※この作品はR-18です。

団長と誓いを交わしたが、すれ違って病状が悪化して入院したコルベットさんが、主治医の青年医師くんと共に様々な困難に立ち向かった結果、医師くんとたっぷりイチャラブ❤愛し合ったことで団長との関係を整理する話   作:鍵山ゆーな

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2.動き出す不穏な害虫

 

 あの夜から二週間前後が経った頃。

 

「魔力亢進症の発作に対しては性交及び膣内射精を経る事で、蓄積された魔法力の発散と数値の安定に有意な効果あり」

 

 そんなことをコルベットのカルテに書く訳にもいかなかったリオナイトは、いよいよ頭を抱えていた。治療効果についてどう報告すべきか。それは医師という職業が医学博士でもある以上、逃れられない命題だからだ。

 

 それと同時に、彼女が何故不安定になってしまったかの「病因」についても、彼の推測は次第に核心に近付いていた。

 

 依存した相手との濃厚接触、とりわけて性交が古代花騎士には必要不可欠であるということが、あの晩の出来事で判明したからだ。

 

 彼女に足りなかったのは、「依存した相手と過ごす時間」。だから団長が極めて多忙であることで、彼女は調子を崩した。そう整理すれば、全ての辻褄が合ってしまう。そこまでリオナイトは突き止めていた。

 

 だがそこで途端に噛み合わなくなる複雑さを与えていたのが、それこそあの時の出来事だった。依存していない筈の相手と身体を交えることでも、数値が安定する。これは今までにない特異点だ。

 

 リオナイトはコルベットが自身に依存し始めているという事に未だ気付けない。それは男性としてまだ未熟であるという部分に原因があるのだが、そればかりは自身で気付くのが難しい事でもあったから、やむを得ない部分も大きかった。

 

 そもそもとして彼自身も、幼少期の記憶からコルベットに対しては自身の人生を擲ってでも献身してしまう程には依存していた。

 

 だが、それを認めたくない彼は、今現在かつて命を救って貰った恩を返すべく、必死に彼女を救おうとしている。だから彼はその言葉を、カルテにも、報告書にも、そして自分自身にも使わなかった。

 

 

 どうやらコルベットは魔力亢進症の影響もあってか、性欲が溜まりがちであるという体質も持ち合わせているようだ。

 

 一度箍が外れてしまった彼女は、期待からか定期的に「発作」を起こすようになった。それは毎晩、リオナイトと同衾している最中に起こる。

 

 あくまで「応急処置」という常套句で現実から目を逸らしている彼は、いけないとは思いつつも彼女の要求に答えざるを得ない毎日を送っていた。

 

 だから、その「応急処置」の副作用を抑える為に、彼は更に医療従事者としてやってはいけない二つ目の罪を犯さざるを得なかった。即ち、存在しない病気(ヽヽヽヽヽヽヽ)のでっちあげだ。

 

 リオナイトにはコルベットが治療(ヽヽ)の結果妊娠してしまうという最悪の状況を回避する必要があった。だから彼は、彼女のカルテに「月経困難症の疑いあり」と記載することで、経口避妊薬(ピル)の処方を正当化させたのだった。

 

 そうして医師としての倫理観に段々と綻びが出始めているリオナイトとは対照的に、コルベットは彼の「尽力」もあって魔力が安定してきたことから、日勤も夜勤も問題なくこなせるまでには体調が安定しつつあった。

 

 だが、現状「対処療法」でしか彼女の症状を抑えられない以上、コルベットを花騎士として復帰させる訳にはいかない。それが主治医としてのリオナイトの判断でもあった。

 

 

 コルベットの病状が見かけ上安定したことで、ナンテンは治療の効果を認めて、一度騎士団に対して報告の機会を設けるべきだと主張した。

 

 リオナイトとしてもそれには当然同意ではあったが、その報告の為、彼女の病状が安定していることの理由について、どうにか口実を作る必要に迫られていた。

 

 そこで彼が咄嗟に思いついたのが、

「追加症例がない以上、断定はできないが、月経困難症の治療を開始したことで性欲の落ち着きが見られ、それが現在の病状安定に寄与している可能性」

という詭弁だった。

 

 あくまで可能性である仮説(ヽヽ)とすることで逃げ道を作りつつも、現在の状況を了解してもらうには最適だろう、と彼は考えたようだ。

 

 

 コルベットは既にリオナイトに対して依存度を深め始めていたことと、彼と共にする気持ちのいい治療(ヽヽ)と膣内への投薬(ヽヽ)がとても気に入ってしまったということもあって、口裏合わせには非常に協力的だった。

 

 例の合意書の存在も、治療であるという免罪符となり彼女の罪悪感を減少させる方向へ寄与していたし、最早彼女は一日一度は彼に抱かれないと身体の火照りが収まらない程にまで欲求が増してしまっていた。

 

 そして、それがなくなるということを想像するだけで、彼女の胸には不安が広がってしまい、結果的に心理的要因から魔力が暴走し「発作」が起きてしまうという悪循環も時折見られる。

 

 コルベットがリオナイトとの性行為が無くなるということに耐え切れそうになかったということも、彼に否が応でも協力しようという彼女の方向性を決定付けていたようだ。

 

 

 かくして入院から丁度一月が経った頃。騎士団への状況報告会が実施される運びとなる。ただし、その場に肝心の団長の姿はなかった。彼は多忙で、この場に現れる事すら困難だった。

 

 だから騎士団側の人間としてリオナイトの師であるナンテンと団長補佐のナズナがそれには参加していた。彼女達からの報告が、後に団長に対して通達されることになっている。

 

「現代の花騎士では身体の構造上基本的には起こりえない病気ですので、症例が少なく、まだ大半が仮説であることをご了承ください」

 

 リオナイトは予め前置きした上で、現状のコルベットの状態と今までの入院で得られたデータ、そしてそこから導き出されたと嘯かれた仮説を淡々と述べてゆく。

 

 それをナズナは興味津々といった様相で、ナンテンは弟子からの報告に違和感がないかどうかを噛みしめながら聞いていた。

 

「なるほど、ありがとう。大体は理解できた。だが一つ腑に落ちない点がある」

 

 ナンテンの一言に、リオナイトの身体が一瞬固まる。どんな鋭い突っ込みが来るのか。彼は思わず身構えてしまっていた。

 

「月経困難症との関係性だが……そんな単純な話でいいのか? そんなこと言い出したら、『一月一度のアレ』が重い花騎士ほど個の武が強力な花騎士である、という暴論が成り立たないか?」

 

 早速の鋭い指摘に、彼は思わず言葉に詰まる。そこで

「ナンテン先生、実際に私の女の子の日が楽になったのは事実です。それに、聞いた話ですが……スイカズラさんやヒャクニチソウさん、それにスターグラスさんを始めとした賢者の末裔の方々も、『重い』らしいです……」

コルベットが具体例を挙げて彼の仮説を上書きして補強したので、ナンテンは唸らざるを得なかった。

 

 そんなコルベットは、再び深く逡巡し始めたナンテンには見えない形で、リオナイトに目配せを送った。先程の発言が彼女からの援護射撃であるとそれで理解した彼は嬉しそうに微笑んだ。

 

「な、なるほどー! だから花騎士じゃない私は軽いんですねっ☆」

 

 さらにナズナが医師であるとはいえ、男性がいる中にも拘らず自分の身体の事情を軽々しく明かしてしまったものだから、ナンテンは言葉を失って

「わかった、もういい……極論を例にした私が悪かった」

嘆息しつつその話を打ち切るに至る。リオナイトは正直、今回は団長の人選に救われたな、と実直に感じていた。

 

 だが、今回はナンテンが追及を諦めたにすぎず、その事に納得してもらった訳ではない。次の報告ではもう少し具体的な進捗を見せねばならないだろう。

 

 師からの「次はそれを言葉ではなく数字や論文として示せ」という無言の要求に、リオナイトが握る掌には汗が滲んでいた。

 

 この日の報告会では更にコルベットに対する実践的な「リハビリ」として、昨今王立医療センターに寄せられている「往診」についての依頼を試験的にリオナイトとコルベットで引き受けてみるという提案が主治医である彼からなされた。

 

 往診の希望が寄せられるということは、医療が届かない地方部で負傷者や病人が増えている兆しでもある。その原因が何なのかは得体が知れないものの、王立医療センターとしては看過できない問題だった。

