「1000時、引継ぎを完了いたします!」
使者が訪れてから2日後の今日、艦隊が停泊していたこの島を離れる事となった。
2人の提督が秘書を横に連れ添い向かい合って敬礼を交わす。
「ご苦労様でした」
「後はよろしく頼みます」
ひとしきりの引継ぎの儀式が終わった途端襟元を緩め、顔が緩む2人
「先輩、道中お気をつけて――」
「あぁ、ありがとう・・でも先輩はやめてくれ、階級はお前の方が上なんだから、く・ず・み・た・い・さ・ど・のw」
少し意地悪くからかう様に先輩と慕う後輩の上官に返答する提督
「せ、先輩やめて下さい」(汗)
ものすごくバツが悪そう顔をする・・それを見たくて仕掛けたので大成功である。
「先輩は、先輩です!」
「あら・・そ・・」
それにもめげない実直な後輩であった
「それにしても先輩がまだ少佐扱いなんて・・
しかもこんな僻地の戦場に・・自分・・自分は・・信じられません!」
「久住・・」
「あれだけの功績を残されておられるにもかかわらず・・本来なら大佐・・いや少将にだって・・」
久住大佐は提督の処遇の不遇さに納得がいってないようで不満を漏らし始めた。
「久住・・」
「どうしてあれが先輩の手柄ではないと・・」
「久住!」
声を張り上げる提督
沈黙を持って控えていた両提督の秘書たちもビクッと驚く
「しかし・・」
大声にはっとし、悔しそうに下をうつむき唇をかみ締める久住大佐
「すまんな・・大きな声を出して・・」
肩に手を置き久住を気遣う
「いえ、自分こそ、先輩の気持ちを察せず、行き過ぎたまねを・・すみませんでした」
久住は90度のお辞儀で先輩に非礼をわびた
その実直で素直な所は今も昔も変わっていない・・久住を見て昔を思い出す
「じゃあ後は頼んだぞ、一週間もすれば俺は戻る
その間ムリに戦うな、偏狭といえども敵は強大だ、なるべく戦闘は避け必要最低限の戦闘に控えよ
とにかく俺が戻るまで安全を第一とせよ!これはお前の為だけではない、彼女たちの為でもある・・」
そういうと笑顔で久住大佐にゲキを飛ばす
「はい、了解しました!先輩がお戻りになるまでムリはいたしません!」
直立不動で敬礼をする久住大佐
「くずみ・・・お前、どちらが上官かわからんぞ・・」
呆れ顔で苦笑いをする提督、ほほを染め満足げな久住・・しばしそのまま時が流れ、そして大いに笑った。
それを見ながら古鷹は思った
「いいなぁ・・男の人って・・」
女子には無い・・2人の男同士の関係に、少し羨ましいものを感じる古鷹であった
「そうね・・良いわよね、男の友情」
傍らには久住大佐の秘書の戦艦伊勢が立っていた・・
「始めまして、古鷹さん」
「あ・始めまして・・」
握手を求める伊勢に、握手を交わしながらも名前が即座に出てこない古鷹
「伊勢です・・」
それを察したかのように笑顔で答える伊勢
「あわわわ・・すみません、名前がすぐに出てこなくて」
「ふふふ・・良いわよ、よくある事だから」
慌てふためく古鷹、それを初々しく面白そうに見ている伊勢
古鷹の所属している軍組織の最下部に近い艦隊では、まず戦艦と出会う事など、めったに無い。
仮に目にする事があったとしてもそれは観艦式のような晴れの舞台で遠巻きに見るぐらいである。
故に分かっていてもとっさに名前と顔が一致する事は難しいのであった・・・
ましてや大和の様に存在すら、ひた隠しされている者まで居るのだから、余計である。
そんな事を知っているので伊勢も慣れたものであった
「古鷹さん・・戦艦を見るのは初めて?」
「あ・・はい・・私初めて・・です」
ドキドキしながら応答する古鷹・・完全に頭が廻ってない(苦笑)
「私・・始めて戦艦の人みました・・凄いですね・・これなら敵も容易く倒せそう」
