急変する古鷹
その異常なまでに硬直する姿を見て、先程までの柔らかさを消すあかり
「貴様、何者だ!」
鋭い眼光、厳しい口調、そして何かあればすぐに飛びつき、首をかききると言わんばかりの殺気を放つあかり
明らかに古鷹の反応が可笑しい・・・どうして・・
まさか!?
あかりの判断が良くない方向に舵を切る
こいつ・・・
「探したんだぜ・・お前・・こんなトコに居たんだな」
男が不気味にへらへらと近づいてくる
両手を胸の位置で組んでお祈りをするかのような姿勢のまま、古鷹の震えが止まらない
男は更に古鷹に近づこうと歩み寄る
「貴様、何者だ!古鷹に近寄るな!」
あかりはその男と古鷹の前に割って入る、それに続くかのように飛龍、金剛も前衛に出る
「なんだ?貴様らは・・」
男の目が冷徹にあかり達を見る
「貴様こそ何者だ・・何しに来た」
冷徹無比な眼差しと侮蔑的口調で男に言いは放つ
「金剛、古鷹につけ!」
「Yes! 私の実力、見せてあげるネー!」
金剛が古鷹の身体をかばう様に包み込み情勢を伺い、いつでも転進出来る様に身構えた。
「飛龍、あの2人を探しにいけ!今すぐにだ!」
「わ、わかりました」
この不気味な男から目を離さないまま離脱し、提督達を探しに向かった飛龍
余りにも歓迎されて無い態度に男はおちゃらけた仕草を見せた
「おいおい・・なんなんだい、これは?まるで俺が悪い人みたいじゃないか・・
おれはただ、古鷹に会いに来ただけなのによ」
仕草とは反対に、男の目は明らかに不愉快の極みを示していた
「お前が古鷹に用件だと?こちらは用は無い、帰れ!」
相変わらず、冷淡な口調で威圧的に言い放つ
「は?そっちに用件は無くても、俺には有るんだよ・・元あいつの提督様としてな!
・・って言うか、部外者はどっかに行ってろ、バカ!」
「私は古鷹の友人だ!友人として古鷹を守る責任がある!」
「友人?・・・はっ!友人・・あははは~マジで言ってんの?
こんな道具に友人だ?おいおい、お前・・頭可笑しいんじゃねぇ?」
顔に手をやり、マジかこいつと言う表情を浮かべ
あかりに目線を合わせるかのように屈み込み小馬鹿にした態度をとる
やはりか・・・
こいつが古鷹を追い込んだゲス野郎、張本人か!
あかりの顔が一気に怒りに満ちた冷徹な顔に変わる
「おい、古鷹・・なんでテメーあそこで死ななかった?あぁ?
お前があそこで死んでいれば、また俺が新しくドロップしたお前を手に出来たのによ・・
そしてまっさらのお前をまた可愛がってやったのによ・・・」
こいつ・・・
「古鷹、どうしちゃったのよ?ホントこっち困ってるんだけどな・・
お前をいじり倒さないと調子狂うんだわ・・
それにお前の事待っている提督さんたちが大勢待ち構えてるんだよ・・」
面倒くさそうな態度で、薄気味悪い表情のまま続ける
「もう何でもいいから、とりあえず戻ってこいや、ふるたか~!」
硬直して動けない古鷹に声を浴びせ続ける、元主の提督
ますます古鷹の顔が血の気を引いて白くなっていく・・
「やめろ!」
あかりは発言をやめるように忠告をした
「古鷹、聞いちゃダメネ!聞いちゃ!」
古鷹の耳を覆い隠すかのように腕で包み込む金剛・・震えてるのが伝わる
shit!このままでは・・・
金剛は腕の中で震える古鷹の精神状態が危ないと感じていた
「お前身体元に戻ったんだろ?ドック入りして新しく構築されてきたんだろ・・
あっちもちゃんと元通りなんだろ?だったら生まれ変わらなくても良いからよぉ~
また楽しくやろうぜ・・お前のあの顔、泣き喚く顔、あえぐ顔、見たいんだよ・・
アザで気持ち悪い顔してるのに、いっちょ前の女の顔をするお前がよ~見たいんだよなぁ」
本当にゲス野郎だ・・
「いい加減にしろ」
あかりが男の目の前まで進み出る
「だから、なんだ?お前?俺に犯られたいのか?」
上からの覗き込むかのようにあかりを見る
「お前の粗末なものに犯られるほど物好きではない、さがれ下郎!」
一歩も引かず、目もそらさず、ガンとして揺るがないあかり
「どけよ・・テメー先輩仕官だぞ、俺は・・」
あかりの肩をどつこうとする元主の提督
その手を払い除けて、叩き落し、ガンを飛ばし続けるあかり
「先輩仕官だ?ここは同期のものと給仕の為に狩りだされた士官学校生しかいないはずだ・・」
この不条理極まりないこの男を理詰めで追い込む
早く戻って来い・・・古鷹の心がもたん
古鷹の精神状況を考えると、あかりは心でそう願わずには入れなかった
「金剛、転進しろ・・ココを離れろ」
「アイアイサー!」
これ以上恥辱を受けると古鷹の心が壊れしまう
ひとまず、姿が見えない場所・・せめて声が届かない場所へ・・
あかりは男に立て続けに言葉を浴びせる
「貴様が仮に先輩仕官だとしてもだ、ここには招かれざる客には違いない
この騒ぎに気付き憲兵が駆けつける前に早々に立ち去れ、
そして二度と古鷹や我らの前に現れるな!」
くそ・・ここが戦場なら砲弾を食らわして殺してやるのだが・・・
不条理に殺意を覚え始めた
「おれは・・特別なんだよ。」
そういうとあかりの前でふんぞり返り見下した
「お前俺を知らないな・・・俺の親父は元帥閣下なんだぞ
俺に楯突くという事は、どうなるか分かってるのか?あぁ?」
だったら、なんだって言うんだよ、テメー!
