ちゃんと釘を刺しておいたので大丈夫だろう。
甘かった。
便所を済ませて部屋に戻ってきたら、白く透けて可憐な寝間着で、正座に三つ指ついてお待ちしておりました。って、もう!
大体、この格好ってお帰りなさいませ、旦那様。のポーズで、あってる?
「あ、あの碧さん、俺、」
「来たのでは無く、お待ちしておりました」
やっぱり。
寝室に来た。ではなく、最初からそこに居て、待っていたんだ、と言う体で、らしいが!
「そういう事では無くてですね。お礼とか、何卒、これで。みたいな事はイヤだと」
「シン様こそ、私を見くびっておられます。確かにそういう気持ちも有りましたが、純粋に私の気持ちも察して頂けませんか?」
「いや、決してそういう訳では」
「ではやはり、私の醜い見た目が?」
「ああ、もう!」
思わず抱きしめてしまった。
「あっ」
「良いですか、他の男が何と言おうが関係ありません。碧さん、貴女は美しい。私が貴女に言い寄らないのは何故だと思っているんですか?私の様な冴えない男なんかは不釣り合いだと思っているからです。それでも私に言い寄るのは何か求めるモノが有るのか、責任感や義務感だろうと思うのです。でもそれは私には残酷です。私を哀れんでいらっしゃるのでしょうか?」
「そんな!決してそんな!!」
「いえ、理解出来ます。私と同じなんですね」
そう、自己肯定感が低いのだ。それ故、自分を肯定してくれる人も信用出来ない。
でも長く人と触れ合う事で、人を信用出来る様になれば、その人が肯定する自分も肯定出来る様になる。
なんか、そんなアニメ有ったな~お前を信じる俺を信じろってやつ。
「それじゃあ、本当にいいんですね?今さらダメって言われても止められませんよ?」
「はい、私を愛して下さいませ」
ちゅ。ちゅう~。
自制心のたがが外れた。もう止められない。
夢中で碧さんの体を蹂躙した。
「碧さん、碧さんんん」
「お願い!碧って呼んで!」
「碧いぃ。お前は俺のものだ。誰にも渡さないぞ」
「はい、嬉しい。私はシン様のものです!要らなくなったら殺してぇ!」
「行くよ!行くぞ!」
「来て。来てぇ!」
「・・・ごめん、乱暴にし過ぎた」
「いいえ。シン様のものになれた実感が湧いて、幸せな気分です」
「でもその、初めてだったんですよね。痛かったでしょ?」
布団に染み付いた、碧の破瓜の証が何故か誇らしげに映る。
「だからこそ、嬉しいんです。私はこの日の為に守ってきたんだって思えて」
「もう本当に放さないからね」
「はい、一生、シン様にお仕えしますね。ずっと傍に置いて下さいませ」
「碧さん、もう一回、いい?」
「私はシン様のものですよ?」
この後、三回した。
今日も朝からアイダの迷宮に入る。
一階層を越えて、二階層へと上がる。
一撃。と言う訳にはいかないが、そんなに時間も掛からない。盗賊のお古ではあるが、結構いいモノっぽいので、装備のお陰かも。
昨日の続きから始めたが、すぐボス部屋までたどり着いた。
二階層ボスはウドウッドだ。
こいつも特に危なげ無く倒した。
三階層へ上がると、ここの魔物はコボルトだった。
ミシフとはレベルが違うが、コボルトはコボルトだ。
ヨユーである。
ここもさっさとクリアして四階層へ行こう。
四階層からはフロアでは魔物が三匹出る。
警戒すべきはここだろう。どういった魔物の組み合わせでくるのかも、用心しないといけない。
それにしても、魔物との接敵率が低い。
それならそれで早く上に行きたいが、迷宮は結構広く簡単にボス部屋までたどり着かない。
自然、体力が付く。つまらないが。
ボス部屋に着く前に俺のお腹が鳴ったので帰る。
そう、俺の家に帰るんだ。
誰も居ないのを確認して小部屋の壁から家の裏の壁にワープする。
家には碧さんが昼食を作って待っていた。
「ただいま~」
「お帰りなさい。主様」
ぐわ~、新妻かよ。
「お昼ご飯出来ています。一緒に頂きましょう」
お昼を済ませた俺は、お約束の様に紅さんの様子を窺う。
「紅さん、シンです。お昼ご飯頂きませんか?昨日取ってきた兎の肉をお吸い物に入れて頂いているんですが、これもまた、美味しいんですよ?」
勿論、ダメ元で聞いてみただけなのだが、微かな声で、
「はい、頂きます」
と、聞こえた。チャンスだ。
「少しだけ待って下さい。すぐ持ってきます」
ドタドタと階段を掛け降り、
「紅さんの昼食、持っていきます。一緒に食べてくれるみたいです」
「まあ、それは凄い。すぐ用意しますね。出来てはいますので」
お盆を受けとると、すぐに紅さんの部屋に戻った。
ノックして部屋に入ると、紅さんはまだ布団にくるまっていた。
「紅さん、それでは食べられません。顔だけでも出して下さい?」
すると、ぴょこんと顔が出てきた。
雪ん子のお人形さんの様だ。
顔だけ出しているのではっきりとは見えないが、可愛い。顔はちっちゃくて、整った輪郭をしている。碧さんと同じく、二本角が見える。
目はクリっとして黒目が大きい。吸い込まれそうだ。鼻もすっと通り、口は小さい。THE美少女。誰もが恋に落ちてしまう様な、碧さんとはまた違う美しさが有る。一目で紅さんの虜になってしまった。
てか、この世界、おかしくね?俺のストライクゾーンど真ん中な人ばっかり登場するんですけど?
