あれから数日。
今日も今日とて、紅の家とアイダの迷宮の往復を繰り返し、レベル上げをしている。
夜の紅とのお手手繋ぎも繰り返している。
そう言えばあれ以来、碧さんともご無沙汰だなぁ。
一度、夜中に便所に起きた事が有ったが、紅、気付いて、どこ行くのって泣くからな。
こっそり抜け出して逢い引きする事も出来ない。
ま、今は紅の方が大事か。
そんなある日、思わぬ来訪者が現れた。
朝、出掛けようと、外に出たら、遠くの方から呼ぶ声がした。
「お兄ちゃん!」
「フィーア?」
紅のあと、盗賊から救出したダークエルフの少女だ。
銀髪ロングの碧眼、切れ長の目に、長く高い鼻、細く尖った耳、薄くピンク色の口。別れた時のまま麻のワンピースにサンダル。
びっくりした。
どうしているだろうか、と心配はしていた。もし、何かあればファリー辺りから連絡が入るだろうとは思っていた。余程、何か緊急の事態が有ったのだろうか?
「どうしたの?突然。何か有ったのか?」
「会いに来るって言うからずっと待ってたのに、全然来てくんないんだもん。だからこっちから会いに来た~」
行動力!
「そ、それは済まない。ありがとうな。だけど、ちゃんと施設の人に出掛ける事は伝えてあるのか?」
「えっ?そ、そりゃもちろん。ふゅー、ぴゅー」
鳴ってないぞ、フィーアよ。
「あ~もしかして、お前、」
「フィーアちゃん?」
背後から紅の声がした。
「え?紅ちゃん?なんで?」
「フィーアちゃんこそ、なんでここに?」
「私はお兄ちゃんに・・・って、あれ?」
「きゃー。フィーアちゃん、久し振り~」
あ、あのー。俺、置いてきぼり・・・。
「あれ?君たち、お友達、なのかな?」
「はい。私達、小さい頃、よく一緒に遊んでいました」
ああ、成る程、そう言う事ね。
「アイダの、迷宮だろう?」
「なんで?」
「君たちのステータスを鑑定すれば、なんとなく、ね」
「凄い。お兄ちゃん、天才~」
「誤魔化すんじゃありません。フィーア、ちゃんと言ってきたのか?」
「だって、あそこの人達、全然優しくないんだもん」
何か、不満げだ。
なんとなく、言いたい事は分かる。
がしかし、筋は通さなければならない。
それが大人ってもんです。
「まず、具体的に何が嫌なんだ?」
「えー、よく分かんないよ~」
「さっき、優しくない。って言ったな。具体的にどう、優しくないんだ?」
「難しいよー」
「ファリー姉ちゃんの所に行こうとはしなかったのか?」
「したら、見付かって、それからはずっと暗い部屋に閉じ込められる様になったの。だから夜中、こっそり逃げ出したの」
「それから今まで寝てないのか?」
「うん。閉じ込められる様になってからは、何か実験とか言って痛い事するし、あと、何処かに売るとか何とか言ってたよ」
「ふうん、そうか・・・」
元々フィーアが居たっていう施設とも関係有りそうだな・・・。
「兄様?」
二人とも心配そうに俺を見ている。
「ああ、済まない。で、フィーア。これから、どうしたい?」
「え?どう、って、お兄ちゃんの所にずっと居たい!」
この子、見かけは大人びて見えるが、言葉遣いは子供っぽいんだよな~。
「それはよーく分かった。だけど、一度こっちに来たら、やっぱり帰る~なんて事は出来ないし、偶然であってももう向こうの人達と会っても、仲良く出来ないかも知れないぞ。その覚悟は有るか?」
突然、そんな事を言われても17歳の少女には酷と言うものかも知れない。
と、思ったら、意外と、
「うん。全然平気だよ。向こうにお友達とか居ないし、絶対、お兄ちゃんや紅ちゃんが居るこっちの方がいいもん」
そんなもんなのかね~。
ま、元々暮らしていた所って訳でもないらしいし。
どうもあそこの村長、胡散臭かったしな。
「分かった。今後、ここに何か言ってきても絶対返したりしないからな。紅も、いいな」
「「はい!」」
「あと、この事は碧さんや村長様にもきちんと通す。正式に俺も含めてフィーアをこの村の住民にする」
「やったー」
「と、いう訳で、お願いに上がりました」
「お前さん、意外と行動力あるんじゃの」
その足で村長宅に直行した。
「こういうのは、早い方がいいかと思いまして」
「自分の事ももちっと素早く出来んものかの?
まあよいわ。儂もあそこの村長は好かんかったでの。
委細承知じゃ」
「お爺様、有り難う御座います」
「何、可愛い娘っ子の頼みじゃしの」
「只今、碧さん。村長にもオッケー貰ってきたよ~」
「お帰りなさいませ。まあまあ、フィーアちゃん、久し振りね。これから宜しくお願いしますね」
「碧お姉ちゃん、お久し振りです。突然来ちゃってすみません。宜しくお願いします」
「何だフィーア。ちゃんと挨拶出来るんじゃないか」
「辺り前だよ!何、言ってんのよ!プンスカ」
「ははは。ごめん、ごめん」
「俺はこれからちょっと迷宮に行ってくるよ。碧さん少しお願いしてもいいかな?」
「はい。どうぞ、行ってらっしゃいませ」
少し昔馴染み同士にしてあげよう。
その間に。
「フィーア、俺のパーティーに入ってくれるか?あ、付いて来なくていいからな」
「あ、はい」
「じゃ行ってきます。夕飯までには帰ります」
「「行ってらっしゃ~い」」
アイダの迷宮、六階層まで来た。
ここの魔物はミノだった。
しばらく戦ってパーティージョブ設定してみた。
フィーアが村人レベル5になっていた。
フィーアにしろ、紅にしろ、村人レベル5になった時点で最後の条件に合致したのだろう。今は、
紅は戦士、剣士、僧侶、戦乙女が選択出来る様になっていた。
フィーアは戦士、剣士、僧侶のジョブが選択出来る。
碧は農夫、料理人、刀鍛冶のジョブをゲットだ。
いや、ちょっと待て。戦士、剣士、僧侶は分かる。
自分で確認したしな。
農夫、料理人もまあいい。
戦乙女と刀鍛冶って何だ?
