー……」

『なんすか、マイルズ?』

 現実世界と一緒の体とラフな衣服のアバター姿(接続チョーカーが本人の身体をスキャンして作成しているデフォルトアバターである)の金髪のホムンクルス少年の質問にkawaiiナイズドされたアバターが聞き返した。

「俺が同席する意味は……?」

「オメエにも今回の仕事(ビズ)を手伝ってもらえるかどうかと思ってな」

 横に逆さに浮いていたルームウェアの荒子のアバターが代わりに答えた。

「天宇戸(あまのうと)に置いていくのもナンだし、ただ連れていくのも、それはそれで危ないから、この間みたいに荒子に纏われてくれると嬉しいな、ってこと」

 そう彼女が答えた内容を補足するのは、娼館で仕事をする時と同じデザインのドレスアバター(自身が手づからデザインした)にしている照だ。

『そういう訳でマイルズにも同席してもらってるっす』

「それともアレか? あの初回以降はアタシに纏われるのは出来なくなっているとか。無理なら待機でいい」

「い、いえ、それは大丈夫だと思います。事前にまた出来るかどうかの時間は欲しいですけど」

『なら、ますます同席して欲しいっす』

 と、月詠は電子空間に表示しているスライドを切り替える。

『現在調べて分かっている情報だと、所属はOMI(オリュンポス・マルチ・インダストリー)麾下。規模は標準的な神企業(メガコーポ)の武装施設。待機戦力は常駐歩兵が数千、車両は陸と空合わせて数百。充実っぷりは流石っすね』

「上級職員さんで天宇戸(ウチ)利用してるのは片手で足りるくらいだし、どちらかというと外向けの人員みたいだから、その方面で攻めるのはないかな」

 黒髪の美丈夫は事前に高等級アクセス権限で閲覧していた娼館の顧客データベースから、所属職員の情報を添える。

「となると、一番手っ取り早いはカチコミだな」

 と、銀髪褐色肌の長身女性が物騒な提案をする。

「それって、大丈夫なんですか……? 仮にも神企業(メガコーポ)所属なんですよね?」

 金髪で小柄な少年は恐る恐る口を挟む。

 その懸念はもっともといえる。

『そこに関しては大丈夫っす。掴まされた情報なので』

「へ?」

 と、理解が出来ず間抜けた声が出るのは少年だ。

「わざと掴める情報を流してるヤツだね。流石は多神教企業。コッチ側の流儀も弁えてるか」

「ど、どういうことですか⁉︎」

 黒髪が補足した情報に余計混乱するマイルズであった。

「手打ちってコトだ。互いに最後まで報復しあって共倒れ、っていうのを避けるための儀式的な意味合いだったり、線引きってヤツだな。気が進まねえなら不参加で大丈夫だ」

 銀髪は神企業法律(コンプライアンス)が届かない社会の裏側でも、ある種独特の流儀的な秩序を説明する。

「えっーと、報復合戦を避ける為にわざわざ『こちらがやりました』って情報が流れていたってわけですか……? それって……」

「素直に生贄って言っていいぞ」

「ちょ、ちよっと……! 荒子さん……! それは……」

 少年はあっけらかんな女性に何か言いたげになるが、次の言葉を言えなかった。

「まあまあ、気が進まなかったら不参加でも大丈夫だから。その時は大母支配人(マザー)に僕から頼んで守ってもらうから、遠慮はしないでね」

 美青年からの『無理なしなくてもいい』の提案。

 美少年はそれにしばし躊躇うが、

「……俺も参加します」

 改めの表明だった。

「無理すんな、とはいったぞ?」

 褐色肌の美女はトゲのある再度の忠告をする。

「もう手を汚してるなら、最後まで責任を持つべきです」

「記憶と自意識の混合はキリがねえからやめとけ」

 再び、荒子はマイルズの明確な意識の変遷を見てきたが故の忠告をする。

『マイルズがいなくても、私らでカタがつくとは予想してるっすけど、仕事(ビズ)の遂行を保証したいフィクサーとしては参加して欲しいっす』

 紫髪の美少女アバターは、ホムンクルスの少年が参加して欲しいというのを、理由をつけて表面する。

「月詠ちゃんは相変わらず正直だねえ」

『照の兄貴と荒子の姐御がそっち回るなら、私は悪役って言われても、正直を言うっすよ。それがマイルズに示せる私なりの誠意っす』

「色々気を回してくれて、本当に助かるよ」

『そうは言うっすけど、最後はマイルズの意志っすからね。そこは尊重はするっすよ。荒子の姐御もそうっすよね?』

「まあな。でも、こういう場は必要だろ」

「……有り難う、御座います」

 彼は三者三様に気遣われつつも、最終決定を尊重する、という対応に感謝した。

 その上で、

「……今回の仕事(ビズ)、手伝わせていただきます」

「あいよ、でも、途中で具合悪くなったら言うように。それで仕事の進みが変わっから」

 と、リーダー格の女が了承する。

 

『それでなんすけど、段取りとしては私が基地全体をハックして、その隙に姐御が強襲。兄貴はリアルと電脳網(マトリクス)双方の援護をお願いしたいっす』

「いつも通りのやり方だね。僕らで撹乱して、荒子が仕留める。今日の時点から準備しとこっか」

『抜かりなく。神企業(メガコーポ)麾下施設といえど、こうやって時間と先手取れるならヌルいっすよ』

 デフォルメアバターの美少女は既にラリク基地の主要サーバーへのハッキングルートを構築済みであった。

「て、手が早い……」

「逆だ。それなりにデカいトコだから、こうやって時間をかけてバレないようやっているんだ」

「普段から貯めてるリソースも結構吐き出してるから、今回は上手く行っても赤字かなあ」

 照がプライベート・エリア上から現時点での月詠が各種工作に使った自前のサーバーが消費した電力や、新たに購入したハードやソフト類の購入金額をみて、流石は神企業(メガコーポ)系列のセキュリティだと関心していた。

