「それでは、留守は頼んだぞ!」
正装に身を包み男前が揚がる提督
そしておろしたての綺麗なセーラー服を身に纏う古鷹
提督の手には痛々しく包帯が巻かれていた・・・
昨夜バスで気を失ったあと、そのまま軍病院に担ぎ込まれ、軍医に散々説教された提督ご一行
「帝国軍人たるものこれしきりで、気を失うとは何たる事か!このバカチンが!」
提督の手の脹れ具合を見て、触診しながら全治一週間の打撲と診断。
脹れたのは手の甲の血管が損傷して、一時的に血流が手の甲に流れ込んだ為との事・・
骨等には影響がないとの事・・
提督は明日同期生のパーティーがあるので包帯は勘弁して欲しいむねを伝えたが
さっさり却下された挙句に、余分な事を言ったせいで余計目立つように撒かれてしまう・・
「言いか!ほどくなよ。ほどいたら貴様の手をトンカチで手の骨全部カチ割るからな」
もう怖すぎる軍医殿はトドメとばかりに、「封」の判をぐるぐる巻きの包帯の上から力強く押した
「!!」
その強烈さに悶絶する・・・
更に涙目の提督に向けて一言付け加える軍医殿
「もう終わりだ、早く帰ってクソして寝ろ・・」
「あぁ、あとあいつ等もちゃんと連れて帰れよ、うるさくてかなわん」
軍医は外でわんわん泣いている自分たちの艦娘に擦りガラス越しに視線を送り、背を向け机に向かう
「ありがとうございました。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
背を向けたままの軍医殿に深々とお辞儀をしてその場を立ち去ろうとした
ドアの前まで来てドアを開けようとした時、机の方から声がした
「お嬢ちゃん達にもう心配させんじゃねーぞ」
さっきまでの厳しさはなく言葉に優しさが含まれていた
「はい、もう二度とさせません!」
提督は振り向き敬礼をする、そして軍医は背を向けたまま手をヒラヒラさせていた
「ふん・・若いっていいね~フッ」
提督が診察室を出た後、机に向かったままひとりごとをつぶやく
軍医は自分の若い頃を思い出していたに違いない・・・
外にはわんわん泣いている娘たちが提督の姿を見て駆け寄ってきた。
「すまんな・・さぁ帰ろうか・・腹減ったよな」
そして予定よりも数時間遅れて宿舎入りをしたのであった。
そんな事が会った昨日から手の包帯が、取れない!気になる!邪魔くさい!の三拍子で調子が狂う提督であった。
「提督!お土産ね、お土産!」
「お前・・・お土産って、同期の同窓会だぞ?お土産なんてあるかw」
お留守番の舞風と加古はお留守番のご褒美を欲しがった
「提督あるじゃん!・・パーティーなんだろ、美味しいものいっぱい出るんだよな~」
「俺、お腹減らして待ってるから~~」
加古の食いしん坊キャラが発動された(苦笑)
「こら、加古、はしたない」
もう本当にこの子は・・とたしなめる夕張。
「でも・・どんなのが出るんでしょうね・・」
今回はたしなめる側にならず、話にのっかて来た祥鳳・・
えぇ!?・・のっかるの!と夕張が内心驚き、唖然とする
もう誰も援護射撃をしてくれない(苦笑)
そんな事を言ったものの、確かに夕張自身もパーティーで出る食事が気になる。
宿舎に入ってからと言うもの、作戦海域での活動時の食事よりはマシな物が出てはいるが、
ご馳走とは言いがたいものばかりで、すこしあきが出ていたからである。
提督もそれは察しており、どうにか美味しい物を食べに連れては行きたいと考えてはいた
バスで会話のあった目と鼻の先にある銀座辺りに繰り出せれれば、満足の行くものを食べさせられるのにと・・
しかし、自由行動が取れるか否かは提督本人の意思ではどうにも出来ないので
そうとは言い出せないままであったのも心苦しく感じていた。
「給仕係にそれとなく頼んでみるか・・」
言葉を言い終わらないうちに喜ぶ加古と舞風、そしてやったvとウキウキし始めた祥鳳、
夕張も顔にご馳走が食べれるかも・・という期待の色を出した。
