※この作品はR-18です。

ワルキューレの迷宮騎行   作:葵翠

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017 碧

ちゃんと釘を刺しておいたので大丈夫だろう。

 

 甘かった。

 便所を済ませて部屋に戻ってきたら、白く透けて可憐な寝間着で、正座に三つ指ついてお待ちしておりました。って、もう!

 大体、この格好ってお帰りなさいませ、旦那様。のポーズで、あってる?

 

「あ、あの碧さん、俺、」

 

「来たのでは無く、お待ちしておりました」

 

 やっぱり。

 寝室に来た。ではなく、最初からそこに居て、待っていたんだ、と言う体で、らしいが!

 

「そういう事では無くてですね。お礼とか、何卒、これで。みたいな事はイヤだと」

 

「シン様こそ、私を見くびっておられます。確かにそういう気持ちも有りましたが、純粋に私の気持ちも察して頂けませんか?」

 

「いや、決してそういう訳では」

 

「ではやはり、私の醜い見た目が?」

 

「ああ、もう!」

 

 思わず抱きしめてしまった。

 

「あっ」

 

「良いですか、他の男が何と言おうが関係ありません。碧さん、貴女は美しい。私が貴女に言い寄らないのは何故だと思っているんですか?私の様な冴えない男なんかは不釣り合いだと思っているからです。それでも私に言い寄るのは何か求めるモノが有るのか、責任感や義務感だろうと思うのです。でもそれは私には残酷です。私を哀れんでいらっしゃるのでしょうか?」

 

「そんな!決してそんな!!」

 

「いえ、理解出来ます。私と同じなんですね」

 

 そう、自己肯定感が低いのだ。それ故、自分を肯定してくれる人も信用出来ない。

 でも長く人と触れ合う事で、人を信用出来る様になれば、その人が肯定する自分も肯定出来る様になる。

 なんか、そんなアニメ有ったな~お前を信じる俺を信じろってやつ。

 

「それじゃあ、本当にいいんですね?今さらダメって言われても止められませんよ?」

 

「はい、私を愛して下さいませ」

 

 ちゅ。ちゅう~。

 自制心のたがが外れた。もう止められない。

 夢中で碧さんの体を蹂躙した。

 

「碧さん、碧さんんん」

 

「お願い!碧って呼んで!」

 

「碧いぃ。お前は俺のものだ。誰にも渡さないぞ」

 

「はい、嬉しい。私はシン様のものです!要らなくなったら殺してぇ!」

 

「行くよ!行くぞ!」

 

「来て。来てぇ!」

 

 

「・・・ごめん、乱暴にし過ぎた」

 

「いいえ。シン様のものになれた実感が湧いて、幸せな気分です」

 

「でもその、初めてだったんですよね。痛かったでしょ?」

 

 布団に染み付いた、碧の破瓜の証が何故か誇らしげに映る。

 

「だからこそ、嬉しいんです。私はこの日の為に守ってきたんだって思えて」

 

「もう本当に放さないからね」

 

「はい、一生、シン様にお仕えしますね。ずっと傍に置いて下さいませ」

 

「碧さん、もう一回、いい?」

 

「私はシン様のものですよ?」

 

 この後、三回した。

 

 

 今日も朝からアイダの迷宮に入る。

 一階層を越えて、二階層へと上がる。

 一撃。と言う訳にはいかないが、そんなに時間も掛からない。盗賊のお古ではあるが、結構いいモノっぽいので、装備のお陰かも。

 

 昨日の続きから始めたが、すぐボス部屋までたどり着いた。

 二階層ボスはウドウッドだ。

 こいつも特に危なげ無く倒した。

 三階層へ上がると、ここの魔物はコボルトだった。

 ミシフとはレベルが違うが、コボルトはコボルトだ。

 ヨユーである。

 ここもさっさとクリアして四階層へ行こう。

 四階層からはフロアでは魔物が三匹出る。

 警戒すべきはここだろう。どういった魔物の組み合わせでくるのかも、用心しないといけない。

 

 それにしても、魔物との接敵率が低い。

 それならそれで早く上に行きたいが、迷宮は結構広く簡単にボス部屋までたどり着かない。

 自然、体力が付く。つまらないが。

 

 ボス部屋に着く前に俺のお腹が鳴ったので帰る。

 そう、俺の家に帰るんだ。

 

 誰も居ないのを確認して小部屋の壁から家の裏の壁にワープする。

 

 家には碧さんが昼食を作って待っていた。

 

「ただいま~」

 

「お帰りなさい。主様」

 

 ぐわ~、新妻かよ。

 

「お昼ご飯出来ています。一緒に頂きましょう」

 

 お昼を済ませた俺は、お約束の様に紅さんの様子を窺う。

 

「紅さん、シンです。お昼ご飯頂きませんか?昨日取ってきた兎の肉をお吸い物に入れて頂いているんですが、これもまた、美味しいんですよ?」

 

 勿論、ダメ元で聞いてみただけなのだが、微かな声で、

 

