※この作品はR-18です。

艦これ「古鷹の話」琥珀色の幸せ   作:ひびきん屋

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その24

提督と古鷹達を乗せ、予定より半日遅れで飛び立った九七式輸送飛行艇は

中継基地まであと数十分と言う所まで飛んできていた

 

 

「祥鳳!」

 

 

提督が身震いと共に、浅い眠りから覚める・・その身体にはうっすら汗をかいていた

 

 

「提督・・?」

隣りに座っていた古鷹が心配そうに提督を見つめる

 

「悪い夢でも見たのですか?汗かいてますよ・・」

古鷹はハンカチを出し、提督の額や頬にハンカチをあて、汗をふいた

 

 

「あぁ・・・今、祥鳳がな、俺を呼んだような気がして・・」

どこか思いつめたような表情で青ざめている提督

 

 

 

「提督・・」

 

 

心配そうに見詰める古鷹・・

 

 

「提督、もう少しで我々も合流できます!

 もう、縁起でも無い事言わないで下さい・・祥鳳なら大丈夫です!」

前の座席から少し眉間にしわを寄せ夕張が縁起でも無いと強い口調で告げる

 

 

「あ・・すまん」

 

 

「きっと今頃あの子は、久住殿とお茶をしてますよ・・」

そして今度は穏やかな顔をし、夕張が楽観的に述べた

 

 

「・・なら良いのだが」

 

 

そう言いつつも、提督はなぜか胸騒ぎが収まらない・・

 

 

でも今の状況では、何も出来ない・・

そんな現状の歯痒さが、苦虫を噛みつぶしたような顔をさせていた

 

 

 

とにかく、今は「思い過ごし・・」そう念じるしか術がないのであった

 

 

 

 

 

 

しかし・・

 

 

 

 

 

そう言い聞かせようとしている自分が、明らかに苛立ちを見せていると自覚していた

何も出来ない時間は地獄としか言いようが無い・・

 

 

俺のこの胸騒ぎがハズレであれば良いのだが・・・

 

 

 

 

くそっ・・

 

 

 

 

提督はひとり、窓の外を見詰めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォッ ドォッ ドォッ!

 

 

 

 

 

 

黒煙が立ち上る中、数発の機銃の音が響き渡る

 

その音に反応し、祥鳳が伊勢や日向、千歳・・そして久住提督の事を思い泣くのを止めた

そして涙を払い立ち上がり、久住の亡骸を抱え、鋭い眼差しで零式水上偵察機へ駆け出す

 

 

 

 

「必ず、貴方の思い・・願い・・届けます!」

 

 

 

 

 

駆けて来る祥鳳を確認しつつ、パイロットが早く戻るように手招きをする・・

その動作が祥鳳とは別方向を見つめながら慌ただしくなる

零式水上偵察機のエンジンの回転数があがり、プロペラがけたたましく廻りだす

 

 

きっと良くないモノが近づいて来ているのであろう、パイロットの緊迫感が遠くに居ても伝わる

祥鳳は陸地から海面に滑り込み、波飛沫を上げ移動の速度を上げる

 

 

それに合わせるかのように、零式水上偵察機はプロペラの回転数を上げ、少しずつ海面を滑り始める

 

 

走り出した零式水上偵察機へ、海面を滑り、合流して来た祥鳳

そしてその腕の中に抱かれた久住を見たパイロット

 

パイロットは沈痛な面持ちで自分の首にしていた純白のマフラーを久住をくるむ様にと差し出す、

そして手を合わせ、後部座席に祥鳳を着座させ、振り落とされないように告げた

 

 

そして瞬く間に機体を水面から離水させる

 

 

離水したばかりの海面に、轟音と共に水柱が、1本・・2本・・3本と、次々と上がり

その度に浮上したばかりの機体が左右に振動する

 

 

 

マズイ!

 

 

 

傾きかけた機体を建て直し、いっきにきりもみ飛行で急上昇を試みる零式水上偵察機

そして振り落とされないように、久住を抱きかかえ、しがみつく祥鳳

 

 

 

 

主翼が空に線を引く

 

 

 

 

いっきに上昇し、機体をひるがえし、自分達を襲ったものを見極めようと目を凝らす・・

その眼下に広がる光景に、2人は蒼白となる

 

 

 

「そんな・・」

 

 

 

青ざめた祥鳳の口から絞り出したような声が出た

 

 

眼下には無数の敵艦隊・・今まで見た事のない数がそこに居た

タ級、ル級は及ばず、ホ・・リ・・・チ・・・・・

目視できるだけでもその数40隻以上の様々な艦艇が連なり進行していた

 

 

「こ、これはいったい・・・」

今まで見た事のない数に祥鳳が思わず口にした

 

 

眼下に広がる大艦隊をパイロットが写真を数枚撮り、自軍基地への無線を試みる

そしてひと通りの事を終え、祥鳳の青ざめた顔を尻目に、苦虫を噛み潰した様な顔で、現状を見詰めた

 

 

とにかく、この現状からして出来る事は何も無い

一目散にこの空域から出る事・・・それしかない

 

 

 

 

パイロットの判断は早かった

 

 

 

 

零式水上偵察機はきびすを返し、一目散に来た道を戻る

燃料は戻るには充分!しかし戦闘をするだけの弾はない・・

 

 

とにかく現空域からの離脱、それだけを考えてフルスロットルで飛び出した

 

 

 