 

 そしてそれは元々コルベットが是非にと希望したもの。花騎士に復帰するにあたっても、この休息期間を利用して封印されていた時分との地理的乖離を埋めたいと思っている、という実戦にも係る話であったから、一先ずはブロッサムヒルの内部であれば構わないだろう、という判断で、それは了承されていた。

 

「まぁ何はともあれ、コルベットが元気そうでよかった。引き続き頼むぞ、不承の弟子よ」

 

 会談の終わり際、リオナイトの肩をナンテンが叩く。信頼されている。それが今の彼にとっては一番重たい言葉だった。

 

 

 かくしてリオナイトとコルベットは、王都周辺から少しずつ距離を伸ばす形で、各地から寄せられる往診の依頼を受諾し始めた。最初は日帰りで行ける範囲から。やがて一泊、二泊と、足を延ばしていく算段だ。

 

 

 二人を乗せた馬車が進む街道は、よく手入れされている。

 

 石畳の隙間からは、淡い花色の苔や蔓草が顔を覗かせ、踏み固められた跡が往来の多さを物語っていた。道標は年季の入った木製で、ブロッサムヒル王家の紋章である桜花の意匠が丁寧に彫り込まれている。

 

 春風が吹くたび、花弁が舞い上がり、時折、視界を覆うほどだった。それに混じって、風鈴のような澄んだ音が鳴る。魔力を帯びた花の実が、互いに触れ合って奏でる音だ。甘い花香と、乾燥させた薬草の匂いが、鼻腔をくすぐる。

 

 一見すれば、どこまでも穏やかな道程だった。だがそれは、花騎士が血を流し続けてきた結果として保たれている「表の顔」に過ぎない。

 

 リオナイトは街道脇に打ち込まれた結界杭に目を留める。

 

「……これは、最近打ち直されたものですね」

 

 害虫を街道へ寄せ付けないための楔。古代七賢者の一人、ダインの末裔であるシギラリアによって考案されたとされる術式だ。これが整備されてから、街道で害虫に襲われる事例は激減したという。

 

「昔は、こんな立派な設備はありませんでした」

 

 コルベットは感心したように頷いた。

 

「この道も……花騎士と害虫の血で、舗装されていたようなものですから」

 

 冗談めかした言い方とは裏腹に、その言葉には重みがあった。古代花騎士である彼女の口から語られる過去は、寓話ではなく、事実だ。

 

 やがて遠くに、町並みの屋根が見え始める。その時、御者がぽつりと零した。

 

「最近、この先の町で害虫が増えていてねぇ……先生がたも、どうかお気を付けなされ」

 

 その一言に、リオナイトは無意識に眉を寄せ、コルベットは護身用の剣の鞘を、きゅっと握り締めた。二人にとってそれは、決して聞き流せる話ではなかった。

 

 

 そんな日帰りの往診を繰り返す日々が続いていた或る日。不穏な報せが王立医療センターに飛び込んでくる。

 

「……花騎士が、重態となり、その日のうちに息を引き取る……ですか」

 

 その奇怪な情報を耳にしたリオナイトは思わず眉を顰めた。どうやら深刻な事態であることは間違いなさそうだ。

 

 事案が発生したのは、彼等が以前遠巻きに見ていた街道沿いの中規模交易町。医師が常駐するほど裕福ではないことから、時たま往診の依頼が来るところだった。

 

 命を落としてしまった花騎士は、物資の補充でたまたまその町に立ち寄っただけだった。ところが彼女がその町で一泊したところ、翌朝倦怠感と高熱で動けなくなってしまった。

 

 医療センターの医師がすぐさま駆け付けられるような位置ではなかったから、救急現場となった宿場では応急処置程度しか施しようがなく、彼女はそのまま高熱による多臓器不全で絶命してしまったということだった。

 

 報告にあったのが花騎士だけで、市井の一般人に同様の症状が出たという情報が無かったというあたりに何か得体のしれない不穏な予感がする。リオナイトはそれを肌で感じ取っていた。

 

「それは聞き捨てなりません、んっ❤」

 

 横でその報告を耳にしていたコルベットが、正義感から思わず立ち上がる。だがその勢いまではよかったが、刹那に身体の奥が熱を持つ感覚を得たようで、彼女はそのままもじもじと内股を抑えながら椅子に座り直してしまう。

 

「コルベット……大丈夫か? 小水なら我慢は禁物だぞ」

「だ、大丈夫です……。んぅ、っ❤ ごほん。この間の馬車の御者の方が言うには、その町の付近で害虫が増えているとか……シギラリアさんの楔があるのに不自然ですよね……」

 

 ナンテンが膀胱炎の元であると指摘する。それに彼女は頬に紅葉を散らしつつ首を横に振りつつ続けた。そんな彼女の様子に小さく嘆息したナンテンは

「……一旦置くが。コルベットは取り敢えず、この話が終わったらすぐトイレに行け」

彼女に下世話を焼いてやる。コルベットとしてはその赤恥に小さくならざるを得なかった。

 

「まぁとにかく。コルベットの言う事もあるし、たった一晩でその急性症状はただ事ではないのは間違いない。何か嫌な予感がする」

 

ナンテンがそこまで続けて弟子を見やる。リオナイトはそれに同感だと強く頷く。偶然では片付けられない、と彼の直感が告げていたからだ。

 

「決定だ。二人にはその町へ往診に行って貰いたい」

 

 師弟揃って覚えた違和感。それは最早確信に近いものだった。かくしてナンテンは王立医療センター内では半ば遊撃部隊(ヽヽヽヽ)とも揶揄されている二人への出動を要請したのだった。

 

 

 ナンテンからの事前情報によれば、その町への花騎士の訪問は非常に珍しく、立ち寄った者は半ば「守護者」扱いされてしまうらしい。今回不幸にも命を落としてしまった花騎士も、そうして宿代は結構だからと言いくるめられて投宿したようだった。

 

 それは防衛機能や医療体制が十分でなく、花騎士という存在に依存して成り立っている町であることの裏返しだ。

 

 どこに何が潜んでいるか分からない以上、いつもよりも慎重にならねばならない。それはコルベットの戦闘勘からの助言だった。

 

 

 かくしてリオナイトとコルベットはその町までの移動の途上にあった。

 

 今回は害虫の襲撃を受ける可能性が高く、馬車を使っての移動は不可能だ。必然的に、普段ならば一日もあれば到着するところ、三日の旅程となっていた。

 

 コルベットは久々に昼夜を問わずリオナイトと二人きりということで、少し浮かれているようにも見える。だから彼は、いつもよりも少しだけ、彼女を気遣っていた。

 

「リオくんは、お姉ちゃんが必ず守ってあげますからね❤」

 

 朝一番の「治療」を終えたからか、彼女はとてもご機嫌だった。

 

 ここのところ、彼女はリオナイトを年が離れた弟のように扱う事が多くなってきた。勿論本当の姉弟であればこんな倒錯的な関係にはなりようが無いはずだが。

 

 未だ彼女に深い敬意を抱いていてよく懐き、それでいて時折初心な側面も見せるリオナイトに、コルベットはすっかりのめり込んでしまっている様子だった。

 

 

 だが、その穏やかな時間は唐突に断ち切られた。

 

 風が、突然止んだ。草原を渡っていたはずの春風が、まるで息を潜めたかのように凪ぐ。鳥の声が消え、虫の羽音すら聞こえなくなる。

 

「……止まって」

 

 コルベットが低く告げた。その声音には、先ほどまでの甘さは一切ない。

 

 次の瞬間だった。地面が、盛り上がった。土と花弁を巻き上げるようにして、巨大な害虫が躍り出る。甲殻に覆われた胴体、節足が擦れるたびに鳴る不快な音。

 

 シギラリアの楔が効いているはずの街道沿いで、しかも昼間に見るにしては前例のない、視界の端から端まで甲殻が連なる明らかに異常な個体数。味方にも相応の戦力さえあれば、大規模戦を即座に検討する数だ。

 

「こんなに……っ⁉ リオくんは倒そうとはしないで、できるだけ回避に専念して‼」

 

