※この作品はR-18です。

葵が笑う世界で ー王と提督は、ただ1人を守る為にー   作:戌威

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第15話 噂が先に歩き、言葉が後から追いつく

工廠の朝は、金属が呼吸しているみたいな音で満ちている。

工具の鳴る音、艤装の駆動音、油の匂い。

それらはいつも通りで、いつも通りだからこそ――

 

今日は、違いがよく分かった。

 

「……ねえ、やっぱり本当だった?」

 

整備用の台車を押しながら、明石が口を開く。

隣の夕張は手元のメモ帳をぱらぱらとめくって、目を細めた。

 

「尾ひれがついた部分もあるけど、根っこは本当だね。昨日の件、“見た”っていう人が増えた」

「増えたって……昨日は工廠の中だけでしょ? 外にも広がってるの?」

 

夕張は頷く。

 

「食堂まで行ってる。『黒い蛇みたいなのが出た』、『硬度が装甲並み』、『でも誰も怪我してない』。……それが一番、強い噂」

 

明石は軽く息を吐いて笑った。

 

「強い噂っていうか……“怪我がない”が一番怖いよね、普通は」

「うん。怖いのに、安心材料にもなる。矛盾してるけど」

 

そこへ、工廠の入口から足音が増える。

視察目的なのか、作業ついでなのか――今日はやけに艦娘が多かった。

 

「明石さーん! 夕張さーん!」

 

陽炎が片手を振って入ってくる。後ろには不知火と黒潮。

さらに遅れて、霞と霰も顔を出す。

 

「お? 何、集会?」

「集会じゃないよ。……たぶん、“見物”」

 

夕張がぽつりと言うと、霞が腕を組んで鼻を鳴らした。

 

「見物? あんなの、見物してどうすんのよ」

「……でも気になるでしょ」

「気にならないって言ったら嘘になるわよ。……でも、近づきたくはない」

 

霰が小声で言う。

 

「……昨日、夕張さんが“測ってた”って聞いた。嘘じゃなかった」

「嘘ならよかった?」

 

霰は一瞬黙って、首を横に振った。

 

「……嘘なら、ずっと怖いまま」

 

その言い方が、妙に刺さって、明石は軽く視線を落とした。

 

⸻

 

工廠の奥の作業区画。

そこに、噂の中心がいた。

 

黒いコート。

背筋の伸びた姿勢。

腕を組み、壁際に立っている。

 

ハヤト。

 

黙っているだけなのに、視線が集まる。

視線を浴びても、何も変わらない。

 

隣には葵がいた。

手には小さな布袋――工具でもなく部品でもなく、ただの布袋だ。

中身はたぶん、いつもの差し入れだろう。

 

「おはよう、ハヤト」

「……ああ」

 

短い。いつも通り短い。

葵はそれだけで十分みたいに笑う。

 

夕張と明石が近づく。

その気配を察しているのかいないのか、ハヤトは視線も動かさない。

 

「ハヤトさん、昨日は協力ありがとう。……今日はお願いがあるの」

「……何だ」

 

明石が一歩踏み出す。

けれど距離を詰めすぎない。昨日よりも慎重に。

 

「工廠内で噂が回ってるの。怖がってる人もいる。だから、もし可能なら……“安全に見せられる範囲”だけでいいから、説明してほしいって」

 

「……」

 

沈黙。

誰も急かさない。息を止める。

葵がほんの少しだけ、ハヤトの袖に触れた。

 

「……説明はできる」

「ほんと!? じゃあ――」

 

夕張が即座に続けようとした瞬間、ハヤトが一言だけ落とす。

 

「触るな」

 

夕張の言葉が喉で止まる。

明石も、霞も、不知火も。全員が一瞬硬直した。

 

葵がすぐに柔らかく言う。

 

「大丈夫。危ないって意味じゃなくて、“順番”の話だよね」

「……ああ」

 

