また兄になってしまった。
一度に美少女二人の妹が出来たのだ。
偶然にも、二人とも17歳。
同級生の彼女も出来た。
姉さん女房もだ。
しかも全て超絶美女。
俺、明日、死ぬの?
「構わないけど、いいの?思い出したら辛いんじゃないか?」
本当のお兄さんの事はまだ吹っ切れていないだろう。
「思い出しても大丈夫な様になります!」
あんまり無理しないでね。
「あの、
「ん?」
何か、
「あの、その」
「うん、何でも言ってみて」
「その、今日は一緒に寝て貰ってもいいですか?」
顔が真っ赤だ。
俺もかなり恥ずかしいよ。
「ああ、全然構わないよ。そそそ、添い寝って事ね。」
不安にさせない様に、と思って即答で了承する旨、答えようと思っていたら、変な返事になってしまった。
だけど、それが良かった様で、紅の表情は一変して明るくなった。どんな反応されるのだろうかと心配していたら、即答だったので、安心した様だ。少なくとも、逡巡はされるだろうと思っていたからだ。
「あの、その、まだ夜は怖くって」
理由も考えていたのかも知れない。
「いいよ。もっと色々話そうね?」
「はい!」
と言っても、まだ日は高い。
「じゃあ、俺はまた少し迷宮に行ってこようかな。あ、紅さんも俺のパーティーに入って貰えますか?戦闘に加わるのでは無くて、パーティーメンバーのステータス補正が欲しくて。碧さんにも入って貰ってるんです」
一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに、
「はい。入ります。・・・これで宜しいでしょうか?」
「はい。オッケーです。これで姿は見えなくても、常にお互いの大体の位置が分かりますよ」
何だか嬉しそうだ。
「じゃ今後こそ。行って参ります」
「行ってらっしゃいませ」
これまた新婚さんみたいだ。俺、やっぱり明日死ぬの?
いや、そのためには今日を生き延びなければ。気合を入れて集中して行こう。
今日も無事、帰還出来た。
「お帰りなさいませ、」
「主様」「兄様」
二人揃って玄関で迎えてくれた。
碧は紺色の作務衣、紅は白の着物の部屋着。
紅は着物の上からでもスタイルの良さが分かる。
揃ってお辞儀してくれている。
ハーレム新婚さんだ。
「只今。二人とも」
「夕飯に致しましょうか?」
そこは「ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ、た、し?」にしてくんなきゃな~まだまだ修行が足りないな。
取り敢えず、
「そうですね。皆で頂きましょうか」
「兄様、今日は私もお手伝いしたんですよ?」
嬉しそうである。同時にちょっぴりドヤ顔である。
こっちも嬉しくなって、
「そうなの?それは楽しみ~」
「はいはい、皆座って下さい」
「では食べましょう。頂きます」
「「頂きます」」
紅が作ってくれたスープもそうだが、今日は一段と美味しい夕飯だった。
紅の寝室。
「さぁ今夜は何話そうか?」
「あの、兄様はあの時、どうしてあんな所に、いえ、何故私を助けて下さったんですか?」
「・・・今から話す事は内密にしてくれるか?」
すんごく真面目な顔で話し始めると、紅も真剣な面持ちで聞き入ってくれた。
「はい!」
「実は俺はこの世界の人間では無い」
「えっと」
「からかっているのでも無ければ、気が触れた訳でも無い。理解出来なければ、一旦保留にして聞いてほしい」
「兄様の仰る事なら信じます」
「ありがとうな。で、俺は君と出会うホンの数分前にこの世界に飛ばされて来たんだ。過ぎ去る馬車を見たんで、追い掛けた。最初は状況も分からなかったよ。食い物を分けて貰おうぐらいに思っていた」
紅は呆れたり、つまらなさそうにしたりせず、じっと俺の目をとても真剣な表情で見ている。
「馬車に追い付いた時、君の悲鳴が聞こえたよ。そこでやっと少しだけ緊迫感が増してきた。正直、今考えると、よく突っ込んでいけたなと思う」
「やっぱりそこです。どうして見も知らない私なんかを?恐ろしくは無かったのですか?」
