「おらっ! ヤロウ共、メシ出来たぞ! 起きろ!」
一行がセーフハウスを転々とするのをしばらくして。
荒子は朝昼晩の調理を担当していた。
「ふぁ……、おはようー」
「お、おはよう御座います……」
寝室から出てくるのは、上はTシャツにOバックパンツの照と、慌てて着て崩れたパジャマのマイルズだった。
「荒子さん、早起きですよね……、はぁ……」
昨夜も絶頂で気絶しても、性行為に付き合わされていた少年は浅い眠りでよく回らない頭と、それに反して体のダルさは一切なく、むしろ調子がいいというチグハグさに戸惑いつつ、席につく。
「右脳と左脳を交互に寝かせて、最高強度戦闘連続三ヶ月とかやれる破茶滅茶っぷりだからねえ」
同じく夜更かししても肌艶の良い美丈夫は、卓上のカプセル式ソイカフ(大豆抽出コーヒー)メーカーにカプセルをセットしてそれを自分のカップに注いでいる。
「つーワケだ。オメエら二人気絶するまで抱いても、翌朝元気にメシ作れんだワ」
一番早くに起きていた褐色肌美女はキッチンからエプロン姿で、トレーに三人分のプレートをサーブしてくる。
「ほい、今日は三色ワンプレートだ」
三つの区画に分けられた一皿のそれぞれに、黄、緑、赤とブロック状に成形されたソイフードが盛られていた。
「「いただきます」」
「おう、食え」
彼女も着席して、三人で食卓を囲む。
「……相変わらず美味しい、です」
「荒子、味覚が鋭いから料理も美味しいんだよねえ。セーフハウス生活の数少ない彩りなんだ」
男二人はフォークで一口大にブロックを崩して、食べれば互いに調理した人物への称賛が出る。
「ま、そうはいっても添加物の組み合わせと食感術式の調節してるだけだ。マジモンの自然食材で戦前の料理作れる師匠に比べたら、アタシのは手抜きだっつーの」
謙遜してる女は男二人より三回りは大きいベーコンエッグ風に味付けされている赤いブロックにフォークで突き刺して、一口で豪快に頬張って咀嚼し嚥下した。
「いや、でも
「ウチの料理射出立体プリンターも結構グレードが良いとはいえ、あくまで業務・大量成形だから、そこら辺は一歩劣るよ」
「ええい、あんま褒めんな。痒くなる」
「えーん? 味だけじゃなくて、栄養バランスも考えてテイストコントローラーこだわってんの知ってるんだよー?」
黒髪の美丈夫はビタミン類が添加されている緑のほうれん草のバターソテー風のソイブロックを食べながら、気遣いのネタばらしをする。
「でも実際、ちゃんと考えて手料理するのは本当に凄いことですよ」
「……はぁ、まあ、こういうストレスが多い生活サイクルだと、メシの美味さとバランスがモチベーションに繋がるからな」
二人からの褒めに降参した銀髪の女は、最後の黄色の焼き立てトースト風のブロックを飲み込んで手料理事情を話す。
「まー、こういう風にご飯や生活リズムの
照は改めて乱れがちになる生活のメリハリをつけてくれる彼女に感謝する。
「そういういえば、お二人はセーフハウス生活が初めてじゃないんですね」
マイルズは美女と美丈夫との、先日から始まったこの生活と先程までの言動から、二人がセーフハウス慣れしているのを、ふと口にする。
「まあな。
「ヤクザとかマフィア、半グレの族滅・
「うわぁ……、アクティブ……」
金髪の少年は引きながら、フォークで緑ブロックを切り分けて食べた。
「そうはいっても、調べ物や物資の調達は照と
「そ・れ・に、夜の方も気絶するまで満足させてくれるからね♡」
きゃ♡ と黒髪美丈夫は残りのタンパク質が添加された赤いブロックの欠けらを口に入れる。
「こういう状況でも、相変わらずノロケてくるんですね……」
「そういうオメエも失神するまで善がってただろうが」
「そ、それはそうですけど……!」
金髪の美少年は昨夜も大きな声の嬌声をあげながら果てた事実から、言い返そうにも次の言葉が出なかった。
代わりに最後の一欠片を口にして、「ごちそうさまでした」と言う。
「うっし、皿洗いはアタシがやるから、照はいつも通り
「はい、はーい」
「そうします……」
と、三者三様に席を立つ
すると、
「邪魔をする」
突如白い髪の長身で白いスーツの男が現れ、マイルズを抱えた。
「!」
異常事態に一番早く反応出来たのは荒子だ。
手近にあったステンレス製のフォークを、突然現れた男の眉間へ、腕の振りだけで投擲する。
「危ないな」
音を何枚とも破るソレを、男は到達前に手をかざし
「失礼」
間に何もなくなれば、白髪は少年を抱えたまま、荒子に
「……ぷっ!」
銀髪の女が口からおびただしい量の吐血をした。
「荒子さんっ! 照さんっ!」
ようやく自身が唐突に現れた男に捕まったというのを認識した少年は、抱えられたまま脱出しようと身をもがくが、彼の腕は微動だにしなかった。
「少し眠るといい」
長身の男は小柄な少年が暴れるのを、術式で深い眠りに落とす。
「ふむ、精神系に多重のプロテクトか。かなりの腕前だな」
「そりゃ、どうも!
