警告!
今回の話は演出上、大変グロテスクな残酷な描写が書かれています。
心臓の悪い方、また残酷な表現に耐性の無い方の閲覧はお控え下さい
もし、読まれる場合でも、充分に心構えをしてお気をつけ下さい。
ひびきん屋
目の前には信じがたい光景が広がっていた・・
青ざめる祥鳳をよそに、パイロットが周りを気にし始める
嫌な予感しかしない、早くこの場を離れなくては・・
しかし・・見極める必要がある
上空を旋回し続けながら事態を見極めようとする零式水上偵察機
そんな・・
青ざめる祥鳳が見たのは、黒煙の上がる停泊地
時折、燃料に引火して爆発を繰り返す・・
あの穏やかな停泊地は今はもうない
あるのは黒煙の上がる景色のみ
祥鳳はコクピットの風防を開け、身を乗り出し、弓を射るよう構えた
その手の中に青白い粒子が集まり、青く発光し弓の形を作り出す、そして矢を携えた姿に変わる
「頼みます!」
その手の内に形成された弓で矢を射る祥鳳
矢は鋭く、空を切り、そして彩雲へ変化する
彩雲は黒煙の上がる停泊地へ勢い良く降下し、祥鳳へ随時彩雲のコクピットからのイメージを送り続ける
可能な限り低空に飛び、この惨事の状態を掴もうと、孤軍奮闘し続ける彩雲は黒煙を縫うように駆け抜ける
「だめ・・見つからない・・どうして・・」
彩雲を動かし、見つけようとする祥鳳・・しかし、一向に見つからない
祥鳳の顔が険しくなる
そんなはずは無い・・きっと居るはず・・
誰でも良いから見つかって・・
祈るように彩雲から送り続けられるイメージを受け取り続ける祥鳳
しかし彩雲という矢は力尽き、粒子へと戻り消えていった
「お願い!」
再び、矢を続けざまに射る祥鳳
祥鳳の願いを載せた2本の矢が彩雲に変化し、黒煙を縫い爆走する
今度こそ、今度こそ、見つけて・・お願い!
祈るように目をつむり、送られてくるイメージを受け続ける
「・・・・」
だめ・・見つからない・・そんな
放った2本のうちの1本が力尽き、粒子へと戻る
駄目なの・・・
もう1本の矢が粒子に成りかけ祥鳳が諦めかけたその時、人影を見つけた!
「!!」
彩雲が消える寸前、見つけたその人影は・・・
間違いない!
「伊勢!」
「3時の方向に人影発見!」
祥鳳が勢い良く告げる
零式水上偵察機は周りを警戒しながら、弧を描きずつ旋廻、降下した
着水と同時に祥鳳はコクピットから飛び降り、海面を滑る様に波を切り人影に向う
何があったの・・・・
祥鳳は胸騒ぎを抑えきれないまま、伊勢と思わしき人影に向い駆け寄った
そして現実に向き合う事となる
「伊勢さん!」
声をかけたものの、その姿に言葉を失う・・
右目中心に顔の頬から上、顔の右半分が欠損し脳がむき出しとなり、パックリ裂けた脇腹から多くの内臓を垂らし、半身黒焦げだった、
そして背中は大きくえぐられ、傷口は血が固まりかけてドス黒くなっていた・・
立って居るのが不思議なその姿に、胃からこみ上げて来るものを抑えるのがやっとであった
「い・・せさん・・伊勢さん・・ですよね・・?」
震える声を抑える様にして、声を振り絞る祥鳳
「・・・・・しょう・・ほう・・・?」
伊勢の口がわずかに動いた
伊勢に間違いない、祥鳳が確信した!
「伊勢さん!伊勢さん!何があったんですか・・何が!」
祥鳳が駆け寄る
駆け寄った祥鳳は伊勢が大事に抱えている物に気がつく・・
「ごめん・・私・・守れなかった・・守れなかったの・・」
1つだけ残された瞳から、涙が溢れ出す伊勢
「ごめんなさい・・提督・・ごめんなさい・・」
祥鳳は伊勢の抱えている物に絶句した
それは久住大佐の生首であった
祥鳳は青ざめ、嘔吐する
伊勢は涙を流し続け、愛おしそうにその頭を抱き、撫で続けていた
「日向も・・・千歳も・・・みんな死んだわ・・そしてわた・・」
伊勢がしゃべり終えない内に、青白い光に包まれ、粒子化し始めた
「祥鳳・・お願い・・この人を、お母さんの下へ・・」
伊勢の身体が粒子になり、粉雪が舞うように消え始めた
「伊勢さん!」
伊勢は久住の亡骸に唇を交わす
「わたし・・この人と一緒になりたかったぁ・・・結婚したかったぁ・・」
伊勢が頬を染め照れくさそうに微笑んだ
そして・・・
祥鳳が久住の亡骸を受け取ろうとした時に完全に粒子となりこの地上から消え
久住の亡骸が地面を転がった・・
そこには、もう伊勢の姿は何処にもなかった・・
そんな・・・
こんな事って・・・
祥鳳は久住の亡骸の前に崩れ落ち泣いた・・
「伊勢さん・・・」
提督・・・
提督・・早く来て・・
早く・・・来て下さい・・・提督
黒煙が舞い上がる南の青空の下、
祥鳳が悲痛な思いで涙を流し、提督の名を口にするのであった・・
つづく