 コルベットが前に出る。剣を抜く動きに一切の淀みはなく、花騎士としての本能が完全に表に出ていた。然し

「コルベットさん、抑えて、抑えてくださいねっ!」

護衛用のレイピアを握りしめつつ応戦するリオナイトからの声に呼応して、彼女は自然と魔力を抑えて戦うことを自身に課していた。

 

 本来の彼女の魔力と力量であればものの数分で屠れる程の敵。だが、今は主治医であり彼女自身の存在価値ともなりつつあるリオナイトを護衛しながら、現役当時の十分の一程度の力で戦わなければならない。

 

 如何に彼女のような歴戦の兵でも、ここまで不利な条件が重なったならば、数に圧倒され始めてしまうのは必然だった。やむを得ず、コルベットは少しだけ魔力の出力を高める。

 

「コルベットさんっ‼ これ以上はだめ、だめですからねっ‼」

 

 恐らくそれは、現状彼女が正気を保っていられる最大限の魔法力。リオナイトからの忠告を、コルベットは律儀に死守しようとしていた。だが

「ッ⁉ リオくん、下がって!」

その声が届くより、ほんの一瞬だけ遅かった。草むらから跳ね出した小型の害虫が、回り込むようにしてリオナイトへと迫る。彼はいよいよ過去のトラウマを想起させられ、足が竦んでしまう。

 

「ぐぅ、っ!」

 

 布を裂き、肉を抉る鈍い衝撃。短い呻き声と同時に、リオナイトの身体がぐらりと傾ぐ。

 

「リオくんッ‼」

 

 その名を叫んだ瞬間、コルベットの中で何かが切り替わった。甘やかす姉でも、恋する女でもない。彼を失うかもしれないという恐怖。それを得たことで今そこに奮い立っていたのは、ただ一人、血を流す者を守るための、古代花騎士だった。

 

「ッ‼」

 

 瞬時に全魔力を開放したコルベットは世界が歪む感覚を得て小さく呻きながらも、

「よくも……よくも、ッ‼」

かつて軽口を叩いたポトスにも向けようとした物騒な茨を周囲に発現させて、敵との間合いを詰めてゆく。刹那だった

「待ったァ!」

勇ましい掛け声と共に、桃色の看護服が翻る。それはリオナイトの師であるナンテンが常日頃から目の敵にしている「チューリップ四姉妹」の長女、レッドチューリップだった。

 

「あんた、コルベットね。古代花騎士の。王立医療センター(ナンテンのところ)に入院中って団長からは聞いたけど、まさかこんなところで切り結んでるなんて、どうかしてる!」

 

 どうやらコルベットの事情を知る様子のレッドチューリップは、魔法力をコルベットに使わせないよう、敢えて自分に敵を引きつけながら攻撃を受け流しつつ戦う。その豪快な戦い方に、コルベットは思わず感嘆の息を吐いていた。

 

「こら! ぼさっとしてないで救命措置‼ イエローとパープルも急いで!」

 

 それでも余所見をする余裕があるレッドチューリップは、立ち竦んでいたコルベットを叱咤する。続けて長姉に呼ばれた次女と三女も駆けつけてきて、リオナイトに応急処置を施してゆく。

「姉さん、おまたせ!」

「ホワイト、首尾は⁉」

「いつでもオッケーです!」

最後に四女が何やらの準備を整えて現れてくる。長姉からの合図で彼女は魔法力を発動した。途端、周囲に土煙が立ち込める。

 

「今だ、逃げろッ‼ 全速力ッ‼」

 

 レッドチューリップの号令で、イエローチューリップはコルベットを、パープルチューリップとホワイトチューリップは担架に乗せたリオナイトを担いで戦場を離脱する。

 

 このまま戦闘を継続していれば手遅れになるかもしれない。そう判断したからこその、戦略的撤退だった。

 

 

 レッドチューリップの機転と的確な指示により、コルベットとリオナイトは一先ず危機を脱する事が出来た。だが、彼女にとっての代償はあまりにも大きかった。

 

 町にほど近い森の中へと撤退した一団は、簡易的な野戦病院を開設していた。この現状、応急処置と止血が彼の死命を分けるからだ。

 

「ホワイト、どう?」

「止血はなんとか……。ですが、私の治癒魔法では傷と体力は一度には治せません。ですから、この後身体反応として出る高熱はどうしても免れないかと……」

 

 姉からの問いに、ホワイトチューリップは冷静に語る。一方その様子を、コルベットはリオナイトの手を握って少し狼狽しつつ観察していて、

「ごめん、ごめんね……もう少し私がちゃんと敵を受け止め切れていたら……」

彼女はひたすら後悔の念を口にしていた。そのコルベットが握るリオナイトの手は、既に火照るほどに熱かった。

 

「何を言っているの。あんたであれなら、ブロッサムヒルの精鋭が勢ぞろいでも全くの被害なしは無理だった。寧ろあの量の害虫がいて、よくあそこまで減らしたと感心するくらいよ。あんたはよくやった」

 

 レッドチューリップも割と冷静だった。二十体以上いた害虫は、コルベットによって四分の一まで減らされていた。対してこちらはリオナイトの負傷のみ。結果だけを見れば、被害は最小限だった。

 

「それでも、リオくんが……」

「わかってる。だからなんとかしようとしている。先ずは落ち着きなさい。手握ってるなら、ついでにそのまま脈拍数えておいてね」

 

 消沈するコルベットに、レッドチューリップは竹筒に入った水を差し出しつつ指示した。これから町の中に入るまでは、まだまだ油断できない状況が続く。

 

 移動するにあたってはどうしてもコルベットにも動けるようになって貰わなければならない。レッドチューリップの行動には、そうした意図が透けて見えた。

 

「姉さん」

 

 そこへどうやら偵察に出ていたイエローチューリップがやってくる。

 

「奴らも一旦どっかに消えたみたい。今なら町までいけそうだよ」

 

 妹からの偵察結果の報告に、長姉は大きく頷いた。

 

「よし、移動するよ。あんたはその子を抱えてあげて。また襲われた時に担架じゃどうしても足が遅くて追いすがられる」

 

 レッドチューリップはコルベットにも指示を出す。彼女は与えられた役割を全うすべく、覚悟の表情で頷いた。早速リオナイトの身体を抱いた胸元に伝わる異様な熱に、彼女の決意が揺らぐ暇はなかった。

 

「今度は、私があなたを守る番……」

 

 そうして決意を新たにするコルベットの様子に

「……なるほどね。これは確かに、厄介だ」

レッドチューリップは苦笑交じりに心の中で独り言ちるのだった。

 

 

 結果として、害虫による殿軍への追撃は発生しなかった。先程豪快かつ一切退かぬ戦いを見せたレッドチューリップと、そして大量にいた筈の同類をほぼ一人で半減以上させたコルベットが揃っている。その事実だけで、害虫たちに対しては十分な抑止力となったようだ。

 

 その視線の中心にあったのは、負傷したリオナイトを抱えたまま、それでも背筋を伸ばして歩くコルベットの姿だった。

 

 彼女が腕に抱く彼の身体は熱く、そして驚くほどに重く、まるで彼の命そのものを抱えているかのようだった。意識を向ければ、今にも胸の奥が崩れてしまいそうだったから、彼女は敢えて心を無にしていた。

 

「泣くのは、宿に着いてから」

 

 これは実はレッドチューリップの策だ。

 

「あんたが一番強そうなのに、くよくよしてたらナメられる。しんどいとは思うけど、宿に着くまでは堂々としてなさい」

 

 その言葉に従い、コルベットはただ前を見て歩いた。その姿に、子供たちは目を輝かせ、大人たちは安堵と畏敬が入り混じった視線を向ける。

 

「私達は王都から回診に来た医師です。申し訳ない、仲間の一人が害虫の襲撃で負傷してしまって……」

 

 進み出たレッドチューリップの言葉に、町長らしき初老の男は深く頷いた。

 

「それは……さぞお辛かったでしょう。すぐに宿を用意させましょう」

 

 この町の空気は、噂通り花騎士が来るだけで一変した。それは歓迎であると同時に、救いを求める切実な依存でもあった。

 

 

 コルベットは宿に到着してリオナイトを寝かせるなり、レッドチューリップに

「これからあんたにはまだまだやってもらうことが山ほどあるけれど、夜までは一旦私達に任せなさい。暫くは逗留することになるだろうから、あんたはこの町に何があるのか確認してきて」

