居並ぶ教官達の中、蹴り上げられたケツを摩る鈴木や、それを尻目に見るあかりが教官席に佇んでいた
勿論提督も教官の最高責任者、筆頭として教官席の中に居て事の成り行きを見ていた
「それまで!勝者、初春!」
「次!妙高、榛名、指揮官を選び共に前へ!」
目の前の演習海域で艦娘の最終試験とも言うべき・・最終演習
所謂卒業に向けた最終試験の演習、卒業演習が賓客を迎え、先程から行われていた
榛名と妙高が教官席にいる教官を各々が選び所定の位置につく
「妙高、参ります、この戦い退くわけには参りませんわ!」
「ええ、榛名でいいならお相手しましょう!」
審判役の教官が各々が所定の位置に就いたのを確認し、手に持った銃にて演習の開始を知らせる空砲を鳴らす
「それでは、開始!」
空砲が鳴り響きくと共に目の前で演習が始まった
「榛名、いざ出撃します! 勝利を、教官に!!」
「この妙高、お世話になった教官の為にも、最後まで戦いぬく覚悟です!重巡妙高、推して参ります!」
演習海域は士官学校校長が責任を持って預かり教練をした艦娘の第一期が卒業を前に、その実力を示す場となっていた
校長は主催としてゲストを迎えるべく賓客席に佇み、賓客と共に卒業演習の成り行きをみている
そしてそのすぐ隣の席には一番の賓客である元帥閣下も着座して、同じ様に仕上がり具合を見ていた
その光景を提督達は肝を冷やしていた
「マジか・・あの2人を並べちゃうなんて・・」
「仕方ないだろ・・2人とも良い大人なんだから大丈夫だろ」
「呉越同舟、犬とサル・・何も起きなければいいのだがな」
提督達は三人三様の構えで賓客席のテントの下、最前列に並ばされて着座している2人の姿を
目の前で行われている演習の合間にげんなりして見ていた
「それにしてもここまでやる意味はあるのかね・・・飛龍達の時より酷くないか?」
鈴木が飛龍が教練を受けた時の事を思い出してポツリとつぶやく
それを隣りにいる提督は視線を演習場から離さず聞いていた・・
確かにここまでやる意味は無いのかもしれない
各々の教練の仕上がり具合を見る為の個人戦
そして連携具合と適正を確認する為の数隻規模による模擬艦隊戦
更に相性の悪いもの同士3人をぶつけ合わせる巴戦
今日1日でこの過酷なスケジュールが組まれていた
本来なら、こんなスケジュールで演習なぞしないのだ
「・・が、しかしこれをクリア出来た者の錬度は格段と向上する、下手な艤装よりよっぽど良い」
そんな中、あかりが捨て吐くようにつぶやいた
「確かにそうだが、新人には酷過ぎると思うんだがなぁ・・」
鈴木があかりの吐き捨てるような言葉に自分の考えを乗せて来た
「しかし、あかりの言う通り、錬度は上がる・・そしてそれは彼女ら自身の身を守る術に繋がる
この演習で得る物は大きい、個人個人の結果はどうであれ、きっと必ず彼女らの轟沈の
確立を確実に下げてくれる・・それは「失う」と言う悲しみが減る事に繋がるんだ」
2人の言葉を踏まえて提督は提督なりの結論を2人に述べた
そして提督の視線は、自分達の席の向かいに設けられた自分達の艦娘達が居るのテント
自分達を信じて今まで付いて来てくれている艦娘に向けられていた
その視線に舞風と夕張が気付き、笑顔で手を振っていた、そして祥鳳も気付き微笑んだ
長門と加古は目の前で繰り広げられている演習に目を輝かせ夢中になって見ている
舞風をはじめ、教官達の艦娘は今日はオブザーバーとして演習を見学していた
これから戦場へ出る事と成る仲間の動きを艦娘として見てアドバイスする為に・・
しかしその中に、身重の古鷹の姿は無かった
かわりに関係者席に混ざる形で身重の古鷹も無理の無い程度に
大和と共に極力目立たないように2人して席の後ろで見学をしていた
「とにかく、彼女らを守る為の教育時間がない・・今出来る事を無理やりでも飲み込ませて
犬死だけはさせない様にしてやるのが、今我々に出来る事だ・・それがこれなのだ」
教官席は提督の言葉で静まり返った
「あとは配属された先の提督の技量しだい・・か?」
「あぁ少なくとも自分達の未熟さで死ぬ事が無い様にしてやりたいんだ・・」
鈴木のつぶやきに提督が合いの手を入れた
「愛だな・・」
「あぁ愛だ」
提督の思いに、鈴木とあかりがつぶやいた
「・・・・」
過酷な運命を背負わされている艦娘の心情を思うと教官席は静まりかえった
教官席でこの度の過酷な演習は何の為に有るのか、そしてどうして必要なのか
そんな問答の答えが提督達教官側の人間には出ようとしていた
パン!
