夜が明け、キラキラ光り始めた水平線
そしてそれを望む祥鳳・・
本土からかなり南下した海は、光の反射も手伝って、美しく、そして気高さを感じた
その気高さを感じる水面に滑り込むように
給油地でもあり、提督との合流地点でもある中継基地に零式水上偵察機は着水した
「う~~~~~ん」
祥鳳は、その座席から腰をあげ、背伸びをし、こわばったお尻を解放した
そして給油中のつかの間を利用して、持参したおにぎりを口にする・・
ちょっと塩強くしすぎたかしら・・・
おにぎりを口にして塩加減が難しいなぁ・・と食べながら、添え物の沢庵を手に取る
「さて、これから残り半分飛べば、目的地ね・・
何とかぎりぎりだけど、このぶんなら午前中にはきっと到着できるわねぇ・・」
給油される零式水上偵察機の上からこれから飛ぶ距離と時間を確認して、景色を眺める祥鳳
「本当・・綺麗ね」
本土からこれだけ離れると、流石に海も綺麗だ・・
来る途中、上空から見た海がどこまでも透き通っているのがよく分かった
本当に綺麗・・
しかし、その透き通った綺麗な海のどこかに、必ず奴らが潜んでいる・・
そう思うと、少し複雑な気持ちになる祥鳳
「こんな綺麗な海を安心して渡れないなんて・・」
そう口にする祥鳳がの顔が少し不安そうに見えたのだろうか、
パイロットが、心配するな!と親指を突き立て笑顔を見せた
どうやら、祥鳳が考えている事とは別の事を心配していると思われたらしい・・
その勘違いにクスっと笑いながらパイロットに微笑むのであった
「頼りにしてますわ」
笑顔で自分が持参したおにぎりを1つ差し出し労をねぎらう
く~しょっぱい・・でも、丁度良い、うまい!
そう言う顔をしてパイロットは、祥鳳から貰ったおにぎりを美味しそうに食べた。
そして腹ごしらえも済んだ零式水上偵察機は、再び力強く、空高く、
大きな翼で空を切り、風を追い越し、輝く海の上を渡り、祥鳳が目指す最終目的地・・
久住大佐の居る海域に向けて颯爽と飛んでいくのであった・・
静かな南の海に爆音を響き渡らせながら
爆音が彼方へ消え去り、また波の音しかしなくなった頃
入れ替わるかのように1艇の飛行艇が海面を華麗に滑らせて降り立った
その降り立った機体は、まだ数が少ないゆえに見る事も稀な飛行艇・・真新しい二式飛行艇であった
その飛行艇から1人の仕官が、海と空とみすぼらしい給油基地しかない島に降り立つ・・
「何もない・・つまらんな」
はき捨てる様に見下した顔で周りを見渡す
「よし、ここで奴を待ち構えるぞ・・お前達、出来るな?」
「大丈夫・・みんな優秀な子たちですから、鎧袖一触よ、心配いらないわ。」
飛行艇のハッチ奥から士官の言葉に答える声がする
「秘書のお前が言うなら、間違いない・・・戦果、期待してるぞ」
仕官の口角がニヤリと不気味な歪みを見せる
目深くかぶった制帽の奥には、怨念にも似たような、ギラついた目が遥か遠くの本土を見ていた
「早く来い・・・ふふふふふ」
明らかに狙いは決まっていた・・
不穏な空気が漂い始める
捻じ曲がった愛情が、恨みと憎しみに呑まれた時、この静かな海が悲劇の海に変わる
つづく