※この作品はR-18です。

転生した一般おじさん、イジメられる   作:百万回エタった猫

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ねこです。
まえがきにかくこともなくなってきました。よろしくおねがいします。
ぜんわにてしょうがくせいへんさいごですといったな。あれはうそです。よろしくおねがいしません。


(元)おじさんと卒業

 小学校の卒業式、俺は困惑していた。

 

「うびゃあ”あ”あ”あ”あ”!!!!ぶだあ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!」

 

「あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!」

 

 俺の脚に縋りつくように泣く複数の男女子達。彼ら彼女らは俺とは違う中学校へ進学する者達だ。

 二度と会えなくなるわけではない。この世界のこの時代、子供でも一人一人が携帯端末を持っている。LINEそのものは無いが似たようなアプリがある。連絡だって比較的簡単に取ることも出来る。大人になったら10年は会ってもいない友人なんてザラだ。

 だと言うのに、彼ら彼女らは6年同じ学校に通っていただけの怪物豚人間にここまで情を持っている。

 無論俺も彼ら彼女らに対して悪感情の類は持っていない。顔が良すぎると言うのもあるが、彼ら彼女らのイ(・)ジ(・)メ(・)行(・)為(・)は言ってしまえば子供特有の善悪が理解しきれてない故の行動である。善悪知る良い歳をした大人が行うのとは少し意味合いが変わっており、俺以外に対するイジメ行為に対しては俺からしっかりと駄目な事であると【身体に】教えれば改善されていった。

 ただはっきり言えば、ここまで好意を持たれている事に自分でも違和感を覚えている。見た目がこんな豚人間で、中身は40歳のオッサン……中身も一緒に歳取っているとすれば、もうアラフィフのお爺さんに近い。今更子(・)供(・)ら(・)し(・)く(・)振舞うなんて事は出来る訳も無く、良い歳こいて無限の性欲を抱えてもいる。同じ子供同士であれば仲良くなる事に違和感は無いが、子供とオッサンが早々仲良くなれるものではない。

 

 初めて俺のズボンを愛液と小便以外でびちゃびちゃにしていく子供達をなんとか引きはがしつつ、俺は在校生達が抱えるフラワーアーチを背を屈めて通り抜けていく。時折知っている下級生が俺に飛び掛かるように抱き着いてきたり、引き止めるように袖を引っ張ってきたりするが、俺はその度に足を止めて一人一人に別れの言葉を告げる。

 身長だけでも2倍近く、体積で見れば10倍は違うであろう巨漢の豚に突撃してくる子供達は既に両手足の指を使っても数えるに足りず、皆俺に向けて別れを惜しむ言葉を掛けていく。

 

 長い時間を掛けて、卒業式の式場となった体育館を出る。

 そして流れで校庭に出れば、そこではひらひらと舞う桜吹雪に円状に立つ人だかり。今日卒業する6年A組とB組のほぼ全員がそこに居た。

 在校生達に捕まってた俺を待ってたのか、その大半が目元を腫らしながら俺を見ていた。

 ザワザワと騒ぐ集団。それらがモーセの奇跡のように割れ、集団の中心に居た二人の男女の元へ俺を導いていく。

 

 一人は、少女。6年間ずっと俺と同じクラスであり続け、そしてクラスのカーストトップに君臨し続けた美少女である高麗之紬。金色の髪は太陽光を反射してキラキラと輝き、顔を彩るメイクはまるで完成された絵画のように自身の美貌を際立たせていて、6年前よりも成長した身体は小学生とは思えない程に色気に満ちていた。

 一人は、少年。6年間ずっと事ある毎に俺に挑み続け、少し前のバスケットボールでの勝負で俺から遂に勝ちを捥ぎ取った美少年である西東春貴。日に焼けた褐色の肌、艶やかな黒髪に映る天使の輪っか、同じ6年生よりも二回りほど高い身長にすらりと伸びた手足。全身を支え動かす筋肉が彼をこの世界においてごく少数である【男性らしさ】をもたらしていた。

