団長と誓いを交わしたが、すれ違って病状が悪化して入院したコルベットさんが、主治医の青年医師くんと共に様々な困難に立ち向かった結果、医師くんとたっぷりイチャラブ❤愛し合ったことで団長との関係を整理する話 作:鍵山ゆーな
翌朝。リオナイトは清々しい気分で目覚めた。気力も満ち溢れている。
昨晩たっぷりと結ばれた、自らが愛す女性は、未だ夢見心地で幸せそうだ。その姿を護りたい。リオナイトは決意を新たにしながら、作務衣と白衣を着込んで、医師としての正装となる。
目覚めたコルベットが不安にならぬよう、
「大事な話があるので、団長と面談してきます。必ず戻ってきます」
書置きを残したリオナイトは、足早に彼女の部屋を出る。
暫くして。一人残されたコルベットが目を覚ます。隣に、愛した男がいない。彼女は途端に不安になる。
「え……リオ、くん……? どこ、どこっ⁉ やだ、ひとりに、しないでっ⁉」
コルベットはあからさまに狼狽する。だがそこで、椅子にかかる彼が昨晩身に着けていたモーニングの上着と、彼が携えていた医療道具が入った鞄などを彼女は見つけた。
それでコルベットは置いて行かれたのではない、ということを理解して落ち着きを取り戻す。
彼女はそのついでに、書置きを見つける。その文字をそっとなぞったコルベットは、彼の配慮に嬉しそうに微笑む。
「私も、行かなきゃ……」
彼の隣に立つ者として、何かの衝動に駆られたコルベットは、自身もいそいそと普段の衣服を着込み、白衣を纏って、身支度を整えると、彼の後を追う。
リオナイトは堂々と団長の部屋を事前の連絡なしで訊ねていた。その彼の胸元には、昨晩女王より下賜された勲章が光っていた。
これがあることで、彼はブロッサムヒルで最も高位な医師の一人となった。だから、団長と立場は対等かそれ以上。最早騎士団への遠慮は要らなかった。
「これは、リオナイト先生……お掛け下さい」
訪問を受けた団長は、恐縮しきりだった。昨日の今日であるから、お恥ずかしい限りだ、と謝罪を口にしながら、彼はリオナイトに着席を進める。それに従った彼は開口一番に
「ええ、そのことです。昨晩のような事がある以上、主治医、そして専門医として、明言します。あなたに
きっぱりと言い放った。彼のそれは団長の計画を否定しているような発言に聞こえた。だから
「その、通りですね……返す言葉もありません」
団長は素直に謝罪を口にしていた。それを耳にした彼は、そうではない、と息を吐きながら首を横に振る。そして
「ですが。カレンサスの事情が逼迫しているのも承知しています」
逆説的な接続詞をつなげ、言葉を紡ぐ。それに団長は思わず聞き入る。
「ですから、僕も医師の一人としてカレンサスに同行させて頂きたく、思っております。そうすれば、あなたの立場も守られるでしょう」
リオナイトは最終的に提案と言う形で、自身の希望を伝えた。それは、団長にとっては願ってもないことだった。
「実はですね、リオナイト先生。私もそれをまさにお願いしようと、思っていたところなんです」
そう前置きした団長は続ける。彼の口から語られたそれは、コルベットを敢えて安定するまで春庭に留め置いた理由そのものだった。
そもそもカレンサスに橋頭保を確保した以上、戦術としての戦争としては一区切りが付けている。あとはどれだけ敵との決戦までに準備を整えるかの、戦略の問題でしかない。
そこで重要になってくるのが、当地で交代で汗をかく花騎士達の衛生環境。不慣れな土地な上に、世界花の祝福も届きにくいとあって、体調を崩す者が続出しているのが課題だった。
だからこそ、コルベットには司令官として医師としての任を与えたのだ。そう団長は説明した。
「コルベットの武力は貴重。だからこそ、今のカレンサスに置いておく訳にはいきませんでした。だから、不安定であるならば治療に専念させたい。それが私の意向でした……」
団長の選択は彼女を慮るからこその、消極姿勢。それに終始していたからこそ、「古代花騎士性魔力循環過剰症」の悪化をきたした。「何もしない」選択こそが最悪手だったということを、リオナイトはここではっきりと理解していた。