「こういう時、自営業は辛えな」

 荒子はため息をついて、愚痴をこぼす。

『ま、先行投資って割り切ってやるっすよ。姐御とマイルズは当日まで、英気を養っといて欲しいっす』

「だな。んじゃ、アタシとマイルズは上っとくか。照も明日の仕事に支障きたさない程度にな」

「有り難う。ま、時間はあるし、両立は大丈夫かなあ」

「……」

「マイルズ、どうした?」

 言葉を失っている美少年アバターを褐色肌のアバターが気に留める。

「あ、いえ、皆さん、手慣れてるなあ、と思いまして……」

 少年は素直に思ったことを口に出す。

 それぞれが得意であろう役割を分担しつつも、自分が出来ないことに関しては気にかける程度で、それ以上はしない、をハッキリさせているやり取りだったからである。

「荒子さん達って、チームとしては長いんですか?」

「まあな」

 お互いが自身がこなすべき領分を遂行している信頼から、過度な心配が出てこないのがその証拠だ。

「アタシと照は戦争中からだし、月詠も戦後すぐ知り合ってからだしで、コイツらとの鉄火場の付き合いは長いな」

「土壇場で荒子が体張って、物理ハッキングとかもあったねえ」

『いやー……、あの時は相手さんがスタンドアロンに徹してて八方塞がりだと思ったら、姐御がカチコミしてサーバーに直接接続して、経路を開いてくれたので、本当に頭が上がらなかったっす』

 ルーム上でハッキング経路の構築をしている支援組は、まじまじと過去を振り返っていた。

「いつの話だってっの。そりゃ、あの仕事(ビズ)には苦労したが」

「荒子さん的にはいい思い出ではないんですか?」

 金髪のアバターは興味深げに聞く。

「良い悪いってか、大口依頼だったから、ヒヤヒヤしたって話だ。なにせしくったらトンデモない違約金で首くくるかもしれなかった仕事(ビズ)だからな」

 今となっちゃ、思い出でも、あん時は必死だったわ、と銀髪。

「荒子なら首吊った程度じゃ死なないでしょ」

「例え話だ、例え話。照や月詠も危なかったんだから、肝が冷えたっつうの」

『そう言いながらケツを最後まで持って、機転効かせて依頼(ラン)を成功までさせたのは流石姐御っすよ』

「おだてても、ナンも出ねえぞ?」

「感謝してるんだよ。かくいう僕もあの時は正直ヒヤヒヤはしてたけど」

「皆さんが口を揃えて、そんなにいう仕事(ビズ)ってなんですか……?」

 三人が思い返している当時の苦労が、計り知れないマイルズであった。

「じゃあ、改めて上ったら寝物語に聞かせてやるよ。んじゃ、二人には任せた」

「はあい。色んなこと聞かせてあげてね」

『笑えない失敗とかには、あんまり触れないで欲しいっす……!』

「気をつけとく。じゃ、マイルズ、部屋に行くぞ」

「はい、楽しみですっ!」

 と、銀髪と金髪はルームから退出するのであった。

 

 ***

 

 時は戻り、マイルズを纏った荒子の急降下飛び蹴りが入った後。

 ほぼ直上からの一撃でOMI(オリンポス・マルチ・インダストリー)麾下所有のラリク基地施設は浮き足だっていた。

『状況確認! 損害は⁉︎』

 休憩時間中で基地外縁にいた隊長役職の男が移動しつつ、脳殻から手近なサーバーにアクセスして、被害状況を確認しようとする。

 襲撃されたであろう司令部方面からは、断続的に銃声が響き渡っていた。

『基地……、司令部からの……、連絡……、取れません!』

 応答した職員から、回線状況が悪いことの証左である途切れ途切れの通信が返ってくる。

『他区画から応援は呼べるか⁉︎』

『それが……、攻撃……、で……、ませ……』

「クソっ!」

 通信が完全に途切れたことに悪態をつきながら、腰に提げている自動式拳銃を抜き、安全装置を外し、銃身を引いて薬室内に弾を送る。

 加えて、身体強化祈祷が励起していることを確認。

 最寄りの武器を保管している施設へ駆けた。

「ここもかっ!」

 自身の権限で建物に入ろうとしても、『権限が付与されていません』と脳殻に映される文字で、基地全体が電子攻撃をされているのを悟る。

「ちっ!」

 すぐさま、男は脳殻と基地との接続を切った。

 神企業(メガコーポ)麾下の施設に大規模なハッキングを仕掛けて、掌握するようなハッカーとなれば、その実力は神域級である。

 既に主要サーバー群の掌握が果たされており、個々人へのハッキングも不可能ではないだろうなれば、周りとの電子接続が出来ずとも、スタンドアロンにしてローカルでの連絡や接触をした方が安全だと判断したのだ。