祥鳳は加重がかかる中、ものすごい勢いで離れていく停泊地・・

伊勢たちだけじゃない、自分達の思いでも沢山ある停泊地としていた島を見ていた・・

 

 

「伊勢さん・・・」

久住を抱え込んでいる腕にギュッと力が入る

 

 

 

「きっと・・きっと、仇とりますから」

祥鳳は唇を真一文字にして唇をかみ締め決意をした

 

 

 

その時であった、ものすごい勢いで、零式水上偵察機の体勢が変化した

 

 

 

「きゃっ!」

祥鳳が左右に揺られる

 

それと同時に、機体をかすめる閃光

 

 

 

追っ手がかかった!とパイロットが告げ、敵に背後を取られないようにと激しい旋回や宙返りを繰り返し行う

 

 

祥鳳は久住と自分の身体を機体にくくりつけると、風防を開け真上に向けて、矢を射るしぐさ形をとる

手の内に青白い光の粒子が集約され、弓となり、そして矢を射る祥鳳

 

 

続けざまに矢を射る!

 

 

射る!

 

 

射る!

 

 

射る!

 

 

立て続けに直上へ射った十数本の矢は、射られた途端に急降下!

それぞれ烈風、零式艦戦52型、そして21型となり、追っ手の深海棲艦艦載機に食らい付く

 

急降下、捕捉、射撃、撃墜・・敵を瞬く間に火の塊と化していく

次々と巴戦が始まり、零式水上偵察機に向って飛んでくる深海棲艦艦載機を寄せ付けない奮戦振りを見せ付けた

 

 

「皆さん、頼みます!」

 

 

祥鳳が烈風、零式艦戦52型、そして21型に願いを託す

そして巴戦の閃光が遠ざかる中、零式水上偵察機は目の前に迫ってくる雲の中に紛れ込んだ

 

 

雲の中に姿をくらましたその零式水上偵察機が激しく揺れる

 

その激しくゆれる中、提督と合流して自分の見てきた惨劇を・・・

久住提督・・伊勢さん達の無念を伝えなければ・・

 

その思いで祥鳳の頭の中は一杯であった

 

 

 

 

 

とにかく、急いで伝えたい・・

 

 

 

 

雲を切り分けるかのように飛び続け、ついに雲を抜ける

 

 

視界が一気にひらけ日差しが突き刺さる・・・まぶしい!と思わず、手で光を遮る

そして祥鳳はまぶしい日差しで目が眩みながらも後方を目視で確認する

 

 

祥鳳の見た遥か後方は、先程まで突っ切ってきた雲のみが浮かんでいるだけだった・・

 

 

 

パイロットも親指を立て、無事に乗り切った事を祥鳳に伝える

 

 

 

 

そのしぐさに安堵し、気が抜けたのか、祥鳳は久住を膝の上に抱えたまま気を失うように眠りに入る

その寝顔は疲れ果てた寝顔であった

 

 

 

 

 

 

深い眠りについた祥鳳

その目の前には提督の姿があった

 

 

 

 

「祥鳳・・・結婚しよう」

提督が祥鳳の唇に口付けをした

 

 

「ていとく・・?」

余りの突然に驚く祥鳳・・そして嬉しそうに頬を染める・・

 

 

 

わたし・・・?

 

 

 

状況を理解していないウエディング姿の祥鳳を提督の優しい笑顔が包み込んだ

 

 

「あ、あの…あの…」

祥鳳は戸惑いながらも、その幸せに身を委ねていた

 

 

そして指輪を左の薬指にはめて貰う・・・

それを嬉しそうに見詰め、目を閉じ嬉し涙をながす

 

 

 

「私・・嬉しい・・これからも~」

 

祥鳳は顔を上げ、提督の顔を見詰めようとした

 

 

 

突然暗転する世界!提督の姿を見失う・・

突如の暗闇、祥鳳の周りに、地面に叩きつけられた銃弾で立ち昇る土煙・・

 

 

 

土煙で周りが見えない

 

 

「提督!提督!」

 

 

祥鳳は土煙の中を提督を探しさまよう・・・

 

 

「提督・・何処です?・・・ていとく」

 

 

土煙の抜こう側に1人の人影が立っていた・・その面影は提督だ!

「提督、そこにいらしましたか・・ご無事で―――っ」

 

 

祥鳳が息を切らしながら駆け寄り顔を上げる

 

 

 

「!!」

 

 

顔が引きつる祥鳳

 

 

そこに立っていたのは傷つき絶命寸前の伊勢・・・そして手の内には提督の・・・・

 

 

 

 

 

 

いや―――――っ!

 

 

 

身体を前のめりにして、声が出ないままの叫びを上げ、目を見開き目覚めた・・

 

 

あまりの光景・・・自分の愛おしい人の・・・

夢の中から覚めても、その光景が頭にこびりつく・・頭から離れない

 

 

汗でびっしょりになっていた・・・

 

 

頭痛すらする程の悪夢に額に手をやり青ざめた・・

 

 

「なんて夢を・・・」

 

 

 

不吉な夢を頭の中から追い出そうと眉間にしわを寄せる・・

 

 

 

そして伊勢の悲痛な思いを考える

 

 

 

伊勢の最後・・膝の上に置かれた、久住提督・・

その提督を抱える自分の手の指にはめられた指輪・・

 

 

 

複雑な思いで、祥鳳はうつむき見詰める・・

 

 

 

 

 

複雑な心が祥鳳の中を駆け抜ける

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしは・・提督を・・みんなを守りたい」

そう願う祥鳳であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

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