宿を追い出されてしまったから、手持無沙汰ながら地理修得の為に街を見て回っていた。

 

 この町の産業は農作物の加工とこの先へと旅をする者達への物資の提供で成り立っているようだ。

 

 朝は鐘と共に市場が開く。薬草商、蜂蜜屋、染料屋が主に活況だ。だが、ふと路地裏に目を向ければ、家屋の壁には害虫被害の痕跡が随所に残ったまま。修繕が間に合っていないのは、定期的に襲撃を受けて疲弊している証左だ。

 

 そして夜は早く門が閉まる。防壁とは名ばかりの、土塁に囲まれた程度の守りだ。不寝番の数も多く、それに従事する年端もいかぬ若者の比率が高い。夜襲を受けたならばひとたまりもない筈だ。

 

 その光景は、かつて戦場で見た「守り切れなくなった町」とよく似ている。コルベットはその時にそんな深刻な印象を得ていたのだった。

 

 

 チューリップ四姉妹は宿屋の一室を借り受けるなり、寝台を治療用に整えて、そこを簡易的な医院へと変貌させていた。

 

 更に彼女達は器具不足や薬剤不足を嘆きながらも、コルベットが得て来た情報から示唆を更に得て、町の特産品である薬草を用いて止血剤や解熱剤へと調合するなど、現場で培われた野戦医療の粋を十二分に発揮してリオナイトを救おうと身を砕いていた。

 

 その夜、コルベットは早速、リオナイトの不寝番を任されていた。

 

「単なる最強の武人。ただそれだと思っていたけれど、意外だった。あんたはどうやら看護師としての心得があるようね。今のあんたなら、感情に溺れずに手を動かせるでしょ。だから、今晩の彼の面倒は一旦あんたに任せる」

 

 レッドチューリップは一瞬で彼女の素質を見抜いていた。その切欠はあの野戦病院の最中に出した脈を取れという指示に一切狼狽せず正確な数値を報告し続けたという点だったらしい。

 

 そんな細かいところまで一瞬で見ていたとは。それを聞いたコルベットはリオナイトの事を任せて貰える喜びと同時に、先達であるレッドチューリップに対して深い敬意を抱かざるを得なかった。

 

 かくして、コルベットはリオナイトと再び二人きりとなる。ただ、午前中の甘い時間とは空気がまるで違った。

 

「もし、あの時私が初めから全力を出していたら……。ううん。それでも、リオくんが傷つかなかった保証はない……」

 

 コルベットは「正解のない選択」をした自分の行動に、戸惑いを覚えていた。何が正解だったのか分からない以上、彼女は自分の判断を責め続けるしかなかった。

 

 そんな彼女は、普段リオナイトが患者に向けて行っている様子を思い出しながら、見様見真似で脈拍や呼吸数、発汗の有無などを記した簡易的なカルテを作成していった。

 

 拙いながらも、そこに記された数値は正確だった。ただ彼の手首に触れるたび、その熱と重さが、彼女の胸を静かに締めつけていた。それでもコルベットは筆を止めなかった。これは祈りではなく、仕事。それが彼を生かすための、現在の彼女の唯一の役割だった。

 

 そして彼女が一晩のうちに作成したそれは、翌日以降のリオナイトに対する治療方針決定に大きく寄与することとなる。

 

 

 リオナイトはコルベットの看病と不寝による観察で先ずは一晩を越す事が出来た。しかし負傷による身体への影響が大きく出始めるのはこれからだ。

 

 イエローチューリップとパープルチューリップは調合した薬とその使い方をコルベットに教示する。普段は人体実験気味の調合を試しがちな彼女達も、こういった真面目な現場では冗談を抜きにして動けるようだ。

 

 そしてホワイトチューリップは医師というよりは看護師のような立ち回りで姉たちとコルベットを支援してくれる。だから彼女は、まるで普段王立医療センターで医療者として従事している時のような心強さをこの時感じていた。

 

 そんな中、患者の様子を見に来たレッドチューリップは、ふと彼女が寝台横の小机に置いていた診療記録を手にして目を見張る。

 

「あんた、医者じゃないのに無茶しすぎ。というかね。ここまでやったら、もうとっくに『看護師』の範疇を超えている」

 

 その内容は既にその辺の医師が書いたものだ、と言われても遜色がない程の仕上がり。それでいて、リオナイトに施された点滴やドレーンの配置も完璧だった。それも、レッドチューリップの高評価に繋がっていた。

 

「今は一旦私と替わりなさい。あんたも、昨晩から動き続けでしょう」

「でも……」

 

 レッドチューリップはコルベットに休息の指示を出す。当然彼女はそれを渋るが

「いい? あんたが『ただの看護師』だったら、ここまでは言わない。極論を言えば、倒れるか患者が峠を越えるまでこき使うわ。でも、あんたは最早『医者』の一人。花騎士でも古代の英雄でも関係ない。医者が倒れたら、次に倒れるのは患者」

レッドチューリップは語気を強めてコルベットを諫める。それはかつてリオナイトが口にしていた「休養も、『医療者』としては、仕事のうち」という言葉とも重なるから、彼女は胸を押さえて立ち竦む。

 

「……私が、医師……ですか?」

 

 その問いのあと、コルベットはすぐに次の言葉を続けられなかった。その役割が、怖いほど胸に重く、同時に温かかったからだ。

 

「そう。それに、あの子は『あんたの声掛け』で息が落ち着く」

 

 レッドチューリップが指摘したそれは、かつてリオナイトがコルベット自身のカルテに彼女の得難い素質として記載していた事と同様だ。彼女の言葉には、周囲を落ち着かせ、更に鼓舞するような効果がある。それをレッドチューリップは一瞬で見抜いていたようだ。

 

「あんたに、今倒れられると困るんだよ。あの子も、私達も。そして倒れたあんた自身も、目覚めてからきっと後悔する。医者という仕事の人間はね、自分の命も「道具」に含めて考えなきゃいけないんだ。私も昔、無理して倒れた医者を何人も見てきたからね。だから私は、倒れない医者の方が信用できる」

 

 レッドチューリップは優しく、だがはっきりと彼女が今休まなければならない理由を告げた。それをコルベットはかつてのリオナイトの言葉と重ねて、染み入る様に聞いていた。

 

「さてと。ここまで書いてくれたなら、私も医師として引き継ぎに応じない訳にはいかないわ。休む前に、今後の簡単な方針を決めましょうか、『主治医』さん」

 

 持っていたカルテをそっと机の上に戻したレッドチューリップが、コルベットに優しく微笑みかける。彼女はそれに嬉しそうに頷いた。

 

 レッドチューリップが示した方針は、熱を下げることより体力を残すこと。そして出来るだけ長い時間眠らせること。この二つに重きを置いたものだった。

 

「花騎士は害虫を倒すのが仕事だけど。医者は待つのも仕事だよ」

 

 一朝一夕で治る病気や怪我なら医者は不要。それはレッドチューリップの持論であり、コルベットからすればやや極論にも聞こえた。だが、「待つ」という選択肢を今まで持ちえなかった彼女は、それを受けて深く考え込まざるを得なかった。

 

 

 一旦の仮眠休息を取り、午後の遅い時間に目覚めたコルベットは、存外体力を損耗していたという事を自覚していた。レッドチューリップの忠言は正しかったのだと、ようやく実感を伴って腑に落ちてくる。

 

 あのまま意固地にリオナイトに付き添い続けていたなら、極度の疲労から「発作」を起こしていたかもしれない。この状況で、それだけは決して許されない。今の彼女は、理性が欲望を確かに制御していた。

 

 乱れた髪を櫛で整え、身支度を整えたコルベットが「現場」へ出向くと、本来なら王都でも大病院でしか使われない医療器具を、野戦に慣れた彼女たちはそれを当然のように使いこなしていた。彼女はそれに感嘆を覚えていた。

 

 知識はあっても、物がない。その現実が、この場の医療を戦いに近づけていた。そして早速、薬草と清潔な水が不足し始めていることが分かる。コルベットは迷わず、その補充を引き受けていた。

 

 彼女は看護服に身を通したままに市場へと出向いていた。

 

 戦装束ではない染料屋の花布。薬ではない蜂蜜屋の甘い香り。害虫被害の痕跡が残る壁と、修繕の槌音が響く家屋。そして、それに携わる人々の活気ある声。それらを五感で受け止めながら、