「そこのお前! 役職と所属は言えるか⁉︎」

 男は同じ目的でこの施設に駆け寄ろうとしている隊員の若者に声をかける。

「はいっ! 自分はっ……!」

 言い切る前に隊長役職の男が彼の頭を撃ち抜き、近付き、更に頭に一発、両手脚に二発ずつ、合計十発を撃ち込んだ。

「チィッ……!」

 若者は所属確認を言い切る前に、目(・)を(・)男(・)か(・)ら(・)逸(・)ら(・)さ(・)ず(・)、腰の拳銃に手を掛け安全装置を外そうとしていた。

「末端までのハッキングが早過ぎる……!」

 脳殻が入っている頭部だけでなく、手脚も撃ち抜いて無力化したのは、流されたウィルスプログラムで勝手に動き出すだろうからだ。

 彼は苦い顔をして、弾数が減った拳銃のマガジンリリースボタンを押し、胸のソロの弾倉帯からマガジンを抜き出して、リリース口に挿し、再装填。

 そうして、こういった大規模ハッキング時のマニュアルを思い出す。

「司令部との連絡が取れず、末端までハッキングが広がっている場合は、ポイントKに集結し、態勢を立て直す……」

 実質的な敗走戦を想定している内容に、彼は歯がゆい思いをするが、自分一人がこの規模の戦況を覆せるとも思えず、施設を後にしようとした。

 そうして、武器保管施設から離れると、空から一条の光が落ちてきたのを見たのだった。

 

 ***

 

『もう増援かっ⁉︎』

 ラリク基地中枢区画で暴れていた荒子は、突然空から急降下してきた白と六枚羽の人型を槍の柄で受け止めた。

 衝撃波が音を何枚も超える速度で白い円で走り、周囲の建造物を吹き飛ばした後、数瞬遅れて爆音が響く。

 柄とブレードの接点周辺が熱で赤化し、火花を散らした。

『違う……! 別口だ!』

 基地から十数キロ離れた地点で武装装甲車内部からモニターしている照から念話で、その白い人型が、第三勢力であるのを告げる。

『放射波形、第一階……! 熾天使(セラフィム)級! 四文字化成だよ!』

 念話から魔術師が闖入者の所属を、その鋭敏な術的感知機能から特定する。

『神企業(メガコーポ)かっ!』

 紅の生態鎧を纏っている女は、両脚を地につけたままの震脚を利用した寸勁(すんけい)を放ち、鍔迫り合いの柄から、白い刃を弾いた。

「……」

 吹き飛ばされた熾天使(セラフィム)級と呼称されている白の人型は、腕から生えているブレードにヒビが入っているのを一瞥すれば、その部分を切り離し、同じサイズのモノを再形成する。

『アタシが目的か?』

 鋭角的なシルエットの鎧を纏う女は、その天使に返事を期待していない目的を問う。

「……!」

 白はその通りに答えず、六枚の翼を広げ、ブレードを構えて吶喊してきた。

 刺突である。

『それともマイルズ(コイツ)かっ⁉︎』

 荒子は続けて回答がないであろう質問をしつつ、飛んでくる刃先を穂先とかち合わせて、軌道を直下の地面へと変えた。

 横移動から、強引な縦への変化を最上級天使は逆らわず対応。

 腕から生えているブレードは、地面にめり込むが、吶喊の慣性のまま荒子にタックルを仕掛ける。

『甘ぇよ』

 対応が入れ替わった側は、槍の柄にかけている片方の手を外し、軸足を中心に、右側のスラスターを噴かしつつ半回転。

 スラスターの噴炎で迫る天使を牽制して、回った背中を押し出す靠(こう)(背中からぶつかる体当たり)をブチかます。

 荒子の対応が熾天使に直撃する。

 たまらず、地面に突き刺さったブレードが歪に曲がりながら引っこ抜け、音を越えて吹き飛ぶ天使であったが、宙空で羽が空気を取り込み圧縮し、任意の方向へ圧搾したそれを噴射して、体勢を立て直し着地する。

『その芸当は四文字化成の天使ならではだな』

 紅の鎧の中身は、相手の挙動を見知っているが故に、追撃を叩き込む。

 体勢を立て直した側は、生成しなおしたブレードの防御こそ間に合ったが、紅の槍の薙ぎ払いが直撃した。

 直撃部分が砕ける鈍い音が遅れて発生。

 天使の右腕が破裂したかのように砕かれた。

『出力は悪かねえが、不意打ちのつもりで、真っ正面から来たのが間違いだったな』

 荒子は防御で振りかざされた熾天使(セラフィム)の左腕を槍で串刺し、強引にそのガードをこじ開ける。

『天使(コイツ)通して見てんのは分かってんだ。出直してきな』

 紅の生態鎧を纏っている彼女は、槍から片手を離せば、相手の顔に当たる部位をわし掴む。

『焼けろ』

 轟ッ! とその掴んだ手から光が放たれたと思えば、掴まれた相手の体全体が炎に包まれた。

 荒子の手から、もっと言えば魂から高出力の万物に通用するエネルギーを放ち、掴んだ対象の魂を『灼(や)く』。

 それを彼女と見知った仲間達は『灼尽掌(しゃくじんしょう)』と呼んだ。

 

 ***

 

『ったく……。マイルズ! 今ので何か思い出したか⁉︎』

 荒子は普段よりはるかに出力が出た『灼尽掌(しゃくじんしょう)』に驚きつつも、纏っている生態鎧の制御系を担っている少年に質問する。

『い、いえ! そ、それより荒子さん、四文字化成って本当ですか⁉︎ 神企業(メガコーポ)ですよね⁉︎』

『喧嘩ふっかけて来たんだから、ブン殴り返しただけだ! どうせ後でなんか声明が四文字から出るだろ! 照、そっちは何(なん)か流れてるか⁉︎』

 紅の鎧を纏っている彼女は、念話で離れた地点にいる男に、電脳網(マトリクス)内に流れているであろうニューストピックを聞き出す。

『OMI(オリンポス・マルチ・インダストリー)がそっちの『武装勢力が暴れてる』っていう速報以外特になし! 四文字化成も今のところはダンマリ。株価もOMI周りが上下してるくらい!』

 魔術師の男は装甲車内で電脳網(マトリクス)接続し、月詠(つくよ)と協働して各社の動向をリアルタイムで追うが、現在標的にしている神企業(メガコーポ)のみが襲撃ニュースを報せているだけだ。

