※この作品はR-18です。

ワルキューレの迷宮騎行   作:葵翠

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018 紅

また兄になってしまった。

 

 一度に美少女二人の妹が出来たのだ。

 偶然にも、二人とも17歳。

 同級生の彼女も出来た。

 姉さん女房もだ。

 しかも全て超絶美女。

 俺、明日、死ぬの?

 

「構わないけど、いいの?思い出したら辛いんじゃないか?」

 

 本当のお兄さんの事はまだ吹っ切れていないだろう。

 

「思い出しても大丈夫な様になります!」

 

 あんまり無理しないでね。

 

「あの、兄様(あにさま)」

 

「ん?」

 

 何か、兄様(あにさま)って所、強調するなぁ。

 

「あの、その」

 

「うん、何でも言ってみて」

 

「その、今日は一緒に寝て貰ってもいいですか?」

 

 顔が真っ赤だ。

 俺もかなり恥ずかしいよ。

 

「ああ、全然構わないよ。そそそ、添い寝って事ね。」

 

 不安にさせない様に、と思って即答で了承する旨、答えようと思っていたら、変な返事になってしまった。

 だけど、それが良かった様で、紅の表情は一変して明るくなった。どんな反応されるのだろうかと心配していたら、即答だったので、安心した様だ。少なくとも、逡巡はされるだろうと思っていたからだ。

 

「あの、その、まだ夜は怖くって」

 

 理由も考えていたのかも知れない。

 

「いいよ。もっと色々話そうね?」

 

「はい!」

 

 と言っても、まだ日は高い。

 

「じゃあ、俺はまた少し迷宮に行ってこようかな。あ、紅さんも俺のパーティーに入って貰えますか?戦闘に加わるのでは無くて、パーティーメンバーのステータス補正が欲しくて。碧さんにも入って貰ってるんです」

 

 一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに、

 

「はい。入ります。・・・これで宜しいでしょうか?」

 

「はい。オッケーです。これで姿は見えなくても、常にお互いの大体の位置が分かりますよ」

 

 何だか嬉しそうだ。

 

「じゃ今後こそ。行って参ります」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

 これまた新婚さんみたいだ。俺、やっぱり明日死ぬの?

 いや、そのためには今日を生き延びなければ。気合を入れて集中して行こう。

 

 

 今日も無事、帰還出来た。

 

「お帰りなさいませ、」

「主様」「兄様」

 

 二人揃って玄関で迎えてくれた。

 碧は紺色の作務衣、紅は白の着物の部屋着。

 紅は着物の上からでもスタイルの良さが分かる。

 揃ってお辞儀してくれている。

 ハーレム新婚さんだ。

 

「只今。二人とも」

 

「夕飯に致しましょうか?」

 

 そこは「ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ、た、し?」にしてくんなきゃな~まだまだ修行が足りないな。

 

 取り敢えず、

 

「そうですね。皆で頂きましょうか」

 

「兄様、今日は私もお手伝いしたんですよ?」

 

 嬉しそうである。同時にちょっぴりドヤ顔である。

 こっちも嬉しくなって、

 

「そうなの?それは楽しみ~」

 

「はいはい、皆座って下さい」

 

「では食べましょう。頂きます」

 

「「頂きます」」

 

 紅が作ってくれたスープもそうだが、今日は一段と美味しい夕飯だった。

 

 

 紅の寝室。

 

「さぁ今夜は何話そうか?」

 

「あの、兄様はあの時、どうしてあんな所に、いえ、何故私を助けて下さったんですか?」

 

「・・・今から話す事は内密にしてくれるか?」

 

 すんごく真面目な顔で話し始めると、紅も真剣な面持ちで聞き入ってくれた。

 

「はい!」

 

「実は俺はこの世界の人間では無い」

 

「えっと」

 

「からかっているのでも無ければ、気が触れた訳でも無い。理解出来なければ、一旦保留にして聞いてほしい」

 

「兄様の仰る事なら信じます」

 

「ありがとうな。で、俺は君と出会うホンの数分前にこの世界に飛ばされて来たんだ。過ぎ去る馬車を見たんで、追い掛けた。最初は状況も分からなかったよ。食い物を分けて貰おうぐらいに思っていた」

 

 紅は呆れたり、つまらなさそうにしたりせず、じっと俺の目をとても真剣な表情で見ている。

 

「馬車に追い付いた時、君の悲鳴が聞こえたよ。そこでやっと少しだけ緊迫感が増してきた。正直、今考えると、よく突っ込んでいけたなと思う」

 

「やっぱりそこです。どうして見も知らない私なんかを?恐ろしくは無かったのですか?」

 