「コルベットを、大事な者として、大切だと思うあまり、箱入りにしてしまっていた。それが結果として、彼女に寂しい思いをさせてしまっていた……。今になっては、そう思います」
団長の独白。それに思わずリオナイトは拳を握りしめていた。この人がもっと早くそれに気付いていれば、コルベットは傷つき病むことはなかった。そう感じていたからだ。
一瞬の沈黙。それはリオナイトにとっては、怒りを制御するための間であり、団長にとっては、不安な瞬間だった。
「とかく、事情は了解しました。元々そういうつもりであったのであれば、僕としては断る理由は一切ありません。喜んで貴方の下で働かせて頂きましょう」
リオナイトは団長からの要請を承諾した。安堵の息を吐いた団長は、嬉しそうに彼と握手を交わす。それは、今後も彼がコルベットと苦楽を共にするということと同義だった。
「リオくん……ありがと……」
そしてそれを部屋の外で静かに聞いていたコルベットは、嬉し涙を流していた。
かくしてコルベットは第一副団長として復帰し、同時にカレンサスのオアシスにある拠点の司令官として赴任していた。
リオナイトはその彼女の許で働く騎士団付医官として、ブロッサムヒル王国から派遣された医師という立場になっていた。
その二人が早速苦心していたのは、飲料水の確保だった。やはりというか、当然のように当地で任務に当たる花騎士達は、オアシスに湧き出る生水をそのまま飲んでいた。
それが非常に危険だということを身をもって理解していたリオナイトは、早速技術の一切を任されているガンライコウに依頼して、清潔な水を精製する装置を作成してもらっていた。
それと同時に、魔腐胞による重篤感染症が発生した際に備えて、リオキュアの常備も開始していた。それはリオナイトとコルベットがシロとアオを改めて訪ねた際に
「この魔腐胞ってやつね、かなーり昔にね、ボクたちが外園から持ってきちゃったやつみたいなんだ」
という重要な情報をアオから得ていたからだった。
外園に存在するということは、カレンサスにも存在する可能性が高い。それはコルベットの直感による進言だった。
そうして衛生環境を順次整えつつ、体調を崩した花騎士の診察に精を出す。それがカレンサスに赴いてからの二人の日常だった。
リオナイトが野戦医師と大病院で務めた経験を生かして総合診療医として活躍する一方、コルベットは花騎士でもあるから、その立場から彼女達のケアを優先する産業医または心療内科医といった役割となっていた。
それも、二人の連携の息がぴったりだったからこその分担だった。
団長はカレンサスにいる間、野営することも多いが、大半はこの拠点で指揮に専念する。
当然花騎士の拠点であるわけだから、団長を
然し、二人はそれには敢えて何も言わない。コルベットが時たま
「避妊だけはして必ずくださいね! カレンサスでは、妊娠・出産の対応はできませんから! 必要であれば
そういう注意喚起を産業医として面談する時に口酸っぱく言っている程度だ。彼女を信頼している皆はそれを遵守していたから、今のところ致命的な問題は発生していなかった。
そしてコルベットとしては、最早団長の身体には興味がない。彼女の情愛は、リオナイトに向いてしまっていたからだ。団長を求めない自由。それを彼女はこの場では只管貫いていた。
その代償行為という側面が全くなかった訳ではないが。それを抜きにしてもリオナイトとコルベットは二人だけの愛を貫いていた。
毎日の清拭と、翌朝の予定によって日々変わる、軽めの性接触、または一度だけの挿入と膣内射精。それは今までと変わらぬ二人の日常であって、特別なことでは一切なかった。
危険と隣り合わせながらも、リオナイトとそうした充実した日常を過ごせる。そこにコルベットは女としての幸せを、確かに感じていた。
そんなコルベットの体調に変化が生じ始めたのは、彼等が現場に到着してから二週間程が経った頃だった。
既に環境構築は完了していて、当地の花騎士に引き継いで運用してもらっている。医務的な問題も少しずつ解消しつつあり、自分達でなくとも各国持ち回りで医師と看護師を派遣してもらえれば問題ない状態まで下地が出来ていた。そんな中だった。
コルベットは不自然な吐き気を数日前から感じるようになっていた。定期的に来ていた筈の月経も、あれから止まっている。それで、彼女はある予感を覚えていた。
