朝から村長宅へ向かった。
「待て待て、年寄りは皆、朝は早いが誰もがしゃんと起きとる訳ではない。ちったあ落ち着かんか」
聞く耳持たん。
「フィーアのじい様の剣、あるか?」
「だから、少し待てと言うとろうに。
お主が昨日、フィーア嬢を連れてきた時にこうなるとは、思っておったわ。物置の一番手前に出してある。勝手に持って行くが良い」
「ありがとうお爺様。大好き!」
そう言って紅とフィーアは物置があるだろう方へ走っていった。
「但し、娘っ子を危険な目に合わすんじゃないぞ」
「私の命に代えましても」
「その言葉、決して忘れるでないぞ」
「はい!」
「ところで村長様、刀鍛冶と戦乙女について教えて頂けますか?」
村長が珍しくびっくりしている。
「何でそれを。いや、お主、本当は何者じゃ?」
「私は只の剣士です。少し人とは違う力を持っているだけの。それに刀鍛冶と戦乙女はあの二人の才能です。私にはその力が見えるだけです」
「まあ、そういう事にしておいてやろう。で、そのジョブじゃがの、刀鍛冶は武器、それも刀或いはそれに類するもの、斧、槍、包丁等の作成が出来る。その他の武器や防具は作れん。あと、スキル結晶の融合なんかも出来ん。ドワーフの鍛冶師は万能過ぎるんじゃ。その上の刀匠にでもなれば或いは、の。あと、力が強い為、戦闘でも役に立つぞ」
碧さんは目をキラキラさせながら聞いている。
じい様は一息ついて茶をすすったあと、
「戦乙女/戦侍は戦闘特化型のジョブでの、別に刀鍛冶の残滓という訳ではない。完全に別系統なんじゃが、刀鍛冶を諦めた者が次に目指すものじゃから、そういうイメージが付いただけじゃ」
「特徴は?」
「まあ、そうじゃの。剣士と僧侶の合の子、と言うか、良いとこ取り、かの。手当て、斬奸は一対一のスキルで上のジョブの戦巫女/侍大将になれば一対多のスキルが使える様になる。といったところか」
「成る程な。ところでそれぞれ、上位ジョブになる為の条件なんかは?」
「刀鍛冶、戦乙女になるだけでも、恐ろしく大変なんじゃぞ!その上なんぞ知るか!全く、最近の若いもんはすぐ楽しようとしよる・・・」
(ち、知らねえんじゃねえか)
「何か言ったか?」
「いえ。(ヤバ地獄耳かよ)ありがとうございました。では、また来ます」
「待たんか、このせっかちめ。紅をもう一度ここへ呼べ」
「は?」
「いいから呼べ」
「私が呼んで参ります」
「お前さんも戻ってくるんじゃぞ」
「はい」
「・・・シンよ」
「は」
「二人の夢を叶えてくれて、ありがとうの。礼を言う」
「それは彼女達の努力があればこそです」
「当たり前じゃ。わしゃ、ずっと小っこい頃から見とったんじゃ。そのくらい!」
そこで三人が戻ってきた。
「お爺様。此度は本当に・・・」
と言いかけたところで、
「それはもう良い。それより紅よ。床の間の刀、持って行くが良い」
村長様が後ろの床の間に掛けてある刀を指して言った。
霊剣 打刀
(空き) (空き)
脇差 堀川国広
(空き) (空き)
「え?だって、あれは村の」
「構わん。武器は使ってなんぼじゃ。せいぜい、碧に手入れして貰え」
「お爺様・・・大事に使わせて頂きます」
紅も碧も涙ぐんでいる。
「村長様、ありがとうございました」
「いいか、わしゃ、この娘らを迷宮にやる事を認めた訳ではない。この娘らに何かあればわしゃ、許さんからの!」
「はい。心得ています」
「おお、刀は脇差し、刀掛けごと持って行け」
「お爺様、ありがとうございます!」
遅い朝食。早い昼食か?
