床に散らばっているナッツ等を給仕係の者がいそいそと片付けている。
それを見ながら一角に設けられたテーブル席にて、紅茶を飲むあかりと金剛・・
その同じテーブルにて汚れた提督の顔を甲斐甲斐しく拭く古鷹、そして拭ってもらっている提督
「提督、痛くないですか・・?」
もう、はたから見てると世話を焼く新妻にしか見えない
「お前が悪いんだぞ・・・」
少しバツが悪そうに、紅茶のカップに口をつけ、カップ越しにチラリと見て、言うあかり
「あぁ分かってる・・責めはしないよ、俺たちが悪いんだから」
そう返答する提督のあごのラインに付いたイチゴのしぶきを、古鷹は綺麗に拭いていた・・
吹きながら古鷹は思っていた・・
それにしても顔以外、イチゴが飛び散った後がないのは不思議だなぁ・・
私だったらこんな事出来ないよ・・金剛さんは見た目はあれだけど、本当にすごい人なんだ
弾着観測射撃だったかなぁ・・・
私も頑張ればできる様になれるかなぁ・・そうすれば提督ももっと・・
そう思いながらチラリと紅茶を飲んでいる金剛を見た。
「あ、わりーわりーお待たせ~!」
飛龍と共に鈴木大佐がジャム瓶をもって現れた
「いや~頼んで探してもらったら、1瓶だけあるって言うから貰ってきたよ」
そういうとテーブルに備え付けてあった椅子に座り、テーブルにイチゴジャムを置いた
「なんだ、このジャムは・・?」
不思議がるあかり・・ジャムと・・紅茶?
「あぁ・・これな、紅茶に入れて飲むんだよ・・」
さも当たり前の様に言ってのける鈴木大佐
「はぁ~!?入れて飲む?紅茶に、ジャムを?」
驚きを隠せないあかりと金剛・・そして良くわかってない提督と古鷹
因みにこの席で、提督と古鷹は普通に緑茶を飲んでいた(笑)
「何をふざけた事を・・英国ではそんなことしてる奴なぞ見た事も無いし、
入れると言うのも聞いた事も無い・・我々を担ごうとしても駄目だぞ、すーくん」
子供の頃から、世間知らずなのを良い事に散々騙されてきたあかり・・
今回こそ騙されはしないぞと警戒するあまり、だまされてた頃の様にその警戒心から愛称で鈴木大佐を呼ぶ
「いやいや・・うそじゃないって!」
ジャム瓶を開けて、ジャムをひと匙すくい、今まさに紅茶に入れながら反論した
「あのな・・うちの娘・・響って言うんだけど・・駆逐艦な!」
鈴木大佐はジャムを紅茶に溶かしながら語り続ける
「その響がな、この前ロシアに数ヶ月研修で行ったんだよ・・その時に、
現地の士官や艦娘達みんな紅茶にジャム入れて飲んでいたんだと・・
で、響も気になって、どうやったら良いのか教えてもらって飲んで来たんだとさ・・」
そう言いながら、カップの中で匙をまわす
「最初、ホントに俺も半信半疑でさ~(笑)
それ見た最初は「うえ~~~っ」と思ったんだわ・・
でも響に促され、嫌々ながらも実際やってみると・・これが非常にうまい!」
そういうとかき混ぜていたスプーンを取り出し、お皿に乗せ、カップを手に取り一口飲んだ
「うん、うまい!」
あまりの力説?に興味がわいてきた金剛・・・
「提督、私も同じように紅茶が飲みたいネーv」
目をキラキラ輝かせ、提督の顔をまじまじとガン見する
「あぁかまわないぞ・・好きにしろ」
「さすが提督ーっv話が早いデース」
早速試す金剛
古鷹も興味津々のようだ
「古鷹、お前も貰いなさい・・」
「あ、はい!ありがとうございます」
自分の気持ちを察してくれた提督の気持ちと、目の前の初めてに接する事の出来る喜びで、古鷹の顔は輝いていた
古鷹うれしそうだなぁ・・・
古鷹の嬉しそうな顔を見て、一人ほくそ笑む提督
うちの隊も帰ったらみんなでやってみるか・・そう思いながら緑茶をすする
「折角ですから、提督も一緒に頂きましょうよ」
古鷹がほほを染めて嬉しそうに提督に語りかける
「あぁ~そうだな・・たまには頂こうか・・古鷹」
「はいv」
いっそう古鷹の顔が嬉しそうになった
そんな光景をよそに鈴木大佐が思い出したと言わんばかりに提督に告げた
「あ、そうそう、頼んでおいたぞ、折り詰めの事」
「あ・・悪いな、ありがとう」
そういうと古鷹の用意してくれたジャムを少しだけ入れて恐る恐る飲む提督
「あ・・・」
提督の味覚にも、はまったようだ(苦笑)
「なんだ?折り詰めとは・・」
また何かしでかそうとしているのでは?といぶかしげに問うあかり
因みにあかりだけは頑なに英国式で入れた紅茶をたしなんでいた
「あぁこいつん所の艦娘達がな、お土産欲しいって~・・ここの料理食べたいんだとよ・・」
そういうとジャムを入れてかき混ぜたロシアンティーを再び口にした
「まるで子だくさんの親父みたいだろw」
すごく嬉しそうに馬鹿にする鈴木大佐(笑)
「お前のところは欠食児童の集団か?」
あかりのクールな顔立ちが、少しだけ昔の良く遊んでいた頃の様な顔立ちになった
「失礼な・・ちゃんと食わせてるよ。」
そういうと再びロシアンティーを口にして続ける
「ただ、あいつらは良く食うんだ(苦笑)山の物でも海の物でもお構い無しに・・」
「ほう~それはいい事だ。強くなるにはまず強靭な肉体作りからだからな・・」
本日初めて褒めたあかり・・・
それを聞いていた提督も、珍しい事もあるもんだと思い、ロシアンティーを楽しんだ。
3人の提督と3人の艦娘・・
穏やかで陽だまりのようなやわらかい時間が6人の中で流れ続けた・・
あぁこの時間がいつまでも続けばいいのだが・・・
誰もがそう思い続けた瞬間であった
つづく