ファリーが言ってた種族固有ジョブってやつか?
鬼人族には2種類あるの?
刀鍛冶?ドワーフの鍛冶師とは違うの?ファリーは鍛冶師はドワーフしかなれないって言ってたな~。微妙に出来る事が違うのかしらん?
それに戦乙女?こっちはなんぞなもし?って感じだ。
誰かに聞けば分かるものかね?
ファリーは鬼人族の事は、よー知らん、ちゅーとったしな。
取り敢えず、村長様に聞けば、何か分かるかな?
あまり知られたくは無いけど、二人の進路の妨げにはなりたくないしな・・・。
まずは帰って碧さんに聞いてみるか。
一旦、紅は戦乙女、碧さんは刀鍛冶、フィーアは剣士にした。
そこから少し六階層を回って帰った。
ハチノスもヨユーで屠ってやった。ぶい。
帰る頃にはレベル5になっていた。
「只今~」
「「「お帰りなさい~」」」
ハーレムその2だ。
可愛い、綺麗、可憐。
皆、大事な家族だ。この世界に来て本当の家族が出来た気がする。大切にしよう。
「みんなに聞きたい事が有るんだ。ジョブについてなんだけど、刀鍛冶、戦乙女って分かる?あと、ダークエルフの種族固有ジョブって何か分かるな?」
「刀鍛冶というのは鬼人族の憧れのジョブです。刀鍛冶に成れなかったものが戦乙女や戦侍を目指すと言われています。ダークエルフについては、よく存じ上げません。すみません」
流石、碧さん、良くご存知で。
「ダークエルフは魔法剣士だよ。誰も見た事無いけど」
魔法剣士か・・・。剣士と魔法剣の使用が条件かな?魔法剣なら何でもいいのかな?
「兄様、戦乙女は刀鍛冶の残り滓みたいに言われていますけど、それはそれはとっても凄いんですよ」
成る程、紅は刀鍛冶を諦めて戦乙女を目指していたのね。
「碧さん、刀製造って念じてみて?」
「はい?刀製造。ですか?って、わあっ」
「すみません、驚いた?部材が揃ってないから今は出来ませんが、これならすぐにでも、何か作れそうですね」
「いや、まずは説明を」
「あ、そうですね。すみません。実は私はパーティーメンバーのジョブを変更出来るんです。勿論、本人にその素養が無ければ出来ません。色んな条件をクリアして初めて、そのジョブになる事が出来ます。そして今、碧さんは刀鍛冶です。恐らく村人レベルが足りなかっただけだと思います」
「そんな、私が刀鍛冶だなんて・・・」
碧さんはポロポロと涙をながしている。
「凄い、やりましたね。姉様。漸く今までのご苦労が報われるのですね」
紅も、半べそだ。
「そして、紅。君は今、戦乙女だ。斬奸って念じてみて?」
「え?はっ?ザンカン?」
「悪いやつらをやっつけろ。って思いながら念じて」
「あ、はい。ザン・・・。きゃっ」
「それと、手当て!」
「え?手当て、ですか?きゃっ」
「うん、こっちも成功だな」
「本当に私が、戦、乙女、に?」
とうとう、二人抱き合い、号泣である。
と、フィーアが指を咥えて物欲しそうだ。
「あの、お兄ちゃん。私は・・・?」
まあ、そう来るよね。
「魔法剣士は・・・まだレベルが足りないのか、魔法剣で敵を倒す、とか、何か条件が足りてないのかも知れないな。もう少し様子を見ないと、かな?」
「え~つまんな~い!」
「んなっ。お、俺のせいじゃ無いからな!取り敢えずフィーアは剣士にしたから、それで様子見、な」
「ブーブー」
泣きながらも話を聞いていた紅が、
「姉様、あの剣はどうなんでしょうか?」
「あの剣?」
「はい。フィーアちゃんが小さい頃、持っていた、フィーアちゃんのお爺様の形見の剣です」
「何それ。フィーア、そんなの、知らない」
「ああ、あの。フィーアちゃんが昔持っていた、お爺様の形見らしいのですが、危ないから。と言って私達のお爺様。村長が預かった剣なのです。確か、雷のバスタードソードとか、って言う・・・」
「ええ~知らな~い」
(覚えてないんか~い)
思わず、心の中で突っ込みを入れてしまった。
「その剣は今どこに?」
「今でもお爺様が持っていらっしゃると思います」
「じゃあ、お爺様の所へ」
「いや、晩御飯にしよう」
「わ~い、碧お姉ちゃんのご飯だ~」
現金なやつめ。
今日は紅とフィーアは一緒に寝るそうだ。
子供の頃はよく一緒に遊んでいたらしいが、アイダの迷宮が発見されてからは、辺り一面立入禁止になり、次第に会うことも無くなってしまったらしい。
しばらくはそっとしておいてあげよう。
俺は久々に碧さんの所に。と思ったら、碧さんも一緒らしい。
くそう。
俺はいつ以来だろう。1人寝だ。ちょっぴり寂しい。