食べながら色々話した。
「みんな、何か、迷宮に入るの決定。みたいに思っている様だけど、俺もあまり乗り気では無い。出来ればずっと家に居て、俺の帰りを待っていてほしい。でも君たちの意志も尊重したい。本当なら、それぞれ思う通りにしてほしいのだが、それも同調圧力にもなる」
「なので提案だ。皆一人一人にどうしたいか個人的に聞いていく。その後、一緒に行きたい者に関しては、俺の判断で連れて行くかどうか、決めようと思う。決め方について意見は聞くが、決めた事に関しては一切、意見は聞かないし、反論も許さない。いいか?」
「「「はい」」」
ふう。取り敢えず、こんな感じで良かっただろうか?
一番嫌なのは、本当はイヤだけど、誰かが行くなら自分も行く。ってパターンだ。なので、最初に話を聞くのは碧から。かな。次いで、紅、フィーアか。
さて、どうなるかな?
碧。
「あ、あの紅は何と?」
やっぱり。
「紅がどうでは無く、碧さんの気持ちを聞いています」
「私は・・・紅がどうしたいかによっては・・・」
「つまり、本心では戦いたくは無い、と?」
「あの、決してそうでは・・・はい」
「分かりました」
紅。
「あ、あの、フィーアちゃんは何と?」
こっちもか。
「フィーアがどうでは無く、紅の気持ちを聞いている」
「私は・・・色々怖いけど、兄様、フィーアちゃん、姉様が一緒なら・・・」
「出来れば戦いたくは無いけど、みんな一緒ならやぶさかでは無い。か?」
「はい」
「分かった」
フィーア。
「お兄ちゃんと一緒がいい」
こいつは・・・。
「だから、そうじゃなくて、自分がどうしたいのか、て事をだな・・・」
「ん?お兄ちゃんと一緒!」
「迷宮で戦う事も」
「お兄ちゃんと一緒!」
ああ、ハイハイ。
「みんな、本当にそれでいいんだな?」
「みんな一緒に迷宮で戦って貰う事になるが、いいんだな」
「「「はい」」」
「あ、でも今すぐじゃないからな。もう少しレベル上げてからな」
「すぐ迷宮に行きたい!」
フィーア。お前はホントにもう・・・。
分かるけどね。早く魔法剣士になっておきたいんだよな?
迷宮に入るなら装備を揃えないと、なあ。
買いに行くならミシフか、皇都、かな?
そういや、皇都の高級服屋だっけか?
いきなりファリーんとこに行っても勤務中だよね?
みんな一緒に行ったら、ファリーもみんなもビミョーな雰囲気になる気がするし。後で怒られる案件だ。間違い無い。
今回はファリーの所には寄らずに行こう。
皇都はファリー、フィーアと馬車の旅をした時に経由しているので分かる。ワープで飛べる。一度皇都で場所を掴んでおいて、それからみんなで飛べばいいか。
「ちょっと皇都まで行ってくる。店のあたりをつけたらすぐ戻る」
「服や装備ならミシフやオーゾでも」
碧はお金の事を気にしている様だが、
「1つ心当たりが有るんだ。まずはそこへ行ってからだ」
無理矢理納得させ、ワープゲートを開いた。
「じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
行った事が有ると言っても、皇都の西の端を掠めたぐらいで、中心部は全く知らない。
近くの店の店員さんにちょっと聞いてみた。
「お店の方ですか?」
「そうですが、何か?」
「聞いて来たのですが、皇都に女性用下着の舶来品を取り扱う店があるとか。是非、妻にプレゼントしたくて。ご存知ではありませんか?」
「ああ、それならあの店だろうね。スザク大路をまっすぐ北に上がって門に当たる前、左手に見える大きな店が多分、そうだと思うよ」
「ご親切にありがとうございました。因みにスザク大路へはどう行けば?」
「あっちだよ」
丁寧に礼を言って直ぐに歩き始めた。
何故だかすぐに場所をイメージ出来た。
ここだな。三階建ての大きな店だ。小さな百貨店並みだ。正直、ちょっと気圧される。
店員ぽい人に聞いてみた。
「こちらに美しい女性用下着を置いている。と聞いて来たのですが」
「もしや、桧上様でしょうか?」
「そうですが、何故?」
「リヒテンフォルト様に近々、お越しになるだろうと聞き及んでおりましたので」
くおぉ、ファリーにしてやられた。これは朝昼晩フルコース確定だなぁ・・・。