審判の撃つ銃声がこだまする
「両者そこまで!この戦いは引き分けとする!」
妙高と榛名の演習が終了した
妙高は少し肩を落としたまま教官に寄り添った、それを指揮した教官が慰めていた
そして思いのほか戦果を上げられず頭を垂れている榛名の頭を同じ様に指揮をした教官が優しく撫でていた
その光景は師弟の愛というよりも、男女の愛に似ていた
「みんなお前の愛が伝染してるなw」
茶化す鈴木、赤面する提督
「・・・・」
「茶化すな鈴木、艦娘と言えども女だ、乙女心は時により鬼神も退ける力がある
貴様も飛龍を愛しているのだろ?
彼女もそれに応えようと常に全力を尽くす、それにその想いにお前も応えようと
全力を尽くすではないのか?」
あかりが茶化す鈴木を諌めた
この言葉で鈴木が少し小さくなる
「愛・・それが原動力となるならそれでいいではないか」
最後の止めを刺すあかりにふふふと提督の口元がゆるむ
相変わらずこいつらと居ると面白いなぁ・・と
そして立ち上がる
「?」
ん?どうしたと不思議がる、鈴木やあかりを含めた教官たち
「さて、ついに俺の出番だ!」
帽子を真深くかぶり席を立ち歩き出す
審判役の教官が艦娘を呼び出す前に提督は所定の位置へ向った
そしてその先から加賀が現れた
その行動に少しやり辛そうに審判役の教官が声を上げる
「次!蒼龍、加賀、指揮官を選び共に前へ!」
「加賀、緊張してないか?」
「栄光の一航戦です、鎧袖一触、心配いらないです」
「よし!その意気だ」
そういうと提督は加賀の脇に立ち不適に微笑んだ
加賀も微笑み、その提督の微笑みに満足そうであった
そんな不適な微笑みをする師弟を前に蒼龍はニコニコとしながら鈴木の前に立ち指名した
「ん?俺でいいのか?」
突然の思わぬ使命にキョトンとしながら蒼龍を見あげる
「飛龍さんの提督さんである教官なら、わたし・・二航戦の私を使いこなせる方と見込みました
是非、私の指揮を鈴木教官に取って貰いたいんです」
蒼龍は笑顔であるが、真剣な眼差しで鈴木を見ていた
「俺は奴みたいに強くないぞ」
自分の指揮能力は高くないと自虐的に苦笑いした
「そんなこと無いです、自分は知ってますから、教官の凄さを・・だめ・・ですか?」」
蒼龍は少し頬を染めて苦笑い気味に微笑んだ
「よし・・そこまで言うのなら俺がお前を勝利へ導いてやる!」
蒼龍の言葉に気を良くした鈴木が席を勢い良く立ち上がった
「うれしいな~、これならバッチリ戦えますv」
その姿を見て、嬉しそうに喜ぶ蒼龍
「蒼龍、相手は手ごわいが、さほど戦力的に格差は無い、この勝負楽しむぞ!そして勝つ!」
「はい、教官!」
加賀と提督とはまた違った微笑みで、嬉しそうに蒼龍が鈴木の手を引いて所定の位置についた
くしくも一航戦と二航戦の戦い、お互いの心が躍る
そしてそれを見守る会場、演習海域中が、この面白そうな一戦に心なしかそわそわしていた
「まさか演習とはいえ、こんな形でお前と一戦交える事になるとはな・・ふふふ」
「あぁ娘達の演習とはいえ、久しぶりにお前の腕前を見れると思うと・・・へへへ、楽しみだ」
提督達は艦娘を置き去りに、久しぶりに戦える喜びに悪い方へスイッチが入っていった
「あの人・・・もう」
古鷹は遠くの関係者席から提督が悪い顔をしているのが分かった
「だれだ、こんな悪趣味なの組み合わせをしたのは・・」
そして同じ様にあかりが呆れ口調でぼやく・・そしてきっと良くない事が起きると確信していた
悪い微笑みをする教官たちに娘達も心が躍り始める
「教官、艦載機の練度もバッチリです、戦果を期待してください」
「蒼龍、貴方も練度をあげているというの? そう、良いでしょう、見せて頂きます、この戦いで」
蒼龍、加賀双方も自信に満ちた言葉を発した
