-1箇月後-
降りしきる雨の中、軍部主導の国を挙げての葬儀が行われていた
散っていった提督達の名前が読み上げられ、慰霊が祭壇の中央に飾られていた
その祭壇には長蛇の列が出来、死んでいった提督達の無念さを思い、人々の献花が永遠と続けられている
多くの者が涙を流し、故人偲んだ・・・
ラジオからは軍部上層部のお偉方の打つ、ひっきりなしの美辞麗句の謳い文句と、大義名分の叩き売り状態の演説が永遠と中継されている・・遺族の悲しみは置き去りのままに
「どうして彼らは死んだ・・!彼らが非力だったからか?それとも無謀な戦いをした為なのか?
そして死んでいった彼らと共に歩む我々は非力なのか・・・我々は愚かなのか?
その答えは全て否である!
我々の力は非力ではない!あの美しい豊かな海を、故郷の懐かしい海を奪われたままでいいのか!?
それは断じて否である!
この悲しみを忘れるな!お国の為、人類の為、彼らは我々に勇気と言う名の贈り物を残し、旅立った!
いまこの時も多くの将兵が汗と血を流し、我々の平和の為に戦っている・・
我々はこの英雄達に恥じぬようお国の為、人類の為戦う必要があるのだ!
さぁ、共に戦おう!共に築き上げよう!我々の輝かしい未来を!豊かなる将来を!
そして散って行ったこの英雄達に報いる為にも!」
ラジオから聞こえてくる演説は追悼と言うよりも、自分達の正当性を証明しようとするものばかりであった
ラジオの中継は国内中いたる所から聞こえてくる
若くして死んでいった提督達の無念を、戦意高揚の道具として活用して高らかに・・
そんな放送が遠くから聞こえる中、1人の少女が建物の離れに通ずる廊下を歩いていた
腰に太刀を携え、ある扉の前で立ち止まり、ノックをする
「失礼する!」
「・・・?」
人が居る気配は感じるも、そのノックに対しての返礼がない・・
もう一度ノックするも、同じであった・・
なぜだ?と思い、中の返答も待たずにその少女は扉を開け、中を伺った
「おい・・だれも・・・・」
「はい、あ~~~~んv」
「美味しい?」
「うん、美味しいv」
「ほらほら早くどいて、今度は私の番なんだからっ・・」
「はい、提督お口あけて下さいね~v」
「おい、夕張それちょっと大きすな――っ・・フガっ!」
少女の目の前で、古鷹をはじめ琥珀艦隊の各々がひと口大に切り分けた、各々が食べさせたい物をもち、順番に食べさせている、アホ極まりない光景が永遠と続いていた
「・・・・」
天龍、なにか分からないがイラッとする(笑)
「お?天龍・・・どうした?」
口の中にあったバナナを平らげ、扉の前に立つ天龍に気付き声をかけた
提督はベットに横になり、足が固定され身動きがとれない状態で頭だけを動かし天龍の訪問を受け入れた
提督の周りには数え切れないほどの籠盛りが並び、室内中フルーツの甘いの香りが立ち込めている
「くっ!なんだこのあまったる空気は・・・」
「ん?そうかなぁ・・えへへv」
「そっちじゃない!この色ボケ共が!!」
天龍は荒れ狂い、部屋の窓を全開にして、この果実で甘くたるんだ空気を一掃した
「さ、さむっ!」
「ちょっ・・・ちょっと早く閉めてよ早く!」
暴れる天龍を加古と祥鳳と舞風とで押さえ込み、全開に開かれた窓を慌てて閉める
こいつら、やっぱりあそこで死ねば良かったんだっ!
あーっクソ!こいつらなんかムカつく!