その“ああ”が、工廠の空気を少しだけ戻した。

 

⸻

 

そこから先は、工廠らしい流れになった。

恐怖ではなく、作業と好奇心の空気。

 

「まず、出せる形状は三つある」

 

短い説明。

ハヤトは必要な部分だけを言う。余計な比喩もない。

 

「蛇。翼。刃」

「……翼って、飛べるの?」

黒潮が口を挟む。

「……飛ぶためじゃない」

「攻撃用?」

「……防御と制圧」

 

“制圧”。

その単語に、陽炎が眉を上げる。

 

「制圧って……相手、動けなくするの?」

「……逃がさない」

 

短い。

短いのに、妙に重い。

 

霞が口を尖らせた。

 

「……ほんと、言い方が怖い」

「怖くていいよ」

 

葵が、いつもの調子で言ってしまってから、少し目を伏せた。

それでも続ける。止まらない。

 

「怖いって思ったままでも、声をかけてくれるのが嬉しいんだよ」

 

その言葉が、艦娘たちの背中を少し押した。

 

⸻

 

「じゃ、実演する?」

 

夕張が言ったとき、明石が思い出したように手を挙げる。

 

「あ、待って待って! 安全柵! 安全距離! 目印つける!」

「……それ、いる?」

陽炎が苦笑する。

「いるよ! 工廠だから! 安全第一!」

 

そうやって“いつもの工廠”のノリが戻ると、不思議と周りの顔も戻っていく。

怖さが消えたわけじゃない。

でも、怖さの扱い方が変わる。

 

葵がハヤトを見上げて言う。

 

「ハヤト、見せてあげたら?」

「……必要最小限だ」

 

そして、黒い影が――静かに、背中から溢れる。

 

蛇赫。

 

昨日よりも落ち着いた出し方。

勢いではなく、制御された動き。

空気を裂くでもなく、ただ“現れる”。

 

「うわ……」

陽炎が声を漏らす。

「ほんとに蛇だ……」

霰が目を丸くする。

「……綺麗」

不知火がぼそっと言う。

 

霞が一歩引きかけたが、踏みとどまった。

それだけで、彼女の中の何かが変わっている。

 

明石がすぐに食いつく。

 

「形状の保持力は? 固定しても疲労しない? 維持コストはどうなってるの?」

「……維持は可能」

「可能って、どれくらい!」

「……必要なら長い」

「必要なら長いって何時間!?」

「……知らん」

 

明石が固まってから、叫んだ。

 

「知らないって何!? そこ知りたいんですけど!?」

「明石さん落ち着いて!」

 

夕張が笑いながら止める。

その笑い声が工廠に響いたのを聞いて、周囲の空気がさらに緩む。

 

「硬度測るよ。――この辺、軽く叩いていい?」

「……やれ」

 

夕張が金属棒を当てる。

コン、と乾いた音。

想像以上に硬い。跳ね返りが強い。

 

「……装甲材に近い」

「ってことは、弾くの?」

「……弾く」

 

霰が小さく手を挙げる。

 

「……熱には弱い?」

「……弱くない」

「冷却は?」

「……意味がない」

 

霞が眉を寄せる。

 

「ねえ、じゃあ……どうやって壊すのよ」

「……壊す必要がない」

 

その返答に、霞はまた言葉を失う。

不知火が呟く。

 

「……“壊す必要がない”という発想が、兵器ではなく“生物”寄りですね」

 

葵が頷く。

 

「うん。生きてる。私にはそう見える」

 

“生きてる”。

その言い方が、工廠にいた艦娘たちの胸に残った。

 

⸻

 

そこへ、別の艦娘たちが工廠に顔を出す。

 

摩耶、鳥海、高雄、愛宕。

重巡の一団だ。

そして少し遅れて、利根と筑摩も。

 

「……おい、ここ何の集まりだ?」

摩耶が不機嫌そうに言いながら、蛇赫を見て足を止める。

「……マジか」

「噂、これか」

鳥海が冷静に言う。

 

