「作戦課長!」
「ハッ!」
「明日より、艦娘の増強に伴う作戦を発動します」
「作戦要綱は以下の通りです」
さほど広くない会議室にて作戦課長が本作戦の概要を読み上げ、今後の軍の展開が決まろうとしていた
提督は末席に身を置き、事の流れを注視してその概要を聞いていた
この作戦の発動で1年以内に大反攻作戦が開始される事が明白となる
この作戦は大反攻作戦の布石であった
「以上、本作戦の概要です」
「よろしい、下がり給え」
「ハッ!」
「以上だ、諸君・・本作戦は艦娘の増強に主軸を置いた作戦となる
今我が軍が所有している艦娘は全総数と思われる数の6割強である
これを8割5分にまで引き上げたい
もちろん、8割5分が最終目標ではない、あくまで最低の数値だ・・・多ければ多いほど良い
そして錬度は言うまでもなく高いに越した頃は無い」
作戦課長の報告を元に、元帥閣下は居並ぶ将達に更に間髪無く告げ続ける
その矢継ぎ早に告げられる展開に提督は固唾を飲んで聞いていた
「貴様らが艦娘獲得作戦を展開中の警備等はここに居ない左官、若造達に任せる事とする
それに際して、若造達への大まかな指揮はワシがとる
そして獲得した艦娘の基本教練はここにいる士官学校校長に任せ、教練が終わり次第
実戦投入し、実戦慣れをさせる
この事により、右の者は士官学校校長の職のまま、予備役を解き
改めて軍に復帰させ艦娘の指導職に就任させる事とする
艦娘の教練場はこれまで通り士官学校の一角にて行う
それに伴い、数を増す艦娘に対して、場を拡張して対処する事とする」
今作戦の内容は短期の総力戦、予備役だった者が次々と戦線復帰となった
勿論数名左官が居るものの、その多くはかつて将の肩書きを持ったものばかりだった・・
そしてその復帰に多くの者は喜んでいた
「また、この部屋の末席で小さくしている若造も本作戦からは外し、教練の補佐とする」
ふふんと微笑み、提督の顔を見る元帥閣下、会議室内に失笑がもれる
そしてその笑いが収まったあたりを見計らい元帥閣下は続けた
「更に付け加えるとだな、今我が軍の隠密機動艦隊が敵、深海棲艦の本拠地、根城を探索しておる
・・が、なかなか尻尾を掴めないでおる・・貴様らも奴らだけに任せず
ここに居並ぶ連中も航行中、深海棲艦の本拠地に繋がりそうな気になる事があれば
随時報告を怠らぬよう肝に銘じよ!」
この場に居合わせた者たちの「命に対する応」の声がこだまする
「諸君、我々は負ける訳には行かないのだ・・本作戦の期間は3ヶ月間
教練に関しては更に1ヶ月間を加える
各自、全精力を持って大いに励め!多くの艦娘を獲得せよ!そして国に尽くせ!」
「勿論、作戦中に出くわした深海棲艦達は必ず海の藻屑と化せ!」
元帥閣下のゲキが飛ぶ
それに応える様に行き良いよく立ち上がり、将達の「命に対する応」の声が会議室内に響き渡る
「それでは解散、各自作戦に備えよ」
「ハッ!」
解散を告げられた将軍達が会議室を我先にと後にする
その際2、3の将が提督に言葉をかけて立ち去った・・どれも有る意味「嫌味」であった
「気にするな」
「閣下」
苦虫を潰したような顔をする提督の脇に、士官学校校長の職と、艦娘の指導職の2つにを兼任した閣下が立つ
「大丈夫です、それよりこれからよろしくお願い致します」
「うむ、久しぶりの現場復帰だ、こちらこそ頼むぞ・・」
「ハッ!」
その2人の姿を横目にし、場を立ち去る元帥閣下
それに対して寄り添う様に側近らしき将が近づき言葉をかけた
「閣下宜しいのですが?あのような対処・・
あれでは奴らに力を与えてしまう恐れがあります、危険では・・