「あの時は兎に角、君を助けなきゃって思った。何故か怖くは無かったよ。多分、君を救う為にここへ飛ばされたんだと思ったんだろうね」
「兄様。兄様は私の全てを助けて下さった恩人です。ありがとうございます。今後、私は私の全てを懸けてこのご恩をお返します」
「紅。碧さんにも言ったけど、ご恩とか、義務とか、考えちゃダメだ。俺は恩を押し売る為に君を救ったんじゃない。もし何かしたいと思うなら、幸せになってほしい。前にも言ったけど、笑顔になってほしい。君は気付いて無いかも知れないけど、君は可愛いし、綺麗だ。君には笑顔が似合う。俺には君の笑顔が何よりも価値が有るんだ。俺の願いを聞いてくれるかな?」
「はい。・・・はい!」
「さぁ後は何か聞きたい事とか有る?」
兎に角それが一番聞きたかったんだろう。それ以外考えてなかったんだろうなぁ。
「え?えっと。ええ、と・・・」
真剣に何か考えている。可愛いなぁ。
「もし良ければ、君の事を聞いてもいいかな?」
「はい。何なりと」
これまた目がキラキラしてる。ホントに可愛いなぁ。
「君、と言うか、君達、かな。鬼人族って、少数民族なのかな?」
「えっと、そうです。そうだと思います。ここ以外の鬼人族の集落で、私達の血縁以外のものを知りませんし、聞いた事もありません。その血縁の村もここと同じぐらいの規模です」
「ふ~ん。あ、ここの文化って結構、独特だよね。お料理とか、衣服とか。閉鎖的な村だとは言え、何かしら方向性を感じるんだけど、何か心当たり有る?あ。こういう事は村長様に聞いた方がいいのかな?」
「そうですね。お爺様の方がいいかも知れませんが・・・」
「ん?何かまずいかな?」
「あ、いえ、全然そんな事は無いのですが、多分、捕まりますよ?」
捕まるって、やっぱりまずいんじゃん。
「やっぱり・・・」
「最近、暇そうにしていたらしいので、長話に付き合わされるって意味です」
「ぷ。ははは、そりゃ困るな」
「でしょう。あはは」
「さて、そろそろ寝ようか?」
「はい。あの、その。手、手を握っていて下さいますか?一人で寝るのが怖いのは本当なんです」
「そうか。分かった。・・・これでいいか?」
布団から出した手を握ってあげた。
あんなおぞましい目に遭ったんだ。男性恐怖症にもなるわな。
兎に角、優しくしてあげよう。
楽しく生きられる様にしよう。
ゲームとか、何とか、関係無い。
俺が誰かの手助けになれるのなら、それでいい。
人の役に立てる事が生きる力になるなんて思いもしなかった。
しばらくすると安らかな寝息がしだした。
俺は可愛いその手をずっと握り続けた。
朝まで握り続けた。
そういや、暑くも寒くも無いな。
春または秋なのかな?それとも、常春の世界なのかな? 今までそんな事を考える暇さえ無かったって事なのかな?
思い返してみるに、ずっと緊張の連続だったかも知れない。
元の世界に、あまり価値を見出だしていなかった事もあるが、この刺激に満ちた世界を気に入っていたのだろうか?
少し眠い。
その日は起きたら昼前だった。
気付けば紅に膝枕されていた。
紅は俺の頭を撫でていた。
生きている。んがしかし。美少女の膝枕だ。
やっぱりここは天国なのか?
「あ、お目覚めですか?おはようございます。兄様。もうすぐお昼になりますよ?」
「おはよう、紅。もうそんな時間か」
「はい。どうせなら、もう少しお休みになりますか?」
「いや、起きよう」
「昨晩は無理言ってすみません。ずっと手を握っていて下さいましたね。ありがとうございました」
「良く眠れた?」
「はい。兄様の睡眠時間まで奪ってしまって・・・」
「君に奪われて惜しいものなんて何も無いよ」
紅は顔を真っ赤にしつつも、
「兄様、女殺しとか、言われた事、ありません?」
「鈍感。って言われた事なら有るよ」
「もしかして、それをそのまま受け取ったりしてます?」
「え?違うの?」
「兄様、その方に嫌われたんじゃありません?」
「よく分かったね」
「・・・はぁ。分かりました。私が矯正して差し上げます」
そして、それからしばらくは添い寝の日々が続いた。
そんなすぐに恐怖症が治るわけないよな。