目を輝かせて武装している伊勢の砲塔を見つめていた
「案外そうでもないのよ・・」
苦笑いしながらそう答える
「そうなんですか?」
これだけのインチのある砲塔なら軽く倒せそうなものなのに・・と不思議そうに思う古鷹
「大きい分だけ色々とね・・」
すこし自虐的に答える伊勢
「そんなものなんですかね・・」
「えぇそんなものよ・・・」
2人じゃれあっている提督を眺めながら、のんびりと会話を始めた古鷹と伊勢
自分の提督の方を見て嬉しそうに語りだす
「私たちって、提督が指揮をとって始めて自分の力以上のものが出せるじゃない・・
そしてお互い信頼して必要としているから戦えるんだと思うんだよね・・」
「だから力があってもそれだけでは勝てないの・・同じ秘書してる貴方なら分かると思うけど」
愛おしそうに見つめる伊勢の顔は女の顔をしていた・・
「はい、それなら自分も良く分かります・・提督が居るから自分もめいいっぱい頑張れます・・そして尽くせます」
晴れやかな顔で伊勢の言葉に同じ思いを感じ嬉しそうに答える古鷹
「ただね・・うちの提督に日向とよく間違われるのよね・・しかも同じ艦隊にいるから・・日向」
「あら・・・それはひどいw」
苦笑いをしながらウインクしてささやかな愚痴を言う伊勢、それに調子を合わせる古鷹
そこに2人の提督の滑稽なやり取りを見て・・もう2人は笑い始める
「あはは・・お互い変な人、好きになっちゃったわねw」
突然楽しそうに笑い始める秘書2人に気付き「?」の提督たちは
自分たちがおふざけしすぎている事に気付き、赤面する・・
「んんんっん!とにかくだなー!」
改まってかしこまり、姿勢を正し久住大佐に念押しする
「とにかく、この海域は今までと少し違う、なんと言えばいいか分からないが、なにか嫌なものを感じる」
改まった提督の目は真剣な目をしていた
「とにかく様子が可笑しい!絶対に深追いするな!」
「はい!」
久住も姿勢を正し敬礼で答える
「先輩の感は絶対外れた事はありませんから、きっと何かあるんでしょう・・お帰りになるまで気をつけます!」
「よし・・」
安心した顔をする提督・・これで自分が留守の時に何事も無く終わる可能性を上げる事が出来たと内心ホッとする
「よし、では一週間後に!」
「はい!一週間後に!」
そんな光景を尻目に帰還の為の荷積みをする加古達
「あ~本土か・・いつぶりだろv」
頭の中は美味しい物をいっぱい食べてお昼寝したいという願望に制圧されている加古
「そうね・・もう長い事戻ってないわね・・」
加古とは別の事を考えながら、我心ココにあらずの夕張
「私戻ったら、お腹いっぱい甘いお菓子食べたい!甘々のこしあんもたくさん食べた~い!
それでねそれでね、いっぱいダンスしたい、1.2~1.2~って~」
もう頭の中は趣味と好物に特化して、到着早々欲望の赴くままに出歩きたいと願望が口から出ている舞風
「あ~舞風、お前そんな事したらいっきに太るぞ!」
夢見がちの舞風に水をさす加古
「えー、太んないもんね!加古こそ食っちゃねして太んないでよね!」
「いっつもいっつもお腹いっぱいで、あ~動けな~い。死ぬ~ってみっともない加古に言われたくない!」
妄想から現実に戻されちょいと機嫌を損ねた舞風の口撃が始まる(笑)
「なんだと---!」
火花散る、一触即発の危機・・
いつも通りのドタバタである
「ほらほらやめなさい!」
加古と舞風の頭をガシっとアイアンクローで鷲掴みして黙らせる祥鳳
その不気味な笑顔に冷や汗が止まらない
「はーい・・ごめんなさい」
さっきまでの勢いはどこに・・怒らすと怖いタイプには従順な2人であった(苦笑)
「みんな・・忘れ物しちゃ駄目よ、あとちゃんと自分の荷物には名前書くの忘れないでね」