審判役の教官が一抹の不安を抱えながらも空砲を鳴らす
「それでは、開始!」
開始の空砲と共に提督は号令を飛ばし、加賀から零式艦戦21型が次々と発艦、蒼龍目掛けて飛び立つ
同じ様に蒼龍からも鈴木の号令と共に零式艦戦21型が発艦し、お互いの制空権争いを激しく競い始める
「負けるな!ぶちのめせー!」
「はい、攻撃隊、発艦はじめっ!」
矢継ぎ早に発艦させる蒼龍
「敵空母の主力がでてくるなら…流石に、慎重に攻めたいところだけど・・
でもしかし・・頭にきました」
蒼龍の矢継ぎ早の発艦攻撃が面白くない加賀は少し機嫌が斜めになる
「加賀、慌てるな、楽しみはこれからだ」
その加賀を諌めているようなふりをして楽しみ始めている提督はころあいを見計らっていた
「加賀、これを使え」
そして頃合いとみて提督は加賀に近寄りそっと何をか渡した
「こ、これは・・いいのですか?」
「かまわん、俺のが許す!」
「ふふふそうね、この強化は良い判断ね・・」
不適に微笑み加賀は提督から受け渡された矢を立て続けに解き放つ
「この良い装備はさすがに気分が高揚します」
加賀から解き放たれたのは「烈風」
本来なら就航したばかりの加賀が装備していない筈の烈風が加賀から放たれた
演習場がざわめく
そのざわめきを他所に、烈風は解き放たれると制空権だけでなく対空装備としても優秀な故に瞬く間に蒼龍が放った零式艦戦21型を駆逐し始めた
「やだやだやだぁ~」
蒼龍がどんどんな涙目になる
「おい、バカヤロウ!汚ねぇぞう!」
鈴木が顔を赤くして怒り始める
「飛行甲板に被弾?! やだ、誘爆しちゃう!」
制空権を失い始めた蒼龍が加賀の放った艦載機の攻撃で甲板に軽く被弾した
「蒼龍!」
「お前を沈めはしない!これを使え!」
鈴木は慌てて駆け寄り、蒼龍にこれまた隠し持っていた「矢」と「ある物」を渡した
「教官・・これは・・良いんですかぁ・・」
「あぁお前に勝利をくれてやると言っただろ!」
少し弱気になっていた蒼龍の頭を撫でて微笑む鈴木
「ありがとう、これで加賀には負けません!」
そう言うと態勢を立て直し、受け取った装備を艤装をした
「そろそろ反撃よ…全艦載機、発進!勝利を狙って行きましょう!」
解き放たれた矢は零式艦戦21型(熟練)と九七式艦攻(友永隊)と化し、加賀目掛けて襲い掛かる
そして25mm三連装機銃 集中配備により蒼龍を加賀の艦載機の攻撃から守り始めた
「あっ!お前!」
提督がムッとした顔をする
零式艦戦21型(熟練)が烈風といい勝負を繰り広げる隙を縫い、九七式艦攻(友永隊)が加賀に襲い掛かる
それを懸命に避けながら直掩機を放つ加賀
目の前で繰り広げられている光景を見るもの全てが固唾を飲んで見守っていた
演習の筈なのに、鬼気迫る戦いが繰り広げられていたからだ
しかし各艦載機の戦いが巴戦となり、泥沼化し始めた
そして、演習海域の岸辺に流れ弾が被弾し始めた
「おい、そろそろ止めた方が良いと思うのだが・・」
あかりが近くにいた目下の教官に告げた
「は、はい!自分行って来ます!」
あかりの言葉を託した教官が、事の成り行きに困惑している審判役の教官の下へ走り出す
しかし、蒼龍と加賀の繰り出す艦載機による銃弾や爆撃の流れ弾で思うように近づけない
「もう!勘弁してくださいよっ」
泣きを入れながらそれでも駆け抜ける目下の教官は審判のいる場所を目指した
「これはもう・・演習では無いな」
元帥閣下が目の前で繰り広げられる艦載機の巴戦を見て呆れながらつぶやく
されど呆れながらも子供の様な輝きを放つ目が事の成り行きを楽しそうに凝視していた
「あのバカ・・」
そして、その元帥閣下を尻目に校長閣下がぼやく
目の前で繰り広げられる巴戦は苛烈を極めていた
そして戦火は広がり、戦線が拡大していく
パン!パン!パン!
