※この作品はR-18です。

葵が笑う世界で ー王と提督は、ただ1人を守る為にー   作:戌威

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第47話 対策という名の過信

 

海軍中央管制棟。

 

分厚い防音扉が閉じる音は、

まるで外界との遮断音のようだった。

 

会議室の空気は冷たい。

 

スクリーンには戦闘映像が静止している。

 

黒い影。

赤い眼。

制圧部隊の崩壊。

 

誰も先に口を開かない。

 

⸻

 

榊原が言った。

 

「繰り返す必要はないな」

 

「見た通りだ」

 

久我が腕を組む。

 

「“制御対象”のはずだった」

 

別の参謀が言う。

 

「現実は“災害級戦力”だ」

 

「評価を改めるべきだ」

 

榊原が即答する。

 

「いや」

 

「評価は変えない」

 

室内の数名が眉を動かす。

 

⸻

 

「危険度は上がった」

 

「だが価値も上がった」

 

「だから確保する」

 

言い切る。

 

ためらいがない。

 

⸻

 

現場出身の将校が口を開く。

 

「一つ聞きたい」

 

榊原「許可する」

 

「なぜ“確保”にこだわる」

 

「排除ではなく」

 

榊原は迷わない。

 

「唯一だからだ」

 

「再現不能」

 

「代替不能」

 

「戦略価値が桁違いだ」

 

⸻

 

久我が言う。

 

「兵器扱いか」

 

「戦略資源だ」

 

「人型だがな」

 

誰も笑わない。

 

⸻

 

技術主任が咳払いする。

 

「対策装備について説明します」

 

画面が切り替わる。

 

大型火器の設計図。

 

拘束装備。

 

多段徹甲弾。

 

⸻

 

若い参謀が言う。

 

「名前は」

 

「生体異常個体対策装備」

 

沈黙。

 

誰かが言う。

 

「長い」

 

別の誰か。

 

「ダサい」

 

技術主任がむっとする。

 

「実用重視です」

 

⸻

 

久我が言う。

 

「効果は」

 

「徹甲弾です」

 

「高出力」

 

「深海棲艦装甲を貫通可能」

 

榊原が頷く。

 

「十分だ」

 

現場将校が即座に言う。

 

「十分ではない」

 

全員が見る。

 

⸻

 

「赫子は装甲ではない」

 

「性質が違う」

 

「再生する」

 

「変形する」

 

「硬化する」

 

技術主任が言い返す。

 

「硬いなら抜けばいい」

 

現場将校が言う。

 

「その発想で前回の部隊が消えた」

 

空気が止まる。

 

⸻

 

拘束装備の説明に移る。

 

「多点アンカー弾」

 

「電磁ワイヤー」

 

「爆縮ネット」

 

若い参謀が言う。

 

「SFみたいだな」

 

技術主任が言う。

 

「現実です」

 

⸻

 

久我が聞く。

 

「拘束時間は」

 

「最長八秒」

 

沈黙。

 

三秒。

 

誰かが言う。

 

「短い」

 

別の誰か。

 

「短すぎる」

 

榊原が言う。

 

「八秒あれば撃てる」

 

現場将校が言う。

 

「撃てればな」

 

⸻

 

別の参謀が言う。

 

「問題は数だ」

 

映像が再生される。

 

黒い影の群れ。

 

同時進撃。

 

同時停止。

 

統率行動。

 

⸻

 

分析官が言う。

 

「群体戦力です」

 

「しかも階層指揮構造あり」

 

久我が言う。

 

「王がいる」

 

榊原が頷く。

 

「だから王を奪う」

 

「群れは崩れる」

 

現場将校が言う。

 

「理論上はな」

 

⸻

 

若い士官が恐る恐る言う。

 

「質問」

 

「発言許可」

 

「もし奪取失敗した場合」

 

沈黙。

 

榊原が答える。

 

「失敗しない」

 

「次」

 

現場将校がため息をつく。

 

⸻

 

別の席。

 

情報部が発言する。

 

「拠点側の動き」

 

「安定しています」

 

「共同訓練を開始」

 

「戦術統合の兆候」

 

久我が言う。

 

「早いな」

 

「予想以上です」

 

榊原が言う。

 

「だから早く潰す」

 

⸻

 

資料が配られる。

 

作戦案。

 

侵攻ではない。

 

分断

 

内部崩壊。

 

心理操作。

 

⸻

 

「正面戦力ではなく」

 

「関係性を壊す」

 

誰かが言う。

 

「汚い」

 

榊原が言う。

 

「戦略だ」

 

⸻

 

情報部が続ける。

 

「協力者候補あり」

 

数名が顔を上げる。

 

「拠点内部か」

 

「周辺」

 

「軍属関係者」

 

久我が言う。

 

「確度は」

 

「七割」

 

榊原が笑う。

 

「十分だ」

 

⸻

 

誰も笑わない。

 

冷たい会議だった。

 

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