※この作品はR-18です。

ワルキューレの迷宮騎行   作:葵翠

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014 昼

フィーアが馭者席に座った。

 

 

 馭者席の真ん中、どっかと陣取ると動かない、俺達二人が多少話し辛そうにしても知らんぷりである。

 

「フィーアさん、話、聞かせて貰っても大丈夫かな?」

 

「はい」

 

「フィーアさんの・・・」

 

「フィーア」

 

「え?」

 

「ただのフィーア。さんは要らない」

 

「そっか。フィーア」

 

「君の住むウコムの町はどんな所なのかな?俺行った事無くて」

 

「・・・よく知らない」

 

 俯くフィーアにファリーが助け船を出す。

 

「獣人と亜人、少し人間の町ね。村長は人間族よ。ちょっと他種族間で排他的だったりするから、町全体の事を知る人は多くは無いわ」

 

「成る程ね」

 

 あまり、触れない方がいいのか。失敗したかな?

 町なのに“村長”かい!みたいな突っ込みは入れない方がいいんだろうな~

 

「ファリーは村長を知っているのか?」

 

「知ってはいるけど、会った事は無いの。フィーアの身元引き受け人になってくれた方ってぐらい」

 

「ウコムの町には他にダークエルフ族の民は居ないのか?」

 

「シン。同種族だからといって、必ずしも仲がいい、とは限らないわ」

 

「そうか。俺の郷は単一種族だけの村だったんだ。よく知らずに不用意に立ち入った事を聞いて済まない。悪かった」

 

 頭を下げた。

 フィーアは驚いて両手を前に出してくるくる回しながら、

 

「ううん、いいの。別に気にしてないから」

 

 と、気を使ってくれた。

 

「元々、盗賊の襲撃前から親も居なかったらしいの」

 

 と言いつつ、ファリーが強引に話題を変えた。

 

「もう少しでお昼だけど、昼飯にしない?騎士団の受付の娘が作ってくれたサンドイッチ。美味しいよ」

 

「美味しいね?お兄ちゃん」

 

「あ、ああ。美味しいね。今度お礼をしないとね」

 

 お兄ちゃんと呼ばれて少し動揺した。

 俺に妹は居ない。呼ばれ慣れてないので、ちょっとびっくり、ちょっと嬉しい。

 

「うん」

 

「そうだな。そうしてやってくれ。多分、喜ぶ」

 

「お姉ちゃん、はい、あ~ん」

 

 フィーアが手綱を持つファリーの口にサンドイッチを送る。馬車の手綱って、そこまでしっかり持ってないといけないものか?

 

「ん、さんきゅ。あ~ん。もぐもぐ」

 

「お兄ちゃんも、あ~ん」

 

「いや、俺は」

 

「あ~ん」

 

「じ、自分で」

 

「あ~ん」

 

「分かったよ。あ~ん」

 

 にこっ。

 

 

 しばらくすると町が見えてきた。ウコムの町だ。

 

「村長の家は町の中央付近、大きな家だ」

 

 見えてきた。外に人が二人出てきた。

 少し年配の男が手を振り、馬車を制止した。

 

「こちらです、騎士様。わざわざご足労、お疲れ様で御座います」

 

「何、これも仕事の内だ」

 

 ファリーは馬上で騎士様モード。

 俺とフィーアは馬車から降りた。

 

「左様ですか。本来なら何かしら歓待せねばならないところ、この後もご任務がお有りとか。あまり、お引き留めしてはならない。と申しつかっておりますが・・・」

 

「そこまで気を使わずとも良い」

 

 そこで一旦言葉を切る。意地悪なやつだ。

 

「いえいえ、そのような」

 

 村長は早く帰ってほしそうだ。

 

「時々様子を見にくる。あまり、心配を掛けないように」

 

「それはもう」

 

「それじゃ、フィーア。ここでな。また遊びにくるよ」

 

「絶対?」

 

「ああ、約束だ」

 

 そう言って指切りをする。

 

「何、これ?」

 

「また会えますように。って俺の郷のおまじない」

 

「ふ~ん。約束だよ」

 

「では失礼する」

 

 そう言ってファリーは俺が飛び乗るのも待たずに馬車を出した。

 

 しばらくして手を振るフィーアが見えなくなってから、

 

「随分、あっけないのだな」

 

 と言うと、

 

「あまり、不用意に深入りしない方がいい」

 

 と、言われてしまった。

 

「しかし、」

 

 その先を言う前に、

 

「恐らく、あまり、いい扱いはされない」

 

 言葉少な目だ。

 

「分かっているなら、なんで、」

 

「何も出来ない。察してほしい」

 

「・・・ごめん」

 

 手綱を強く握るファリーの手をそっと優しく握った。

 

 

 その後、しばらく無言の時が流れたが、キザマの村が見えてくる頃には談笑するまでになっていた。

 日は西に傾き始めていた。

 

 

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