愛宕がにっこり笑った。

 

「まあ。すごいわね。……触ってもいい?」

「ダメ」

 

即答。

 

愛宕が一瞬きょとんとして、次の瞬間くすっと笑った。

 

「ふふ。断り方が可愛いのね」

「可愛くないでしょ」

高雄が真面目に突っ込む。

 

利根が腕を組む。

 

「ふむ。つまり、近づく者は選別されるということか」

「……選別じゃない」

 

ハヤトが短く返す。

 

「線だ」

「線?」

筑摩が眉を上げる。

「越えるな」

「……線引き、ね」

 

鳥海がその単語を口の中で反芻するように言った。

葵が静かに頷く。

 

「うん。私たち、そこだけはずっと同じ」

 

それは説明ではなく、宣言に近かった。

 

⸻

 

その日の午後。

警備巡回。

 

今日は、いつもの班だけじゃない。

工廠の噂が回ったせいで、「偶然通りかかった」艦娘が増えた。

 

正門付近で、赤城と加賀がすれ違う。

二人は歩調を落とす。

 

「……警備、お疲れ様です」

 

赤城が先に言った。

葵ではなく、ハヤトに向けた言葉。

 

周囲の空気が、少し固まる。

言った本人も、言ってしまったあとで自覚したように、目を瞬いた。

 

ハヤトは止まり、赤城を見る。

 

「……ああ」

 

それだけ。

 

赤城は胸に手を当てたまま、少し笑う。

 

「……返事、もらえました」

「赤城さん、今の普通でしたよ」

傍にいた翔鶴が小声で言うと、赤城は頷いた。

 

加賀も一歩進む。

 

「……昨日の噂は事実ですか」

「……見れば分かる」

「いえ。私は“聞きたい”のです」

 

加賀の言葉は、いつも通り理詰めで、静かで、強い。

 

ハヤトは一拍だけ置き、短く答えた。

 

「……事実だ」

 

それだけで、加賀はわずかに目を細めた。

 

「……理解しました。ありがとうございます」

 

“ありがとうございます”。

その言葉が、周囲にいた艦娘たちに小さな衝撃を落とす。

加賀が、誰にでも言う言葉ではない。

 

その様子を遠くから見ていた瑞鶴が、翔鶴の袖を引く。

 

「ねえ、今の見た?」

「見たわ」

「加賀さんが……!」

「うん。たしかに」

 

二人はそれ以上言わない。

言わないまま、視線だけが動く。

 

⸻

 

巡回ルートの途中、洗濯場の近く。

 

鳳翔が箒を持ったまま顔を上げる。

 

「あら。警備、ご苦労様です」

「鳳翔さん、お疲れ様です!」

 

艦娘たちの挨拶は鳳翔に向けられる。

だが、そのあと――

 

「……あなたも、お疲れ様」

 

鳳翔が、ハヤトに言った。

自然に。何の引っかかりもなく。

 

ハヤトは鳳翔を見る。

 

「……ああ」

 

その返事は同じ短さなのに、

鳳翔は少しだけ表情を柔らかくした。

 

「葵さんが安心して笑える場所を、守ってくださっているのですね」

「……守る」

 

その一語で、鳳翔は十分だったように頷いた。

 

⸻

 

グラウンド横。

訓練終わりの川内が汗を拭きながら歩いてくる。後ろに神通と那珂。

 

「おっ、警備? いいねぇ!」

川内はハヤトを見て、足を止めない。止めないまま言う。

 

「ねえ、ハヤト! 夜戦得意!?」

「……知らん」

「即答で知らん!? 面白い!」

 

那珂が慌てて川内の袖を引く。

 

「川内ちゃん! そういう聞き方しないの!」

「だって気になるじゃん」

「気になるのは分かるけど!」

 

神通が一歩前に出て、丁寧に言った。

 

