※この作品はR-18です。

艦これ「古鷹の話」琥珀色の幸せ   作:ひびきん屋

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その38

3回忌法要が行われた当日の夜、とある軍事施設内にある研究所の地下室に元帥閣下の姿があった

 

元帥閣下は通常サイズよりはるかに大きい入渠用のカプセルドックの前に立ち

ドックの中で時を待つ女性を見ていた

 

入渠終了までのカウントは23時間を切っていた

 

 

「お前は・・・」

 

 

元帥閣下は培養液内で静かに時を過ごし、その時を待つ女性を複雑な眼差しで見ていたのだ

 

 

 

 

3年前、敵、深海棲艦の進入を許し、それを撃退する為に多くの者が海に散り、また多くの者達が奮戦していた

しかし、敵勢力の強大さに今まさに本丸・・元帥閣下、校長閣下の眼前まで敵の侵攻を許してしまっていた

 

その惨劇の現場と化した演習海域に滑り込んでくる一隻の戦艦が元帥閣下の行く手を阻んだのだ

この場に居ない筈の女が目の前に現れ、言葉を失う

 

「さぁ貴方は下がって下さい!ここからは私達が何とかします、陸奥、行くわよ!」

「え?あ・・はい」

突然の号令に戸惑いながらも陸奥はその声に従ってしまう

 

「大和型戦艦一番艦、戦艦大和、推して参ります!」

 

「なっ!貴様勝手な事をっ・・やめろ、下がれ!」

 

突如現れた戦艦は、大和型戦艦一番艦大和であった

元帥閣下の目の前に陣を取り、陸奥を従えて敵への反抗を開始した

陸奥はなんの疑問も持たずに主以外の人間・・いや、大和の指示に従っている自分に

不可解さを覚えながらも敵に応戦し始めていた

 

「貴様、ワシの命に従え!」

元帥閣下は慌てて大和を止めようと懸命に怒鳴りつける

しかし大和は言う事を聞こうとはしなかった・・・元帥閣下はその姿、有様に焦りの色を浮かばせる

 

それはかつて大和が自分の我がままで自分の愛する人の腕を奪ってしまった

その時の様な戦い方をするハチャメチャな雰囲気をした眼をしていたからである

大和の目は穏やかな女の目ではなく、1人の狂戦士の目をしていった

 

「旗艦大和、出撃します!敵艦捕捉、全主砲薙ぎ払え!」

その号令と共に46cm三連装砲の全門が火を噴き、轟音が響き渡る

それに合わせ陸奥の41cm連装砲も火を噴いた

 

間近まで迫った多数のル級戦艦、ネ級重巡をあっさり葬り去り

そして一部の駆逐棲姫、軽巡棲姫を沈め、または退けた

 

しかし、押された戦況は早々変わるのもではなく、大和、陸奥の砲撃をもってしても厳しい状況であった

 

「バカ、やめろ!大和!やめろ!」

元帥閣下は大和の突撃を心底恐れた、その理由は過去にある

思い出したくも無い、忌々しい過去を呼び起こすには充分すぎる光景が目の前で繰り広げられていた

 

 

「バカ、貴様は下がれ!ワシはワシは・・貴様を失う事は出来んのだ!

 奴との約束を・・約束を反故にさせる気か、大和!」

 

元帥閣下は大和に追いつき、肩を鷲掴みにし、大和の愚考を諌めようとする

 

「閣下・・それは私にも言える事よ・・」

振り向き様、大和が温和な顔になる

 

「貴方があの人に私を託されたように、私は武蔵に貴方を託されたんですもの・・ 

 私の命と引き換えにしても貴方の命を失うわけにはいかないのよ・・」

 

 

「む、武蔵が・・」

元帥閣下の手が一瞬緩む

 

その隙を突いて大和は前進し、多くの娘達に指示をし戦況の打開を図る

 

 

「むさし・・」

かつて自分を愛してくれた、そして愛した女の名前が出て動揺した

 

そしてその状況を垣間見、一瞬の隙が命取りになる事を知っている大和は号令を再びかけた

 

「天龍!木曽!閣下の下へ!

 攻撃の隙を見て後退し、そしてなんとしても閣下の命、死守しなさい!」

 

「おぉ!」

 

天龍と木曽は混戦模様の戦線から舞い戻り元帥閣下の両脇に陣を構え、敵の攻撃に備えた

そして頃合いを見計らい、元帥閣下の両脇を抱え、戦線から後方へと無理やり退けた

 

「き、貴様達、何を・・・く、くそっ! は、離せっ!」

元帥閣下は屈辱に満ちた顔をしつつ天龍と木曽の力付くの転進に従うしかなかった

 

「や、大和!貴様、許さんぞ!」

その声が大和へ呼びかける最後の言葉となった

 

 

そして大和の46cm三連装砲を中心に戦艦の主砲が火を噴き続けたお陰で戦況は好転し、

空母の絶え間ない活躍、巡洋艦の躍動的な反攻、駆逐艦の懸命な働きにより

演習海域に侵入した敵、深海棲艦を撃滅、撃破する事が出来たのだった

 

 

しかしその後、終わってみれば見渡す限り地獄であった

多くの者が塵と化した海、多くの者が傷付きうずくまる姿

そしてその全て者が悲しみに暮れた面持ちで満ちていたのである

 

その中に傷付き動く事の出来なくなった大和の姿もあった

 

 

それが3年前の出来事であった

 

 

 

「大和・・貴様は・・」

3年前の出来事を振り返り、そして大和の姿を見続けた

 

