葵が笑う世界で ー王と提督は、ただ1人を守る為にー 作:戌威
試験海域は朝から騒がしかった。
的艦。
装甲板。
浮標。
測定機材。
夕張が腕を振り回している。
「第二次!実地運用テスト開始ー!」
明石も叫ぶ。
「今日は沈まない版だから!」
瑞鶴が言う。
「昨日沈めた自覚あったんだ」
曙が言う。
「なかったら怖い」
⸻
ハヤトは簡易艤装を装着済み。
浮力は安定している。
まだ少し怪しいが、沈まない。
夕張が無線で言う。
「移動テストどう?」
「歩行、滑走、方向転換やって!」
ハヤトが海面を歩く。
一歩。
二歩。
滑るように前進。
瑞鶴が言う。
「スケートみたい」
翔鶴が微笑む。
「優雅ですね」
加賀が言う。
「燃費は悪そうです」
⸻
葵が岸で見ている。
ハヤトが戻ってくる。
無言で。
ひょい、と抱き上げる。
葵「えっ」
そのまま海へ。
葵「ちょっと待って!?」
瑞鶴「さらっと連れ出した!」
曙「説明しなさいよ!」
海上を歩く。
滑る。
方向転換。
葵がしがみつく。
「落ちる落ちる!」
「落ちない」
「昨日沈んだでしょ!」
「今日は違う」
夕張が誇らしげに言う。
「今日は違う!!」
⸻
装甲試験。
深海棲艦想定装甲板。
厚い。
硬い。
長門が言う。
「通常砲でも数発必要な厚みだ」
ハヤトが蛇赫を展開。
一撃。
貫通。
静かに。
完全に。
明石が固まる。
「……え」
夕張が測定機を見る。
「数値おかしい」
白瀬が低く言う。
「もう一回やれ」
二枚重ね。
再度。
貫通。
加賀が言う。
「装甲優位性が消えます」
長門が低く言う。
「近距離なら戦艦級だ」
⸻
羽赫射撃。
連射。
中距離まで正確。
赤城が観測する。
「対空迎撃にも転用可能です」
翔鶴が言う。
「でも射程は限定」
夕張が頷く。
「エネルギー消費が跳ねる!」
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連続使用。
三連射。
四連射。
五連射――
羽赫が揺らぐ。
消える。
ハヤトの呼吸が重くなる。
明石が真顔になる。
「消耗が早い」
白瀬が聞く。
「補給方法は」
沈黙。
夕張が言いづらそうに言う。
「……捕食のみ」
空気が止まる。
瑞鶴が小さく言う。
「やっぱり来た」
長門が低く言う。
「代償か」
白瀬が息を吐く。
「やっぱり恐ろしいな……」
⸻
炎慈が岸から言う。
「だから俺らは短期決戦型だ」
深赫が言う。
「長期戦は向かない」
加賀が言う。
「運用制限をかけます」
提督が頷く。
「同意だ」
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移動テスト再開。
ハヤト+葵。
海上滑走。
葵が少し慣れてきている。
「……ちょっと楽しい」
「だろ」
「でも怖い」
「分かる」
⸻
その時。
ガクン。
沈みかける。
葵「え?」
ハヤト「……」
もう一段沈む。
葵「え!?え!?え!?」
ハヤト「調子悪い」
葵「今言う!?」
夕張が無線で絶叫。
「スラスター落ちてる!!」
明石も叫ぶ。
「帰って!帰って!!」
⸻
ハヤトが方向転換。
岸へ。
半分沈みながら進む。
滑るというよりバシャバシャ。
葵「沈む沈む沈む!!」
ハヤト「しがみつけ」
「言われなくても!」
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岸に到着。
最後の一歩で完全に沈む。
二人ともびしょ濡れ。
瑞鶴が爆笑。
「やっぱ沈んだ!」
曙が言う。
「様式美」
満潮が頷く。
「伝統芸」
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明石が土下座しかける。
「ごめんなさい!!」
夕張も頭を下げる。
「次は完璧にする!」
ハヤトが言う。
「次は浮かせろ」
葵が言う。
「先に言って!」
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白瀬提督が言う。
「評価は確定した」
全員が見る。
「強い」
「だが制約だらけだ」
長門が頷く。
「だからこそ使える」
加賀が言う。
「制御できる強さです」
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海の上で戦う準備は整いつつある。
まだ未完成のまま。