この日、リオナイトは外来診察の担当として、病院棟で仕事に精を出していた。
「次の方、どうぞ」
その彼の呼びかけに、診察室におずおずと入ってきたのは、コルベットだった。
「え、コルベットさん……?」
「リオナイト先生。今日は、私も……その、患者、です」
驚くリオナイトに、コルベットは昔のことを思い出したかのように、照れながら患者用の椅子へと着席する。
「ふむ。どこか、悪い所でもありますか?」
その彼の確認に、コルベットは更に顔を赤くしながら
「その……数日前から有意な嘔気、倦怠感……。そして、月経が止まっています……」
医師としての所見を述べていく。それでリオナイトははっとする。
「そ、それって……」
「うん……たぶん……。でも、自己判断はできないから……」
コルベットは彼に対して今思っているであろうそれで正解だと思う、と告げつつ、リオナイトの診断が必要だと口にした。それは正しかったから、彼は頷いて早速検査薬を引き出しから取り出す。
「使い方は、わかりますか?」
「一応、ね……。でも、リオくん……一緒に、見てて欲しい……だめ?」
検査薬を受け取ったコルベットが、上目遣いで彼を見つめながら。それにリオナイトは、否と言う事はできなかった。
果たして彼等は、診察室の横にある厠所に二人で籠っていた。ショーツを降ろして便座に座ったコルベットが、
「それじゃ、するね……? ん、っ……」
ゆっくりと小水を検査薬へと掛けてゆく。そのあまりにも美しく、神秘的な様を、リオナイトは思わず見入ってしまっていた。
「や、やだ……リオくん……。私が、おしっこ、してるとこ……そんな、じっと、みたら、だめ……」
誘った側にも拘らず、コルベットは恥じらいで顔を真っ赤にしていた。その指摘に、リオナイトもつい赤面してしまう。
「はい、できたよ……」
「ありがとうございます。確認しますね」
後始末を終えたコルベットが、それを
「おめでた、ですね……」
「ほんと……? わ、ほんとだ……」
それは、二人の愛の結晶で間違いなかった。思わず彼等は抱き合って、嬉しそうに涙目で見つめ合っていた。そのまま二人は、自然と口付けを交わしていた。
コルベットの妊娠が発覚した。その報せは、すぐさま団長と当地にいた花騎士達に齎された。
それは衝撃的な話だったが、団長に怪訝の目を向ける者はいても、コルベットを責めようという者は一切いなかった。それは、コルベットが彼女達に医師として真摯に向き合ってきた結果と言えるだろう。
最早問題は、コルベットがここを離れることで起こる困難ではなく、彼女をどうやって春庭に無事帰すかという点に絞られていた。
そんな中、唯一狼狽していたのは団長だった。何しろ彼には心当たりしかなかったからだ。
騎士団長として、一人の花騎士だけを愛せないのは当然だった。そして、コルベットがかねてより常々口酸っぱく言っていた通り、例え妊娠してしまっても、ここでは対応が困難。だから責任を取る事もできない。
「戦況や状況が安定したら、そういうことは将来的には……制度として、とは思ってはいたが……。正直、今は、困るな……」
団長ははっきりと「彼女の意」に添えないことを告げた。今この状態で「前例」を作ってしまう訳にはいかなかった。それを許してしまえば、彼の子を孕みたがる者が挙って現れてくることが目に見えていたからだ。
そしてそれもコルベットとしては想定内の回答。というよりも最早、彼女としては「そうするしかないだろうな」という諦めに近い境地だった。
団長からの答えを聞いたコルベットは、暫しの沈黙の後。
「……わかりました。では、この子は、私が責任をもって、
親権の放棄に同意するように迫った。その鋭い問いに、団長はぐうの音も出せず小さく頷くほかない。
「しかし、引継ぎは……」
「それならご心配なく。僕たちが既に各地に根回しをしてあります。環境的にも医務的にも、既に属人化する段階になく、各国の持ち回りで何とかなる状態です」
団長の不安視に、リオナイトが淀みなく答えた。そしてコルベットに代わる医務武官も順次育成中だった。彼女の背中に憧れて見習いとして志願してくる者が幾何かいる。その花騎士達に、彼等は心得を伝え始めていたところだった。