押さえつけられながらも、天龍は心の中で叫んだ・・
そしてこんな奴らの事心配するんじゃなかった!俺が引導を渡すべきだった!・・・と後悔もした(笑)
そんなひと悶着があった後の昼下がり・・
お日様がてっぺんまで昇りきり、そこから徐々に降り始めた頃
室内には窓からのあかりが差し込み、換気の為に少し開けた窓からは健やかな風が流れ込んでいた
先程とは違い、外の空気は少し温かみを増していた
そして遠くからは終わる事の無い、追悼と言う大義名分を振りかざした、美辞麗句を並べた戦意高揚のラジオの音が聞こえている
提督は古鷹以外の人払いをして、天龍と共に、暖かい日差しがあふれる外を眺めていた
「お前・・本当にあれで良かったのか?」
天龍が少し不満そうに提督に問いかけた・・
「ん?あ、あぁ・・あれで良いんだよ・・」
何を言い出すのかと思った?と言う顔をしてお気楽に答える提督
「しかしあれではお前の戦功が・・」
天龍は続く言葉を口にしかけた・・
「俺はこのまま、いや、どんな事に成ろうとも・・古鷹と共に歩めればそれで良いんだ」
提督は天龍に諭すように語り掛けた
そして古鷹の顔を見、微笑む・・・散々苦労かけて悲しませてきた古鷹は、提督の顔を見て微笑んでいた
「俺は武人として・・納得がいかん」
提督のその言葉に不満な顔をし、天龍が遭遇した8日前の事を持ち出した
「そういうな・・」
「俺もあれが精一杯でそれ以外何も出来なかったんだから・・」
提督は少し苦笑いをしながら微笑み、8日前の病室の事を振り返った・・
8日前の昼下がり、不機嫌そうな仏頂面で年配の男が提督のベットの脇に立っていた
「どうだ、具合は・・」
その男の脇には天龍と木曽が直立不動の姿勢で立っていた
提督は慌てて身を起こし敬礼をしようとするも身体が言う事を利かず痛みが走る
「あぁ・・そのままで良い!今日は公務ではない・・1人の人間として来ている、そう構えるな」
提督はその言葉に甘えるかの様に会釈だけしてベットに横たわり顔だけをその人物に向けた
「わしの愚息が貴様に迷惑をかけたな・・それからこいつらも世話になった・・」
天龍と木曽の事をさりげなく織り込んでいて礼を述べる
言葉を出さず、最敬礼をする2人
「いえ、こちらこそ、元帥閣下の艦娘・・加賀はじめ、天龍、木曽、多くの面々にお世話になりました
今ここに命あるはそのお陰です。こちらこそ、お礼が言いたい・・」
提督はその年配の男に向って頭を下げた
「そういってくれると私も助かる・・」
「木曽・・」
「はっ!」
その言葉に木曽は反応し、提督のベットの枕元に見舞いの品を置いた
「愚息が迷惑をかけた詫びだ」
「そして、これとは別に、ウチの娘達が世話になった礼をしたい」
年配の男が、見舞いの品以外にも礼を用意していると述べた
自分は受け取る価値が無い人間だと断りを申し入れる
しばらく沈黙が流れるたのち、お構い無しに話が進む
「貴様、何を望む・・金か?女か?それとも名誉か?
ある程度の事なら私の名で叶えてやる、貴様の存念述べてみよ」
その言い草は詫びるというよりも、上官が下士官に述べるような威圧的で事務的な口調であった
そしてその礼の内容も俗物が好みそうな物ばかりだった・・
明らかに提督は試されていた
表情は一切変わらず、淡々と提督を見下ろしてモノを述べているその姿は他を寄せ付けない威厳・・と言うより、威圧的で恐怖感が漂っている・・
気を許した途端、喉笛をかき切られそうな重苦しい雰囲気だった
それもそのはず、今は一個人として来たと言えども、なにせ威厳漂う、帝国海軍の頂点の一角を担う・・元帥閣下である
そのいち提督に対しての無意味なまでの威圧的緊迫感が凄まじく、その威圧的な覇気に、関係ない天龍と木曽までもが、非当事者なのにガチガチに緊張していた・・・・
「で、貴様・・何が欲しい・・早く述べよ」
しばし、考え込んだ提督が口にした言葉は・・
「全て・・頂けますか?」
その強欲な発言に元帥閣下の眉がピクリと動く
そして元帥閣下の2歩後ろにいる木曽と天龍の顔色が変化する
「貴様!頭に乗るなよ!」
天龍が提督の胸倉を掴もうと歩み出るのを元帥閣下が制した
「て、ていとく・・」