『オーライ、コッチもあと二、三発デカいのかましたら、ズラかる! マイルズ、リソース残量はどうだ⁉︎』

『まだまだいけます!』

 聞いた女は纏っている生態鎧のスラスター全基を下方に噴かし、上空数百メートル地点に到達し、滞空する。

『あ・ば・よっ!』

 そうして、外殻と同じカラーの紅の槍を生成すると、掛け声と共に三連続で音を数十枚超える投擲を襲撃地の目についた主要施設に放ち、高空へと飛び去っていった。

 

 ***

 

「状況はどうだ?」

 ラリク基地襲撃から数時間後。

 荒子とマイルズは人目のつかない大都市ヨコハマ外縁区画で、照が乗ってる(もっといえば操縦しているのは更に遠くにいる月詠である)改造装甲車と落ち合った。

 荒子の乗車第一声は、第三勢力が割り込んできた基地襲撃の結果、どのような情報が入ってきたか、だ。

「月詠ちゃんと一緒に精査かけてる。分かってる範囲だと、今回の襲撃自体は広くに流されてたから、OMI(オリンポス・マルチ・インダストリー)本社株価の変動はそこまで。系列企業も言うほど」

「トカゲの尻尾切りには成功してるか。けど、解せねえのは四文字化成の方だな。まだ声明とかねえのか?」

 銀髪は装甲車内に備え付けてある彼女専用の電脳網(マトリクス)接続閲覧物理媒体チョーカーを首に巻いて、端子を伸ばし、車内から接続口に繋げる。

 ついでにマイルズにも同型のチョーカーを投げる。

『荒子の姐御、お疲れ様っす。こっちは予想通りにコトが進み過ぎて逆に怪しくなってるっす』

 銀髪褐色肌の女の網膜に、紫髪のデフォルメアバターが次々と変動する株価の表達と各神企業(メガコーポ)がスポンサードしているメディアニュースを流してくる。

「上がり下がりは想定の範囲内、か。まあ、主要生産工場が襲われたとかじゃねえから、この変わり幅には納得なんだが、四文字化成の方が不気味だな」

「そうだね。前期の決算が悪かったとはあったけど、わざわざOMI(オリンポス・マルチ・インダストリー)麾下基地を襲撃する理由はないはずだから、多分僕達が狙いだろう」

 マイルズ君が関わっているのは大きいと思う、と照は付け加える。

「お、俺ですか……⁉︎」

 ようやく端子を繋いだ件の彼は自分が渦中であることに緊張を抑えきれなかった。

「『天使は男と女の両方を備える』っていうのは、メジャーな逸話だぜ」

 荒子は久方ぶりに『神話存在の魂を灼(や)いた』感覚を振り返りながら、今回のキーマンに発展しそうになっている、マイルズに天使の特性を説明する。

「臭えところが二つ出て来やがったな。最初にマイルズ襲撃してきたヘルマプロディトス抱えているOMI(オリンポス・マルチ・インダストリー)と天使産んでる四文字化成。OMIが四文字に抗議声明出してないとすると……」

 銀髪が次の言葉を紡ごうとした途端、

『姐御! 四文字化成系列メディアから緊急声明っす!』

 待ってましたと言わんばかりのタイミングで、懸念していた企業の発表があった。

「要約は⁉︎」

『『我が社の新製品ホムンクルス、マイルズを不法に取得した天宇戸(あまのうと)へ、製品の引き渡しを要求する』って言ってるっす!』

「名指しときたか!」

「強めの言葉に本人画像も使ってるねえ。流石は全知全能神、人の認知をボカす程度の認識阻害は貫通してくるか」

「し、新製品って俺のことですか⁉︎」

 瞬く間に電脳網(マトリクス)内で『四文字化成』と『天宇戸』、『四文字化成 新製品』やらのニューストピックがあふれかえる。

 その中には天宇戸への攻撃的なメッセージも多数あったり、神企業(メガコーポ)である四文字化成の新製品ホムンクルスという話題性のみに着目して、根も葉もない憶測のみでどんなモノであるのかが噛み合わない、議論というにはあまりにも醜悪な放言が飛び交うなどしていた。

 いわゆる『炎上』というに相応しい無統制の言葉の奔流である。

「月詠、ニュースの拡散元はどういうグループだ?」

『四文字系列の企業アカウントが主で、次に多いのはOMI子飼いのインフルエンサーっすね』

「ちょ、ちょっと待って下さい! 俺が四文字化生の商品で、この騒ぎを拡散してるのがOMIって、どういうことですか⁉︎」

 金髪のホムンクルス少年は、網膜上に流れる、世話になっている施設が名指しで過激に批判されているのやら、いきなり出自が明かされたと思われることやらに追いつけなかった。

「あー、無理なら無理に情報追わなくていい。強え言葉眺めってとシンドいからな」

「でも、だからって……!」

「義憤は良いけど、勝手に吠えてる獣をどうこうしようとすると疲れるから、切っとくよ」

「わっ……!」

 マイルズは照の権限で電脳網(マトリクス)への接続を断たれてしまう。

「照さんまで……!」

「頭冷やしとけって話だ。オメエがキレて暴言吐くのは結構だが、それに付け込まれてヒートアップすんのは不毛だから距離置いとけってヤツ」

「だからって、除け者みたいに扱われるのは心外です! 俺だって当事者なのに……!」

「焦る気持ちだけ受け取っとく。けど、今のコレは頭数のある神企業(メガコーポ)ならではの戦法だ。手のないアタシらは情報の精査に徹してた方が利口なんでな。そら、月詠(つくよ)、車出してくれ」