「この町は、確かに守られながら、生きている」

コルベットはそう思うのだった。

 

 

 夜間の「当直」は引き続きコルベットが担当することになった。昼間のレッドチューリップ、夜間のコルベットの二軸体制だ。

 

「リオくん……」

 

 コルベットが彼の名前を呼ぶと、脈がほんのわずかに変わる。そして彼の手は、無意識のうちに彼女の手を掴んでいた。それでコルベットは、彼が必死に生きようとしているという事を把握し、嬉しくなる。

 

「戦っていない時間が、こんなにも長い……」

 

 リオナイトの脈拍記録を取り終えて点滴の交換をしながら、コルベットがふと思ったことを独り言ちる。花騎士としての役割から外れて、そろそろ二か月が経とうとしていた。

 

 コルベットは改めて、団長と過ごす時間との違いを意識してしまっていた。今、外園の状況はどうなっているだろうか。休業中の花騎士である彼女にはそういった戦況は一切届いてこない。

 

 団長の様子から正念場であるのは間違いないところだろう。それに対して、コルベットは罪悪感を覚えていた。一方で彼女は、戦うだけがあり方ではない、という事にも気付いていて、戦うこと以外にも役割があるという事に安心感も得つつあった。

 

 そんな彼女の今の立場があるのも、リオナイトがあってこそ。戦場で背中を預ける相手と、寝台で脈を預かる相手は違う。彼女の守る対象は無意識のうちに次第に団長から主治医へと移ろいつつあった。

 

 

 長かった二日目の夜も明け、市場も開こうかという時間。そろそろ交代の頃合いだった。だからコルベットはもう大丈夫だろうと油断していた。刹那だった

 

「ぐ、んぅ、っ……」

「リオくんっ⁉」

 

 突然リオナイトが苦しみ出す。慌てて彼の脈を取ると、拍動は不規則で、指に伝わるほど速かった。熱も高く、呼吸も浅い。典型的な高熱症状だった。

 

「慌てるな。先ずは鎮痛剤の投与と補液を優先。それが終わったらホワイトとイエローを起こして来て。緊急事態だって」

「は、はいっ」

 

 コルベットの悲鳴を聞いて駆けつけてきたらしいレッドチューリップが、冷静に指示を出す。コルベットはそれに黙々と従った。

 

 更にホワイトチューリップが駆けつけて来たことで、早速彼の身体に治癒魔法が掛かる。

 

「塩梅はどう?」

「傷は塞がっているようですが、炎症が起きている。それで高熱が出てしまっていますね。炎症自体は薬に任せるとして、今は体力を底上げするヒールを掛けています」

 

 レッドチューリップからの問いに、ホワイトチューリップはあくまで冷静に観察した結果を伝えている。その横では、末妹からの情報を基に、イエローチューリップが早速抗炎症剤の調合を開始していた。

 

 自分はただ焦る事しか出来なかった。指示を出す声を出すこともできなかった今の自分には、判断を下す資格はない。そんな三人を眺めながら、コルベットははっきりと無力感を覚えていた。そんな彼女に

「よく知らせてくれたよ。手遅れにならなかっただけまだいい。油断は大きな失点だったけど、あんたはチームの一員としてはちゃんと仕事をした。だからそこは胸を張りなさい」

悲鳴を上げたことが結果としてリオナイトの命を守ることに繋がったとレッドチューリップは評す。それにコルベットは嬉しさと悔しさが入り混じった複雑な心境のまま、涙を零していた。

 

 それはリオナイトが助かった事に対する安堵の涙であり、もっと上手く出来たはずだという悔しさの涙でもあった。

 

 

 リオナイトの容態は即席ながら連携力を高めつつある医療チームの尽力により再び安定期へと落ち着いたようだ。

 

 治癒魔法を担当していたホワイトチューリップは、この町が薬草の名産地と聞いて市場を物色しに行くと言い出した上の姉二人を監督するため、現場を中座して彼女達と行動を共にしていた。どうやら姉妹の財布を司っているのは末妹であるようだった。

 

「……ふぅ。ひとまず峠は越えたね」

「本当によかった……まだ熱は高いですが、呼吸は落ち着いています」

 

 不寝のまま対応したコルベットの顔には心地よい疲労感が浮かんでいた。それをレッドチューリップは意味あり気な笑みを浮かべたままに眺めていた。

 

「医者の顔してるときのあんた、妙に必死だよね」

「主治医、ですから……それに……」

 

 ふと、レッドチューリップが思った事を口にする。それにコルベットはさも当然だと口にするが一部言い淀む。何か思うところがあるということを察したレッドチューリップは

「それに?」

「……いえ。何でもありません」

続きを促す。しかしコルベットは首を小さく振った。嘆息したレッドチューリップが

「はいはい。で、その『何でもない』顔がさっきから曇りっぱなし」

既に表情に出ているから遅いと指摘しながら、この際だから吐き出してみろ、と更に促す。それでコルベットは一瞬逡巡してしまうが。目の前の女性がここまでリオナイトを助ける事に尽力してくれた少なくとも信用できる相手と判断した彼女は

「……私は。花騎士としては、失格かもしれません」

いよいよ薄々感じていた事を吐露してしまうのだった。

 

「戦えなくて、守れなくて……。それなのに、リオくんを……守りたいと思ってしまって……」

「ふーん……。リオくんか。なるほどねぇ」

 

 コルベットの悩み。その核心のようなものを耳にしたレッドチューリップは、

「あんたさ、自分が何に悩んでるか、ちゃんと分かってる?」

「……分かりません。ただ、胸が苦しくて」

彼女に自覚を促すかのように問う。当然コルベットはそれが分かったら苦労しない、と息を吐いた。それに再び嘆息したレッドチューリップが

「じゃあ単刀直入に聞くけど。あんた、あの医者の子、好きなんでしょ?」

コルベットの肯綮に当たる事を追及する。その事実を突き付けられたとき、今まで「答え合わせ」をすることから逃げて来た彼女の心に葛藤が生まれる。

 

「否定しないんだ」

 

 レッドチューリップが更に問うと、いよいよコルベットは押し黙ってしまった。

 

「団長とは、誓いがあるんだよね」

 

 彼女の左手に付く証を横目に、レッドチューリップは指摘する。それにコルベットは小さく頷いた。

 

「でも誓いがあっても、心まで縛れないでしょ。人間の心なんて、そんな単純なものじゃ決してない」

 

 レッドチューリップの言に、コルベットははっとする。そんなことは考えてはいけない。心のどこかでそう思っていた。それを彼女は今まさに自覚していた。

 

「そんなこと、考えたことも……」

「でも、今、考えちゃったよね?」

 

 笑顔で追及するレッドチューリップの様に、コルベットは真っ赤になったまま押し黙ってしまう。

 

「安心しなよ。別に団長さんという者がありながら、とかそんな下世話な事は思ってないし、そもそも責めてないよ。ま、今の私はあんたの心療内科医だと思ってくれればいいよ」

 

 これは医療処置だ。レッドチューリップがそう宣言したので、彼女は自分の思考の善悪を判断しなくてもよくなった。それだけでも彼女の負担は少しずつ軽くなっていた。

 

「寧ろさ。あんた、今生きてるって感じがして、いい顔してるよ。誰かの役に立つためじゃなくて、誰かを想って動いてる顔してる」

「……私には、そんな資格は……」

「資格が要るのは『命令』する場合でしょ。自分の『気持ち』には要らない」

 

 それでも自分を否定しようとするコルベットに、レッドチューリップが指摘する。命令に従うことと気持ちに従って動くことをはき違えるなと彼女は言った。

 

「でも……私は、普通の女の子じゃありません。『普通』には決してなれない、存在……」

 

 いよいよコルベットは自身の思考の奥底に染み付いている憧れと劣等感を吐露した。それが聞きたかったんだ、と大きく頷いたレッドチューリップは

「じゃあさ。『普通の女の子』らしいこと、してみたら?」

彼女に対してその「普通」とやらを経験してみたらどうかと提案した。その意図が汲めず、コルベットは口よどんでしまう。

 

「深い意味じゃないよ。たとえばそうね。ちょっと可愛い格好して、誰かを元気づけるとか、さ」

「……それは……花騎士として相応しくないのでは」

 

