葵が笑う世界で ー王と提督は、ただ1人を守る為にー 作:戌威
朝。
海沿いの拠点は、拍子抜けするほど普通だった。
瑞鶴が伸びをする。
「昨日あれだけ世界崩壊みたいなこと起きたのに普通に朝なんだけど」
翔鶴が微笑む。
「拠点はそういうものよ」
加賀が言う。
「日常を維持するのも戦力です」
曙がぼそっと言う。
「便利な言葉ね、それ」
⸻
工廠。
机の上に置かれているのは黒基調の装備。
ベルト。
浮力パック。
簡易スラスター。
夕張が両手を広げる。
「完成!!」
明石も胸を張る。
「喰種用簡易艤装・試作一号!」
瑞鶴が即聞く。
「武装は!?」
夕張が即答。
「ない!!」
全員「は?」
⸻
明石が説明する。
「これはね、戦う装備じゃないの」
「浮くための装備」
「それだけ」
長門が腕を組む。
「潔すぎるな」
加賀が頷く。
「目的が明確です」
瑞鶴が言う。
「言い換えると弱い」
夕張が抗議する。
「ロマンと言って!!」
⸻
炎慈が覗く。
「王専用か」
明石が言う。
「うん。一人分だけ」
深赫が聞く。
「他は?」
夕張が胸を張る。
「作らない!」
明石が補足。
「作れない!」
龍牙が言う。
「正直でいい」
⸻
装着。
カチッ、カチッ。
固定完了。
夕張がサムズアップ。
「いける!」
明石もサムズアップ。
「たぶん!」
ハヤトが言う。
「“たぶん”を付けるな」
⸻
テスト海域。
全員が見守る。
瑞鶴が実況モード。
「さあ王の第一歩です!」
曙が言う。
「やめなさい」
ハヤトが海へ踏み出す。
一歩。
二歩目――
ドボン。
沈んだ。
完全に。
水柱。
沈黙。
三秒。
海面から顔だけ出る。
無言。
真顔。
びしょ濡れ。
そのまま明石と夕張を見る。
じーーーーー。
夕張が目を逸らす。
「計算では浮くはずだったんだよ!?」
明石が言う。
「理論上は完璧だった!」
ハヤトが言う。
「理論を浮かせろ」
瑞鶴が爆笑する。
「沈んでる沈んでる!!」
翔鶴が笑いをこらえる。
「試作ですから」
加賀が真顔で言う。
「想定内です」
全員「嘘つけ」
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再調整。
浮力値アップ。
再挑戦。
今度は浮く。
ギリギリ。
瑞鶴が言う。
「すっごい不安定!」
夕張が言う。
「それが試作!」
曙が言う。
「開き直るな」
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羽赫テスト。
射撃。
標的命中。
だが距離は中距離止まり。
加賀が観測する。
「有効射程に制限あり」
赤城が言う。
「艦砲の代わりにはなりません」
ハヤトが言う。
「十分だ」
炎慈が岸から叫ぶ。
「近づけば終わるだろ!」
長門が言う。
「思想が近接特化すぎる」
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蛇赫展開。
伸びる。
止まる。
それ以上行かない。
夕張が叫ぶ。
「長さ制限!!」
明石が続ける。
「エネルギー消費急増!」
瑞鶴が言う。
「燃費悪!」
狂禍が笑う。
「王は燃費で戦わねえ」
満潮が言う。
「昭和のスポーツカーか」
⸻
提督が腕を組む。
「結論」
全員が見る。
「ハヤトは艦隊の槍だ」
「突撃前衛」
「条件付き運用」
長門が頷く。
「妥当」
加賀も。
「合理的」
⸻
葵が小さく笑う。
「海に立ってる」
ハヤトが言う。
「道具のおかげだ」
夕張が言う。
「もっと褒めて!」
明石も言う。
「今すぐ褒めて!」
ハヤトが真顔で言う。
「沈んだ」
夕張「そこ!?」
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炎慈が腕を組む。
「まあいい」
「王は海でも王だ」
瑞鶴が言う。
「語感で押すな!」
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笑いの中で、
新しい戦い方の準備が整っていく。