「わっ、わぁ……! どこ行くんですか⁉︎」

 怒りが先行していたマイルズは急発進した改造装甲車両内で、掴まっておらず、その勢いでこけそうになる。

「よっ、と」

 それを強靭な体幹を持つ荒子が支えると、彼は居心地が悪くなってしまうのだった。

 

 ***

 

「セーフハウス、ですか……」

「おう、天宇戸(あまのうと)には迷惑かけらねえし、備蓄はあるしだから、しばらくは転々とするぞ」

 ラリク基地襲撃当日の夕方、荒子達は大都市ヨコハマの中心に用意してあるセーフハウスの一つに身を寄せていた。

「照さんは?」

「別室で大母支配人(マザー)にコトの説明中。それと、天宇戸からアタシら名義でオメエを確保したって声明を流してもらうつもりだ」

「それって……!」

「迷惑とは思っちゃいねえよ。シフトに穴開けるのもコッチの仕事(ビズ)やってりゃ、こういう時用の対応があるしな」

 荒子はリビング相当の部屋で使わなかった間、何か変化はないかのチェックや窓のサッシ、各種空調、配線の動作を調べている。

「昼間はすみません……」

「気にすんな。オメエが熱くなったのも仕方ねえよ」

「……俺ってなんでしょう?」

 居間のソファに腰掛けているマイルズは、手を組んでそれを見つめていた。

「アタシらの小間使い」

「す、荒子さん……!」

 ホムンクルス少年は片手間に答えられてしまったのに、少々の苛立ちを覚えてしまって、

「……」

 次に出そうと思った反論の言葉が出なかった。

「仲間、って言わなかったのはオメエがそう思ってないだろうからだな」

 銀髪長身の女はキッチンも併設されている区画の、引き戸を開いて中の調味料が揃っているかを確認する。

「お気遣い……、有り難う……、御座います……」

「やめろ、んな大層なモンじゃねえ。マイルズがいつも人に気ぃ遣ってるから、こっちも気ぃ遣ってやってるだけだっつうの」

「そんなに露骨でしたか……?」

「処世術の範囲だろ? そうやって周りに溶け込もうとするのも、やり方だと思うぞ」

 銀髪はチョーカーから端子を伸ばして、部屋の周辺のセキュリティチェックを行う。

 網膜上に各種カメラや、セーフハウス内に敷設している設備の情報が閾値内であるのを確認した。

「ガキに気遣われてキレるほど人間小さくねぇから、安心しとけ」

「は、はい……」

 しばし、両者の間に沈黙が流れる。

 女は引き続き各種設備の動作確認をして、少年は手持ち無沙汰にソファに座っていた。

「うしっ」

 銀髪の確認完了の掛け声に、金髪はビクッと驚いて体を揺らしてしまう。

「だから、キレねえって言ってんだろ」

「す、すみません……」

 気まずそうな少年は組んだ両手を見つめてしまう。

 はぁ……、と女は吐息を漏らした。

 それにマイルズは余計居心地の悪さを勝手に感じてしまう。

 すると、

「す、荒子さん……⁉︎」

 金髪の少年は銀髪の女に抱き締められていた。

「大丈夫だ。心配すんな。オメエの日常は戻る」

「に、日常って……! 俺はホムンクルスで……!」

「じゃあ、アタシらと生活してて、ホムンクルスとして不満だったか?」

「そ、その聞き方は卑怯ですよ……!」

 少年はいつぞやの、その質問を肯定してしまったら、逆説的に不満の答えになってしまう詭弁を弄されてしまい、その根本を指摘する。

「小間使い、とはいったがな、そういうオメエと生活したり、寝たりしてアタシは楽しかったぞ」

 気にしない荒子はマイルズを抱き締めながら、耳元で短くはあるが、生活を・褥事を共にしてきたことの感想を呟く。

「不安そうだから聞いてやるが、オメエは今の生活を手放したいか?」

「……嫌です」

「何が嫌なんだ?」

 大人は子供が言葉を口にするのを促す。

「荒子さん達と離れるのは嫌なんです……」

「アタシと寝ないと死ぬからか?」

「ち、違います……。荒子さんと照さんと生活出来て楽しかったから……。あと、荒子さんと寝れるのが幸せ、なんだと思います……」

 銀髪の女性は抱き締めている手で、金髪の少年の背中をポンポンと優しく叩く。

「アタシもオメエといれるのは悪くないと思ってる。しっかり気遣い出来るし、細かいことも気にかけてる。その上、ベッドじゃ可愛く鳴くから抱き甲斐があって楽しいぜ」

「ちょ、ちょっと、荒子さん……!」

「アタシとしちゃあ、セックスだって真面目な話だ。ちゃんとソイツの反応を確認して、どこがいいのか、どこが感じなかったか、どこをどうして欲しいのかのコミュニケーションだからな」