「あぁ?」
後ろから聞こえてきた声に、顔を肩越しに向ける元主
それに向けて弧を描きながら顔に拳が飛んでくる
コブシを繰り出したのは提督であった
間に合ったか!
そのコブシをすかさず身体を沈め、交わし、コブシの飛んできた方に身体をひねり身構え、つばを吐く
「何なんだテメーはよ?」
身構えながら不愉快さを出す元主
「テメーこそなんなんだ、あぁ?」
提督も不愉快全開で立ちはだかる
2人はガンを飛ばしあい近づいていった
あと数センチで額がぶつかる至近距離でいがみ合う2人
その間にあかりと合流した鈴木と飛龍
「あかり、大丈夫だったか?」
「あぁ私は大丈夫だ・・それより古鷹が・・」
あかりに飛龍と共に下がるように告げた
「ここはアイツと俺がどうにかする・・」
「分かった、私は古鷹の護衛に付く・・かなり心配な領域にいるからな」
そう告げると現場を離れ、金剛が遠巻きに事の成り行きを見ている、避難場所まで足を進めた
「これはこれははじめまして、コソ泥の提督さん、古鷹がお世話になってます・・」
口汚く提督を侮蔑し始めた
「はぁ?誰がコソ泥だぁ?何だテメーぶっ殺すぞ!」
頭に血が上り始める提督
「人のもんを横から持っていくのを、世間ではコソ泥って言うんだよ・・
それともなにか・・ゴミを拾うこじきとでも言った方が良かったか?」
調子に乗り始める元主
「てめ・・もしかして、古鷹の・・」
頭に血が回らないながらもこいつの素性が段々掴めて来た提督
そしてついに怒りが頂点に・・
「テメーか!古鷹をあんなに追い込んで、殺しかけたクズ野郎は!テメーマジで殺すぞ!」
「テメーのせいで古鷹はな・・古鷹はな・・」
至近距離で頭突きを食らわす提督、ものすごく鈍い音が会館中に響き渡る
そこからはもうどうなったのか訳も分からないまま乱闘に発展
会館中に、拳で殴りあう鈍い音がこだまする
制服は裂け、血は絨毯に飛び散り、そして最後は憲兵に取り押さえられる2人・・
「て、てめー二度と俺の古鷹の前に現れるな!」
拳と拳の殴り合いはどうやら提督の優勢で終わったようだ・・
提督にはまだ吼えるだけの気力があった・・
「ばーか!テメー・・覚えてろよ、きっと後悔させてやる!」
元主も吼える事は出来なかったが、まだ口を開く事は出来たようだ
2人ともまだ相手に食いかかろうとし、身体を前に突き出す
それを懸命に押さえ込もうとする憲兵は警棒を取り出し、2人の頭上に掲げ振り下ろそうとした、その時・・・
「やめんか!ばか者が!」
会場の奥から一括する声がした、そして1人の老将が歩みだしてきた。
「閣下!」
そう呼ばれる老将は押さえつけられている2人を眼にした
このパーティーの主催者で、士官学校校長である
この会場の最高責任者だ
「閣下・・これには」
見届け人として居合わせた鈴木大佐が閣下に駆け寄り事情を説明しようとした
「鈴木、少しさがれ・・」
「しかしー・・」
「鈴木!」
余りの眼光の鋭さに飲まれてしまう鈴木大佐・・たじろぐ様に後ずさりする
「はっ!」
「このわしの顔に泥をぬるバカは誰だ・・」
そういうと閣下は取り押さえられた2人を見下す
「お前は・・・」
元主の顔を見て、侮蔑の表情で言い放つ
「なぜお前がここにいる・・?どうやって入った?」
めんどくさい相手に見つかったと、顔をそらし黙秘を貫く
「・・・まぁいい。それよりこれを見たら君の父君はどう思うかのぉ・・」
見下した態度のまま、諭すかのように、相手に恫喝する
「くっ」
分が悪いと判断して大人しくなる
「くそ・・覚えていろよ・・」
憲兵の手を払い除けて、立ち上がる元主
しかし、その直後後ろ手にされ、その場から連れて行かれる・・
すれ違いざま、あかりたちに出くわし、古鷹を見て最後の一言を振り絞る
「まぁいいや・・お前は覚えてないかもしれないが
生まれ変わるたびに俺に拾われ、もてあそばれて死んでいくを繰り返してるんだ・・
今回は逃れても、またお前が死んだ時に必ず見つけ出して、俺のものにしてやるからな!