やはり艦娘の基本教練には士官学校と切り離し、こちらの息のかかった者を送り込むべきでは・・」
「ふふふ・・お前は気にせんで良い、奴等にはそんな野心は微塵も無いわ、このワシが保障する・・
もしその気があれば、奴等はとうに先手を打ってきている・・そういう奴等だ
それに奴を任に就かすには理由がある・・奴ほど上手に人を育てれる最適な奴は居ない」
側近の戯言と一蹴する元帥閣下に、なお心配だと言葉を重ねる側近
「その時はワシ自らが奴等を潰す・・それで文句は無かろうが?違うか?」
「ハッ! 出すぎたマネをしました事お許し下さい」
「うむ、なら問題ない・・お前も励めよ、期待しておるぞ」
「ハッ!」
敬礼をして元帥閣下を見送る側近を尻目に、元帥閣下は待ち構えていた作戦課長を肩に手を廻すと
なにやら歩きながら密談らしきものを始めた・・
「さて、これからが本番だが、ひとまず国民の戦意も高揚させないとな・・」
元帥閣下の口角がニヤリとあがる
翌日から関係者全員に作戦が発布され、各々が与えられた役目をこなす為、慌しく動いていた
もちろん提督御一行もこれに漏れることもなく慌しく動いていた
「では、頼んだぞ!」
「お任せ下さい、必ず!」
士官学校校長の職と、艦娘の指導職の2つにを兼任した閣下へ敬礼をし、足早に立ち去る数名の士官
その姿を有る程度見送った後、提督に歩み寄った
「・・で、教官となったお前の役目だが」
あごに手を当て、少し遠くを見つめる・・・その先に名取の姿が映る
そしてぼんやり考えていた事が言葉として浮かぶ
「お前は艦娘に生き様を教えてやれ」
「生き様・・ですか?」
何のことかが理解出来ない提督・・生き様とは・・理念だろうか?大和魂的なモノだろうか・・
何を意味しているのか理解に苦しみながら閣下の言葉に反応をした
「そうだ・・絶望と死の淵にいた古鷹を救い上げ、お前は心から愛し、見事自分の嫁にした
そして、同じ様に絶望に満ちた名取をお前は古鷹と共に救い上げた・・
古鷹を救い上げ、名取を救い上げ、艦娘を愛でる事の出来るお前にはぴったりだ・・」
益々もって良く分からないと言う顔をした提督
「貴様は鈍いな・・分からんか、愛だ、愛!お前が!ワシも含め我らが!艦娘に注ぐ想い、愛でる心、いたわる思い、つむぐ愛だ!」
閣下は普段恥ずかしくて絶対口にする事も億劫になる言葉・・自らの発言に顔を赤くして提督に怒鳴りつけた
そしてその様子を駆け寄って来たばかりの名取が間近で目撃してしまい頬を染め立ち尽くす
「かっか・・・」
名取が閣下の口から、愛だの、愛でるだのと言葉に頬を染め、この人の事が益々好きだと確信した
「違う・・これはだな・・」
「わっかりましたー! 閣下のご命令と有らば、自分は閣下が名取を愛すると同様に、自分は艦娘達に愛の基本教練を致します!」
慌てふためく閣下を尻目に提督は二ヒヒ~と意地悪く微笑みながら敬礼し
そしてすれ違い様名取にウインクをして足早に立ち去るのであった
そして閣下は一人気まずそうに立ち尽くしていた・・嬉しそうな顔をする名取を携えて
「おのれ・・・きゃつめ・・」
作戦が発動されて1ヶ月が立とうとした
士官学校の一角には早くも多くの艦娘が送り込まれてきていた
その数は日を追う毎に増して行き、あっという間に教練場は手狭になってしまった
「それにしても、凄いですね・・この数」
「あぁそれだけ、我が軍の将の肩書きは伊達では無いと言う事だよ」
教練場に居並ぶ艦娘の姿を見ながら、提督は教練場所属の左官に返答していた
「さぁお前もここで油を売ってないで、これから卒業演習だ!