 荒子は抱き締めている腕を回して、マイルズの頭を撫でる。

「……俺はそれが出来てますか?」

「まだまだ、だとは思ってるよ。けど、これから出来ていけばいい。その為に日常を取り返そうぜ」

 不安がる小柄な少年に、長身の女性は一緒に歩もうと提案する。

「……怖くはないんですか? 相手は神企業(メガコーポ)なんですよ?」

「確かに面倒な相手だが、やりようがないワケじゃねえ。今は逃げに回っちゃいるが、目星はいくつかつけてるぜ」

「そ、それって……!」

 マイルズは事態が差し迫っているであろうことを、口に出そうとする。

 しかし、それを荒子の口で塞がれた。

「……ぷはっ、言っても仕方ねえよ。それに今日は色々あったしな。休むことも大事だぞ?」

「あ、あんなことがあったら、休むに休めませんよ……」

 そうか? と、褐色肌の女は抱き締める両腕を外すと、

「う、うわっ……!」

 彼女は上着を脱いでブラジャーをあらわにした。

「今日はサービスしてやる。ここのホックを外してみろ」

 女は少年の両手を持って、自身が身に付けているブラジャーの大玉乳谷間を作っている部分に誘導する。

「こ、こうですか……?」

「ああ、留め具の合わせを上下させて……、ふぅ……、うん……、そうだ、外れた……」

「わ、わぁ……!」

 銀髪の大きな乳房を支えて留める役割を持つ衣服が外れて、その肉弾果実がまろび出る。

 金髪はまだまだ見慣れないといった風に、目線をしどろもどろにさせていた。

「アタシの乳のサイズは覚えてるか?」

「えっと……、トップバストがひゃ、百十で、アンダーバストがな、七五のKカップで……、って何で言わせるんですかっ……⁉︎」

「言葉にした方がこれから揉む乳房のサイズを実感出来るだろう?」

「も、揉むって、そんな……!」

「サービスだって言ったろ。ほら、こうして手で……」

 余裕たっぷりな女性は、ドギマギする少年の両手を持って、自身の豊満なバストにそれらを導く。

「遠慮するなよ? オメエのパイズリ童貞を奪ったKカップ爆乳だ。この二つがお前のチンポをズッたんだ」

「……」

 ゴクリ、と女にも聞こえる少年が生唾を飲み込む音。

 緊張と興奮で口内で大量に発生した唾液を飲み込んだことのを、皮切りに彼の両手が覚悟を決めたのか、ぎこちなく動いていく。

「今はマイルズの好きなように揉め。アタシを感じさせるとか、イカすとか考えなくていい。甘えに来い」

 少なからず想っている相手が体を許してくれている、という状況にホムンクルスは興奮から息が荒くなっていく。

「どうだ? アタシの乳は善いか?」

「すっごく……、柔らかいのに、指が沈もうとすると、跳ね返るハリがあって……!」

「どんどん言葉にしろ。自分が何をしているかを口にして、手で感じる興奮を作っていけ……!」

 少年の両手は両の乳房に対応するよう、下乳から支えるよう揉んでいる。

 肉弾果実の重量を一番感じられるその揉み方は、ずっしりとした質感が伝わり、揉むという主導権を握っていながら、逆に手の平の触感をそのきめ細やかな柔肌で犯されているようだった。

「……遠慮はしなくていいって言ったのに、オメエの揉み方は優しいな」

「えっ……、と……、凄い……、善くて……、なんだか、夢みたいで……!」

 マイルズは途切れ途切れに荒い吐息の合間に、初めて乳房を手にしている感想を述べた。

「下乳だけじゃなくて、乳首、触っていいぞ……!」

 はぁっ……、と荒子から甘い吐息が漏れたのは、少年が言われるがままに手を乳房先端に持って行ったからだ。

「ふっ……! はっ……! いいぞ……! 手の平でなぞるでもいい……! 指先で摘んで……! はぁっ……!」

 女の言葉通りに少年はツンッと充血した肉芽を指先で挟む。

 フニフニと弾力の反発に乗って、銀髪の女の口から蕩けた吐息が押し出された。

「え、演技ですよね……?」

「いや……、はっぁ……! 乳首は開発されてるから、ふっん……! 弱いん、だぁあ……!」

 充血した一対の肉華は、その温かさを目を大きく見開いた金髪の手から伝えている。

「ふっ……! 吸って、いいぞ……!」

 行為の許可がまた一段階降りる。

 幼い男は震える片手を外せば、ピンっと勃起した乳頭に口を近づける。

「い、いきます……!」

「ひゅぅ……! ああ……! 好きなように、はひゅ……! 転がせ……!」

 いつも遠慮がちな少年が心置きなく肉果実を味覚で感じられるよう押し付けるように身を乗り出す女。

「あぁあ……! マイルズ、善いぞ……! はあん……! ひゅぅぅ……! はっつ……!」

「ん……♡ れらっ……♡ あむ……♡」

 見た目はとっくに乳離れしたであろうに、無我夢中に褐色肌の肉弾果実にむしゃぶりつく白い肌の少年の姿は腹を空かせて母乳を貪る赤子のソレであった。

「悪いな……! はあぁん……! 母乳は、出せてやれねえ……! ひゅむっ……! が、汗の味と匂いは……! はひゅぅ……! 感じてもらおう……!」

 女は興奮の発汗して、脇や体表から汗腺を通じて生理現象の水分を流す。

 少年は目で大きさに圧倒され、手をその質感に犯され、耳は漏れ聞こえる甘ったるい声が入られ、舌は塩気に痺れ、鼻はフェロモンが混ざった汗の匂いに支配されていた。

「んんんん……♡ んっんんん……♡ んあっあぁ……♡」

 マイルズは五感全てに『群雲荒子』を流し込まれて、その大きさに体全体を何度も震わせてしまった。

「なんだ、乳房吸って射精(で)ちまったのか?」

 銀髪の女は肌を重ね合わせている金髪の少年の股間から、精液特有の青い臭いを嗅ぎ取り、彼がノーハンド射精に至ったことを悟る。

「す……♡ すみません……♡ 頭……♡ クラクラして……♡ おちんちん……♡ 気付いたら、あむっ♡」

「れむ……! 気にすんな。気持ち良くて射精(だ)したんなら、それで善いじゃねえか……! あちゅむ……!」

 蕩けた目付きの少年が達したことを報告する口を、上半身裸の褐色肌の女性は舌を入れつつ抱き締めて頭を撫でる。

「イッ……♡」

 ビクビクと体を震わせるマイルズは、その首から上の接触で再び気をやってしまう。

「あ♡ 有り難う……♡ 御座い♡ ます……♡」

 彼は射精の脱力感で荒子にもたれかかる。

「よしよし。少ししたら風呂場いくぞ」

「はいぃぃ……♡」

 