「やめー!やめ!この試合やめー!」
審判役の教官が演習の中止を告げる空砲を鳴らすが、ムキに成っている提督達にはその声と音が届かず、また2人に感化され熱の入った戦いをする蒼龍と加賀達にも声が届いていない、ひたすら相手を倒す事だけに夢中であった
仕舞いには舞風たちが待機しているオブザーバー席にまで艦載機が突っ込んでくる始末
「ちょっ!いい加減にしてしてよね!」
罵声を飛ばしながらも、自らに降り注ぐ火の粉は払い除けるだけの器量は持ち合わせていた
近寄ってきた艦載機を次々と打ち落とす娘達
その光景を関係者席で見ていた古鷹が青ざめる
「お、お母様・・これって」
「不味いわよね・・・」
苦笑いしながら、事の顛末が目に浮かんで苦笑いをしていた
「古鷹ちゃん、ひとまず、ここは色んな意味で危ないから離れましょう・・」
大和は古鷹にそう促すと関係者席から、とばっちりを受ける前にそっと立ち去った
「い、良いんですか・・」
「いいの、いいのw」
「名取!」
「陸奥!」
元帥閣下と校長閣下が同時に娘の名を呼ぶ
呼ばれると共に賓客席の前に立ちはだかり体制を整えた陸奥と名取
陸奥と名取は両閣下の前に進み出たのち艤装を開始した
名取と陸奥、2人の身体に青白い粒子が集まり、青く発光し始めた
「陸奥、アイツ等に食らわせろ!」
「あらあら・・いいわ、やってあげる!」
あごに手をやり面白そうに継げる元帥閣下の悪ガキ染みた微笑に目を輝かす陸奥
「名取、アイツ等に灸をすえるぞ!」
「こ、これは…気合を入れないといけないですね・・わ、分かりました、頑張ります!閣下!」
少し頭を抱えたくなる表情をした閣下の心情をおもんばかる名取は真面目な顔でそれに応える
「てーっ!!」
2人は演習場目掛けて砲弾を撃ち込んだ
打ち込んだ砲弾は空中で炸裂し、大量の子弾が爆散、飛び交う艦載機を編隊ごと一網打尽に殲滅した
その爆散した子弾の破裂音と共に急に空が静かになる・・
所謂三式弾が炸裂したのだ、一気に艦載機の姿が空から消えた
「!?」
目の前で全ての艦載機が藻屑と消え、愕然とする両教官
更に陸奥から放たれた41cm連装砲が蒼龍、加賀両空母の飛行甲板だけを身体に傷が付かない様に見事にぶち抜く・・
賓客席からどよめきと感嘆の声が聞こえる
恐ろしいまでの命中精度でぶち抜かれた飛行甲板は途中から真っ二つとなった、そして折れた先は海中へ沈んでいったのであった
突然の事に両空母は青ざめる、そして我に帰り機関を停止した
「相変わらず良い腕をしているな・・陸奥」
「あら、煽てても別に何も出ないわよ・・・でも悪くはないわね、ありがと閣下v」
主である元帥閣下のお褒めの言葉に頬を染め、その言葉とは裏腹に嬉しそうに喜ぶ陸奥
「こ、この戦いは両者失格!無効とする・・」
審判役の教官はやっと止まった演習に安堵の表情を見せ、腹から振り絞って声を出した
そして賓客席から怒声が響き渡る
「貴様ら、ただちにこっちへ来い!」
青ざめる提督達
明らかにお怒りになっている両閣下・・・
「こりゃ・・減俸どころじゃ済まないなぁ・・」
げんなりする提督と鈴木大佐
「自業自得だ」
あかりは微動だにせず、顛末をみていた
提督と鈴木は駆け足で賓客席脇に駆けつけ、校長閣下に説教を喰らっていた
その光景をニヤニヤと元帥閣下が嬉しそうに見ていた
「貴様らはこの場をなんだと思って・・・」
校長閣下の説教が始まって暫くした時の事だった
ドォォォォォン!