男が荒子に接近した衝撃波で吹き飛ばされていた照は、復帰すれば多重に拘束術式を展開していた。
「私がマイルズを寝かす術式をかけるのに手間取った隙をつき、物質・精神・霊体に届く固定系の術式か。なるほど、並の神体ならしばらくは動けないだろう」
四文字で構成される名前の男は、自身にかかっている何重もの術式陣の仕手である、視線の先の美丈夫を称賛する。
「だが」
白髪長身の男が空いている片方の手で、指を鳴らせば、
「これでも一神話の主神を預からせてもらっている身なのでな。即席術式に手こずるワケにはいかない」
「そりゃ、そうだ! でも、ウチにも意地があるんでねえ! 荒子!」
男が視線を外せば、その先には名前を呼ばれた
「──喝っ!!!!」
白髪男の頭部を捉えた荒子の手の平は、今出せる最大威力の『
「……良い
消失した心臓の代わりに、即席のバイパスを作って、全身の筋肉を血流のポンプ代わりにしている女の一撃は、手の平から発せられた魂を直に
しかし、
「……目眩しだったか」
視界を塞ぐ手の平が消えたと思ったら、その部屋には衝撃波で家具類が滅茶苦茶に吹き飛んでいるのと、寝ているマイルズを小脇に抱えた四文字と呼ばれた男だけだった。
***
照はセーフハウスに仕込んでおいた瞬間移動術式で、荒子と自身だけを別のセーフハウスに移動させることに成功した。
マイルズだけは、神の術式解除祈祷で、移動術式のリンクが消されていたため、一緒にはいかなかった。
口から血をこぼす女を移動先のベッドに寝かせ、気道を確保から、その鼻をつまみ空気が逃げないようにし、口付けで口内から喉奥まで溜まっている血を吸い出せば、ぺっ、と血塊を吐き出した。
術式波の
「荒子っ! 心臓はどれくらい再生出来てる⁉︎」
そうして、銀髪の女が震える手を上げて、三本の指を立てる。
「……三割か、わかった! 身体強化術式を最大でかけておくよ! 再生に集中してて! 僕は
黒髪の魔術師は血のついた唇を手で拭って、すぐさま
「月詠ちゃん! 何か四文字化成から声明はあった⁉︎」
席に座れば、チャネリングで電脳網にアクセスし、すぐさま情報収集中であるチームメイトのアバターにコールを入れる。
『はいっす! さっきの発表を手短にいうと、奴さん、マイルズ確保したのと
「それなのと、あくまでマイルズ君だけが目的みたいだね。
紫髪の美少女アバターはヒートアップしている電脳網内の四文字化生とOMI、そして天宇戸のニューストピックへのアクセス数や、どのインフルエンサーから情報が拡散しているのかのアクセス解析をリアルタイムで表にしていた。
『四文字化生系列はこの発表の後は比較的穏やかっすね。逆にOMI系のインフルエンサーは以前の『マイルズ引き渡し要求』より、積極的に発信と拡散を行なってるっす』
「天宇戸の炎上はどうなってる?」
黒髪美丈夫は以前の発表で、衆目を集めさせられた上に根も葉もない炎上をさせられた所属娼館は、しばらくと今回を経てどうなっているのかを聞く。
『鎮火、というよりOMI系が四文字化生系への攻撃に転換したって感じっす。新しいネタに飛びついたというか』
「妙だね。四文字が矛を収めたのは分かるけど、OMIが四文字に標的を変えたのは解せない」
チャネリングを続行する美丈夫はチームメイトが解析して流れていく情報を噛み砕きながら、一連の流れに疑問を持つ。
「月詠ちゃん、四文字の主要顧客層は知ってるよね?」
『はいっす。表向きは安価な労働力を天使として提供してて、メインの層は下層階級っす。慈善事業としてスラムなんかに炊き出しもやってるのは名高いっすね』
「で、非合法の部分だと、マフィアやヤクザ、半グレに兵力として天使を供給してるって話だ」
電脳網上に浮かぶ二人のアバターは、互いに知っている情報を改めて揃えていく。
「でも、最近は事業成績が振るわず前期の決算で、大幅下方修正するって発表してたよね」
『逆にOMIは表の稼業では奮って儲けてるっす。それに
紫髪アバターの