そしてその後は第一期の出立式が控えてる、艦娘達を送り出す準備をしろ!」
「ハッ!了解であります!」
提督に促され、慌てて駆け出していく左官、そしてそれを横目に改めて艦娘達を姿を見つめる
「やれるだけの事はやった・・
後はこの娘達がここで教わった事を活かしながら現場で上手く立ち回れればいいのだが・・」
提督は少し難しそうな顔をして娘達の行く末を気にしていた
果たしてこの娘達の内、作戦終了まで何人が生き残れるのか・・そんな事を思いながら
「教官殿」
そんな顔をしている提督に声がかかる
「ん? どうした加賀」
「今までお世話になりました」
声をかけてきたのは加賀型壱番艦正規空母、加賀である
加賀とは3度目の出会いであった・・・
「教官殿、本日の卒業演習・・最終演習の件なのですが
教官殿に私の指揮をとって頂きたいのですが・・駄目でしょうか?」
加賀は凛としたいつもの姿で提督に嘆願をした
「この俺に指揮をとれと?」
「はい」
「なぜ俺だ?」
「教官殿には色々教えて頂きました
その中でも教官殿が親身に教えて下さりました兵法は自分にとって掛替えの無い知識、宝となりました
その教えて頂いた物を教官の目の前で思う存分披露し、恩返しをさせて頂きたいのです」
加賀のまなざしはいつ見ても真っ直ぐで気持ちの良い視線である
その眼力に押されたのか、はたまた何か別の思いなのか・・
提督は複雑な気持ちに成りながらも加賀の申し出を受けた
「よろしい、貴様の願い受け入れよう・・
俺が指揮を取り、貴様に最高の勝利を送る、お前の一航戦の名に恥じぬ最高の門出の祝いにしてやる
ただし、恩返しと思い戦いに挑むな、己の技量を、裁量を確認する事だけに終始せよ!」
「ありがとうございます、そのお言葉をいただけて、私も流石に気分が高揚します」
加賀は深々と最敬礼をしてその場を後にした
加賀の姿を追う様に見続ける提督は複雑な思いでいた
「みんな、こうして艦娘を見つめ、見送り、思い続けたのだろうなぁ・・」
提督は自分が経験した3度目の出会い、そして今まで誰もが経験してきた艦娘と別れと再会
そしてそれに伴う複雑な感情と落胆や愛憎が繰り広げられてきただろう昔を思い浮かべていた・・
「こうして皆、乗り越えていくのだろうか・・」
加賀を見送った後、艦娘達の方へ視線を送る提督
「なに、感傷にひたってんだよ!」
いきなりのヘッドロックに事情が飲み込めず、思わず体術を食らわしてしまう
「痛い痛いイタイイイイイッ!」
「お!なんだ鈴木か・・」
「良いから・・良いから・・はずせ・・はずして・・お願い」
体術を食らわし、手をひねったまま、痛みに苦しむ鈴木大佐を見下ろしていた
ニヤリと微笑み手をはずし、ニコニコと鈴木大佐を見る提督
「もう・・ホント加減を覚えろよ・・」
「あぁすまんすまん・・暗殺者かと思ったわ」
提督は鈴木のマジで痛がりぼやく姿を面白そうにして笑って応えた
「なぁ・・さっき加賀と話してなかったか?」
「あぁ・・してた」
「何を話した・・?」
「ん?・・この後の演習の事だよ・・俺に指揮してくれって」
なんとなくそっけなく鈴木への返答を繰り替えす提督、そしてそれを見て複雑そうな顔をした
「そっか・・先生がお前の教え子になり、今では教官と呼ばれるか・・」
「あぁ、きっとみんなそうして来たんだろうなぁ・・俺の親父らの時も、その前の親父の親父達の時も・・きっと、ずっとそうやって寂しい思いをしてきたんだろうなぁ・・」
「そうだな・・きっと・・」
鈴木大佐と提督との少し寂しい会話が続いた
「きっと俺達もさび・・・」
「おい、お前達!」
鈴木が感傷に浸った言葉を吐こうとした時に声がかかる
「ん?あかり・・」
「何をしてる、直に始まるぞ!皆がお前達を待ってる、いぞげ!」
探しに来たあかりは近くまで近寄らず、遠巻きに告げる、そして言葉を告げるとそそくさと歩き出した
「さて、行くか・・」
「あぁ・・行くか」
2人はお互いの顔を見合わせ、急ぎ駆け出した
そしてその勢いのままあっさりあかりを追い抜き様に「おさきに!」と台詞を残し微笑んだ
「ちょ・・おい」
「早くこいよ!お前が遅いと言ってみんな待ってるぞw」
「なっ・・お前ら~w」
追い越されたあかりは微笑みながら2人を追うようにして慌てて走り出す
そして3人は皆の待つ集合場所に急いだのであった
因みに追いつき様、あかりは鈴木のケツにケリを入れた・・いつもの光景だ
「ホントあかり、お前のは痛いんだって~!」
鈴木の悲鳴がこだまする(笑)
そして卒業に向けた、演習が始まろうとしていた。
つづく