生まれ変わっても生まれ変わっても、必ず俺がお前を見つけ出してなぶってやる・・忘れるな。
あははははは~」
ゲス野郎の最後の雄たけびであった・・
金剛に抱きしめられている、古鷹は恐怖と不安で震える事しか出来なかった
「貴様、黙って歩け!」
憲兵に小突かれ再び歩き出し、その場から消えていった。
そして提督も大人しく憲兵の誘導に従うそぶりを見せた
「閣下・・申し訳ありませんでした」
頭の血も下がり、自分が閣下の顔に泥を塗った事を重々承知した事を理解いていた
「貴様らしくないな・・」
閣下は提督を見下ろして嘆いた
「何があったかは知らんが、規則には従ってもらうぞ・・いいな?」
「はい・・どんな罰でも従います」
「うむ、殊勝な心構えだ・・・つれていけ」
うなだれる提督に先程とは違った、緩やかな口調だった
憲兵に連行されていく提督
「鈴木・・お前はあとで私のところへ来い、事情が知りたい」
鈴木にそういい残すと、背を向けて人ごみの中へ歩みだす
「さぁー、解決した!お前たち今のは忘れて、今宵を楽しめ!」
閣下の一声で会場が沸き立つ、そして音楽が再び奏でられ、何も無かったかのように
先程までと同じ空気に戻った
提督もあかり達の前を通る・・古鷹の様子が気になる
「すみません、少し話をさせて下さい・・」
頭を下げ、殊勝な物言いに憲兵も少し足を止めた
「古鷹・・古鷹・・ごめんよ、俺が守るといいながら・・」
古鷹に優しく語り掛ける提督・・
蒼白の顔のまま、聞き覚えのある愛おしい人の声のする方を見つめる古鷹
「て・・いとく・・?」
事態が飲み込めていないのか、それともパニックを起こして我ここにあらずなのか
古鷹の意識は希薄のままだった・・
「古鷹・・・かわいそうに・・怖かっただろ・・ごめんな、ごめんな・・」
腫れあがった顔から涙が零れ落ちる・・
「ていとく・・・?提督・・・?」
意識が希薄だった古鷹も提督の涙をみて、正気を戻し始めた
「提督!」
涙を流しながら金剛の手を払い除けて、提督にしがみつく古鷹
「わたし・・わたし・・」
「分かってる・・分かってる・・大丈夫だ、大丈夫」
泣きつく古鷹を後ろ手に縛られた提督は、優しく、そして愛おしくみつめる
「こら、離れなさい!」
憲兵が古鷹に下がるように命じるが動かない・・
このままでは古鷹も怪我をしてしまう
「古鷹、離れろ!」
先程までとは違う、提督の厳しい声が飛ぶ
一瞬「え?」とビクつき驚いた顔を見せる古鷹が提督の身体から離れた
それをすかさず飛龍と金剛が脇から抱え込むように提督から引き離した・・
「大きな声を出してすまんな・・俺はちょっと行かなきゃ成らん」
そう優しく古鷹をみつめ語り、そしてあかりをみて告げる
「すまん、あかり・・俺のいない間、見てもらえるか・・」
「あぁ、まかせろ・・」
「鈴木も頼むな・・」
そう告げると、憲兵に一礼をして歩き出す・・
人ごみの中に消えていく提督を人目もはばからず泣きそして名を呼び続ける・・
「提督・・提督・・提督・・・ていとく・・・ごめんなさい・・ごめんなさい」
その場に崩れ落ちてひたすら泣き続け、名を呼ぶ古鷹に
あかりたちはただただ見守るしか出来なかった・・・
後味の悪い、この泣き声をかき消すかの様に
音楽は華麗に奏でられ続けた・・・何事も無かったかのように。
つづく