 具体例を挙げたレッドチューリップに、コルベットはつい先入観から物を言った。それが面白かったのか、

「あはは、あんた今まで散々主治医の顔して来て、それ今更言うんだ? ここまで一生懸命やってきて、あんたもよくわかってるでしょ。花騎士は戦うだけが仕事じゃない、って」

レッドチューリップはその言い草を笑い飛ばしてやる。それでコルベットもいよいよ気付いてしまう。そういう未来があってもいいのだと。

 

「それに、あの子、ナンテンの弟子だっけ。あんたは彼に何か複雑な病気を治してもらっているみたいじゃない。噂には聞いてる」

 

 それは自身の病気のこと。口に出すのが憚られる恥ずかしい治療法が確立されつつあるという事実は漏れ出ていないようで、コルベットは内心安堵していた。

 

「なら、元気になったら『いつもありがとう』の気持ちくらい、形で見せてあげな」

「形、で……」

 

 心療内科医としての彼女のそれに、コルベットは思わず心を突かれていた。

 

「無理にとは言わない。決めるのはあんた」

 

 続けてレッドチューリップが放った言葉に、コルベットは小さく頷いていた。

 

「では『先生』。一つ、聞いても?」

 

 コルベットは改めてレッドチューリップに向き直ると

「……普通の女の子なら……こういう時、どうするのでしょう……」

普通が分からないという者として、それを訊ねてみたのだった。それを問われたレッドチューリップは一瞬の逡巡のうち

「さあね。そもそも『普通って何?』って話だから。でも少なくともさ、何もしないって選択は、後で一番後悔する。それだけはハッキリ言えるかな。医者って、感情を後回しにするのが得意だからさ」

一部自嘲気味に、後悔のないようにすることが肝要だと言葉を贈る。コルベットはそれを深く噛みしめるかのようにゆっくりと頷いた。

 

「ま、真剣に考えなさい。時間は、あるようで意外とないものだし。そして医者でも花騎士でも、感情はゼロじゃない。大事なのは、感情に溺れないことじゃない。見ないふりをしないことだ」

 

 レッドチューリップが続けた言葉は、揺れ動く彼女の心に大きく刺さるものだった。

 

「……ま、今はまず治すのが先だね。その先は、女の子の仕事さ」

 

 そこまで耳にしたコルベットは言葉に詰まっていた。自分の想いを否定しなくていいと示されるとは思っていなかったから、猶更だった。

 

 

 その夕方、リオナイトの容態は目に見えて安定し始めていた。高熱は引き、荒れていた呼吸も次第に整っていく。刺激に対する反応も戻りつつあり、回復までは、もう一息というところまで来ている。

 

 数値と反応、そのすべてが「峠を越えた」と物語っていた。

 

「……よかった……」

 

 その事実を確かめきった瞬間、コルベットは堪えていたものを零すように、静かに涙を看護服に落としていた。

 

 それは医師としての達成感ではなく、看護師としての責任感でも、守れなかった花騎士としての悲壮感でもない。ただ一人の人間として、大切な存在が生き延びたことへの、純粋な安堵だった。

 

 胸の奥が、じんわりと温かくなる。その感覚から目を逸らそうとして、彼女はやめた。もう、分かっていたからだ。

 

 自分はいつの間にか、団長に向けていたそれとは違う形で、それよりも深く、この男を想い始めてしまっている。守る対象が、役割ではなく「人」へと変わってしまったのだと。

 

 それは、怖いほど確かな自覚だった。だが同時に、コルベットはその想いから逃げないと、静かに決めていた。

 

 

 リオナイトは実に三日ぶりに意識を取り戻していた。右脇腹には縫合の跡。自身が害虫にやられて深手を負ったということまで、彼はそれで把握していた。すると

 

「――ッ」

 

 その彼の胸に、看護服に身を包んだコルベットが何も言わず飛び来んでくる。抱きしめたまま、ほんの数拍の沈黙。それだけでも、リオナイトの心は一杯になっていた。

 

「あなたが必死に庇ってくれなかったら、私も無理をしてしまって、結局あの場で斃れていたかもしれません」

 

 身体を離したコルベットは涙ぐみながら言葉を漏らす。それを聞いて彼女も暴走せず無事だったと理解したリオナイトは

「コルベットさんが無事だったなら、イテテ……この負傷も、名誉だってことでしょう」

少し軽率に軽口を叩いてしまう。それに彼女は

「バカッ‼ 本当に、死ぬところだったんですよ⁉」

大粒の涙を零しながら、再びリオナイトの身体にしがみ付くのだった。

 

 そんな彼女の身体を抱き返しながら、彼はコルベットと互いに持ちつ持たれつの関係になれたことに、思わず嬉しさを感じてしまっていた。

 

 

 彼が意識を取り戻したということを、コルベットは改めてレッドチューリップに報告していた。リオナイトの主治医はコルベットだったが、医療チームのリーダーは間違いなく彼女だったからだ。

 

 その報告の途中、早速コルベットは言葉を詰まらせ、感極まってしまっていた。それを微笑ましく眺めていたレッドチューリップは

「それじゃあさ。本当に女の子らしいこと、してみなさいよ。レッスンその一よ。『不肖の弟子』さん」

半ば冗談、半ば本気で、一つの紙袋を彼女に差し出した。コルベットがそれを開いてみると、中には賭場に務める女性が身に着けている事が多い、兎を模した大胆な衣装がそこには収まっていた。

 

「こ、これは……⁉」

「あんたも見たことはあるでしょ。ウチの騎士団にも、バニーはいるものね」

 

 レッドチューリップが口にした通り、アステリカリスやブプレウルムといった、兼務する生業の都合でこれを正装としている花騎士もいくらか存在する。そんな彼女達が身に着ける格好であるから、当然露出度も高い。

 

「たまたま服屋があったから、どんなものがあるのかなーって見てみたら、なんと掘り出し物。しかも半額セール中。背丈も丁度良さそうだったから、頑張ったあんたにご褒美ね」

 

 聞いてもないことを口にしながら、レッドチューリップは楽しそうに笑った。

 

「あっ、勿論あくまで冗談よ? 本気にしなくても結構だし、嫌なら着なくても全然いいからね」

 

 強制するつもりはない。そう強調したレッドチューリップだったが。コルベットは視線を落とし、その布地を胸元に当てたまま逡巡していた。それで

「存外、本気なのね……?」

レッドチューリップは覚悟の決まった乙女の顔をするコルベットを見て、内心独り言ちるのだった。

 

 

 与えられていた自室に戻ったコルベットは、しばらく姿見の前に立ち尽くした末、看護服と身に着けていた下着を脱いで、自らの意思でそれを身に纏ってみる。

 

 鎧を着る時とはまるで違う感覚。そしていよいよ煽情的な格好を身に纏ってしまった鏡越しの自分への戸惑いが、彼女の頬に紅葉を散らした表情からは滲んでいた。

 

 一方で、戦装束では決して向けられないリオナイトからの熱視線を、彼女は想像してしまう。それだけで、彼女の身体の芯は熱くなる。

 

「でも……普通の女の子は、こういうこともするの?」

 

 普通とは何か。その答えをコルベット自身未だ見いだせていなかった。だが、少なくとも医師としての先駆者であるレッドチューリップは知っていた。これが男性を喜ばせる格好であると。

 

「彼が、少しでも元気になるなら……」

 

 その思いが胸に満ちたとき、彼女は静かに息を整える。コルベットの足は、自然と扉へと向かっていた。

 

 

 コルベットはリオナイトの病室の前に立ち、扉に手をかける。だがすぐには開けることが出来なかった。室内から微かに聞こえる物音、あるいは人の気配を彼女が感じとったからだ。

 

 彼女はそれをチューリップ四姉妹のいずれかによる「医師としての処置」だと思おうとする。だがどこか胸騒ぎを覚えてしまっていた。

 

コルベットが深く息を吸い込んで早鐘を打つ心を鎮めようとする。その事で彼女はいよいよ自分が今「花騎士」ではなく一人の女(ヽヽヽヽ)としてここに立っていることを自覚していた。

 

 コルベットは無意識に永遠の誓いの指輪に触れてしまう。だが、しかし、彼女は暫くの逡巡の後、その手をそっと離した。

 