提督の脇で看病の為、付き添う古鷹も困惑し焦りの顔をした
「聞こえなかったのですか?自分は全てが欲しいの述べたのです」
提督はしれっとした顔で言い切った
「まず金の事ですが・・」
少しは見所のある奴かと思ったが、所詮お前も俗物か・・
元帥閣下が、そう思い口にしようとしたが、それを遮るように言葉が続いた
「久住提督のご遺族に手厚く・・」
提督は自分の代わりに散って行った可愛い後輩で上官に当たる久住に対しての恩賞を請求したのだ
久住家は当主である久住亡き後、残るは年老いた母親と、4つ下の妹のみ、男手の居ない家がどんなに色んな面において辛いものなのかを、身をもって分かる提督は、金銭面で苦労しない様にと・・今回の件を申し入れた
「久住も女ばかり残して自分が先立ってしまった事、さぞかし心残りだと思います・・・
どうか閣下のご配慮で女手だけでも不自由しないだけの恩給を願います」
少し予想と反した答えだが、しかし、言わんとしている事は理解できる・・
面白い奴だと提督のその発言にニヤリと口角を動かす・・
「良かろう・・その願い、必ず」
その言葉を聞き一礼をする提督
「そして名誉ですが・・久住の妹へ良き縁談を」
提督は久住の妹について触れた・・
彼女には良い所の婿を娶らせたいと・・・入り婿をとらせ、久住家の再興を願ったのだ
「いくらなんでも貴様、それは出すぎたマネではないのか・・?」
これまた話は飛躍したと面白がる
「はっ・・おっしゃる通りであります」
「しかし、以前から久住は妹の幸せを願っていました、良き縁談はないものかと常日頃相談されていました
もし、良き者が居れば紹介して欲しいと・・あいつは実に妹思いの兄でした
当時の自分はまだ縁談は早すぎるだろとたしなめて参りましたが、今この状況を考えますと、
婿を貰いお家を再興する事が久住の死に報いいるのではないかと思ったのです・・」
自分が出すぎたマネをしているのは重々承知の上でのお願いだと告げた
「元帥閣下のお口添えならば、きっと良い婿を紹介して頂けるのでは無いかと、思いまして・・」
提督は深々と頭を下げ願い出た
「・・・」
「貴様、言っている意味が分かるのか?」
元帥閣下は少しいぶかしみながら言葉を発する
「ここでワシが久住家に婿を紹介するという事は、ワシの派閥がまた一段と大きくなるということだぞ・・
あいつの子飼いのお前としては面白くないと思うのだか・・・その願いは筋違いではないか?」
「それは重々承知の上、お願いしております・・」
目をふしたまま会話を続ける提督
「元帥閣下の派閥が大きくなるのは当方としても困る話です・・しかしそれを抜きにしても、久住家の事を第一に考えますと、閣下の庇護の下、久住家を盛り立って頂く方が、久住の家の者の為になるかと・・」
「・・・・」
本当にこいつは馬鹿なのか?
それともワシの想像もつかない所で知恵を張り巡らしているのか・・?
この男・・・わからん・・しかし、こいつは面白い
・・・この男、何を考えている?
提督の腹の内を見定めようとしきりに思考を巡らす
しかし、ワシには損な話ではない・・・ましてやどう考えても、わしに一利ある話だ・・
ここは馬鹿の振りして、こいつの話に乗るべきか・・・・
「・・・・うむ、わかった、貴様の願い責任を持って叶えよう」
すこし面を食らった素振りを演じ、提督の要望を額面どおりかなえる事とした
それに対し、提督は可能な限り深々とベットの上で頭(こうべ)を垂れた
「これで久住も安心してあの世へ旅立てます・・有り難う御座います」
「我が名にかけて、何処にも誰にも恥じぬような家の者を紹介しよう・・
この度の戦の英雄の妹だ・・婿を探しているといえば、引く手数多だろう」
何か知らないが、とんとん拍子に話が進んでいく事に天龍と木曽は驚いていた・・
2人の目の前で繰り広げられている光景は今までにない光景だった・・
この老獪がことごとくその場で即決即断する姿を、今まで殆ど見た事が無かったからである
いつもなら、はぐらかし、じらつかせて、相手を手玉に取り、面白がるのが恒例だったからである
「さて、次を述べてみよ・・」
元帥閣下は言葉を発した
今度は何を言い出すか、少し楽しみにしながら・・