「……警備、ありがとうございます。私たちも努力します」

「……好きにしろ」

 

神通は一瞬固まりかけたが、すぐに小さく笑った。

 

「はい。好きにします」

 

その“好きにします”が、なぜだか胸に残る。

相手の言葉を恐怖で受け止めず、意思として返す。

それは小さな対等だった。

 

⸻

 

倉庫付近。

潮と暁と響が、巡回の帰りに合流する。

 

暁は胸を張って言った。

 

「……警備、お疲れ様よ! れ、レディとして言うけど……あなた、ちゃんと守ってるのね」

「……守る」

 

響が短く言う。

 

「……“守る”って、言葉で言うの、珍しいね」

「……必要だから言う」

 

潮がそっと続ける。

 

「……私、まだ怖いです。でも……おはようって言われたら、返したいって思うようになりました」

「……それでいい」

 

ハヤトが言ったのは、それだけ。

 

でも潮は目を見開き、そして小さく頷いた。

 

「……はい。それで、いきます」

 

⸻

 

夕方。

食堂へ向かう廊下。

 

すれ違いざま、声が増える。

 

「お疲れ様です」

「警備、ご苦労様」

「……怪我、ない?」

 

言葉を投げた艦娘の名は、扶桑、山城、陸奥、金剛、榛名。

戦艦たちの声は落ち着いていて、重い。

 

金剛は明るく言う。

 

「Hey! ハヤト! 今日もSilent guardネ!」

「……知らん」

「知らん!? でもカッコいいネ!」

 

榛名が苦笑しながら頭を下げる。

 

「……榛名は、大丈夫です。まだ怖いですけれど……逃げません」

「……好きにしろ」

 

榛名はそれを“拒絶”として受け取らない。

“許可”でもない。

ただ、相手の領域を侵さない言葉だと理解する。

 

「はい。好きにします」

 

その返答が、少しずつ鎮守府に増えていく。

 

⸻

 

食堂の入口。

 

葵がいつも通り配膳に立っている。

笑顔は変わらない。気丈だ。無理がない。

けれど、その笑顔の奥に、痛みがあることを知っている者も増えた。

 

「葵さん、今日もありがとう」

「うん! いっぱい食べてね」

 

その声が広がる中、

ハヤトは壁際、全体が見える位置に立つ。

 

“圧”があるはずなのに、

今日の食堂の空気は、昨日より柔らかい。

 

赤城がトレーを持ったまま立ち止まり、葵を見る。

 

「……葵さん」

「なあに?」

「あなたが“怖くてもいい”と言うのは、強いからですか」

「……ううん」

 

葵は少し考えて、笑った。

 

「弱いからだよ。怖いって言われるの、痛いもん」

「……」

「でもね、痛いままでも、ここにいたい。だって、私がここにいることで“誰かが選べる”なら、それって大事だと思う」

 

加賀が聞いていた。

加賀は目を伏せて、静かに言う。

 

「……“選ぶ”。それが、この鎮守府の言葉なのですね」

「うん。私はそう思ってる」

 

葵がそう言って、ふとハヤトを見る。

ハヤトは何も言わない。

でも、葵の視線にだけは反応する。わずかに頷く。

 

その仕草を見た明石が、小さく呟いた。

 

「……言葉より、頷きの方が重いんだなぁ」

 

⸻

 

食堂の端の席。

駆逐艦娘たちが集まって小さく話している。

 

吹雪、潮、響、暁、雷、電。

そして少し離れた席には、神通と那珂。

 

吹雪は箸を止め、ぽつりと言った。

 

「……今日、声をかける人、増えてた」

潮が頷く。

「……増えてました。怖いのに、みんな声を出してました」

響が淡々と言う。

「……声を出すのは、怖い時の方が必要」

暁が胸を張る。

「レディは、逃げないの!」

 

雷と電が顔を見合わせ、同時に言う。

 

「……でも、まだ怖い」

「……うん、怖い」

 

