※この作品はR-18です。

葵が笑う世界で ー王と提督は、ただ1人を守る為にー   作:戌威

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第45話 力と代償

 

試験海域は朝から騒がしかった。

 

的艦。

装甲板。

浮標。

測定機材。

 

夕張が腕を振り回している。

 

「第二次!実地運用テスト開始ー!」

 

明石も叫ぶ。

 

「今日は沈まない版だから!」

 

瑞鶴が言う。

 

「昨日沈めた自覚あったんだ」

 

曙が言う。

 

「なかったら怖い」

 

⸻

 

ハヤトは簡易艤装を装着済み。

 

浮力は安定している。

 

まだ少し怪しいが、沈まない。

 

夕張が無線で言う。

 

「移動テストどう?」

 

「歩行、滑走、方向転換やって!」

 

ハヤトが海面を歩く。

 

一歩。

二歩。

 

滑るように前進。

 

瑞鶴が言う。

 

「スケートみたい」

 

翔鶴が微笑む。

 

「優雅ですね」

 

加賀が言う。

 

「燃費は悪そうです」

 

⸻

 

葵が岸で見ている。

 

ハヤトが戻ってくる。

 

無言で。

 

ひょい、と抱き上げる。

 

葵「えっ」

 

そのまま海へ。

 

葵「ちょっと待って!?」

 

瑞鶴「さらっと連れ出した!」

 

曙「説明しなさいよ!」

 

海上を歩く。

 

滑る。

 

方向転換。

 

葵がしがみつく。

 

「落ちる落ちる!」

 

「落ちない」

 

「昨日沈んだでしょ!」

 

「今日は違う」

 

夕張が誇らしげに言う。

 

「今日は違う!!」

 

⸻

 

装甲試験。

 

深海棲艦想定装甲板。

 

厚い。

 

硬い。

 

長門が言う。

 

「通常砲でも数発必要な厚みだ」

 

ハヤトが蛇赫を展開。

 

一撃。

 

貫通。

 

静かに。

 

完全に。

 

明石が固まる。

 

「……え」

 

夕張が測定機を見る。

 

「数値おかしい」

 

白瀬が低く言う。

 

「もう一回やれ」

 

二枚重ね。

 

再度。

 

貫通。

 

加賀が言う。

 

「装甲優位性が消えます」

 

長門が低く言う。

 

「近距離なら戦艦級だ」

 

⸻

 

羽赫射撃。

 

連射。

 

中距離まで正確。

 

赤城が観測する。

 

「対空迎撃にも転用可能です」

 

翔鶴が言う。

 

「でも射程は限定」

 

夕張が頷く。

 

「エネルギー消費が跳ねる!」

 

⸻

 

連続使用。

 

三連射。

 

四連射。

 

五連射――

 

羽赫が揺らぐ。

 

消える。

 

ハヤトの呼吸が重くなる。

 

明石が真顔になる。

 

「消耗が早い」

 

白瀬が聞く。

 

「補給方法は」

 

沈黙。

 

夕張が言いづらそうに言う。

 

「……捕食のみ」

 

空気が止まる。

 

瑞鶴が小さく言う。

 

「やっぱり来た」

 

長門が低く言う。

 

「代償か」

 

白瀬が息を吐く。

 

「やっぱり恐ろしいな……」

 

⸻

 

炎慈が岸から言う。

 

「だから俺らは短期決戦型だ」

 

深赫が言う。

 

「長期戦は向かない」

 

加賀が言う。

 

「運用制限をかけます」

 

提督が頷く。

 

「同意だ」

 

⸻

 

移動テスト再開。

 

ハヤト+葵。

 

海上滑走。

 

葵が少し慣れてきている。

 

「……ちょっと楽しい」

 

「だろ」

 

「でも怖い」

 

「分かる」

 

⸻

 

その時。

 

ガクン。

 

沈みかける。

 

葵「え?」

 

ハヤト「……」

 

もう一段沈む。

 

葵「え!?え!?え!?」

 

ハヤト「調子悪い」

 

葵「今言う!?」

 

夕張が無線で絶叫。

 

「スラスター落ちてる!!」

 

明石も叫ぶ。

 

「帰って!帰って!!」

 

⸻

 

ハヤトが方向転換。

 

岸へ。

 

半分沈みながら進む。

 

滑るというよりバシャバシャ。

 

葵「沈む沈む沈む!!」

 

ハヤト「しがみつけ」

 

「言われなくても!」

 

⸻

 

岸に到着。

 

最後の一歩で完全に沈む。

 

二人ともびしょ濡れ。

 

瑞鶴が爆笑。

 

「やっぱ沈んだ!」

 

曙が言う。

 

「様式美」

 

満潮が頷く。

 

「伝統芸」

 

⸻

 

明石が土下座しかける。

 

「ごめんなさい!!」

 

夕張も頭を下げる。

 

「次は完璧にする!」

 

ハヤトが言う。

 

「次は浮かせろ」

 

葵が言う。

 

「先に言って!」

 

⸻

 

白瀬提督が言う。

 

「評価は確定した」

 

全員が見る。

 

「強い」

 

「だが制約だらけだ」

 

長門が頷く。

 

「だからこそ使える」

 

加賀が言う。

 

「制御できる強さです」

 

⸻

 

海の上で戦う準備は整いつつある。

 

まだ未完成のまま。

 

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