「はっ・・お言葉に甘え、続けさせて頂きます」
その発言に提督は殊勝な面持ちで「女」の話をし始めた
「おんな・・・の件ですが・・」
少し歯切れが悪くなる提督
古鷹が提督の手をギュッと握り締める
提督以上に古鷹が緊張していた
「軽巡・・軽巡洋艦「名取」をご存知でしょうか・・?」
これまた意外な名前が出たと、元帥閣下が驚いた顔をした
「あぁ・・私の記憶に間違いが無ければ、我が愚息が所有していた艦娘だと思うが・・」
「はい、ご推察の通りで御座います・・その名取です」
「で、貴様は・・その名取をどうしたいのだ?」
提督は賭けに出た
「名取を私に頂きたい・・・」
「・・・?」
「使い古した・・手垢の付いた、軽巡をか?」
「はい・・」
「なぜ名取だ? 艦は名取以外にもいっぱい居ろうが・・今望めば、空母でも戦艦でも思いのままだぞ?なのに、なぜ名取にこだわる?・・仮にもお前を殺そうとした艦だぞ?合点がいかぬ、ワシが納得する訳を聞かせろ」
どういう事だ?・・・理解の範疇を超えていた
「・・・・」
提督は古鷹の手をギュッと握り返し、少し沈黙の後、覚悟を決めえて口を開いた
「正直に言います・・・実は名取を貰い受けたいのでは無いのです・・」
「ん?」
なにか面白い話になりそうだぞ・・・元帥閣下の口元が緩む
「いや正確には、私が貰い請けたのち、私の信頼できる人に預け、新たな提督の元に嫁がせたい、そう思うのです」
冷や汗を流し、提督は元帥閣下の目を見つめ、偽りの無い言葉をつづった
「ほっほぉ・・」
これまた意外な言葉が出てきたと感心する
「自分が娶るのではなく、他のものに分け与えたいのだと?」
意地悪く、言葉を選ぶ元帥閣下
「いえ、分け与えるのではなく・・名取の幸せを願って、大事にしてくれる男の下へ送り出してやりたいのです・・」
少し冷や汗をかきつつ、自分が言っている事が無茶苦茶だと分かっているという顔をする
「お前は名取を道具にして自分のシンパを増やそうという魂胆か?」
面白い遊び道具が見つかったという顔をしながら問い詰める
「いえ!違います!」
この言葉に反応して叫んだのは古鷹であった
「そうじゃなりません・・・ただ名取ちゃんも幸せになって欲しいのです!」
更にわざと意地悪く煽る元帥閣下に、提督ではなくその側に寄り添っていた古鷹が食いついた
「古鷹!」
提督が慌てる、許可無く元帥閣下に艦娘が口をきこうものなら懲罰だけではすまない・・場合によっては廃艦処分もあり得る話だけに、提督の顔が青ざめた
「古鷹、やめろ!口を慎め・・古鷹!」
「いえ・・やめません!」
古鷹は提督の制止も聞かず、思いを語りだす
名取の不遇さを、名取の不幸を・・そして自分も同じ様に受けてきた屈辱を知って欲しいと・・
そして自分はこの人に拾われて、今がある・・だから名取も同じ様に愛してくれる人と共に出会わせたいと・・
自分を必要としてくれる人に出会えた時、自分達は今の力以上のものを出せる・・だから名取には・・
古鷹は懸命に名取に幸せを掴んで欲しいと訴えた・・
そんな甘いうわ言、寝言が通じる相手では無いと知りつつも訴えた
ひたすら、旧友を救いたいと、自分達のように愛してくれる人に巡り合せたいと願って・・
その思いの援護を受けて提督は押しに出る
「我が妻が申した通りです・・私達の腹の中には何1つやましい気持ちは御座いません
ただ願うは、夫婦揃って名取の幸せのみです・・これは妻の強い願いでもあり、私の願いでも有ります」
「閣下・・・」
思わず木曽が口を挟む
「妻だと?・・・貴様もか・・・やはり親子か・・」
誰も聞き取れない大きさで、ぼそりと嫌悪感を示した軽蔑した口調でつぶやく
「閣下、奴らの言う事は・・」
それに気付かないまま、木曽が提督達の言葉のフォローをしようとする
「貴様の言う信頼できる男とは・・だれだ?」
その木曽の言葉を遮るように元帥閣下は提督に問うた
明らかに先程とは違う不愉快な声であった
「今は言えません・・しかし、私が尊敬する方です」
元帥閣下は大概あいつだろうと目星は付いていた・・
しかしここはあえて分からぬふりを決め込んだ
「信頼の置ける男か・・・・誰だ?