そんな調子だが、いつもしっかり者の祥鳳はいつもの通りであった・・
そんな中、古鷹が戻ってきた
「ごめん、みんな私も手伝うね・・」
輪に入り手伝おうとしたその時
「失礼する」
1人の女性がみんなの前に現れる・・戦艦の日向だ
「君たちはいつもこうなのかい?にぎやかで良いなぁーw」
「あ、日向だ!始めて戦艦の人見た!すっごーい」
「すごいスタイル良くて美人さんだぁ~」
ホント失礼な言葉が飛び交う・・
「あ、こら口の利き方!・・ご、ごめんなさい」
冷や汗をかき平謝りの古鷹
その奥では祥鳳にほほをつままれ「いたいいたい~」とバタバタ手をする足を振る加古と舞風
「あぁ良い、気にしないでくれ」
楽しそうな琥珀艦隊の面々を面白がっていた
「君が・・秘書艦の重巡洋艦古鷹だね?」
「あ・・はい」
どうしたんだろ?と言う顔をする古鷹をよそに話を進める日向
「千歳から聞いた通り面白い部隊だね、君の所は」
「うん、楽しいよ~!」
祥鳳の隙を見て舞風が答える、そして再びほほをつままれる(笑)
「すみません・・」
顔を赤くしてうつむく・・これは決して褒めてるんじゃない・・それぐらい分かる古鷹
ホントうちの子達はコミカルすぎるんだから・・もう顔から火が出そうだった
「いやいや、すまん、そういう意味で言ったんじゃないんだ~誤解しないでくれ」(汗)
古鷹が自分の言った意味とは別の意味・・ある意味世間から見たら正解の方(笑)で
言葉を捕らえた事にあわてる・・
「羨ましいって意味で言ったんだ・・・」
手をフリフリして日向は言う
その日向の影から千歳が現れ、少し意地悪そうな顔をして話に加わる
「ね~、この子達面白いでしょv」
と・・・
「古鷹さん、お久しぶり~」
手をヒラヒラしている千歳
「いよいよね・・頑張ってね」
先程の顔と変わりピッとした顔つきになり千歳は古鷹に告げる
「あ、はい・・
相変わらず、不安そうな顔をする古鷹
「あの・・本当に私で勤まるんでしょうか・・」
不安そうな古鷹の顔を見る日向と千歳
すこしうつむき加減になった古鷹の背中に「バチン!」平手が入る
突然の事に驚き涙目の古鷹
「いhじぇんfw??」
「自分を信じろ!そして何より、お前を選んでくれた提督の期待と信頼を信じろ!」
平手を入れた主、笑顔の日向
「大事な人なんだろ・・あの人」
そういうと日向と古鷹はまた2人じゃれあっている提督たちを見る
古鷹は提督を見てうなずく
それを見た、日向と千歳はうなずき千歳がゲキを飛ばす
「なら大丈夫!胸を張って!ドンとはってーー!」
千歳が胸を張り、胸の位置で手をどーん!と・・・どーんと・・
目の前に大きくたわわなに実った胸が・・
思わず魅入ってしまう古鷹・・そして自分のをみてしまう・・・
「古鷹ぁ~俺たちもこれぐらい欲しかったなぁ・・」
古鷹の心の声を代弁するかのように横から加古が口を挟む
一瞬変な空気が流れる・・・
「あ、ごめんなさい。そういう意味では無くて~・・
ほら、大きさは関係ないって言うし・・お、大きいからって良いもんじゃないじゃない
小さい方が良いっていう殿方もたくさん居るしーーー」
言えば言うほど墓穴を掘る千歳・・
「千歳・・それぐらいにしておけよ・・」
日向が冷めた目で千歳の肩に手を乗せる
目の前には涙がとめどなく出たまま灰色になり塊のようになった古鷹が
自分のささやかな胸に手を当て今にも瓦解しそうに立ち尽くしていた・・(苦笑)
「ごめん、本当にごめーん!」
自分の与り知らぬ所で仲良くなっていた娘たちに「何事だ?」と不思議がる提督
そして時計を見、ついに告げるのであった
「お前たち、出発するぞ!」
「はい!」
こうして第一琥珀艦隊は帝都に向けて出発したのであった
つづく