 

 そんな二人は、俺と違う中学校へ通う。

 高麗之紬は、お(・)偉(・)方(・)の家らしくもっと格式高い中学校のある場所へと引っ越しするようだ。本来であれば小学校の卒業前に引っ越しするはずであったが、彼女の我が儘で小学校卒業までは此方に残る事が出来たと言う。だが流石にそれ以上は駄目だったようで、この卒業式が終わり家に着き次第遠くへ引っ越しする手筈になっているらしい。

 西東春貴は、スポーツの天才でありジュニアユース特待生として同じく遠くの私立中学校へ招かれているとの事。西東春貴の親友であり秘密の恋人でもある南秋人も同じ中学校へ特待生として行くらしい。南は西東に着いて行く為、死に物狂いでトレーニングしたとかなんとか。

 そんな二人が遠くに行ってしまうとは言っても、それこそ東京から大阪、東京から仙台といったような、大人なら土日休みの日にでもちょっと行って会いに行ける程度の距離に引っ越す程度だ。お互い会おうと思えば会いに行ける。交通の便も悪くは無い。お小遣いを多少溜める必要は有るだろうが、それこそ二人はお小遣いに困らない程度の家柄と才覚を持っている。

 ……なんて、それは大人の理屈だろう。子供にとっちゃ新幹線で移動しなければ会えないような距離が離れれば、下手すれば一生会えないかもしれないと考えても不思議じゃあない。そんな理屈を理解は出来る。

 

「……たろう」

 

 理屈は理解出来るが、それはやはり40年生きたオッサンが共感出来るモノじゃない。化粧で誤魔化しきれないほどに赤く泣き腫らした顔を見て、俺はただ何を言うことも無く……何を言うことも出来ず、小さな頭に手を置いた。会おうと思えば会える。そう思って、もう二度と会うことの無くなった前世での旧友をふと思い出したから。

 高麗之紬は、頭に置かれた手をそっと両手で掴む。自身に何度も屈辱を与えた筈の手であるにも関わらず、忘れないように、記憶に刻み込むように優しく、そしてしっかりと掴む。

 

 

 高麗之紬は想い起こす。初めは、ただ気に喰わなかった。デカい図体。私より目立つヤツがとにかく気に喰わなかった。同じ幼稚園では、会うたびに蹴りを入れるくらいには気に喰わなかった。小学校に入り、大久太郎の隣の席になった。正にチャンスであった。気に喰わないヤツを、徹底的に貶める事が出来る絶好の機会が早速やってきた。全てにおいて一番であるべし。高麗之家の令嬢として恥じないようにと【教育】され続けた結果得たメイク術や勉学の力で、同年代を支(・)配(・)するカリスマ性を使い、多くの人の尊厳という尊厳を踏み躙り続けた。

 だと言うのに、大久太郎だけは違った。大久太郎は自身の尊厳を踏み躙る行為は止めないくせに、他人の尊厳を踏み躙る行為は止めてくる。気に喰わないヤツが、より気に喰わなくなってくる。イジメていた連中をどうやってか見つけ出し、自身の体躯を使って物理的に止めてくる。先生に告げ口するでもなく、自身の怪力を用いて強引に引き離し、正論で行為を咎めてくる。そんな大久太郎が気に入らない者は少なからず居り、時に全員で徹底的に大久太郎を射精させ続けた時もあった。

 ある時、大久太郎はイジメられていた被害者連中にもイジメられる事になる。破壊された尊厳を取り戻す為、より弱い者の尊厳を踏み躙る事で優越感に浸る、そんな行為。それを偶々見かけた私は、気に喰わないヒーロー気取りが愚民によってやられるような物語みたいだとほくそ笑みながら隠れ見ていた。だが、大久太郎はそれでも笑顔だった。ニチャニチャと醜い顔を歪ませ、気色悪い呻き声を上げて精液を弱者連中に放っていた。

 またある時、パシリとしていた女子の一人の妊娠が発覚した。元々様子がおかしかったヤツで、近いうちに立場をわ(・)か(・)ら(・)せ(・)てやろうと計画していた矢先の事だった。