 ところ変わって、セーフハウス内の寝室。

「ま、また出すところを見られました……」

 バスローブを着て寝室内のクイーンサイズベッドで横になってるマイルズは、荒子に風呂場で精液でガビガビになった股間を洗われたついでに、腸内洗浄と肛門マッサージまでされてしまったのだ。

「アタシだって胸揉まれてチンポイライラしてたんだから、中出しされるのも予見出来たことだろ?」

 その準備もな! と、銀髪金眼の女はバスローブを脱いで高潤ローションボトルを片手に持って全裸になる。

「うぅ……、荒子さん、イジワルですぅ……」

 金髪碧眼の少年も口では文句を言うが、渋々とバスローブを脱ぐ。

「そういえば照さんは?」

「照なら」

『僕なら、荒子がリビングで脱いだあたりから察知して、別室で待機してるよ。最後まで楽しんでいってね!』

 と、念話で裸の二人の脳内に美丈夫の声が響いて、一方的に切られた。

「……だと」

「何からナニまでお世話になりっぱなしです……」

 少年は恥ずかしさやら、申し訳なさやらで顔を両手で覆ってしまう。

「おらっ、考え込んで萎びてないでケツ向けろ」

 金眼の女は、既に臨戦態勢に入っている逸物を勃起力だけで上下させ、自身の腹にペチペチと当てては待ちきれない、という主張をする。

「あ、その前に……」

 碧眼の少年はベッドに上がった男性器が付いている女性の前で膝立ちになると、

「フェラチオ……、します……!」

 ゴクリと、今日何度目かになる生唾を大きく飲み込む音が響く。

「おお、積極的だな。いけるか? 無理なら無理でいいんだぞ?」

「俺だけ善い思いをするのも座りが悪いので」

「そういう『されたから、したから』を基準にしてするのはシンドくねえか?」

「す、荒子さんの言葉を借りれば、さ、『サービス』、です……!」

 顔を真っ赤にして見上げている少年を見て女は、はぁ、とため息をついた。

「仕方ねえな。でも、無理してえづいたらそこまでだ」

「が、頑張らせて頂きます……!」

 

「まずは温かい吐息を当てろ……」

「はぁ……」

 荒子が普段照にしているファラチオの手順をマイルズに教え込む。

 心臓の鼓動に合わせて脈打つ肉棒に、生温かい吐息が当たり、その度に小刻みに上下する。

「亀頭、竿、玉袋の順でまぶすみたいに湿り気のあるヤツをかけていくんだ」

「はぁ……♡ ふぅっ♡ ふひゅ……♡」

 少年は教えられた通りに肉槍と根本の袋に向かって、息継ぎを挟みつつ、口の中で溜めた水っぽい吐息をかけていく。

「チンポは敏感だからな。こういう優しい刺激でも、素直に反応するんだ」

「ふぁい……♡」

 金髪の少年はシャワーで流しても、なお臭い立つフェロモン混じりの精臭に頭を半分クラクラさせながら、前戯をこなしていく。

「次は鈴口にキスだ。まだ舐めるなよ。唇だけ当てるだけだ」

「んちゅ……♡ あちゅ……♡」

 長身女の指示通りに小柄な少年はそり立つ肉竿の先端に口付けをした。

「そうだ。そうしたら……」

 一回だけでなく、角度や当てる長さを鈴口とのキスの度に変える。

 指示をされたら、間隔を短くしたり、長くしたら唇を左右に動かして与える刺激に変化をつけていった。

 そうして、

「舌を出して舐めるんだ……。先端や舌の腹のザラザラした部分を当てていけ……」

 勃起を維持している両性具有の女は、普段の復習も兼ねて、肉棒にどんな舌使いをすれば、扇情的になるのかを、いたいけな幼さの残る少年に教え込んでいく。

「こう……♡ られぇ……♡ れすかぁ……♡」

「ああ、善い子だ。上手いぞ……! 今度は亀頭を浅い位置でくわえるんだ……!」

「はも……♡」

 と、マイルズが荒子から生えている男根の先端を口に含めば、鈴口から排出されるカウパー腺液の味と臭いが中でいっぱいになる。

「〜〜〜〜ん♡」

 若く鋭敏な味覚と嗅覚は、沸き立つほどに、頭の中の大部分にそれらの味と臭いを伝達する。

「大丈夫か? 無理は禁物だぞ。ここで辞めたっていい」

 少年は口に亀頭を含んだまま、頭を横に軽く振って否定の意を示した。

「なら、次は唇で固定して、舌で亀頭全体を舐め回すんだ。歯で亀を噛まないよう気をつけろ」

 ぴちゃ……♡ ぷちゃ……♡ と鈴口の縦に沿ったり、裏筋周りに舌を這わせたりで、ぎこちないながらも、舌を動かしていく。

「そうだ、その調子だ……。ワンステップ上にいくか。歯を当てるだけは出来るか?」

「こう……♡ でふか……♡」

 上顎前歯を亀頭の表面に当てて、それ以上肉に沈み込まないよう当てた。

「上手いぞ。そうしたら、ゆっくりそのまま当てて口を引けるか?」

「ん……♡」

 荒子に言われた通りに、マイルズは亀頭に当てた歯を慎重に引いていく。

「ん、おお……! 上出来だ……! そうしたら、舌全部でチンポ全体や玉袋を舐め回すんだ……!」

「ぷはぁ……♡ れらぁ……♡ れおぉ……♡ ちゅるる……♡」

 すっかり精臭に当てられて蕩けた少年は女のカリ首を舌で越えれば、血管の浮き出ている中腹を舌の腹でなぞったり、根本に這わせて頭髪と同じ銀色の陰毛密林を掻き分け、一対の玉袋をシワを伸ばすように舐めていく。