まぁそれは良いとして・・
我らにとってはどのみち必要とない艦だ・・欲しければくれてやる」
その発言に古鷹の顔が明るくなる、そして提督も安堵した顔をする
「しかしだ!・・・・・おいそれとくれてやるのは面白くない」
元帥閣下は意地悪く微笑むと提督に1通の通達書を提督のベットの上に放った
「ワシはお前の願いを叶えてやった・・今度はお前が私の命に答える番だ」
不気味に微笑む元帥閣下は木曽に目配りをした
「ハッ!」
木曽は元帥閣下の前に一歩踏み出すと、高らかに宣言した
「右の者、本日付を持って3階級特進とし、少将に命ず!
また、右の者に戦艦の所有を認める、身体が治り次第速やかに命に従い行動せよ!」
「・・・・」
ぽか~んとする提督
「聞こえんかったか?・・お前は今日から将となった・・・・
異例ではなるが3階級特進だ、ワシの権限で将にしてやる!」
突然事に、提督も古鷹も・・事情を知らない物は言葉も出ないままであった
「これは褒美では無いぞ・・・地獄へ通ずる入行証だ
加賀を沈めた責任、十分に背負ってもらう・・お前の信頼する男と共にな」
その言葉を発する顔は嬉しそうであり、どこか冷たさも感じた
「さぁ・・これを受ける事が出来るか?
これを受ける事が出来るのなら、お前の望み、全て飲んでやろう」
提督の顔をマジマジとネズミを弄び楽しむ猫の様に見下ろしていた
元々はこの昇進は提督の願いとは関係ないものであったが、
事を絡める事により面白くなりそうだと判断した元帥閣下のいたずら心が、そうさせてしまった
「望み、全てかなえていただけるのなら・・」
元帥閣下は不気味な笑みを残し、提督に背を向け歩き出し言葉を発する
「ならば、お前はあの戦いの後、あの場にドロップした長門型壱番艦。戦艦「長門」を受け取れ・・
この取引の受諾拒否は認めん!加賀が命を落として守り抜いたお前は受け取る責任がある
いいな、必ず長門を受け取り、自分のものとせよ・・そして乗りこなせ」
その言葉を発する元帥閣下についていく木曽、そして現状を飲み込めないまま、提督と元帥閣下を見る天龍
「その書簡の内容をよく読んで次に備えよ・・我を貫く貴様にふさわしい舞台を用意してやる
お前の信頼の置ける男と共に、英雄様として立ち振る舞える舞台をな・・
その舞台で脚光を浴びるか、地獄を見るかはお前次第だ」
背中越しにでも冷酷を楽しむ元帥閣下の喜びが伝わってくる
「せいぜいその日に備えて錬度を上げよ・・・忌まわしき大和の息子よ」
そう告げると元帥閣下は病室を後にした
気を抜いた途端、首根っこを食いちぎられる・・
そんな空気の中の提督と元帥閣下の突然の面会は終わったのであった
その8日前の事を思い出すだけで身震いをする天龍、そしてげんなりする提督・・
あの時はヒヤヒヤしたと天龍は思い出したくも無いという顔をした
「しかし・・お前は馬鹿なのか、利口なのか・・」
天龍が腕を組み頭をかしげる
「そう言わんでくれ・・俺もよく分からん」
苦笑いをしながら天龍に微笑む
「まぁ俺の知った事じゃない・・好きにしろ」
一緒に悩むのは勘弁だと言わんばかりに天龍が頭の後ろで手を組椅子の背もたれにに寄りかかる
そんな天龍に提督は改めて、加賀を失った事への謝罪をした
「加賀の事か?気にするな・・アイツはアイツで信じた道を進んだだけだ・・
自分の判断でお前を助けた・・お前が気にする事ではない
とは言えども、ウチとしては加賀を失った事は大損害には違いない
しかし、それを咎める者は居ない
我が主もあの時あぁは言ったが、伊達に元帥になった訳ではない、歴戦のつわものだ
これは戦争だ・・万事を尽くしても駄目な時は有ると分かっている」
「もし、お前に後悔の念があるとするなら・・お前は死んだ奴の分まで最後まで生き延びろ・・
そして我が主に言われた通り、長門型を乗りこなし、我が同胞へ奉仕せよ」
天龍は武人らしい言葉を提督に贈った・・その言葉に救われる思いがした
