帝都の夜は更けっていた・・
会館周りには最後まで残っていた提督達が三々五々帰っていく姿が見える
ゲストが居なくなったパーティーの会場は殺風景と化し、先程までの賑やかさはもう無かった・・
そんな光景の役目を終えた会場は、給仕たちによって片付けられていった
パーティーも終わり、片付けの邪魔になると
帝都の明かりが見える会館のルーフバルコニーの片隅に移動して待ち続ける、3人
「はい、熱いからね・・」
飛龍が金剛とあかりに、貰ってきた飲み物を手渡す・・そして古鷹にも
「ありがとうございます・・」
飲み物の揺れ動く波紋を見る古鷹・・
その姿は落ち着いてはいるが、どこか魂の抜けた、そんな感じがした・・
「あったかーい」
金剛がその均衡を破るように垢抜けた声を出す
「そうだな・・暖かいな・・」
あかりも先程までの事が嘘のような静けさの中でつぶやく
帝都の夜は少し冷え始めていた・・
同じ頃、会館にある一室、執務室に鈴木大佐はいた
「事情はわかった・・ご苦労、下がっていいぞ」
事のあらましを伝えおえた鈴木は「下がれ」と告げる閣下に対してなにか言いたそうな顔をする
「・・・なんだ、鈴木?」
いぶかしげに鈴木をチラリと書類越しに見る
「閣下・・・今回の事は・・」
あいつの正当性を認めて欲しいと・・喉のすぐ下まで出た言葉をなかなか閣下に告げられないで居た
「鈴木よ・・お前の言いたい事は分かる・・しかし規則は規則だ・・曲げられん」
めがねを外し、鈴木の方を見る閣下
予想通りの言葉にうなだれる鈴木・・
でもここで引き下がっては友人として、いや一人の男として情けない・・
きっとあいつのことを心配して待っている皆も・・・そう思い再び顔を上げようとした矢先に声がかかる
「しかしだ・・軍人としては褒めるしかない」
意外な言葉に、はっ!とし顔を上げる
「あそこで仲間を・・大事な物を、貶され、汚され、だまって引き下がる様では軍人として
否、それ以前に男としては失格だ・・自分よりも力を持つものに立ち向かう・・よくやったと思う
そういう意味では軍人の持つべき心構え、弱気を助け敬愛をもって接するを実行した形になっていた・・」
「では・・」
「そう急くな・・誰も許すとは言ってない。
あいつらのしでかした事は、大事だ・・罰を与えないと示しが付かん」
椅子にもたりかかり腕を組む閣下
鈴木大佐をスーとした表情で見ていた・・
「罰は・・罰は自分も受けます!ですので、奴の・・奴の・・」
懸命に減刑を求めようと必死になり詰め寄る鈴木・・
それを見て嬉しそうに閣下は見ていた
「罪はアイツだけが背負う、お前には関係ない!」
「しかし!」
机の上に両手を付き、更に詰め寄る鈴木・・
その姿にニヤリとして閣下は告げた
「まぁ話を聞け・・罰を与えなければ示しはつかん・・しかしだ」
「罪が元々無かったとしたら・・どうする」
「?」
閣下が身を乗り出した
「鈴木よ、みんなに伝えてやるがいい・・」
「?」
鈴木大佐が閣下の執務室から勢い良く出てくる
「ありがとうございました!」
深々と頭をさげ、扉を閉めるや否や走り出す
若いのぉ・・お前たちは・・嬉しいぞわしは
部屋の窓から外を眺め、老将は嬉しそうにつぶやく
コンコン
突然部屋の扉がノックされる・・
「失礼します」
「うむ。入れ・・」
傷の治療を受けて、身だしなみを整えた提督が入室してきた
「待っていたぞ・・」
その姿を見て嬉しそうにみつめる老将であった。
「お前に告げなければならない事がある・・心して聞け!」
老将は引き締まった面構えになり提督に告げるのであった。
あらかた片付けも終わり、灯りも所々残されたものの、殆どの灯りはおとされ給仕の数も減った
それでも待ち続ける4人には、希望の灯りは灯されていなかった。
その灯りと暗闇を縫うようにアイツが駆けて来る
「お―――い!お―――い!」
手を振り、大慌てて駆け寄ってくる影・・灯りが落とされていて良く判別できない
しかし、待ち続けた皆は、あの身振りと声からして間違いないだろうとい迎え入れた
「鈴木、どうだった?」
息を切らし走ってきた鈴木に間髪居れずに質問するあかり
飛龍が持っていた、冷めてしまったコーヒーを奪い取り、一気に飲み干した
「まず――――――っ!なんだこれ!マズッ!」
飲み干してからオエオエする鈴木のケツに蹴りをいれ、状況を早く話せと催促するあかり
古鷹もものすごい心配そうな顔で鈴木を見ていた
「だ・・だ・・大丈夫だ」
息を切らして、駆けてきた挙句に、クソまずいコーヒーで追い討ちをかけられ息も整わない状態の鈴木
息も絶え絶えに早口で撒くたてるかの様にしゃべり出す
「あのクソ野郎・・話が大きくなるのを嫌って・・・閣下の提案に乗っかった・・
だから・・あの場所にクソ野郎はいなかった事に・・だからアイツ・・アイツの・・
今回の騒ぎも必然的に無かったことに・・・・」
慌てて飛龍が水を改めて手渡す・・それを飲み干し、やっと落ち着いた鈴木の口から続きが・・確信が伝えられる
「はぁはぁ・・騒ぎが無かったという事はお咎めもなし・・だ
罪がなければ罰も与えられない・・閣下はそう告げられた。」
「アイツは、アイツは大丈夫だ!喜べ、古鷹!