「OMIは元々火器の個人販売に力を入れてるからね。大型兵器を大っぴらに使えない連中は顧客としてあるのはそうだろう」
神魔覚醒戦争後から十年。
各神話勢力が戦後復興を掲げて、表向きだけでなく、戦中に勢いを得た層に様々なアプローチをかけているのは、
「その
『……改めて、フィクサーとして情けない限りっす』
月詠は以前荒子に伝えた不手際を、照に言った。
「仕方ないよ。裏すら自由に操れる神が相手なら、踊らされても不思議じゃない。でも、踊らされたなら、踊らされた理由から考えてみよう」
黒髪美丈夫はこれまでのことを、それぞれ特徴的な場面を記憶からピックアップしてその場面を画像として、
『まずは
美少女アバターがことの発端となった大型トラックとそれを追う車両群の場面を選ぶ。
「この時点で、既にOMIが関わってたね。貨物──マイルズ君を奪取しようとも、殺そうともしていた」
『謎の貨物で私達にはマイルズがソレだって知らされてなかったっす。逆に襲撃してきたOMI系が中身を知ってそうだったっすね』
「そうだね。砲弾の中身に両性具有神の術式波形を放出して、マイルズ君の覚醒を促したのは間違いない。で、これは推測なんだけど、OMIとしてはマイルズ君の生死はどうでも良かったんじゃないかな?」
『その心は?』
デフォルメアバターは美青年が言語化するのを促すよう、質問する。
「マイルズ君が四文字化生の新製品だったら、殺せても生きて奪えてもライバル社への打撃になるんだからだよ」
『そもそもマイルズは四文字化生だと、どういう立ち位置なんでしょう?』
「荒子の生態鎧になったってことは、多分天使への外付け強化部品ってことだろうね」
照は荒子と天使の共通点である、『両性具有』というのと、マイルズが彼女を飛躍的に強化したという事実から、彼がどういった存在なのかの推測を立てていく。
『強化部品って……』
「うーん? まあ、四文字化生としては多分新しく強い天使を造るより、今ある天使を強くした方が安上がりって判断したんだろう」
『いや、そうではなくってですね……。倫理として新しい命を造っておいて、部品って……』
「だから、ホムンクルスってことなんだと思う。人を造れる逸話持ちの神性でも、
ちなみに、神企業法律で『神が人を新しく創る』のが禁止されている理由としては、兵力を安易かつ大量に確保可能になってしまい、その増大した兵力で再びの神魔覚醒戦争が起きてしまうのを防ぐ為、という意味がある。
『……まあ、倫理は置いておくっす。それで四文字とそれの発展を邪魔したいOMIが争っているのは分かったっす。でも、なんで私達が巻き込まれたっすかね?」
「それも荒子が『
電脳網上に、四文字化生とOMIお抱えのインフルエンサー達との次々に流れる発信合戦を、ドレスアバターの美丈夫はそれらを横目に見ながら、情報を整理していく。
「両性具有の逸話を持つ神性は、今回に限れば天使達とヘルマプロディトスだ。それで後者は血筋を遡ればヘルメスで、トリックスター神として権能を借りたんだろう」
『そこからマイルズ製造を察知して、私達に護送の依頼をした、と……』
「護送の依頼というより、無理矢理護送を捩じ込んだって言った方が正しいかもね。四文字からすれば秘密裏に運送すれば良かったんだし」
『OMIは何をそこまで手間をかけて、私達にマイルズを護送させたんすかね?』
「……多分、狂言に巻き込みたかったんだと思う」
狂言。
主に
「四文字の
『じゃあ、マイルズをわざわざ目覚めさせたのはどうしてっすか?』
「多分そこは荒子が一番最初に物理接触することに賭けたんだと思う。僕達の中で護送中に彼に触れる可能性が高いのはアイツだからね。実際、触れて生態鎧として
照は
あの夜が決定的であるのを象徴する場面だ。
「ラリク基地の情報を流したのも、『手打ち』の他に『もう自分達は関わりませんよ』アピールもあったワケだ」
美丈夫は、人員装備含めて九割を機能不全に陥れられた生け贄の基地の場面を選ぶ。