「わかった……やむを得ない、か」
団長は、ここにきてコルベットを戦力外とする他ないという手づまりに追い込まれていたことに気付き、溜息交じりにそれを承認せざるを得なかった。
「話は聞かせてもらった!」
「にゅー! コルベットちゃん、赤ちゃんできたんだって⁉ おめでとー‼」
そこに闖入してきた者が二人。「逃がし屋」として定評があるバナナオーシャン出身の花騎士で、賢者の末裔でもあるスターグラスと、ブロッサムヒルの世界花の化身、ブロスだった。
「えっとねー。スターグラスちゃんに聞いたの。わたしのフラワー! と、スターグラスちゃんのパワー! で、コルベットちゃんと、リオナイトちゃんを、クジラ艇に飛ばせるって!」
それは、好機が重なった結果だった。先日、コルベットの妊娠が発覚する直前に物資輸送と人員輸送の為のクジラ艇が出発していた。それは、まだカレンサスを完全には出ていない。そして、彼女達の力を使えば、そこに二人を逃がせるということらしい。
「やるなら、今しかない。そろそろクジラ艇が外園に至ってしまう頃合いだよ」
スターグラスが明言する。最早迷っている暇はなかった。
「……わかった。コルベットと、リオナイト先生の、カレンサスからの離脱を許可する。そのかわり、直ちに交代の医師を要請してくれ。それはナズナと相談して、各国持ち回りになるように調整してほしい」
団長は決断した。そして後任の人選と調整をリオナイトに一任する。彼のそれに、リオナイトは深く頭を下げて感謝を告げた。
「……団長さん。これを……」
不意に、コルベットが胸元に付いていたネックレスから「永遠の誓い」の証を外して取り出して、彼に差し出す。団長は理解が追い付かず、受け取ったはいいものの、固まってしまった。
「どういう、ことだ……?」
誓いの証の
「私は古い、四百五十年前の人間ですから……現代の花騎士の皆さんとは、価値観が違います。ですから……責任を取って頂けない殿方との誓いは、不要です。お返しします」
それはコルベットなりの、けじめだった。ここで、コルベットは長い春庭の歴史の中にあって、「誓いを交わした相手に三行半を突き付けた初めての花騎士」として歴史に名を遺すことになる。
リオナイトとコルベットは、気付けばクジラ艇の船内にいた。どうやらスターグラスとブロスに助けられた。二人は率直にそう思った。刹那だった。
「外園に突っ込むよ!」
クジラ艇を運用する花騎士の声が響く。衝撃と境界が曖昧になる奇妙な感覚。赴任時も得た違和感だった。
果たして彼等は無事春庭へと戻って来ていた。ここまで来れば、一安心だろう。
「ふふ……団長さんに、啖呵切っちゃいました」
少し吹っ切れた表情で、コルベットは独り言ちる。それは明らかに
同時に彼女は、自身の「戦う花騎士」としての役割が終わりに近づいているという事も察していた。
団長はあの時言っていた。
「切り札はコルベットだけではない。決戦はその場で戦える全ての花騎士の総力であたるべき」
と。それは正論であり、そして裏を返せば、コルベットという存在がなくても最悪何とかなるということ。実質的な戦力外通告だった。
「そう……戦うだけが、花騎士じゃ、ないですもんね」
それは彼女がここまで様々な経験を積んで来て導き出した答えだった。かつてのコルベットなら、戦えない、誰かを守れない花騎士なんて、と悲観に暮れていたことだろう。
リオナイトはそれを耳にして、彼女をそっと抱きしめながら
「そういう柔軟な発想が出来るようになったコルベットさん、すごく素敵です。僕は、いつまでも一緒にいます。例え花騎士でも医師でもなくなったとしても……それでも、あなたの側で、それに寄り添っていきたい」
改めてコルベットに伴走することを明言した。彼女の目からは、暫くの間溢れる涙が止まらなかった。だがそれは、悲観でもなんでもなく、ただ歓喜のものだった。
あれから少し経った頃。ブロッサムヒルへと帰還したコルベットの許に、ナズナが訪問していた。
カレンサスにおける医療体制、指揮系統、環境維持に関しては、各国の花騎士と医師、看護師が協力して持ち回りで対応している。最早リオナイトとコルベットの二人組でなければならない時期は過ぎ去っていた。