 

 

「やはりここだったか・・・」

入渠用の大きなカプセルを見続ける元帥閣下に声がかかる

元帥閣下はその声の主の方を見て、苦々しい顔をした

 

「貴様か・・どうやって入った・・」

 

声をかけた人物は士官学校校長であった

 

「23時間を切ったか・・・」

「あぁ・・もうすぐ大和は戻ってくる」

 

2人は大和を見つめ、感慨深そうに語りだす

 

 

「こうしてお前と2人で話すのは何十年ぶりだろうなぁ・・」

「あ?・・あぁもうそんな昔の事、忘れたわ」

校長閣下の問いにぶっきらぼうに答える元帥閣下

その応え方に、相変わらずだなお前という顔をする校長閣下

 

「しかし、良かった・・大和が死ななくて・・もしもがあれば、俺達はあいつに会わす顔がなくなる所だった」

「ふん・・ワシらが悪いわけではない、大和が独断で動いた結果だ・・こちらとしては良い迷惑だわ」

「ふふふ・・あぁ確かにな・・でもそれは昔から俺達は知っていたじゃないか

 いつもあいつと大和は好き勝手をすると、そしてそれを面白がって俺達が追随したじゃないか・・」

「あぁだからいつもこうなる・・我々はいつも冷や汗をかかされるのだ・・・

 そして命を落とすんだ・・アイツの様に」

 

 

元帥閣下は、詰まらなさそうな顔をして昔を思い起こしていた

 

 

「大和、お前に言ったんだってな・・武蔵にお前を託されたと」

「・・・・」

 

沈黙が2人の間に暫し流れる

 

「戯言だ・・忘れろ」

元帥閣下は校長閣下を残し1人歩き出した

 

 

「今度の戦いは貴様が大和の指揮をとれ・・

 大和を自分の艦として扱え、言う事の聞かない艦などワシには要らん

 ワシより、仲の良かった貴様の方がお似合いだ・・その方がきっと奴も喜ぶだろ・・」

 

「いいのか・・?」

「良いも何も、あの女は貴様にしか懐かんわ」

 

そう述べると元帥閣下は1人施設の外へ消えて行ったのであった

 

 

 

 

面白くなさそうな顔をして・・・

 

 

 

 

 

 

 

その夜元帥閣下は夢を見た

 

 

それは思い出したくも無い悪夢であった・・

 

「戦艦武蔵、いざ…出撃するぞ!」

「武蔵、駄目だ行くな!行っては駄目だ!」

「悪いな・・こうするしかないのだ、すまん」

 

武蔵は優しく微笑んで突き進んだ

 

 

「くっ、いいぞ、当ててこい!私はここだ!」

「まだだ…まだこの程度で、この武蔵は…沈まんぞ!」

 

「やめろ・・やめてくれ・・・武蔵・・武蔵やめろ・・戻ってきてくれ・・」

目の前で繰り広げられる戦いに涙し懇願する

目の前で武蔵がどんどん被弾していく姿を見せ付けられる

 

「武蔵!武蔵!・・もういい、やめてくれ、武蔵っ!」

 

 

 

懇願する思いは届かず戦いは終わりをむかえ、更に2人の終末をむかえようとしていた

 

 

「武蔵・・バカヤロウ・・・なんて事を・・」

抱きかかえる武蔵の身体には多くの砲弾のあとがあった

 

「うっ・・この・・バイタルパートまでやられては、な・・仕方ないさ・・」

武蔵は自分の死期が迫っている事に気付いていた、身体の一部が粒子化を始めていた

 

 

 

元帥閣下は武蔵を愛おしく抱きかかえ、最後の時間をかみ締めていた

 

「すまんな・・せっかくお前の子を宿したというのに・・こんな結果にしてしまって」

「折角、大和がこっそり不思議な粉をくれたのに・・」

武蔵がおなかをさすりながら残念そうに元帥閣下の顔を見つめる

 

「お、俺の子がおなかに?」

元帥閣下はその事実を知らされていなかったので驚愕した

 

「あぁ本当はもっと早く知らせるべきだったんだが・・妊娠したという確信が持てなくてな・・すまん」

武蔵は苦笑いをし、元帥閣下の瞳から流れる涙を指ですくい上げた

 

「お前と会えて嬉しかったぞ・・お前と身体を重ねる事が出来て幸せだった・・

 一緒に寝起きをして、共に笑い、過ごせた事が嬉しかった・・・」

最期の力を振り絞る武蔵は微笑み続けた

 

 

「武蔵・・武蔵・・俺を・・俺を置いていかないでくれ」

涙で顔がぐちゃぐちゃになり、まともに武蔵の姿を見れないほど涙でいっぱいの顔になっていた

 

「お前は1人じゃない・・死んでもお前を見守る・・お前の子と共に

 ・・お前にはこの武蔵がいる!心配するな・・私達の為にも前を見て進んでくれ・・」

武蔵は嬉しそうに微笑んで最後の言葉を残し青白く光はじめ粒子と化しこの世から消えたのであった

 

 

「愛してる・・」

 

 

天に昇り始める光

 

 

 

 

 

その光を見つめ叫ぶ元帥閣下

 

 

 

そしてそれと同時に眼を覚ます

 

 

「武蔵!」

 

 

まだ夜が開けきらぬ景色がみえる部屋の中で、独り目が覚めた

 

 

 

そして虚しさだけが心を支配したのであった

 

 

 

 

 

「こんな思いをするのは俺1人で充分だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

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