「ここで終われば話は単純だったんだけど、四文字の横槍とマイルズ君引き渡し要求で事態がややこしくなった、と」
今も
各種プラットフォームの炎上の元凶となったのら二つの
「僕らも一枚噛んでいるワケだけど」
『ものの見事にしっちゃかめっちゃかになってるっすね。ハッカー内でも四文字とOMIお抱えのインフルエンサー達が、日夜あることないことを拡散して、インプレッションを稼いでるの観測してるっす』
「外野は置いておくとして、今回のを単純化すれば、四文字対OMIの企業間抗争に僕達が利用されたってことだね」
でしょ? とドレスアバターの美丈夫の問いかけ先は、紫髪の美少女アバターではなかった。
パチパチ、と拍手の効果音付きのエモートともに白い肌の美女アバターが現れる。
『お見事。ワタシ達の狂言を看破してくるとは。ハッカーとしてだけでなく、知謀も長けてらっしゃるようだ』
『ちょ、ちょっとどこから……⁉︎』
「月詠ちゃん、慌てなくていいよ。どうせ元々僕達が狂言って見破ったら、出てくるつもりだったんでしょ? ヘルマプロディトスさん」
オリュンポス神話にて、親譲りの美男子が女妖精からの強姦を受け、神々がそれを許した末にその男女が一体となった神の一柱が現れたのだ。
『目星までついていたとは。状況証拠が揃っていたとはいえ、流石に侮れませんね』
「御託はいいよ。どうせ要件はマイルズの確保でしょ?」
美丈夫は明らかな嫌悪感を前に出して、トリックスター神を親に持つ神性と対峙する。
『折角なんですから、アイスブレイクでも……、と思いましたが、そこまでは思い至ったらっしゃるのであれば話は別です。その件、受けて下さるのでしょう?』
「ああ……! 受けてやる……!」
すると、正規のルーム入室権限を持っている褐色肌の女アバターが、更に割り込んできたのだ。
『荒子の姉御! ご無事ですか⁉︎』
デフォルメされたアバターが負傷して、回復に専念してたはずの人物を心配する。
しかし、その彼女はそれを気にせず、
「アタシらは売られたケンカは何倍でも高値で買う主義でな。四文字ブッ殺すのはもちろん、マイルズも取り返しにいくに決まってんだろ……!」
呼吸に荒さがある声で、勇ましいことを言う女に両性具有神はニヤリと笑う。
『
チーム内でフィクサーの役目を持つ
『そういう訳で御座います。弊社としては皆様方にお力添えをするつもりですよ?』
「いらねえ、とはいわねえ。使い潰してやるから覚悟しとけ……!」
「リーダーがその気だし、僕は異議ないよ」
『……神直々に依頼となれば慎重を期すところっすけど、姐御達がそういうなら』
プライベートルームの正式入室権限を持つ者達は、不正に入ってきた神からの提案を飲む。
『ふむ、案外素直に受けてくださって安心しております。では迅速に手配させて頂きましょう。日時は追って連絡致します』
では、とヘルマプロディトスが退室しようとする。
そこに、
「照、月詠」
「はいよー」
『分かってるっす……!』
『?』
神が突然チームメイトの名前を呼んだ荒子を不審がると、
『ギャ!!!!』
と、ノイズと共に消え去った。
「十中八九、身代わり防壁越しだろうけど、ナメた真似した連中にはいつものヤツってね」
『それより、姐御、大丈夫っすか? 心臓が無くなったって聞いたっすけど……』
「十割作り直したっつうの。ったく、これだから神ってヤツらは面倒なんだ……!」
荒子のアバターは現実側の動作をトレースして、気管に残っていた血混じりの唾を吐き捨てる動作をする。
『心臓が丸ごと無くなったら普通即死だと思うんすよね……』
「まあ、荒子の死ににくさは真骨頂みたいなモノだから」
付き合いの長い黒髪の魔術師は、彼女にかけた身体探査術式から送られてくる再生した心臓が、正常に動作しているデータをモニターしていた。
『前にも言ったっすけど、姐御、相変わらずバケモンっすね……』
「おう、この体には何度も助けられてるからな」