「花騎士コルベットの、第一副団長・カレンサスにおける拠点医療の司令官の任を解く」
その辞令を受け取った時、コルベットはいよいよ団長とは、一人の人間としてそれぞれ別々の道を歩み始めた、ということをはっきり自覚していた。
それと同時に、花騎士という存在・立場から考えた場合、彼は尊敬に値する英雄である。コルベットとしてはその価値観だけは不変だったから、
「ナズナさん。お手数ですが、これを団長さんにお渡し頂けますか」
彼女はその場で一筆したためた便箋を彼女に手渡す。それには
「花騎士としてのお役目に関しては、産休と育休に入らせてもらいます。――コルベット」
短い一言。だがそこには
「個人としての役割や在り方は変わってしまったが、花騎士という存在としてのコルベットは不変」
という、彼女の覚悟としての団長へのメッセージも滲んでいた。
リオナイトとコルベットの、新たな生活が始まっていた。
二人は正式に、王都から直轄地となったかつての戦場へと居を転していた。その都市の名は「メディオール」。
かつての宿場町の面影を微かに残しながらも、医学と薬学の研究施設・教育機関が立ち並ぶ、学府の最先端となった「医療都市」だ。
そこには、かつて苦楽を共にしたチューリップ四姉妹も住民として名を連ねる。彼女達は結局、「自らの手で育てた都市」として居心地がよかったのか、ここに永住してしまっていた。
リオナイトが設立させ、一時はチューリップ四姉妹の経営する個人病院だったものは、今では立派な建物に建て替えられていた。表札には
「王立医療センターメディオール分院・王立薬学研究所」
とある。直轄地として整備されるにあたり、それが国有化されたということを示していた。そしてここが、リオナイトとコルベットの現在の職場だ。
リオナイトが分院長として、花騎士や市民の様々な身体のトラブルに即応する総合診療科を受け持つ。コルベットも花騎士・看護師・医師として三役を務めた経験を活かし、副分院長として彼と共にある。
メディオールの市民の体調を支えるのが、内科部長のレッドチューリップと心療内科部長のパープルチューリップ。そして医師という資格を持ちながらも、普段は看護師として辣腕を振るう、看護師長ホワイトチューリップ。
一番の出世頭は恐らく、王立薬学研究所の所長と分院の薬剤師長を兼務するイエローチューリップだろう。リオキュアの研究開発が功績として認められたからこその役目だった。
医療倫理委員会の決定により、ブロッサムヒルに於いては公平な診療報酬制度が整備されていた。それも、この病院がチューリップ四姉妹によって経営されていた時分のやり方を参考にして敷かれたものだ。
相変わらず「診察料」や「調剤料」といった技術料は取らないが、薬の材料と使い捨てとなる医療器材のコスト分は、患者に負担してもらう。そしてそれは、王国政府が例外的に認めた者以外は原則として無償にはならない。
これは各国もモデルにして改革を目指している程の、立派な仕組みだった。
コルベットが戦場に立たなくなってから久しい。寧ろ、今の彼女が戦場に立たねばならない状況を作ってはならない。それが、ブロッサムヒルに属する花騎士たちの総意だった。
そんな彼女の胎はすっかり膨れていた。出産予定日も、もう間近だ。
メディオールでは、コルベットは小さい女子たちの憧れだった。彼女たちは一様に、
「コルベットせんせい、お腹、おっきくなったね!」
彼女を見かける度に声を掛けてくれる。その度、コルベットの胸は嬉しさでいっぱいになる。彼女もまた、この子達の笑顔を守りたい、受け継いでいきたい、という決意をその度新たにする。
それだけではなく、臨月で新たな命を育もうとするコルベットを、市民たちは応援してくれるし、彼女を必要としてくれている。
コルベットは
「ここが、私の帰るべき場所……『故郷』、なのですね」
そう改めて認識していた。帰属すべき場所。それが彼女には必要なのだと気付き、整備してくれたのは、間違いなくコルベットの人生のパートナーであるリオナイトだった。
そんな彼を喜ばせたい。この時コルベットは心の底からそう感じていた。
その日の夜。リオナイトとコルベットは、普段通り浴室で湯舟に浸かりながら静かに寄り添っていた。
