※この作品はR-18です。

葵が笑う世界で ー王と提督は、ただ1人を守る為にー   作:戌威

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第46話 赫子、という燃料

 

会議室は珍しく満員だった。

 

長机。

資料。

図解板。

 

そして――音羽。

 

夕張が小声で言う。

 

「なんか講義始まりそう」

 

明石が頷く。

 

「始まるねこれ」

 

瑞鶴が言う。

 

「授業嫌い」

 

曙が言う。

 

「帰れ」

 

⸻

 

白瀬が腕を組む。

 

「頼む」

 

音羽が軽く会釈する。

 

「了解」

 

声は落ち着いている。

 

戦闘時とは違う。

 

「まず――赫子は武器ではありません」

 

夕張が即反応。

 

「え、違うの!?」

 

明石がメモを取る。

 

「武器じゃない」

 

音羽が続ける。

 

「正確には“器官”です」

 

長門が頷く。

 

「身体機能か」

 

「はい」

 

⸻

 

ホワイトボードに簡単な図。

 

人型。

背部。

赫胞。

 

「ここに“赫胞”があります」

 

「ここで生成されます」

 

加賀が言う。

 

「弾薬工場ですね」

 

「近いです」

 

瑞鶴が言う。

 

「もう弾薬じゃん」

 

⸻

 

音羽が続ける。

 

「使用=消耗です」

 

「使えば減ります」

 

白瀬が言う。

 

「補給は」

 

一瞬の間。

 

音羽がはっきり言う。

 

「捕食のみ」

 

室内が静かになる。

 

吹雪が小さく言う。

 

「……やっぱり」

 

赤城が静かに息を吐く。

 

「理解はしています」

 

⸻

 

明石が聞く。

 

「通常個体の消耗ペースは?」

 

音羽が答える。

 

「戦闘規模次第ですが」

 

「中〜大規模戦闘で枯渇します」

 

長門が言う。

 

「艦隊砲戦一回分か」

 

「近いです」

 

⸻

 

夕張が身を乗り出す。

 

「でもハヤトは消耗早かった!」

 

「連射したら止まった!」

 

音羽が頷く。

 

「はい」

 

「理由は明確です」

 

全員が見る。

 

「人間を捕食していないからです」

 

曙が言う。

 

「断食状態ってこと?」

 

「はい」

 

「それでも動けているのが異常です」

 

⸻

 

白瀬が聞く。

 

「本来はどうなる」

 

音羽は少し考えてから言う。

 

「例えるなら」

 

「ガソリン満載の大型タンクを複数持っている状態です」

 

瑞鶴が言う。

 

「例え分かりやすっ」

 

夕張が言う。

 

「しかもハイオク」

 

明石が言う。

 

「しかも無限給油可能」

 

「それは言い過ぎです」

 

⸻

 

長門が言う。

 

「つまり」

 

「今のハヤトは」

 

「タンク空に近い状態で戦っている」

 

「はい」

 

加賀が言う。

 

「それであの貫通力」

 

赤城が静かに言う。

 

「規格外ですね」

 

⸻

 

吹雪が恐る恐る聞く。

 

「満タンだとどうなるんですか」

 

音羽が即答する。

 

「赫子使用量を気にしません」

 

瑞鶴「怖」

 

曙「それは怖い」

 

満潮「それはダメ」

 

⸻

 

明石が聞く。

 

「回復に代替手段は?」

 

音羽は首を振る。

 

「現状なし」

 

夕張が言う。

 

「開発したい!!」

 

加賀が言う。

 

「やめなさい」

 

⸻

 

炎慈が壁にもたれて聞いている。

 

「だから俺らは短期決戦型だ」

 

龍牙が言う。

 

「長期戦は嫌いだ」

 

狂禍が笑う。

 

「腹減るしな」

 

曙が言う。

 

「理由が生々しい」

 

⸻

 

白瀬が静かに言う。

 

「運用ルールを作る」

 

全員が見る。

 

「無駄撃ち禁止」

 

「長期戦禁止」

 

「補給不能前提運用」

 

長門が頷く。

 

「同意」

 

加賀も。

 

「妥当です」

 

⸻

 

葵が小さく言う。

 

「それでも戦えるよ」

 

「ハヤトは」

 

音羽が頷く。

 

「はい」

 

「だから王です」

 

炎慈が笑う。

 

「今さら説明するな」

 

⸻

 

会議室の空気は重い。

 

だが、理解は進んだ。

 

力の強さも。

 

代償の重さも。

 

両方を知った。

 

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