古鷹はまた夢を見る―――
あの忌まわしき夢を・・
「提督・・助けて・・」
「あーこいつはもう駄目だ・・」
「提督!今ならまだ―――」
「もういいんだよ・・こいつ飽きたし・・」
「しかし――」
「あ?お前道具の分際で俺に命令するきか?」
「!」
「・・・いえ・・すみません・・」
「ったく・・生意気な口利くと、てめぇも古鷹と同じ廃艦処分にするぞ」
「・・・すみませんでした」
「おい、お前ら行くぞ!」
「は、はい・・」
「胸くそ悪い・・ケッ」
「いいの・・ホントにいいの?ねぇ・・」
「シ――っ貴方も処分されてしまうわ・・だまって!」
「でもぉ・・・」
「おい!」
「は、はい!」
背中しか見えない提督・・
傍らには早く死ねば?という冷たい視線を投げつけるお気に入りの娘達・・
そして後ろ髪を引かれながらも、何も出来ないまま立ち去らねばならない他の娘たち・・
提督・・わたし・・・提督・・行かないで・・提督・・
提督の姿が闇に消え、そしてまた1人、また一人と艦娘たちが消えていく・・そして1人残される・・
わたしそう言えば捨てられたんだ・・もういらないんだ・・
心の中のもう1人の古鷹が冷静に見ていた。
自分のお腹に手を添える・・添えたはずなのに添えれない・・
お腹に大きくぽっかりあいた穴でお腹がない
死ぬのかな・・死んじゃうのかな・・わたし死んじゃうんだね・・・きっと
ははは・・・なんでだろう・・なんでだろ・・なんでよ・・・なんでなの・・もういや・・もうやだよ・・
わたしなんでこんな事になったの?わたしじゃ駄目だったの?・・・
ねぇ・・教えてよ・・教えて・・
だれか教えてよ・・・・
暗闇に1人とり残されたまま、誰も居ない、誰も答えない空間で1人
泣きじゃくっていた・・・沈黙が怖い、暗闇が怖い、無音が怖い、一人が怖い・・
そして何より必要とされてない事が怖い
もういい・・もういいや・・
もうみんなの顔・・提督の顔・・ぜんぶ、ぜんぶ、見なくても良いんだから・・
古鷹、良かったじゃない・・見なくて良いんだから・・
半狂乱になりかけてくる古鷹、精神的にもうかなりギリな状態にまで・・
古鷹の顔が目に見えない何かに向かって笑い出す・・目に涙を浮かべて
良かったじゃん・・・これで楽になれる・・楽に慣れるんだから
死ねば楽になれるんだから・・・
「死ぬな!古鷹!」
突然光が差し、古鷹を照らし出す・・・
光の中から手が伸びる
「古鷹・・さぁ」
その差し伸べられた手を握り締める
あたたかい・・
あなたは・・・・
光に包まれて気持ちが浄化されていく・・「いいのかな・・いいんだよね・・」
古鷹の目が開く・・・古鷹の目からは涙がとめどなく出ていた・・。
「大丈夫か、古鷹?」
隣に座っていた心配そうに見つめる提督・・・そしていつの間にかだろうか、古鷹は提督の手を握っていた。
そしてその手を見て確信した。
提督がわたしを助けてくれたんだ・・・
夢の中で握った手は優しくて、暖かくて、そして幸せな気持ちにしてくれた。
「もしかして、またあの夢を見たのか・・?」
心配そうに古鷹を見つめる提督
気流でゆれる輸送機の中、心配そうに古鷹を気遣う
「あ・・・はい、大丈夫です。わたし大丈夫ですから・・」
握ってない方の手で涙をぬぐいながら、古鷹は精一杯の笑顔で答えた
その無理をした笑顔に唇を重ねる提督
「!?」
「心配ない、俺を信じてくれ・・・」
突然の口付けに目を見開き驚く古鷹であったが、それ以上に優しい提督の言葉に心が・・心が・・
突然涙が溢れ出し、駄目だ駄目だとわかっているのにあふれ出す・・
なんと言ったら良いのかわかんない・・でも、でも・・
「古鷹・・?」
なぜ急に泣き出したのか、わからない提督はあたふたする事しか出来なかった(苦笑)
「ご、ごめん・・ごめんな、突然でイヤだったよな・・ごめん」
いつもゲキを飛ばす勇敢猛者の屈強な提督は、1人の女の子の前では1人の情けない男になっていた・・
「ち・・違うんです。違うんです。」
大粒の涙が止まらないまま古鷹は提督を泣きじゃくりながら見つめる
「違うんです・・イヤじゃないです。」
「イヤじゃないんです・・・違うんです」
もう言葉が出てこない・・
嬉しいんだと、安心したんだと、伝えたいのに言葉が出ない古鷹
「わたし・・わたし・・」
提督は笑顔で古鷹をそっと抱きしめた
そして愛おしそうに頭を撫で、古鷹の頭を包み込むように胸で抱く
「心配ない・・俺が守るから・・俺を信じて欲しい」
その暖かい胸の中、提督の心臓の音がドクンドクンと聞こえてくる
提督の音・・・きもちいい・・・
「ていとく・・」
古鷹は再びゆっくり眠りについた。
こんどこそ、やすらいだ夢を見るために・・・・
輸送機は揺れ続ける、帝都を目指して・・
つづく