上下水道などのインフラが国家直轄で整備されたことで、この地は水資源が豊富となった。特に北部を流れる川から導水する用水路の存在が、地下から汲み上げなくてもよいという決定的な変革をもたらしていた。
それを有難く利用させてもらった二人は、王都で暮らしていた時のように、こうして毎日入浴する事ができている。
コルベットは妊婦であるのだから、清潔第一。そういった意図から、リオナイトの意向で彼等の自宅には、二人で湯に浸かっても問題ないような、広めの浴室が敢えて構えられていた。
「やっぱ、お風呂は気持ちいいね~❤」
コルベットはこの時間がとてもお気に入りだった。気の許せる好いた相手と、ゆったりと過ごす幸せな時間。それこそが、彼女が欲していた日常そのものだったからだ。
「いつも間近で見てはいますけど……改めて、かなり大きくなりましたね。わ、蹴った……」
リオナイトが、コルベットの胎にそっと触れる。慈しみがあるそれに、彼女の表情は自然と綻ぶ。
「それでね、レッドチューリップ先生がね。そろそろ、安定したから……いいよ、って……」
唐突に、コルベットがもじもじと恥ずかしそうにしながら、口にする。
リオナイトはそれが何であるかを瞬時に理解できていなかったから、頭上に疑問符が浮いたような表情を浮かべた。
こういう時に限っては初心で察しの悪い彼にゆっくりと抱き付いたコルベットは
「だから、ね……えっち❤ 解禁、です……❤」
暫くの間彼等の間で途絶えていたものを再開させる、という意思をはっきりと明にした。途端、彼の顔は真っ赤に染まった。
リオナイトの上に、表情を蕩けさせたコルベットがゆっくりと跨っていた。
体位こそ同じだったが、それはかつて彼女が、目の前の愛した男の
コルベットがこの時身に着けていたのは、ほぼその全てがレース生地で出来た、乳房の先端や秘唇の部分が自他の意思によって開閉できるようになっている形の、普段使いには全く適さない、男の劣情を誘う為だけにある意匠の、黒い下着セット。その入手先はレッドチューリップからだった。
「コルベットちゃん、今まで本当によく頑張ったわ。勿論、リオくんもね。だからこれで、しっかりリオ先生を癒してあげなさいな」
師匠にそう背中を押されたからこそ、コルベットは今晩この機会を希望していたのだった。
大きく膨れた双乳と秘唇の部分の留め具をすっかり外してしまったコルベットは、ゆっくりと、だが確実に快感を得て高まりつつある。
逸物を久々に膣奥に咥え込んで嬉しそうに下腹部を撫でるコルベットは、
「ん、ぁぁっ❤ リオくん、リオくんっ❤ ちゅ、んむっ❤ お○んぽ❤ あかちゃん、の❤ おへや、の❤ いりぐち、で❤ ちゅぽちゅぽ❤ とんとん、っ❤ すっごく、きもち、いいよぉ❤ ん、ぅぅっ❤」
子を宿した臓器の入口を、雁首や亀頭の裏筋に擦り付けるようにして、リオナイトと口付けを時折交わしながら、ゆっくりと腰を動かしている。
それは、決して激しくはない。だが、彼を喜ばせ、共に快感を分かち合う為の、情熱的な腰遣いだった。
コルベットはそんな緩慢とした腰つきながら、しっかりと性感を得て高まってゆく。そして、彼女に子宮口で亀頭責めを延々と受けているリオナイトも、同様に途轍もない快感を得ていた。彼の射精感は、徐々に限界へと近付きつつあった。
コルベットはその射精寸前の肉棒の様子を膣内で感じとったのか、
「んッ❤ リオ、くんっ❤ いい、よ❤ わたしの、お○んこの、なかで❤ イってぇ❤ わたしの❤ にんしんお○んこ、で❤ お○んぽ❤ いっぱい、きもちよく、なってぇ❤んぁ、ひぅんっ❤ イぐっ❤ わたしも、もうすぐ、イっちゃうからぁ❤ いっぱい、なかだし、して❤ いっぱい、せーし、なかに、ほしいっ❤ なかだし❤ せーしで❤ わたしのことも、イかせてぇぇ❤ はぅ、んぅぅっ❤」
蕩け切った表情で嬉しそうに頷きながら膣内射精を欲して、リオナイトの逸物の先端を膣奥で舐るだけの浅い抽迭を繰り返して快楽を貪り始める。
「コルベット、さんっ……、ぼく、もうっ……。だして、いいですか……?」