「戦場で元気に駆け回ってたねえ」
自慢する両性具有の女と、過去を懐かしむ男。
ハッカーであり、フィクサー、ドローンリガーである美少女アバターはそんな二人に呆れるのであった。
***
「よっし、術式陣も敷き終えたし、整調いくよ」
セーフハウスの寝室にて。
二人がいるクイーンサイズのベッド周辺には、床に何重もの術式陣と壁には何百枚もの術式札が張り巡らされていた。
「悪いな、手間取らせた。主神クラスとなりゃ、気合い入れねえといけないとはいえ」
「いいよ、いいよ、役割分担。今の荒子は四文字の神気で陰陽のバランス崩れてるんだし、万全を期すなら必要なことだよ」
白装束に着替えた照はそう言って、清めの術式を施した飲用精錬アルコール一献を三口に分けて傾ける。
「神道の『禊』と道教の『房中術』、それと大小合わせた複合術式で、四文字の天罰の神気を『祓う』よ。荒子は兎に角は体のそれを僕に吐き出すこと。オーケー?」
「オーライ。かったりいからさっさと済ませちまおう」
ベッド上で全裸になっている荒子は、向かい合っている黒髪の美丈夫にキスをする。
ただ唇を合わせるだけでなく、呼吸の吐き吸いを合わせて、肺臓の空気を出し入れした。
「はむ……、ちゅ……、すぅ……」
それはされている照側も同じで、自身の肺の中身を交換するよう呼気を吐いては吸っている。
酸素が足らなくなれば、唇との間に隙間を作って、今度は舌を絡ませた。
「れむ……、あちゅ……、はちゅるる……」
女は滲み出る唾液を舌伝いに男に送りつけては、相手が入れられた肉を舐め取り回す感触に集中する。
まずは口と口とで呼気と唾液の交換をして、互いの感覚を共有していく。
「ぷはぁ……、オチンポ、舐めるよ……」
程よく互いの呼気と唾液が混ざったら、今度は黒髪が銀髪に生えている両性具有の象徴に顔を近づけた。
「頼む……、存分にしゃぶってくれ……!」
褐色肌の女は、膝立ちで股間に鎮座する海綿体を充血させている逸物を捧げる。
「はむっ……♡ ちゅ……♡ あちゅ……♡ ちゅちゅ……♡」
透き通るようなよく手入れがされた肌の男は、普段よりも固さのない肉竿の鈴口にキスをする。
排泄孔からあふれる、ある種の術式的な澱みのあるカウパー腺液を唇から吸うようなキスだ。
「はあ……! ふぅ……!」
全裸の荒子は消失した心臓こそ全て再生したが、体に残るその消失させた者の神気を、下腹部の丹田に集まるようにして、直結している巨根から体液を媒介にして吐き出していた。
「あむる……♡ あちゅちゅる……♡ れろれらぁ……♡」
そういった女の事情を把握している白装束の照は、彼女の亀頭を口に含めば、舌を使って裏筋や鈴口、カリ首を舐め回して体液の排出を促していく。
「うんっむ……♡ あむっん……♡ ぢゃるる……♡」
男は舌で亀頭を舐め回しながら、歯が肉槍に当てないよう唇をすぼめて口内を前後に揺する。
口の中の空気をバキュームして、啜る音を立てつつ舌も前後する頭に合わせて、竿を舐めるよう動かす。
「あぢゅるる……♡ あむるるるる……♡ オツユ、いっぱい出てる……♡」
「ああ……! 相変わらず上手くてガマン汁が止まらねえ……!」
いつもより女が勃たなくとも、男は気にせず口技の攻勢を休まず、吐き出される準備をしていく。
音を立てるファラチオは、剛直に伝わる感触もそうであるが、啜る音という聴覚を刺激するアクセントも官能を昂らせるには最適だ。
「一回、
「きて……♡ じゅぞぞぞぞ……♡ 悪いのいっぱい吸い出して……♡ あぢゅるる……♡ あげる……♡」
両性具有の雌男根が放精するのと、男の口が吸い出すのが重なった。
口技によって十分な固さを取り戻した剛槍は、吐き出す勢いもソレであった。
吸い出す側は鼓動のタイミングに合わせて喉を動かせば、一滴もこぼさず神気の敵意が混じった白濁液を飲み干す。
「……んぷはぁ♡ まずは一回♡ やっぱりいつもと味が違うね」
長髪の魔術師は、口で受け止めた精液の味が普段と違うのと、体内に入ってきたそれに混じっている神気を事前に発動させていた術式で薄めていく。