提督は加賀の最後を思い返す
爆煙の上がる中、身が焦がされ始めると共に、足が折れ、わき腹に金属片が突き刺さっている自分を抱きしめるように庇い包み込んでくれてた加賀の送り出してくれた言葉が蘇る
「良く戦いました・・流石私の可愛い教え子です・・でもこれでお別れね・・・先生嬉しかったわ」
その言葉を最後に自分は気を失い、それが加賀との永遠の別れとなった
天龍と加古が爆煙立ち上がる炎の中に飛び込み、提督を抱えて炎から飛び出そうとした時には、加賀は光の粒子に包まれ、粉雪の様に舞い、夜空に消えていったという・・・
その顔は笑顔に満ちていて、今も忘れる事が出来なかったとのちに加古から知らされた
「加賀の奴・・また生まれ変わるかなぁ・・」
何気に天龍がぼやいた
「?」
突然の事に不思議がる
「俺、アイツに貸しが有るんだ・・それを返して貰ってない」
少し悲しそうな顔で笑う天龍
「あぁ・・また会えるんじゃないかな・・」
天龍のその顔を見た提督は自虐的な笑みを浮かべ笑った
「だといいな・・」
天龍は天高く澄み切る空をみた
「さて、俺そろそろ行くわ・・」
天龍が重い腰を上げ、帰ると言い出した
「あぁ・・今日はすまんかったな」
「なぁに仕事だからな・・それと暇つぶしさ」
天龍はニカっと笑い気にするなと手を振る
「それじゃ、お前早く身体治せよ!もうすぐ長門が基本教練を終え就航する・・それに間に合わせろ!」
天龍は命令口調でビシッと今回の勤めである、伝令を終え、「じゃあな!」とヒラヒラ手を振り帰っていった
そのエラそうな態度に思わず、ほっこりする提督だった
「提督・・」
古鷹は提督の腕に手を添えた
「古鷹・・・本当にすまなかったな」
提督は古鷹を見つめ、いつになく弱気な表情を見せる
「俺は馬鹿だった・・・お前を置いて・・すまん」
その言葉には、後悔の念でいっぱいだった
「ゆるさない・・許さないんだから・・わたし」
うつむき肩を揺らし泣く古鷹
「ごめん・・ごめんな・・もう二度とお前をこんな気持ちにさせないから・・だから許してくれ」
提督は古鷹を抱き寄せ、震える肩を抱き、涙を流し、古鷹に許しを乞うた
その夜、病室には一糸纏わぬ姿の古鷹と、それを愛おしく見つめる提督が居た
月明かりに映し出される、古鷹の裸体はいつも見ているそれとは違い、いつにもまして美しく見えた・・
提督は言葉を失う
その美しい古鷹の首には大和から貰った指輪を通したネックレスがかかっていた・・
提督は古鷹の手を取り、自分の隣りに招き、抱き寄せ唇を交わす・・・
古鷹はこれまでに無い気持ちの良い感触を身体中に感じ、提督に愛されるがまま悶える
身体中に唇がふれ、唇が這う度に吐息のような微かな声をもらし悶え続けた
幾度となくお互いの唇で相手を感じ続け、心が満たされていく・・
古鷹の柔らかい肌がいつも以上に提督の求めに柔らかく吸い付く・・
愛される処、愛される処、全てに柔らかく提督を受け入れた
提督は火照った身体の古鷹の茂みにそっと顔を埋め目を閉じる
埋めた茂みの先から古鷹の幸せの香りを感じる・・
この香り・・幸せを感じる・・俺は生きているんだ・・そして古鷹を愛してるんだ
「ふるだか・・」
提督は大事に大事に古鷹の身体を愛しんだ
古鷹が小刻みに震えていた
提督は顔を赤らめ涙で潤んだ古鷹の瞳を見つめ、優しく声をかける・・
「ごめんなさい・・わたし・・怖いの・・この幸せがいつか無くなってしまうのでは無いかと思うと・・怖いの」
古鷹は愛されている事を実感し、そして嬉しく思った
しかし、それとは反対に、何かあれば、もう一緒になれないという恐怖にも苛まれ、涙がこぼれる
「お前にはいつも辛い想いばかりさせてしまってごめんな・・」
提督が辛そうに古鷹の涙をぬぐい、古鷹の瞳を見つめる
「本当、ごめんな・・」
古鷹は押しつぶされそうな感情を感じながらも提督の唇を奪い、求めた
長く互いを求め合う2人・・