吹雪はその言葉に頷いた。

 

「怖いままでもいい。……たぶん、それが今日の空気だった」

 

その時、食堂の入口付近で小さなやり取りがあった。

 

摩耶がトレーを持ったまま、ハヤトの前で足を止めたのだ。

 

「……おい」

「……何だ」

「……警備、やってんだろ」

「……ああ」

「……じゃあ、今度、工廠の前も見とけ。整備員が怯えて動き遅くなるのは困る」

「……分かった」

 

摩耶は一瞬固まり――

すぐに視線を逸らして、乱暴に言い捨てた。

 

「……それだけだ」

 

その背中を見送って、鳥海が小さく笑う。

 

「摩耶様なりの挨拶ですね」

愛宕が楽しそうに言う。

「ふふ。可愛いわ」

 

⸻

 

夜。

警備の交代。

 

正門付近に集まる艦娘の数が、いつもより多い。

交代のついでに挨拶をしたい者。

顔を見ておきたい者。

怖いまま、確認したい者。

 

長門が腕を組んで見ている。

 

「……増えたな」

白瀬提督が隣で頷く。

「増えた。……静かに、確実に」

 

ハヤトは立っている。

黙っている。

その前に、誰かが立つ。

 

扶桑だ。

 

「……今日も、お疲れ様でした」

「……ああ」

 

山城が続ける。

 

「……まだ怖いです。でも……葵さんが笑っているのを見て、逃げたくないと思いました」

「……それでいい」

 

山城は目を見開き、

小さく頭を下げた。

 

次は、吹雪だった。

彼女は以前より足が震えない。

震えが“消えた”わけじゃない。

震えを抱えたまま、立っている。

 

「……今日も、警備、お疲れ様でした」

 

ハヤトは吹雪を見る。

 

「……ああ」

 

短い。

短いけれど、吹雪は息を吐く。

 

“返事がある”。

それだけで、明日が少し違う。

 

潮も並ぶ。

 

「……お疲れ様でした」

「……ああ」

 

響が短く言う。

 

「……おやすみ」

「……ああ」

 

暁は胸を張って言う。

 

「……レディは、礼を言うの! ありがとう!」

「……礼は要らん」

「い、いらないって言われた!?」

「でも言うの! ありがとう!」

「……好きにしろ」

 

暁は満足そうに頷いた。

 

「うん! 好きにする!」

 

周りが、少し笑う。

その笑いが、“怖さを踏み越えた笑い”ではなく、

“怖さを持ったまま出た笑い”だということが、分かる。

 

だから、強い。

 

⸻

 

最後に葵が現れる。

宿舎の入口で、ハヤトを迎える。

 

「お疲れ様」

「……ああ」

「今日は、声をかける人が増えたね」

「……増えた」

「嬉しい?」

「……悪くない」

 

それだけ。

でも葵は、それだけで目を細めた。

 

「ねえ、ハヤト」

「……何だ」

「怖いって言われるの、痛い?」

「……痛くない」

「……うそ」

「……」

 

ハヤトは黙る。

葵は笑って、でも真剣に言う。

 

「痛いままでも、ここにいようね」

「……ああ」

 

二人は手を繋いで、宿舎へ入っていく。

 

その背中を見て、長門が小さく呟く。

 

「……これが、変化か」

白瀬提督は頷く。

 

「恐怖が消えたわけじゃない。……でも、恐怖の中で“選ぶ”者が増えた。

それが、今の呉鎮守府の勝ち方なんだろう」

 

長門は目を伏せ、低く言う。

 

「……明日も、続けるだけだ」

 

誰も派手に喜ばない。

誰も浮かれない。

ただ、確かに前へ進む。

 

恐怖は残る。

拒絶も残る。

理解できない部分も残る。

 

それでも――

 

声が増えた。

 

それだけで、鎮守府の夜は昨日より少しだけ温かかった。

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