 【妊娠】という事実は、クラス内のカーストをひっくり返すに値する程であった。頭脳明晰で成績優秀、そのカリスマで同学年全体を支配していた私の玉座を脅かす槍(・)だった。その女子は一日でクラスの女子達を割(・)り(・)、私一強だった支配権はその女子と二分することになってしまった。

 その女子を孕ませた元種は自明だった。だから、二匹目のどじょうを狙った女子達が大久太郎を狙うのもまた自明だった。そしてその事に対して、あるいは子供を成す性行為に対して大久太郎は積極的であった。

 そうして、そうして。気が付けば全(・)て(・)ひっくり返っていた。下剋上の如く。あるいは、革命の如く。

 私と、森妃兎理の二人を除いて。いつの間にか、大久太郎はほぼ全ての女子達を屈服させていた。その巨体で。その巨体に付属する大きな手で。その醜い巨根で。何度も何度も精液を噴き出しながら、あまねく女子達を絶頂させていた。否、絶頂に次ぐ絶頂。漏らしても、泣き叫んでも、気絶しても止めない凶悪な快楽を脳に叩き込み続けて、徹底的に精神を支配していった。

 脳が快楽によって壊された女子達は、ご馳走を見てよだれを垂らす犬の如く。大久太郎を見て股をドロドロと愛液で濡らしていた。いつの間にか、森妃兎理もその仲間入りしていた。親から大久憎しと【徹底教育】されていたにも関わらず、だ。

 そうして、私も。

 何度も、何度も。

 押され、突かれ、潰され、かき混ぜられ。

 脳に走る、快楽という電撃に屈してしまった。

 大久太郎は、生物としての本能に常識程度が勝てるわけが無いと言っていた。快楽を受け入れる事こそが本能だと。

 屈辱、恥辱、汚辱、徹底的に辱められた尊厳。だが、それは大久太郎が受けてきた凌辱でもあった。

 高麗之の一員として【教育】されてきた事象。積み重ねられていった尊厳。そして得た常(・)識(・)。それら全てを【破壊】された時の、開放感。

 目が覚める、と称するに相応しかった。何もかもを壊され、何もかもを捨て去って、裸一貫で地に立つような瞬間。【高麗之の令嬢】ではなく、何者でもない個人としての高麗之紬として見えた光景。ふ、と振り返った、私が生きてきた道の、閉塞感に気が付いた。

 常に一位であるために。常に満点でいるために。厳しく調教されてきた競走馬のように、往く道しか知らない馬車馬のように、勉学を教育係が飛ばす鞭と共に強制的に学ばされ続けた過去。

 

 大久太郎によって、何もかもから解放された……世界に投(・)げ(・)出(・)さ(・)れ(・)た(・)と言っても良い。そんな厳しい世界に立つ私に、優しく寄り添ってくれたのもまた大久太郎だった。

 少しづつ難しくなっていく勉学。厳しい鞭と共に叩き込まれる知識。勉強とは、そういうものであった私。そんな私の目に映る、クラスで最も落ちこぼれと称される女子に根気強く勉強を教えている大久太郎。教師ですら投げ出した馬鹿に、一つ一つ教え導き、間違えている所は都度伝え、出来れば大袈裟に褒める、そんな姿に。