またあいつと一緒に居られるぞ!あははははははー!」
そう言うと、うれし泣きをしながら古鷹に飛びつき抱きしめる鈴木、
それを更に飛龍、金剛が抱きつき、みんなでぴょんぴょん飛び跳ね喜ぶ
それを呆れながらも見続けるあかり
よかった・・ほんとうによかった
古鷹は涙を流しながら、みんなにもみくちゃにされていた
そんな古鷹の耳にはある音が聞こえてきた。
灯りの消えた室内から歩く音がする、あの足音のリズム
自分が毎日隣で聞いているあの音だ・・
みんなが喜びはねる輪から抜け出し、古鷹はその人物の方を凝視しする
そして泣き顔と笑い顔を同時にさせながら走りだす
「ていとくーっ!」
「古鷹!」
提督は走り飛んできた古鷹を胸で受け止め、抱きあい、そして唇を交わした・・
人目もはばからず、喜びに満ちたその口付けは生涯忘れることの出来ないものと成った
「わっおー!」
金剛が口元を手で覆い隠し、目を見開き、それと同じくして顔を真っ赤に染めて
その劇的な光景をマジマジと見ながら声を出す
ふふふ・・ははは・・・あははははは!
普段こんな笑い方もこんな表情も見せたことの無いあかりまで声に出して人を祝福し笑い始めた
それに釣られるかの様にその場に居たみんなが笑い始めた・・
こうして帝都での再会は終わりを告げようとしていた・・
色々と有ったが、今日の事はこの6人の生涯の思い出として
心に刻まれる事となる・・
そう、生涯忘れる事の出来ない日として・・
つづく
おまけ
後日、帝都を後にしようとした飛龍の元に小包が届けられた・・
「なんだ?おい、飛龍・・あかりから荷物届いてるぞ?」
鈴木はその飯盒ぐらいの大きさの包みを手の上でポンポンとさせながら
飛龍に手渡した・・
「お前・・なにかしたのか?」
「え?わたし・・?何もしてませんよ」
「何もしてないのにあかりから荷物届くなんてな・・」
訝しげに飛龍に手渡した荷物を見ていた・・
「まぁとにかく開けてみろよ」
考えるのも詮索するのも面倒くさい鈴木はそう告げた
「そうですね・・今あけますね・・・なんだろ・・」
あかりのよこした荷物を丁寧にあけ始める飛龍、そして覗き込む鈴木
厳重に包まれ、そして綺麗に細工をされた頑丈な木箱に入っていたのは・・・
「ん?なんじゃこれ?ヒスイ?」
目の前には大事にくるまれた、大き目のヒスイがあった・・
「あ!」
飛龍は思い出した・・・
あの時私に「飛龍、後日お前に似合うものを届けさせるよ・・・」いっていた事を・・
「あかりさん・・・」
あの時の事、覚えていてくれたんだ・・・
「どうしてあかりが・・ヒスイを?・・ん~?」
なぜこんなものが届いたのか全然理解できない鈴木・・
でも嬉しそうにしている飛龍をみて、訳は分からないが、
俺の知らない所でこいつら仲良くなったんだなとほくそ笑む
「おい、飛龍手紙もあるぞ・・」
そういうと包みと共に入っていた手紙を見つけ、飛龍に手渡す。
拝啓、飛龍殿
先日お約束したものをお贈りします。
本当は直接あなたに会って、お渡しするべきなのですが
諸事情があり、急遽帝都を離れなくては成らなくなりました・・
飛龍、貴方に会えないのは残念ですが、
共に大事な時間を過ごし、共に戦った、
新しく出来た友人に、友情の証として我が家に伝わる翡翠をお贈りしたいと思います。
きっと素敵な貴方に似合うと思うので、どうか大事にしてあげて下さい。
また、6人で合える事を楽しみにしております。
その時はまた一緒にお茶を楽しみましょう
貴方の友人、近衛あかり
追伸、今度は私にもロシアンティーを入れて下さいね。
飛龍は手紙を読み終えた・・なぜか涙が止まらない
「よかったな・・」
それを見守るように鈴木が飛龍を見ていた
「ヒスイか・・ヒスイは昔から
不老不死とか・・生命の再生をもたらす力があるとか言われてるな・・
お前これで不沈空母になっちゃうな(笑)・・ますます俺の運が上がる」
いつものお調子者の提督だった
「はい、提督!わたし・・がんばります」
涙ぐむ飛龍・・
貴方とずっと居させて下さいね、提督
飛龍はそっとその思いを胸にしまい翡翠の入った箱を胸に抱きしめた
ありがとう・・あかりさん
また、会いましょう・・必ず・・きっとみんなで
青く透けた空を涙がこぼれないように見上げる
光の中に舞い続ける幸せを感じながら・・
おまけのおまけ・・
「これきっと高いよな・・売ったらうちの財政も助かるよな、なぁ飛龍」
ムカっ!
「どこまでも、台無し!このバカ提督!」
提督のみぞおちにナックルパンチ!
「ぐはっ!」
やっぱり、どんな事が合ってもいつもの2人であった(苦笑)