「今日は、指輪の役割ではないよね……」

 

 コルベットはそう自分に言い聞かせつつ、いよいよ決心したのか一つ深く息を吐いた。

 

 

 リオナイトは怪我から立ち直ったことで、深刻な生理現象に苛まれていた。即ち、身体が治ってきたことで生存本能から肉欲が増長してしまうという、医学的には順当と見做される身体反応だ。

 

 特に負傷して生死の境を彷徨うまでは毎晩どころか一日二回程コルベットと身体を交えていたということもあり、溜まりゆく要望は限界に達してしまっていた。

 

 一人で処理しようとしたところで、微かなノックの音と共に

「コルベットです。入っても……よろしいでしょうか」

部屋の外から声がする。それでいよいよ下半身を露出しようとしていたリオナイトは慌てて佇まいを正した。

 

「す、すみません。どうぞ」

 

 上ずった声でリオナイトが入室を許可する。暫しの沈黙の後おずおずと入室してきたコルベットの姿を目の当たりにした彼は、思わず言葉を失って固まってしまう。

 

 彼女は噂に聞く移動式賭場「パルファン・ノッテ」の従業員が身に着けているような、兎を模した肌の露出が多い煽情的な衣装を身に付けていた。胸元から下半身を包む黒いラバー生地の艶とコルベットの白く美しい肌とが見事に調和していたから、彼女のその姿はリオナイトの目には非常に美しく、そして蠱惑的に映っていた。

 

 すぐさま彼の顔は真っ赤に染まる。リオナイトは視線の置き場に困って

「どうして……その……」

医師として整えてきた語彙を失ってしまっていた。そんな顔を真っ赤にしつつも目を逸らさせずにいるリオナイトの様子に

「無骨な戦士である私が、こんな格好……似合いませんよね……?」

コルベットは震えながら、一瞬言葉を詰まらせつつ、自己肯定感の低さを強調する言葉を吐露する。それにリオナイトは首を何度も横に振りながら

「そ、そんなことない、ですっ! 正直、その、しっかりと強調されたおっぱいも、可愛らしいお尻も、その格好だと、とてもとても、魅力的すぎて……正直、たまらない、です」

思わず具体的な高感ポイントを様々口走ってしまう。それは医師としての語彙ではなく、完全にリオナイト個人の、男としての欲望に塗れた言葉だった。

 

 その普段の彼ならば絶対に口にしないであろう欲望丸出しの言葉で褒められたことで、救われた気持ちになったコルベットは

「ふふ、よかった……リオくんが、喜んでくれました……❤」

嬉しそうな表情のままゆっくりと近づいてくる。

 

 そうしてリオナイトの股間の様子を確認したコルベットは

「あっ……❤」

思わず嬉しそうな声をあげた。それは生理現象が半分だったが、もう半分はコルベットの煽情的な様子を見た事による彼の本心だった。

 

「もうこんなに……嬉しい……❤」

 

 コルベットはゆっくりと寝台へと乗りかかると、丁寧にだが手際よく、彼の身体に付属していた医療機器を取り外してゆく。そして彼の下履きをゆっくりと丁寧に脱がせてゆく。

 

 果たして彼女の眼前に、あっと言う間に滾ってしまったリオナイトの逞しい逸物が晒される。何度か清拭されていたとはいえ、蒸れた濃い臭いを放つそれに優しく触れたコルベットは

「ふふ……すごい、におい……❤」

嫌がる素振りも見せず、まるで雄蕊から放たれるその淫臭を堪能するかのように、うっとりと目を輝かせている。

 

「きもち、いい……?」

 

 コルベットが誓いの指輪が付く左手の親指から中指までの三本で輪を作って幹から雁首のあたりを擦りあげながら問う。リオナイトはその甘美な快感に何度も首肯するしかできずにいた。そんな彼の様子に堪らなくなってしまったのか、いよいよ彼女は

 

「いっぱい、きもちよく、なってね……❤」

 

指で擦り上げる手淫を止めぬまま、ゆっくりとリオナイトの逸物に口付けて、自らの意思で口淫を始める。それを受けて彼は思わず身体をびくびくと震わせてしまう。何しろ口淫を受けるという経験が今まさに初であったのだから、無理もなかった。

 

 コルベットは目の前の男の、自身を気持ちよくしてくれる猛った肉棒をたっぷり愛したい、という、女性の本能から来る意思にすっかり支配されてしまっているようで、

「ん、っ❤ れる、っ❤ ちゅぱ、ちゅぷっ❤ ん、く、っ❤」

先端から発せられる雄の淫臭を鼻一杯に吸い込むようにして、情熱的かつ懸命に、リオナイトの逸物に夢中で吸い付いていた。

 

「や、やば、っ……コルベット、さん……。その、フェラチオ、やばすぎ、っ……」

 

 未知の快感に、リオナイトは思わず腰を浮かせてしまう。すると彼の肉棒は否が応でもコルベットの喉奥へと吸い込まれてゆく。

 

「だめ、ぼく、もう、イきそう、だから……っ。口、どけて……」

 

 喉奥でも亀頭をぐぽぐぽとねっとり愛されてしまったリオナイトは、限界が近付いてきたことをコルベットに伝える。だが彼女はそれを無視して喉奥まで肉棒を迎え入れると

「ん、んっッ❤」

裏筋を舌の付け根から腹にかけてでごしごしと擦るかのように口を動かして、リオナイトの射精を促してゆく。

 

「う、ぁ、っ……もう、で、る、ッ……!」

「んッ、っ❤」

 

 リオナイトは溜まらず、コルベットの口腔に精を迸らせてしまう。勢いよく飛び出たそれを、彼女は嬉しそうに喉を鳴らしながら飲み下してゆく。

 

 コルベットはそのまま、口を窄めて尿道に残った精を搾り出す後始末の口淫へと移行する。そんな彼女の今までにない献身的な奉仕に、リオナイトの肉棒はすぐ復活の兆しを見せる。

 

 その様子に嬉しそうに微笑んだコルベットは、股間を覆っていたラバー生地の股布をしっかりとずらして、溢れた蜜で既にぐしょぐしょになってしまっていた秘唇を露わにさせると、

 

「リオくんの、お○んぽ❤ わたしの、お○んこに、ほしい、っ❤」

 

彼の雄蕊の先端を自身の雌蕊から溢れ出る体液を塗りたくるかのように擦り付けて誘う。既にコルベットは「発作」を起こしてしまっているようだ。こうなってしまえば、最早止まれないし、止まらない。

 

「もう、がまん、できない……っ❤ リオくん、っ❤ おねぇちゃんの、お○んこ、で❤ お○んぽ❤ いっぱい❤ きもちよく、なって、ね……❤ ん、ぅぅっ❤」

 

 早速腰をゆっくりと下ろして、コルベットはリオナイトの滾った逸物をゆっくりと秘唇で咥え込んでゆく。侵入してくる巨根が膣壁を抉り、膣道を無理矢理押し広げてゆく感覚を得たコルベットは

 

「ひ、ひぁっ……❤ す、すご……っ❤ ひさびさ、のっ❤ すっごく、おっきいのっ❤ はいってきて……っ❤」

 

早速待ち侘びた肉棒の挿入によって与えられる快感で身体を震わせている。

 

「ん、ぁっ❤ だめ、っ❤ お○んぽ❤ よすぎ、てっ❤ こし、っ❤ かって、にっ❤ ひぁ、っ❤ ん、ぁぅぅ、っ❤ はぅ、んっ❤ ん、ぉ、っ❤ おく……ごりごり、ッ❤ きもちいぃ……❤ おっきぃ、お○んぽ❤ すっごく、きもちいぃよぉ……っ❤」

 

彼女は早速我慢できないとばかりに腰を激しく浮沈させる抽迭で快感を貪ってゆく。彼女のその動きは病み上がりで滾った逸物を容赦なく高めてくるので、先程精をコルベットの口腔に吐き出したばかりだというのに、リオナイトは早速再び射精寸前となっていた。

 

「あッ、らめ……イぐ……っ❤ おっきいの、くる、っ❤」

「ぼくも、もう……っ!」

 