 私は、気が付けばいつの間にかそんな馬鹿の隣の席に座り、大久太郎に勉強を教わっていた。

 今までイジメ続けていた加害者であった筈の相手に、大久太郎はそれでも優しく教えてくれた。同じように、間違えている所は都度伝え、出来れば大袈裟に褒める。

 こうして教えてほしかった、と。鞭と共に叩き込まれた知識の過去が溢れてくる。溢れ出てくる。とめどなく、溢れてきた。

 それは、全くの無意識。突然濡れるノートに驚いていると、慌てだす大久太郎。その時、私は自分が泣いている事に気が付いた。

 メイクが崩れる事すら考慮出来ず、私は過去を感情として零し続けた。

 突然泣き出したのにもかかわらず、大久太郎は怒鳴ったり叩いたりする事も無く……優しく、その大きな手を私の頭に乗せる。

 それからどれほどの時間が経っただろうか。感情が落ち着いた私は、隣に座る女子と共に大久太郎へ頑(・)張(・)っ(・)た(・)ご(・)褒(・)美(・)をねだった。

 大久太郎は、頬を掻きながらそれに答えた。

 そうして……初めての行為を行った。今まで行ってきた、相手を辱める為だけの行為と似て非なる行為を。

 

 頭が融かされる。そんな経験は初めてだった。暴力的な快楽に屈服されるでもなく、濁流のような刺激に意識が押し流されるでもなく、まさに夢のようなひとときだった。熱に浮かされるというのはこのことか、と脳内の片隅に居る冷静な自分が思った。

 飴玉のように舐めとかされる乳首、ほんのり温かい掌が四肢を撫で付け、ふわふわと何処までも浮いて飛ばされそうな身体を引き留める高熱のイチモツ。あまりにも大きなソレを完全に受け入れる状態となってしまった、自身の膣にゆっくりと挿入されていく感覚。完全に一つになると同時、繋がる口と口。茹り切った脳みそに注がれる灼熱の白いソースが、夢見心地のまま幸福感と共に快楽を与え続ける。

 身体から引き抜かれる、愛しい剛直。ほかほかの喪失感と独占欲は、絶大なる疲労感によって繋ぎ止められる。

 要するに、つまり、分かりやすく言えば。私一人で大久太郎の全てを受け止めきれる筈も無く。もう一人の女子と二人がかりでもその欲望を支え切れる訳も無く。気が付けば乱入してきた数多もの女子達と共に熱を注ぎ合って、ようやく抵抗が叶う程度。

 手で、口で、秘所で。皆が代わる代わる奉仕し続け、ようやく受け止めきれるかどうかの無限の熱。

 私はその時になって、ようやくあの時大久太郎が言った言葉を理解した。快楽を受け入れる事こそが本能だという言葉を。

 

 私は、大久太郎にすっかりわ(・)か(・)ら(・)さ(・)れ(・)て(・)しまっていた。

 

 

 そうして、卒業式の日。別れの日。

 高麗之紬の頭に乗せられる、大きな手。脂肪と筋肉、そして大久太郎の優しさが詰まった、とても暖かい手。

 嫌でも別れを意識してしまい、枯れる程流したと思っていた涙が再び溢れ出てくる。

 大久太郎は、あえてそれを見ないフリをしながら西東春貴と会話する。

 

「大久太郎、ボクはいずれ世界にまで羽ばたいていくぞ」

 

「知ってる。お前はそういうヤツだからな」

 

「フン。お前もその気になればボクの居る所まで来れるだろうに」

 

「生憎、俺は他にやりたい事があるからな」

 

「なら勝負はボクの勝ち逃げとさせてもらおうか」

 

「アホ抜かせ。お前が勝つまでに、何回俺に負けたって言うんだ?」

 

「……」

 

 まるで一触即発の空気。西東春貴は自身の右手を強く握りしめる。

 そして、そのまま突き出される拳。

 

「……大久太郎。お前との勝負に、世界なんて大舞台は要らない。いつか……いつかまた会った時、また勝負しろ。どんなスポーツだろうが、ボクが勝ってやる」

 

「へっ。世界一と持て囃されて、調子乗ってるお前の天狗鼻をへし折る時が楽しみだ」

 

 突き出された拳は、大久太郎の顔から30cm程度の距離で止まる。

 大久太郎は、左拳を西東春貴の拳にぶつけるように当てた。

 西東春貴は、そのまま振り向いて去っていく。太陽に照らされた目元の煌めきは、誰にも見せなかった。

 