心が張り裂けそうな切なさに包まれる古鷹はゆっくりと自ら提督の上に腰を下ろす・・
いつもより、きつそうな顔をする古鷹は対面したまま、ゆっくりとゆっくりと提督のものを自分の中に受け入れた・・・涙目ながらに1つになれる喜びの笑顔で提督の熱いモノ全てを受け入れた
抱き合い見つめ合った2人・・提督は古鷹の胸の中に顔をうずめて古鷹の鼓動を耳にする
ドクン、ドクンと柔らかくてあったかい鼓動が提督を包む
そして古鷹は提督の頭を抱きしめ、今一緒に居る、一緒になっている幸せを感じ続けた
もう離したくない
対面して繋がりあった2人は互いをいたわり、肌を重ね、お互いの暖かさを感じていた・・
特に動くわけでもなく、ただただ重なり合い、繋がり続けるだけで幸せであった
いつまでも繋がっていたい・・・
提督も古鷹もお互いを愛おしく抱き合ったまま時を過ごした
相手の体温が伝わる・・
相手の鼓動を感じる・・
相手の匂いが愛おしい・・
そして、こうして1つになれて一緒にいられる今が嬉しい
古鷹は自分の中に入り込んでいる提督の暖かさに、心が張り裂けそうなぐらいドキドキと感じ、いつもより自分の秘所が提督のモノに吸い付くように包み込んでいる事に気が付く・・そしていつも以上に繋がりあう下腹部が熱い・・
いつも以上に求めている自分の身体に気が付く
すき・・あなたすきです・・
提督もいつも以上に暖かく自分が古鷹に包み込まれている、大事に受け入れられていると感じていた・・そう思うだけで、自分では制御できない・・繋がった部分が更に熱くなる
今までにない幸せを貰い続ける提督は古鷹の胸にうずめた顔をあげ、古鷹の胸越しに見上げる
そして意を決したように古鷹に言葉をかけた
「俺、ほしいよ・・お前の子供・・俺とお前の・・・だめかな?」
古鷹は頬を染め、嬉しそうに言葉を貰う
「うれしい・・・わたしもほしい・・私もあなたの子供ほしいよ・・」
古鷹は母性にあふれた優しさで求愛に答え、提督は情けない顔をしながら、求愛をする・・
きっとみっともない顔をしていたに違いない・・でも本当の気持ちを打ち明けるその顔はきっと世界で一番かっこ良かった
古鷹の瞳は潤み、唇は真一文字になりながらも、嬉しいという感情を抑えきれずにプルプルと振るえ、頬を・・いや顔全体を高揚させた・・・その瞳からあふれる喜びが提督の顔に雫となって落ちて行く・・
古鷹は力強く提督の頭を抱きかかえた
声を出す事も無く、古鷹の答えは決まっていた、古鷹は抱きかかえた頭を胸から離し、両手で提督の頬を包み込み唇を奪う・・そして自ら少し腰を動かした
「あなた・・もう・・」
古鷹は瞳を潤ませながら提督に切なそうに懇願する
提督は徐々に、そして激しく腰を動かし始めた
提督の力強いその動きに、古鷹は感じ続け悶え続けた・・・
いつもと違う、説明の付かない快感をむさぼる2人
いつまでもいつまでも、果てる事の無い愛情をむさぼり合って愛しあった
求め合い続けた2人の身体からは、交じり合った男女のそれが匂いたち、その残り香が室内中に立ち込めてた
病室には果実の甘い香りと、2人の男と女の愛し合った甘い香りが充満してなんとも言えない淫靡な気持ちにさせた
提督は古鷹を激しく突き続ける
突くたびに古鷹の顔は苦しそうに、でも快楽に満ちた表情を浮かべた
ここには快楽に身を委ね、ひたすら愛し合い、悶え続ける男と女しか居なかった
「あなた・・」
愛し合う2人は時間を忘れ、我を忘れ、ひたすら相手を求めた
求めて求めて求め続け、そしてお互いを感じあう・・
古鷹は提督の愛を身体の中いっぱいに受け止め、力尽き眠りについた・・
その顔は疲れ果てている筈なのに、幸せそのものだった・・・
提督は月明かりの中、愛おしい古鷹を愛でながら頬に指を添える
そして古鷹の火照った頬の温かさを感じ、唇の温かさを感じ、幸せをかみ締める
ふるだか・・・
その柔らかい身体に寄り添い、幸せの余韻に浸りながら提督は力尽き眠るのであった・・・
つづく