「そう変わるモンか。ま、流石に主神クラスの天罰が体に溜まってれば調子も崩すわな」
荒子は行為前に比べれば、幾分か調子を取り戻していた。
「いや、普通そんなの食らってたらチリも残ってないって。荒子の『黄金肉体《フタナリ》』じゃなかったら存在ごと消えてたと思う」
照は相方の頑丈さに改めて驚いている。
「そんなモンか? まあ、兎に角続きだ。尻広げろ」
いやん♡ と黒髪の美丈夫が押し倒されて、マゾヒスティックな部分を刺激され、嬌声をあげる。
仰向けに正常位の体位で、着衣のまま股を広げれば、
「綺麗にしてきたし♡ マッサージも事前にしたから♡ いつでもいいよ♡」
ヒクヒクと下着をつけてない肛華が露わになる。
「んじゃあ、遠慮なく……!」
彼女の腹に当たるまで反り返るほどに活力を取り戻した逸物は、ベッド際に置いてあった高潤ローションをソレの全体にまぶす。
「きてぇ♡ 悪いのいっぱい♡ 受け止めてあ・げ・る♡」
ひゃあん♡ と女の鈴口が男の肛門にあてがわれたと思ったら、一息に最奥まで貫かれた。
太く長く固い剛直の一撃。
美丈夫はコレを何度も、数えるのも野暮なほど味わってきたが、この遠慮のない結腸まで届く強撃には毎度悦楽を見出していた。
「はぁあ♡ いいっ♡ おっきいの♡ 目的♡ 忘れちゃいそう♡」
「それは……! 困るな……! まだまだ、吐き出したいっていうのによお……!」
ずっちゅ、ずっちゅ、と男にあるべき器官が生えている女は、粘膜と粘膜が擦れる音を立てながら、容赦なく腰を振っていく。
「いやぁ♡ はぁん♡ 激しいぃ♡ 奥でキスしてる……♡」
「こっちも頼む……! あむちゅる……!」
押し倒してる女は、押し倒されている男の無防備な口に唇を重ねて、舌を侵入させる。
「んちゅ♡ いいよぉ♡ おくちでも♡ オチンポでも♡ あむちゃる♡ たくさん♡ 悪いの♡ 出そうね♡ はっひゃあ♡」
官能が昂っている男は、上と下の口を同時に責められて、一オクターブ高い嬌声が出てしまう。
腰を振って肉竿への刺激を高めている女は、それをお構いなしにキスをし、舌を入れては唾液を注ぎ込んだり、歯肉を舐め取ったりしていた。
「ああ……! 善いぞ……! 男のクセして、女みたいな可愛い声を出してる時のオメエが一番善い……!」
「ひゃだぁ♡ 恥ずかしいこと♡ ふひゃあ♡ 言わないでぇ♡ 嬉しくて♡ イッちゃうぅ♡」
とぷとぷ、と照の男根から前立腺、S字結腸からの快感で達してしまった射精が発生する。
荒子と体が密着しているが故に、彼女の下腹部にも精液がかかった。
「おおう……! そんなに善いなら、アタシもそろそろ……!」
「はぁぁん♡ 今
荒子が照の直腸最奥で果てた。
S字結腸という開発されきって男性体内で一番敏感な部分に、情け容赦ない高圧洗浄のような勢いの射精は、射精された側の官能を最大限まで高め、潮吹きまで誘発する。
「ああぁぁ♡
「ふっ……! あっ……! はぁ……! これで一通りか……」
両性具有の女は当初の目的通りに体内に残った天罰由来の神気を吐き出すことに成功した。
「ううん♡ はぁぁん♡ うん♡ 調子はどう?」
「おう、まだ少し気怠さはあるが、カチコムには十分だ。有り難うな」
直腸を開発されている男は、それを聞いて安心する。
いくら戦中からの付き合いで、その頑丈さを知ってはいても、メジャー神話神性の天罰を食らって心臓が消失したとなっては、心配するなという方が酷であろう。
「それなら良かった。ただ……、僕としては、まだ出来るよ?」
「ほう……、そういうなら……!」
「やんっ♡ また大っきくなったぁ♡」
今までのが、必要であるからしたセックスであれば、今度はしたいからするセックスになるのは、若い男女であれば当然であろう。
少し変則的なことをいえば、挿れるのが(両性具有の)女で、挿れられるのが男、という彼等にとって普通のことになっているところだ。