 わあわあと泣く、多くの男女。彼らは皆別れを惜しみ、大久太郎へ言葉を掛けていく。

 大久太郎は、自身が思っている以上に彼らの心に深く入り込んでいた。というのも、肉体接触の多さと親密度の深さの相関関係はこの世界でも同じように働いている。その上で、勉学や運動等、当人が困っている事に対して40歳飲食店店長としての経験を元にした指導力は教師に劣ることもなく、それどころか社会経験の未熟な教師よりも分かりやすく、根気強く、寄り添うようにして教える姿を好意的に思う子供は多かった。

 時に肉欲をぶつけ合い、時に寄り添って分からない事を優しく教えてくれる身体の大きなトモダチ。顔や身体の醜さなど、純粋な子供には大したことでは無かった。何度も肌を重ね、熱を注ぎ込まれ、そして一緒に遊ぶ仲。その別れは、感情を剥き出しにしてしまうほどに辛いものだった。

 

 別の中学校へ進学する多くの男女が泣き、同じ中学校に進学する者もまた彼らに釣られて目を潤ませる。

 だが、時間は待ってはくれない。自身の親に呼ばれ、或いは施設の職員に呼ばれ、一人、また一人と大久太郎から……そして学校から離れていく。

 そうして、最後に残ったのは……ようやく、ようやく感情が落ち着いた高麗之紬(わたし)だった。

 ずっと優しく置かれていた手のひらから伝わる暖かさから、離れる時が来た。まるで、生まれ育った巣から飛び立つ雛のように。唐突に厳しい現実に投げ出された時とは違う、自らの足で立ち上がり、自らの意志で厳しく残酷な世界に立ち向かう鳥のように。

 

「太郎……」

 

 わたしは、ポケットに隠していた物を大久太郎の大きな手に握らせる。

 もしかしたら、もう会えなくなってしまうかもしれない。これが最後になってしまうかもしれない。

 だから、私は。

 

 大久太郎の、普通の大人よりも高い位置にある顔に向けて飛び付く。ありったけの力を込めて。両腕をその太い首に絡ませるように回し、跳躍の力だけでは僅かに足りなかった距離を引き寄せるように腕に力を込める。

 そうして、ほんの僅かの間。わたしと大久太郎の距離はゼロになる。

 

 これが最後かもしれない。だから、私は。

 

 とびっきりの笑顔で、貴方に。

 

 

「大好き!!!!」

 

 

 とびっきりの呪いを掛けていく。

 誰よりも大きくて、誰よりも優しい、最愛の人よ。

 優しいあなたに刻みつけた呪いは、あなたの優しい心に種を植え、深く深く根差すでしょう。そうしていつか遠い日、貴方への愛の花を咲かすその日まで。

 あなたが誰かから愛を告白される時、どうか私の言葉を思い出してください。

 

 あなたの手によって残酷な世界に投げ出された私は、未だに高麗之(かぞく)の力無くては生きてはいけない。だが、いつか。いつの日か、私がひとり立ち出来たその日には。

 貴方への呪いを手繰り寄せ、その優しい心を私の色へと染めるでしょう。

 

 

 

 一人の帰り道。振り返った丘の向こうには夕日に照らされる小学校が見えた。色々な思い出が走馬灯のように蘇り、前世においての【小学校生活】というものの記憶が既に擦り切れた事をふと思い出した。

 前世でも同じように、友達との思い出、授業でのちょっとした出来事、放課後に一緒にイタズラした友達の笑顔、そんな思い出があった筈だった。……だが極一部を除いて、思い出せない友達の顔と名前。学んだ事は覚え生かされているが、学んだ当時の事は思い出せない。担任の教師の名前は、なんだったか。今はもう思い出す手段の一切が無い。

 今生の小学校生活も、今は脳に刻まれたように思い出せるが、いつの日か思い出せなくなってしまう時が来てしまうのだろうか。

 