「あの時は兎に角、君を助けなきゃって思った。何故か怖くは無かったよ。多分、君を救う為にここへ飛ばされたんだと思ったんだろうね」

 

「兄様。兄様は私の全てを助けて下さった恩人です。ありがとうございます。今後、私は私の全てを懸けてこのご恩をお返します」

 

「紅。碧さんにも言ったけど、ご恩とか、義務とか、考えちゃダメだ。俺は恩を押し売る為に君を救ったんじゃない。もし何かしたいと思うなら、幸せになってほしい。前にも言ったけど、笑顔になってほしい。君は気付いて無いかも知れないけど、君は可愛いし、綺麗だ。君には笑顔が似合う。俺には君の笑顔が何よりも価値が有るんだ。俺の願いを聞いてくれるかな?」

 

「はい。・・・はい!」

 

「さぁ後は何か聞きたい事とか有る?」

 

 兎に角それが一番聞きたかったんだろう。それ以外考えてなかったんだろうなぁ。

 

「え?えっと。ええ、と・・・」

 

 真剣に何か考えている。可愛いなぁ。

 

「もし良ければ、君の事を聞いてもいいかな?」

 

「はい。何なりと」

 

 これまた目がキラキラしてる。ホントに可愛いなぁ。

 

「君、と言うか、君達、かな。鬼人族って、少数民族なのかな?」

 

「えっと、そうです。そうだと思います。ここ以外の鬼人族の集落で、私達の血縁以外のものを知りませんし、聞いた事もありません。その血縁の村もここと同じぐらいの規模です」

 

「ふ~ん。あ、ここの文化って結構、独特だよね。お料理とか、衣服とか。閉鎖的な村だとは言え、何かしら方向性を感じるんだけど、何か心当たり有る?あ。こういう事は村長様に聞いた方がいいのかな?」

 

「そうですね。お爺様の方がいいかも知れませんが・・・」

 

「ん?何かまずいかな?」

 

「あ、いえ、全然そんな事は無いのですが、多分、捕まりますよ?」

 

 捕まるって、やっぱりまずいんじゃん。

 

「やっぱり・・・」

 

「最近、暇そうにしていたらしいので、長話に付き合わされるって意味です」

 

「ぷ。ははは、そりゃ困るな」

 

「でしょう。あはは」

 

「さて、そろそろ寝ようか?」

 

「はい。あの、その。手、手を握っていて下さいますか?一人で寝るのが怖いのは本当なんです」

 

「そうか。分かった。・・・これでいいか?」

 

 布団から出した手を握ってあげた。

 あんなおぞましい目に遭ったんだ。男性恐怖症にもなるわな。

 兎に角、優しくしてあげよう。

 楽しく生きられる様にしよう。

 ゲームとか、何とか、関係無い。

 俺が誰かの手助けになれるのなら、それでいい。

 人の役に立てる事が生きる力になるなんて思いもしなかった。

 しばらくすると安らかな寝息がしだした。

 俺は可愛いその手をずっと握り続けた。

 

 

 朝まで握り続けた。

 そういや、暑くも寒くも無いな。

 春または秋なのかな?それとも、常春の世界なのかな? 今までそんな事を考える暇さえ無かったって事なのかな?

 思い返してみるに、ずっと緊張の連続だったかも知れない。

 元の世界に、あまり価値を見出だしていなかった事もあるが、この刺激に満ちた世界を気に入っていたのだろうか?

 少し眠い。

 その日は起きたら昼前だった。

 気付けば紅に膝枕されていた。

 紅は俺の頭を撫でていた。

 

 生きている。んがしかし。美少女の膝枕だ。

 やっぱりここは天国なのか?

 

「あ、お目覚めですか?おはようございます。兄様。もうすぐお昼になりますよ?」

 

「おはよう、紅。もうそんな時間か」

 

「はい。どうせなら、もう少しお休みになりますか?」

 

「いや、起きよう」

 

「昨晩は無理言ってすみません。ずっと手を握っていて下さいましたね。ありがとうございました」

 

「良く眠れた?」

 

「はい。兄様の睡眠時間まで奪ってしまって・・・」

 

「君に奪われて惜しいものなんて何も無いよ」

 

 紅は顔を真っ赤にしつつも、

 

「兄様、女殺しとか、言われた事、ありません?」

 

「鈍感。って言われた事なら有るよ」

 

「もしかして、それをそのまま受け取ったりしてます?」

 

「え?違うの?」

 

「兄様、その方に嫌われたんじゃありません?」

 

「よく分かったね」

 

「・・・はぁ。分かりました。私が矯正して差し上げます」

 

 

 そして、それからしばらくは添い寝の日々が続いた。

 そんなすぐに恐怖症が治るわけないよな。

 

 

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