「そのままでお食べになりますか?食介しましょうか?」
恥ずかしいけどお願いします。な感じだ。見れば分かる。
「はい、じゃまずはやっぱり兎の肉からですね。はい、あ~ん」
顔を真っ赤にしながら、それでも顔を前に出す。
「美味しい?」
「はい、美味しいです」
そう言った彼女は、少し笑顔を見せてくれた。
笑顔も可愛い。何でもいう事を聞いてあげたくなる。
少しづつ、ゆっくりと食べ進む。
「そうですか、良かった。良かった・・・イカン、涙が出てきた」
美味しく頂けるという事は気持ちが前に出始めた、という事だ。
気を取り直して。
「じゃ次は何にする?」
「でしたら・・・」
チャンスだ。このまま、畳み掛ける。
「全部完食。良く出来ました~」
「ご馳走様でした」
この辺り、何か日本人的メンタルを感じるな~。
“鬼”なんだから、やっぱり日本人由来なんだろうか?
「じゃ、食器下げますね~」
「え、あ」
「すぐ戻ります。まだ話、してくれますか?」
可愛く、はにかみながら、
「・・・お待ちしております」
食器を碧さんに渡してすぐ紅さんの部屋に戻った。
戻った時には布団から顔を全部出していた。
前髪は少し目に掛かるぐらいの所で切り揃え、頬の横は耳の下ぐらいの位置まで伸び、後ろは長く腰まであるロングヘアの黒髪だ。姫ちゃんカットがこちらにも有ったとは驚きだ。
俺が来ると嬉しそうな表情を見せたが、まだまだ怖いものは怖いのだろう。ずっと黙っている。
こちらから話していこう。
「君と別れた後の経緯は知らないよね?俺の話を聞いてくれる?」
「あの後・・・盗賊のアジトに・・・」
その後の顛末について話した。時間は有るんだ。ゆっくり話そう。
女性が監禁されている所から、フィールドウォークで女性を搬送しようとしたら、途中でMPが切れ、馬車との接続が切れた事。その後、残りの女性と走って逃げた事。途中で追い付かれ、危ない所を二人の女性に助けられた事。その内の一人はその時亡くなった事。あ、思い出したらまた涙が。
それから、助けてくれた騎士団の女隊長にいろんな事を教わった事。
最後に助けた女性を、ウコムの町まで馬車で送って行った事。
そして、最後にキザマの村に紅の様子窺いに来た事を話した。
「こんなに良くして頂いておきながら、ちゃんとお礼もせず、すみませんでした」
「力及ばず、救えなかった方を思うと、自身の不甲斐なさが情けない」
「すみません、こんなにもシン様は傷付いていらっしゃると言うのに、私は自分の事ばかり・・・」
「貴女がこうして回復なされる事が、何よりの慰めになります。ですからどうぞ、笑顔を見せて下さい」
「はい。それで、その、シン様は今後、どうされるおつもりで・・・」
「え?ずっとこの村に居るつもりですが・・・あれ?まだ碧さんから聞いていない?」
「え?そんな話、何も・・・」
後で碧さんに聞くと、
「もう、ちゃんと言ったのに、あの子、布団被って聞いてないから・・・」だそうだ。
紅はなんだかほっとした様な表情を見せたが、すぐに何かを決心した様な顔になり、
「あ、あの。シン様。お願いが有るのですが、聞いて頂けますでしょうか?」
「私に出来る事でしたら、何なりと?」
「その・・・