 途中、口周りに抜けた陰毛が付くが、それすら構わず長くて太い剛直全体を舌に乗せた唾液でコーティングしていった。

「はあ……! 上手いじゃないか……! だったら、玉袋を口に含んで転がしてみろ」

「ふぁい……♡」

 金髪の少年は銀色の密林奥の玉袋を口に収めれば、根本を唇をすぼめて固定し、舌の上で睾丸二つを小玉菓子を口内で転がすよう舌を運動させる。

「ふっ……! はぁは……!」

(感じてくれてる……♡ 荒子さんが俺のフェラで……♡ 感じてる……♡)

 マイルズは荒子の口から漏れる快感であろう甘い吐息が連続する度に達成感と口腔内を突き抜ける精臭で一種のトランス状態まで思考が落ちる。

 それでも睾丸二つから口を離しても、亀頭に歯を当てた時の応用で、くわえられる限界まで口に含んで、竿の中腹から上下の歯で挟んで(決して噛むまで力を入れない)、口をすぼめて歯でなぞるようにゆっくり引き抜く。

「うぉぉ……!」

 流石の荒子も緩急の付いたフェラチオに、予想がの雄叫びを静かに漏らした。

「はぁ……♡ はぁ……♡ はぁぁぁぁんぁ……♡」

 彼は一度に吸い込みすぎて、カリ首を抜けて口を離せば息継ぎをする。

 その上がった息にも混ざるのは、上気して色香が隠せてない吐息だった。

「はぁ……、マイルズ、尻向けろ」

「ふぁい……♡」

 据わった目付きの両性具有の女は、口周りに銀色の陰毛を付けた少年に最高潮を叩き込みたくて仕方ない風に命令する。

「縦割れケツマンコ♡ 準備出来てます♡」

 彼はうつ伏せになりながら、腰を上げて尻の境を両手で開いて、今すぐその腹に当たるほどそり返っている逸物を撃ち込んで欲しい、と暗に示す。

「ああ……!」

 血走った眼の女は、自身の肉体の一番特異的な部分に高潤の界面活性剤を満遍なくまぶせば、そのヒクヒクと開閉している肛華に鈴口を当てがった。

「ひゅん♡ ひゎああああ♡」

 一撃。

 最奥まで容易く届く長さと太さの剛直を腰の突き出しで、一気に押し込む。

「ひゃああああ♡」

 その一回の動作で、前立腺、直腸、S字結腸を一度に耕すことにより、少年を絶頂(メスイキ)させる。

「悪いな……! あんまりにもフェラが善くて、手加減が難しい……!」

 バチュン、バチュン、と恥骨と恥骨のぶつかる鈍い打撃音が段々と早いペースで縮まっていく。

「ひゅうぅ♡ ああああ♡ ひゃああんぅ♡」

 少年は肛門から最奥までの一回のストロークの度に絶頂する。

 勃起した小さなペニスからは腺液か精液か分からない体液が押し出されるよう飛び散り、快感が体全体を駆け巡る。

「ふっ……! はぁ……! はぁぁぁぁ……!」

 抽送している側も珍しく余裕なく腰を振り、股間に集まる快感を乗りこなそうとしていた。

 一度最奥に届けば、そこを擦るように腰振りに円の動きを加えたり、密着させたまま押し込むような動きで、相手の官能を掘り出す。

「ふああああ♡ ひゃだぁぁぁぁ♡」

 金髪の少年は高まった官能で舌が回らず、下腹部から迸る快感の電気信号が脳髄を焼き尽くそうとしていた。

 股間の可愛らしいペニスは精液を吐き出しきって、潮を吹くフェーズへと移り、止まらない快感をより一層へと押し上げる。

「はっ……! はっは……! そろそろ……! 射精(だ)すぞ……!」

「ふぁいいいい♡ きてええええ♡」

 片方の限界はとっくに過ぎており、もう片方は真剣な顔で限界を超えようとする。

 ストロークの間隔が短くなるにつれて、少年が撒き散らす潮の量も増えていた。

「射精(だ)すぞ……!」

「ふああああっ♡」

 尿道の伸縮で溜まりに溜まった女からの精液は、一番大きな波である大量射精を越えれば、最後の一滴まで少年の肛華に植え付けようとしつこいくらい蠕動する。

 そうして、官能の波が一旦収まれば、

「ああ……! 善かったぞ……! フェラチオも初めてにしては上出来だ」

 荒子は押し倒れるように、マイルズに覆い被さる。

「ふぁ♡ ふぁい♡」

 金髪碧眼の少年は、快感に脳を焼かれたかのような呂律の回らなさで返事をする。

 散々焦らされて、悦楽を欲していたのはなにもされる側だった女だけではなかった。

 少年もまた、乳揉みや口技、トドメの肛門交合で絶頂を撃ち込まれて、天にも昇る心地であった。

「あー……、マイルズ、惚(ほう)けてるところ悪いんだが……」

「ふぇ……?」

 荒子がナニやらバツが悪そうに腰を動かしている。

「悪い、まだヤりたりねえ……!」

「ひゅわ……? っ、はああああんっ♡」

 生来性欲絶倫な黄金肉体(フタナリ)の女の疲れ知らずな魔羅は少年の尻にソレが突き刺さったまま、次の快楽を求め大きくなっていた。

「アタシも満足するよう頑張るからな……!」

「ひゃいああああ♡」

 こうして性豪の女の夜は更けていくのであった。

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