 二人はそれぞれ絶頂に至りそうであることを明かし合う。するとコルベットはそれに嬉しそうに微笑むと、

「いっしょに、いっしょに、イこ、っ❤ リオくん、っ❤ おねぇちゃん、の❤ お○んこ、で、イってぇ❤ せーし❤ いっぱい、そそいでぇ❤ あっ、らめ……❤ も、っ❤ イくっ❤ わたし、また❤ イっちゃうよぉっ❤」

彼の肉棒を膣奥深くまで咥え込んだまま、腰をぐりぐりと前後左右に動かし、快感で垂れさがって来ていた子宮口で亀頭から雁首にかけてを擦り上げて射精を促す。リオナイトはそれに堪らず、コルベットのラバー生地に包まれた豊満な尻をしっかり掴みながら果てる。

 

 どくどく、と脈動して膣奥に精を迸らせる肉棒の感覚を得た彼女は、

「ん、ぅぅ、っ❤ せーし❤ また、いっぱい、でてる、っ❤ いっぱい❤ なか、で❤ お○んぽ❤ どくどく❤ どぷどぷ❤ してる、よぉ……❤」

快感に溺れ切った蕩けた表情のまま、譫言のようなものを独り言ちていた。

 

 彼女はゆっくりと腰を上げて肉棒を引き抜く。その刹那、

「んぅぅぅっ❤ はぅぅ、っ❤」

コルベットの腰は肉棒が抜ける際の膣が擦れた快感だけで砕けてしまう。

 

「あふ、っ……❤ イきすぎちゃって、ちから、はいんな、っ……❤」

 

 蕩けた表情のまま、何とか寝台に横たわるコルベットの秘唇からは、膣奥に収まり切らなかった、リオナイトが先程たっぷりと放った精がとろとろと溢れ出て来ていて、寝台の敷布を汚しつつある。その様が煽情的だったのだろう。堪らなくなってしまったらしい彼が

「コルベット、さん……っ」

「ふぇ、っ⁉」

コルベットの腰から尻を掴んで四つん這いの格好にさせる。そんな状態で求められたことは団長からも殆どなかったから、

「リオくん、やだっ、だめぇっ❤ うしろから、なんてっ❤ はずかしい、よぉっ❤」

慌てて彼を止めにかかる。だがそんな彼女のしおらしい様子すら、今のリオナイトには興奮剤にしかならなかった。

 

 リオナイトはいよいよ滾ってしまっている雄蕊を再び挿入を待ち侘びてびくびく震えるコルベットの背に覆い被さると、それを彼女の雌蕊へとゆっくり挿し入れてゆく。

 

 早速我慢ならぬ、といった表情でリオナイトが抽迭を開始する。すぐさま強烈な快感がされるがままになるしかなかったコルベットに襲い来る。

 

「ひあっ、ん、ぅぅっ❤ らめっ❤ リオくん、っ❤ それっ❤ んッ❤ おく、ごりごりっ❤ きもち、いい……っ❤ もっと、もっとしてぇ❤ すっごく、いい、よぉっ❤」

 

 早速いつもとは違う部分にリオナイトの逞しい逸物の先端がごりごりと当たる感覚が病みつきになってしまっている様子のコルベットは、蕩けた嬌声を漏らしながら快感に溺れてゆく。

 

 リオナイトから自発的に求められたのはこれが初めてだったから、この時コルベットは今までに無い程の多幸感を味わっていた。だから

「いままで❤ あたった、こと❤ ない、ところ、っ❤ ごりゅごりゅ❤ されて、るよぉ❤ いい、よ❤ リオ、くんっ❤ いままで❤ がまん❤ してた、ぶんっ❤ きが、すむまでっ❤ ぱんぱんっ❤ してぇ❤ わたしの、こと❤ めちゃくちゃに、してっ❤」

自らも突き込んでくるリオナイトの腰の動きに合わせ、自身が一番性感を得る事ができる子宮口をぐりぐりと彼の亀頭に押し当てるようにして尻を動かし、彼の射精感を増長させてゆく。

 

 リオナイトは段々と射精を堪えきれなくなりつつあった。だからコルベットの腰から尻にかけてをしっかりと掴んだ抽迭の間隔を詰めた腰遣いで、絶頂へと駆けあがってゆく。

 

「コルベット、さんっ……イきます……だし、ますよ、っ……!」

「んぉ、ほぉぅっ❤ イイっ❤ イイょぉ、っ❤ お○んぽ、っ❤ しゅごい、よぉっ❤ あっ、らめ、らめぇっ❤ おくっ❤ ごりごり❤ らめぇっ❤ お○んこ、こわれちゃう、ごわれぢゃう、よぉっ❤ んぅぅッ❤ なかっ❤ なか、だしてぇっ❤ なかじゃなきゃ、やだぁっ❤ リオくんの、せーしっ❤ お○んこの、なかっ❤ だして、だしてぇっ❤」

 

 再びの射精の刹那、リオナイトはコルベットの豊満な乳房をしっかりと掴み、身体を密着させていた。それで再び強烈な快感と多幸感を得た彼女は

「ん、ぅぅ、っ❤ せーし❤ また、いっぱい、でてる、っ❤ いっぱい❤ なか、で❤ お○んぽ❤ びくびく、してるの❤ わかっちゃう、よぉ……❤」

快感に溺れ切った蕩けた表情のまま、譫言のようなものを独り言ちていた。

 

「まだ、っ……❤ まだ、たりない、のぉっ❤」

 

 コルベットは呼吸を乱しながら立ち上がり、衣装を脱いで生まれたままの姿となる。その間にも彼女の秘唇からはどろどろと膣内射精された子種が滴り続けている。それを目の当たりにしたリオナイトはその淫靡な様に思わず生唾を呑み込んでいた。

 

 そのまま上半身を起こしたまま寝台に座る彼の上に、可愛らしい意匠の装飾が施されたニーソックスだけを身に着けたコルベットが乗りかかってくる。

 

「リオ、くんっ❤ おねぇちゃんの❤ おっぱい❤ いっぱい、ちゅっちゅ、してぇっ❤ お○んぽ❤ ごりゅごりゅ❤ されながら、っ❤ おっぱい❤ されるの、っ❤ すごく、すき、なのっ❤ ひあっ、ん、ぅぅっ❤」

 

 コルベットは最早すっかり性感と想い人との性交で得られる多幸感に溺れてしまっていた。団長にすらしたことがないはしたないおねだりを口にしながら、早速彼の三度滾った逸物を、リオナイトの精でぐちゃぐちゃになっている膣で咥え込んで快感を貪ってゆく。

 

 二人の長い夜はまだまだ始まったばかり。彼等は互いの精魂が尽き果ててしまうまで、夢中で雌雄を合わせる事に熱中し続けていた。

 

 

 翌朝。先に目を覚ましたリオナイトは遂にやってしまった、と頭を抱える。いよいよ自らの欲望でコルベットを求めてしまった。その罪悪感で彼は押し潰されそうになっていた。

 

 一方コルベットは、彼の身体にしがみ付きながら、女の幸せを噛みしめて幸せそうに眠っていた。その様もまた、「このままでいいのだろうか」というリオナイトの葛藤を強くしていた。

 

 そうしていると彼女も目を覚まし始める。

 

「リオくん……おはよう……ッ⁉」

 

 コルベットは起き抜けで自分が裸である事に気付く。それで昨晩の彼と何度も身体を交えた記憶が蘇ったことで、彼女はすぐさま顔を真っ赤に染めてしまう。

 

 リオナイトはそんな彼女に何か言わなければならない気がして、唇を開きかけた。だがそれより先に、コルベットは全てを忘れて幸せになれていた筈の昨晩の自分への戸惑いから、そのまま寝台のシーツをおもむろに掴み、それを纏って最低限を隠すと、

「あの、コルベットさん……? コルベットさんっ⁉」

リオナイトからの呼びかけにも反応できず、逃げるように自室へと戻っていってしまった。

 

 不覚にもその様を「かわいい」と思ってしまうリオナイトだったが。彼はいよいよ医師として団長に顔向けできないという事実をはっきりと自覚し、その胸に重く沈む罪悪感から逃れられることが出来なかった。

 

 そして羞恥から思わず部屋に逃げ帰って来てしまったコルベットも、胸と身体の奥が、まだ温かいままだったから

「昨日のリオくん……すごかった、な……」

昨晩のことを再び思い出して、独り言ちるのだった。

 

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