「でも、どうなるか、分からんからな・・まぁ期待せずに待っていてくれ」
少し自虐的に笑い、提督は加古達の見送りに手を振り歩き出した。
「古鷹、しっかりね!」
祥鳳が声をかける
「うん、大丈夫・・・私、絶対に提督に恥をかかせないから―――」
うん!とうなずき決意した目で祥鳳の見送りに答える、そして先に進んだ提督を追いかけた
「古鷹・・祥鳳と何を話してた?折り詰めの話しか?」
「あ?・・はいw期待してるそうです」
すっとぼけた提督に笑顔でこれまたすっとぼけて答える古鷹
「これはまた、条件が厳しい作戦になりそうだな」
そういうと頭をかき、少し苦笑いする提督
「育ち盛りの子を持つ親の気がわかる気がするわw」
そんな事をぼやきながら、パーティー会場のある九段下へ向かう2人であった。
日が暮れたばかりの帝都に明かりがつき、その明かりを身体に受けながらお堀越しに歩く2人
提督の3歩後ろを付き従う古鷹・・会場が近づくにつれて3歩から4歩そして5歩と遅れだす
それに気付き、提督は並び歩くように歩調を落とす・・・
その行為にすら気付かないほど、古鷹は視線を落とし、我、心ここにあらずであった。
「どうした・・さっきから急に変だぞ?緊張しているのか・・?」
気遣う提督
「いえ、そんな訳では・・・」
いつもの元気はなく、うつろ気に答える古鷹
「心配するな・・お前は俺の後に隠れる様についてくれば良い
そして俺以外の言葉を受け流せ、他人を見るな、俺を見ていろ」
遠くに輝く会場の方を見続け話しを続ける
「心無い言葉が飛んできても、俺だけを見ていろ・・」
この人、優しいなぁ・・古鷹は自分の好きになった人の優しさが痛かった・・
そして自分が提督につりあってない事も重々承知していた。
なのに提督は自分を必要としてくれる、ましてや秘書艦として傍らにおいてくれる
こんなに幸せで良いのだろうか・・・そんな事も考えていた。
「あの・・」
古鷹は口に出した
「あの・・本当に自分で良いんですか?」
思いつめた問いに提督は答える
「あぁお前が良い・・・だから考えるな、俺の後を何があってもついてこい、必ず俺が守ってやる」
「お前も含めた俺の艦隊の娘たち全てを守ってやる・・だからそんな顔をするな」
提督は古鷹の歩調にあわせ二人並んで歩き続けた
その優しさに古鷹は、提督に気付かれないように、うつむきがちに涙を一筋たらす・・
そうして歩いてる内に目の前には会場となる会館がまばゆい光を放ち、大勢の人達で賑わっていた。
会館の入り口にはテーブルが備え付けられ、後輩たちが受付をしていた。
「よし、襟をただせ!、胸を脹れ!・・・といってもお前胸無いかw」
ビシッとした姿で直立不動の姿勢でチラリと古鷹の胸をみる提督
「あ・・ひどい」
提督と共に姿勢を正して、いざ!と言う時に出鼻をくじかれる古鷹
提督の顔を、顔を真っ赤にしながらマジマジと涙目で抗議してみつめる
「そう怒るな・・俺は古鷹のそのおっぱい好きなんだから」
ニカっと笑う提督に、今度は違う意味で赤面する古鷹・・・
頭から湯気が出て、思考不能に・・・
「ははは、ホントお前は良い女だよ」
公衆の面前で嬉しいけど、それ以上に恥ずかしい思いの古鷹は
少し涙目で提督の背中をポクポクたたく
「よし、いつもの顔に戻った!その顔忘れるな!行くぞ!」
その言葉に「え?」と我に返る・・・
そして提督は我に帰った古鷹の腕に手を廻してエスコートする。
「もう・・敵わないな・・この人に・・」
少しうつむきがちになり、小声でつぶやく
その顔は先程と違い、幸せそうだった・・・
「当たり前だ、俺は提督だからなw」
聞こえない様につぶやいた筈の言葉に返しをされ、思わず赤面した
「あ、あの・・」
ふふふと口元が笑う提督
「よし、行くぞ!」
2人は仲良く手を組み、まばゆい光を放つ同期のパーティーが行われる会館へと
姿を消して行ったのであった・・・
なかで起きる重大な事も知らないまま。
つづく