 ふと、手に握っている物を見る。それは全体的に白い棒状の物体であり、中央らへんに赤い線が2本引かれていた。

 ……まあハッキリ言えば妊娠検査薬だった。

 手に持った妊娠検査薬を見ると、先程の唇の感覚が明確に思い起こされる。初経自体が周りと比べて遅く、先に妊娠した女子達に煽られ続けていた少女、高麗之紬。子供でありながら、そこらの大人よりも遥かに上手なメイク技術を持っている少女。そんな彼女の、最後に見せた笑顔は。真っ赤に泣き腫らして、崩れたメイクで、それはもうひどい顔であった。

 ―――だけど、恐らく、きっと。俺にもしもの三(・)度(・)目(・)があったとしても。その時でもきっと忘れられない笑顔であった。

 

 

 手に持っていた妊娠検査薬は、帰宅途中に寄った公園のゴミ箱に捨てた。そもそも大事に仕舞うような物でもなし、渡した張本人である高麗之紬もそんなものさっさと捨てろと言うだろう。

 だが、俺の血を受け継いだ子供が、俺の知らない遠くで産まれる。その事を意識すると、形容できないゾワゾワした感覚が背中を走る。

 それはまるで、胡蝶の夢を見た荘子と同じか。或いは違うのか。

 何の確証もなく、何の証拠も無い。これが正しいと断言できず、これが誤っていると確信出来ない。

 

 いつかこの世界が、夢のように融けて消えるかもしれない。或いは、俺が【前世】と認識している世界こそが、夢だったのかもしれない。

 

 俺は、こんな恐ろしい想像を考える。この世界が現実世界であるという確証は無く。ある日唐突に、夢から醒めるように、【大久太郎】ではなく【田原三郎】として再度人生を歩み始める。

 もし、今。【田原三郎】としての人生が再開したら?この世界はどうなる?

 ツラく、苦しい現実を常に叩きつけられ続ける世界を知っているのに、ただ只管に甘やかせるように、何も努力せずとも全てが手に入るような今の世界が夢ではないと言い切れるのか?

 メシは美味いし、美女美少女に囲まれては肉欲の限りを尽くし、そして特段何をしなくても自分を好いてくれる者が居る。何故こんな世界を泡沫の夢ではないと言い切れるのか?

 

 恐ろしいだけでただの想像だと、下らない妄想だと切り捨てる俺が居る。この世界で何年も生きて、数多もの女性を孕ませ、多くの子を生してきた。かつての自身では想像だにしなかった現実(リアル)こそが証拠であると言う自分が居る。

 だが、ある日突然、それが当たり前だと思っていた事を取り上げられる事があると、他ならぬ自分自身が知っている。

 ある日突然背中を引っ張られるような眠気に襲われ、意識を取り戻した時には俺は幼稚園児となっていた。ならその逆が起こりえないと何故言えるのか。

 

 空が落ちてくるかもしれないと嘆けば、人は杞憂と笑うだろう。だが、本当に空が落ちてくる事を見た事がある者がいればどうだろうか?それを杞憂と笑えど、それが事実と知る者には何の慰めにならない。

 

 

 そうこう考えているうちに、家に着いた。そこには、笑顔で出迎えてくれる大勢の家族が居る。

 何度も妊娠と出産を繰り返した、愛しき母親と姉二人。そして彼女達が産み、今日まで育て続けた娘達。

 

 俺は、恐ろしい想像を振り払うように、今日も家族と共に肉欲に溺れる。

 嫌な事を酒で流すオッサンのように。

 




ホラージャンル<やあ。


つらい現実から逃げたいと言うのは分かる。だけどある日唐突に全てがうまくいくような世界に行ったら疑心暗鬼に陥ると思うんだ。

そんなねこです。よろしくおねがいします。
じかいからはこんどこそちゅうがっこうへんです。いっぱいいじめられます。ので、いっぱいえっちします。だからおまえらはいっぱいこうひょうかしろ。

ねこはおまえらのかんそうをまちます。よろしくおねがいします。
おまえらはたくさんかんそうをかきます。よろしくおねがいされます。

たんぺんのつもりがきづけばごまんもじかいてます。ので、れんさいにします。なにがかわるでもないです。いままでどおりゆっくりかきます。
ねこでした。

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