「はい、頂きます」

 

 と、聞こえた。チャンスだ。

 

「少しだけ待って下さい。すぐ持ってきます」

 

 ドタドタと階段を掛け降り、

 

「紅さんの昼食、持っていきます。一緒に食べてくれるみたいです」

 

「まあ、それは凄い。すぐ用意しますね。出来てはいますので」

 

 お盆を受けとると、すぐに紅さんの部屋に戻った。

 ノックして部屋に入ると、紅さんはまだ布団にくるまっていた。

 

「紅さん、それでは食べられません。顔だけでも出して下さい?」

 

 すると、ぴょこんと顔が出てきた。

 雪ん子のお人形さんの様だ。

 顔だけ出しているのではっきりとは見えないが、可愛い。顔はちっちゃくて、整った輪郭をしている。碧さんと同じく、二本角が見える。

 目はクリっとして黒目が大きい。吸い込まれそうだ。鼻もすっと通り、口は小さい。THE美少女。誰もが恋に落ちてしまう様な、碧さんとはまた違う美しさが有る。一目で紅さんの虜になってしまった。

 てか、この世界、おかしくね?俺のストライクゾーンど真ん中な人ばっかり登場するんですけど?

 

「そのままでお食べになりますか?食介しましょうか?」

 

 恥ずかしいけどお願いします。な感じだ。見れば分かる。

 

「はい、じゃまずはやっぱり兎の肉からですね。はい、あ~ん」

 

 顔を真っ赤にしながら、それでも顔を前に出す。

 

「美味しい?」

 

「はい、美味しいです」

 

 そう言った彼女は、少し笑顔を見せてくれた。

 笑顔も可愛い。何でもいう事を聞いてあげたくなる。

 少しづつ、ゆっくりと食べ進む。

 

「そうですか、良かった。良かった・・・イカン、涙が出てきた」

 

 美味しく頂けるという事は気持ちが前に出始めた、という事だ。

 気を取り直して。

 

「じゃ次は何にする?」

 

「でしたら・・・」

 

 チャンスだ。このまま、畳み掛ける。

 

 

「全部完食。良く出来ました~」

 

「ご馳走様でした」

 

 この辺り、何か日本人的メンタルを感じるな~。

 “鬼”なんだから、やっぱり日本人由来なんだろうか?

 

「じゃ、食器下げますね~」

 

「え、あ」

 

「すぐ戻ります。まだ話、してくれますか?」

 

 可愛く、はにかみながら、

 

「・・・お待ちしております」

 

 食器を碧さんに渡してすぐ紅さんの部屋に戻った。

 

 戻った時には布団から顔を全部出していた。

 前髪は少し目に掛かるぐらいの所で切り揃え、頬の横は耳の下ぐらいの位置まで伸び、後ろは長く腰まであるロングヘアの黒髪だ。姫ちゃんカットがこちらにも有ったとは驚きだ。

 

 俺が来ると嬉しそうな表情を見せたが、まだまだ怖いものは怖いのだろう。ずっと黙っている。

 こちらから話していこう。

 

「君と別れた後の経緯は知らないよね?俺の話を聞いてくれる?」

 

「あの後・・・盗賊のアジトに・・・」

 その後の顛末について話した。時間は有るんだ。ゆっくり話そう。

 女性が監禁されている所から、フィールドウォークで女性を搬送しようとしたら、途中でMPが切れ、馬車との接続が切れた事。その後、残りの女性と走って逃げた事。途中で追い付かれ、危ない所を二人の女性に助けられた事。その内の一人はその時亡くなった事。あ、思い出したらまた涙が。

 それから、助けてくれた騎士団の女隊長にいろんな事を教わった事。

 最後に助けた女性を、ウコムの町まで馬車で送って行った事。

 そして、最後にキザマの村に紅の様子窺いに来た事を話した。

 

 

「こんなに良くして頂いておきながら、ちゃんとお礼もせず、すみませんでした」

 

「力及ばず、救えなかった方を思うと、自身の不甲斐なさが情けない」

 

「すみません、こんなにもシン様は傷付いていらっしゃると言うのに、私は自分の事ばかり・・・」

 

「貴女がこうして回復なされる事が、何よりの慰めになります。ですからどうぞ、笑顔を見せて下さい」

 

「はい。それで、その、シン様は今後、どうされるおつもりで・・・」

 

「え?ずっとこの村に居るつもりですが・・・あれ?まだ碧さんから聞いていない?」

 

「え?そんな話、何も・・・」

 

 後で碧さんに聞くと、

「もう、ちゃんと言ったのに、あの子、布団被って聞いてないから・・・」だそうだ。

 

 紅はなんだかほっとした様な表情を見せたが、すぐに何かを決心した様な顔になり、

 

「あ、あの。シン様。お願いが有るのですが、聞いて頂けますでしょうか?」

 

「私に出来る事でしたら、何なりと?」

 

「その・・・兄様(あにさま)とお呼びしても宜しいでしょうか?」

 

 

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