会場中に響き渡る爆発音
その爆音に即座に反応する提督達
先ほどまでニヤニヤ見ていた元帥閣下の表情も強張った
演習海域と外海を繋ぐはるか遠くに砲煙が立つのが見える・・
その場所から砲弾が打ち込まれたようだった
即座にあかりが誰よりも早く反応を示し、向かいに座る金剛に令を下した
「金剛!零式水上偵察機だ、奴が何者か付きとめよ!」
「Yes! 私の実力、見せてあげるネー!」
金剛が砲煙の上がる方面へ零式水上偵察機を飛ばした
鈴木も飛龍に命を下す
「飛龍!」
「分かってます!」
飛龍は鈴木の命と同時に瑞雲を発艦させた
更に最悪の事態を想定して第一次攻撃隊を即座に発艦させて事態に対処をする
提督は他の者と同じ様に祥鳳に命を下す
「祥鳳、艦載機いつでも出せる準備を!」
「はい、提督!」
「閣下、お叱りは後でお願いします」
「分かっておる、行け!」
提督達は両閣下に一礼をし、その場を離れ艦娘達と合流した
あの砲煙はなんなのか・・確認が取れるまで暫し時間が流れる
その間も砲撃は続き徐々に精度を増し、観客席近くに着弾し始める
関係者と賓客の退避が告げられ、あわただしく演習海域の現場から退避を始めた
今日の主役の教練中の艦娘達にも命が下る、娘達は教官の指示に従い各々艤装を始めた
多くの娘達の身体に青白い粒子が集まり、青く発光し始めた
艤装の済んだ娘達を教官一同が自分の所有している艦娘と共に誘導して事の成り行きを見ていた
「心配ない、まかせればいい」
響が動揺する娘達に告げる、その声は自分を指揮する主、鈴木への信頼
そして鈴木のボスにして友人の提督とあかりに対する信頼の現われであった
金剛と飛龍から放たれた零式水上偵察機と瑞雲は砲煙の方向へひたすら飛び続けた
その砲煙を上げている艦は明らかに同胞の物ではないと気付く
そのイメージを受け取り続ける金剛と飛龍
「HEY、提督ぅー!やっぱり敵ネーっ」
「提督、敵を発見!ル級戦艦多数確認、ネ級重巡も確認・・・待って下さい!なにこれ・・」
大雑把な情報しか挙げない金剛とは別に飛龍が詳細な敵の情報を受け取り拾い上げていた
しかしその報告もある物を見て言葉が途絶える
「どうした!飛龍」
その報告が途絶えた事に焦りの色を見せる鈴木・・
長い間の付き合いになるが、今までこんな事はなかっただけに一抹の不安がよふぎる
「どうして・・こんな事に・・・」
「どうした、飛龍!何があったんだ、報告を怠るな!」
蒼白と成る飛龍に鈴木が声をかける
その声にハッとして我に戻る飛龍は慌てて声を出す
「す、すみません!」
「祥鳳!第一次攻撃隊を出せ!」
飛龍と鈴木のやり取りを他所に、嫌な予感がする提督が即座に祥鳳へ命じる
「はい、攻撃隊、発艦始めます!」
祥鳳は立て続けに矢を射る
射った矢は彗星と化し、大編隊を組んで敵、深海棲艦隊へ向けて飛び立った
「第2次攻撃隊、編成します!出来次第随時発進させます!」
「おう!」
祥鳳の声に提督が応える
既に飛龍の飛ばした先遣隊の艦載機が戦闘を始めているのが、飛び交う閃光で分かった
「古鷹!」
祥鳳へ命を下した後、提督は古鷹の名を叫ぶ
「提督、古鷹はお休みだぜ」
「あ!」
加古がそういうと提督の隣りに滑り込んできた
そして舞風と夕張も同じ様に滑り込んできて、苦笑いをする
「また言ってるの・・ホント好きだねw」
いつもの癖が抜け切らず古鷹の名を叫んでしまう提督は赤面しながら改めて今の秘書艦である長門を呼んだ
「癖と言うものは抜けないものだな・・」
長門が表情を変えずに提督の脇に立つ
「すまんな、長門・・」
「気にするな、もうなれた」
「敵確認出来ました!」
途中で報告が途絶えていた飛龍の口から改めて敵の勢力が語られる
そしてその内容に皆が凍りつくのであった
「くそったれ・・・」
提督はそう呟くしかなかったのであった
つづく