それに溜まらず、リオナイトが確認の声掛けをする。これもまた、かなり久々であるにも拘わらず、変わらぬ二人の約束だ。コルベットはそれに、何度も頷きながら彼の唇を奪い、舌を絡めてゆく。
そんな彼女の腰の動きと情熱的なキスに限界を迎えたリオナイトは、コルベットのそんな無言ではあるが可愛いおねだりに応じて、彼女の豊満な尻をしっかりと鷲掴みにした状態で果てる。彼女の子を宿している臓器の入口に、彼の精がびちゃびちゃと浴びせ掛けられてゆく。
「んぁ、ぁぁっ❤ にんしん、お○んこに、なかだし、きたぁ❤ せーし、すっごく、あっつくて、きもちいい、よぉ❤ あっ、あぁッ❤ そこ、おくぅ❤ なかだし、しながら、ぐりぐり、らめぇ❤ イぐ、イぐぅぅぅぅぅぅっ❤」
自らを孕ませた子種が膣奥に流し込まれる感覚を得て、コルベットはリオナイトと共に絶頂へと至っていた。彼女は口の端から涎を垂らしたままの、蕩け切っただらしない表情で、身体をびくびくと震わせて実に久方ぶりの絶頂の余韻に浸っていた。
愛し合った痕跡を再びの入浴で処理した二人は、普段通り、生まれたままの姿で寝台へと横たわって、ゆっくりと抱き合っていた。
「これから、また忙しくなるね……」
それは、本格的に出産を迎えるコルベットが直感で思う事だった。育児に専念する間は、二人はどうしても抜けざるを得ない。同僚の医師たち看護師たちには苦労を掛けてしまう。それが彼女としては心苦しかった。
「でも、みんな……歓迎してくれています。きっと、コルベットさんと、この子が無事であることが、皆さんにとっても幸せなのでしょう」
彼女の想いを汲んだリオナイトは、それに小さく首を振りながら。それで、コルベットは気持ちが楽になったのだろう。彼の身体をしっかりと抱きしめながら、ゆっくりと微睡み始めるのだった。
春庭の希望が、いよいよ産声をあげていた。
コルベットの面影をしっかりと受け継いだ、美人なの顔立ちの娘。母となったコルベットはその子に「ミリア」と名を付けた。
彼女にも花騎士として世界花の祝福が与えられるかどうか。それはミリアの素質次第だ。だが、そうでなければならないとは、母としては一切思っていなかった。
自由に生きなさい。娘がそういった岐路に立った時には、コルベットは先達として、英雄として、そして医師として助言してやるつもりでいた。
ミリアが誕生してからというもの、彼女と娘が一旦の居場所となっている分院の病棟にはひっきりなしに来客があった。
普段から二人の入院生活の面倒を見てくれているチューリップ四姉妹は勿論のこと、ナンテンといった医療の重鎮から、ウメ、サクラ、アカシアなど、かつての戦友。果ては
「うにゅ~~~~‼ かっわいいいいいい~~~~❤ ミリアちゃん、すっごく、かわいい~~~~~~❤」
世界花の化身である筈のブロスまで。特にこの世界花は、既に骨抜きにされている。この時点で、ミリアの将来は決まったようなものだったかも知れなかった。
その来客が一段落した頃合いで、義父となったリオナイトがやってくる。彼は実際には「実父」であるのだが、それは二人だけの永遠の秘密だ。
「あ、リオくん。ナズナさんから受け取れた?」
「はい。今月分も間違いなく」
彼が騎士団から受け取っていたのは、団長からコルベットに対して支払われる「花騎士としての給与」だった。
本来コルベットは休職している筈だから、それは貰えない筈なのだが。彼としても、責任を感じているのだろう。そういう形式で養育費を支援してくれている。
こうして入院している間は、当然コルベットも費用を払っている。彼女はその原資として受け取ったそれを充てていた。
「なんか、団長さんには申し訳ないですよね……」
リオナイトがぼそりと一言。それに
「
コルベットがぴしゃりと鋭く指摘する。それにはリオナイトとしても苦笑いせざるを得ない。
「あー、あーーっ❤」
そんな母の様子に、ミリアが笑う。その我が子を抱いたコルベットは、誇らしげな表情をしていた。そこには、かつて悲愴にくれていた古代花騎士の面影は一切なかった。
「ここまで、ブロスさん達に愛を受けて育つのですから……私が果たせなかった『仕事』は、次世代に任せるのも、ありですかね」
病室の窓から見える、ほんの少しだけ残る戦の跡に目を向けながら、コルベットはしみじみと思うのだった。