葵が笑う世界で ー王と提督は、ただ1人を守る為にー 作:戌威
最初の連携は、偶然ではなかった。
それは“合わせた”のではなく、
噛み合ったのだ。
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正門防衛ライン。
盾列の後ろから艦娘が制圧射撃を行い、
その弾幕の隙間を縫って喰種が突っ込む。
声で合わせていない。
カウントもない。
だが呼吸が揃っている。
吹雪が三点バーストで敵の前列の足を止める。
「止めた!」
次の瞬間には炎慈がその間を割って入る。
「十分だ!」
盾を掴み、横に叩き折る。
金剛が叫ぶ。
「今デース!」
榛名と同時射撃。
後列を制圧。
龍牙が言う。
「前、開いた」
麻耶が滑り込む。
「任せな!」
近距離制圧。
那珂が叫ぶ。
「右側抑えた!」
狂禍が低く言う。
「左、指揮官いる」
次の瞬間、その指揮官は無線を落とした。
喉を押さえられて。
音もなく。
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兵士の無線が混乱する。
「連携してる!?」
「艦娘と喰種が!?」
「想定外だ!」
その“想定外”が致命傷になる。
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長門が前線を見て呟く。
「息が合っている」
加賀が答える。
「理屈ではありません」
「空気です」
白瀬が小さく言う。
「覚悟だ」
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だが——
戦場は一面ではない。
側面。
裏門。
整備搬入口。
そこに、別働制圧部隊が突入した。
重機でフェンスを破壊。
爆薬で扉を飛ばす。
「裏から入る!」
「突破口確保!」
一気に流れ込む。
数が多い。
装備が重い。
ここは艦娘ラインが薄い。
吹雪が無線で叫ぶ。
「裏門、突破されます!」
白瀬が歯を食いしばる。
「回せる部隊は——」
言い切る前に、別の声が入った。
低い。
笑っている。
喰種の声だ。
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「そこは俺らの場所だ」
裏門通路。
照明が割れている。
火花が散る。
煙が流れる。
その中で——
赤い光がいくつも開いた。
赫眼。
一つではない。
十ではない。
無数。
兵士が止まる。
本能が拒否する。
「何だ……」
影が動く。
牙が覗く。
前傾姿勢。
狩りの姿勢。
喰種が言う。
「艦娘だけじゃ無理な場所は」
もう一人が笑う。
「俺達が動く」
次の瞬間、裏門は戦場になった。
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狭所戦闘。
距離ゼロ。
盾が意味を持たない。
銃が振れない。
喰種の間合い。
骨が鳴る音。
金属が落ちる音。
悲鳴は短い。
速いのではない。
容赦がない。
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裏門制圧部隊の無線が崩壊する。
「裏門応答しろ!」
「裏門!?」
「……返事がない!」
指揮系統が乱れる。
狂禍が小さく笑う。
「折れた」
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正門側戦線。
敵の圧力がさらに増す。
数で押してくる。
盾の壁。
弾幕。
金剛が叫ぶ。
「多いネー!」
山城が吐き捨てる。
「うんざりする数!」
扶桑が言う。
「でも——」
長門が続ける。
「守る」
それで十分だった。
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その時。
全回線にノイズが走った。
短い。
だが全員の耳に刺さる。
そして一言。
「王、出陣」
静か。
感情なし。
だが戦場の温度が変わる。
吹雪の背筋が震える。
「……来る」
炎慈が笑う。
「遅えぞ王」
深赫が口元を上げる。
「間に合ってる」
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正門へ続く中央通路。
煙の奥。
足音が響く。
重くない。
だが止まらない足音。
ハヤトだった。
第一形態完全解放。
赫眼。
赫子展開。
圧が空気を押している。
兵士が振り向く。
足が止まる。
本能が理解する。
“頂点”。
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左右に部隊が展開する。
黒滅が左を率いる。
紅牙が右を率いる。
統制された喰種部隊。
乱戦ではない。
軍勢。
後方。
深赫。
黒牙。
親衛隊。
精鋭。
沈黙の圧力。
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兵士の一人が呟く。
「……王」
誰も教えていないのに分かる。
格で。
空気で。
存在で。
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ハヤトは歩く。
走らない。
急がない。
戦場の中央を、ただ進む。
その間に敵の射撃が止まる。
止まってしまう。
恐怖で。
理解不能で。
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ハヤトが言う。
「どけ」
小さい声。
だが届く。
前列が割れた。
意志ではない。
本能で。
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深赫が後ろで笑う。
「道ができるな」
炎慈が答える。
「王だぞ」
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白瀬提督はモニターを見ていた。
小さく呟く。
「……出たか」
長門が言う。
「戦場が変わる」
加賀が言う。
「いえ」
「終わります」
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王が歩く。
軍勢が続く。
鎮守府の戦場が、塗り替わる。