アイダ迷宮1階層
「あれ?あれ?雷が出ないよう!」
「落ち着け、敵の事は考えなくていい。俺が抑える!今は魔力込めに集中するんだ!」
「分かった!うう~ん!!」
バ、バチバチ!
「良し!行け!!」
「ヤアア!えい!」
ゴウ!という爆音と共にウサギは煙と化した。
「どうだ?!」
魔法剣士 Lv1
効果 腕力小上昇 知力小上昇 HP微上昇
スキル エレメント付与 フルスラッシュ
「フィーア、やった!魔法剣士、ゲットだぜ!」
「ホント?やったぁ!私、偉い?これでお兄ちゃんの役に立てる?」
全て俺の為に?アカン。涙が。
「もちろんだ。でも、俺の為とか考えなくて、いいんだよ!」
涙が見えない様に抱きしめたが、遅かった。思いっきり涙声になっていたからな。
「お兄ちゃん、何で泣いてるの?嬉しくない?」
「嬉しいよ。お前かて泣いてるやん!」
「何か良く分かんないけど、お兄ちゃんは私が守ってあげるから、泣かないで」
くそ。今後、絶対、フィーアの前で泣かないからな・・・。
「良し。んじゃあ、ここのボスもサクっと倒して凱旋するぞ!」
「おお~!」
絶対意味分かってないだろう?
「たっだいま~」
「はい、お帰りなさい~」
雰囲気で分かっているみたいだが、
「フィーア、魔法剣士だよ!」
「良かったね、フィーアちゃん。ね、見せて見せて~」
「うん、分かった!いっくよ~」
・・・。
・・・・。
・・・・・。
「ん?」
「あれ?」
「おい、フィーア?」
「・・・分かんなくなっちゃった。てへ」
「てへ、やあるか~い!」
ま、まあ魔法剣士にはなってるんだ。
その内、簡単に出来る様になるだろう。
「まあまあ、兎に角、お祝いしましょう。みんなで美味しいもの食べて、ね」
「「「「頂きます!」」」」
ちょっとだけ、紅が羨ましそうな表情をしていた。
次の朝。
「おはよう」
「おはようお兄ちゃん。迷宮行く?行く?」
イケイケか?このコギャルは?
もう既に装備着け終わってるし。
「私も行きます」
「え?」
「私はもう少し待ったら?って言ったんだけど」
「いや、紅は迷宮怖いって・・・」
「行きます!」
それ、絶対フィーアに対抗心燃やしてるよな?
これ、連れてかない方が勝手して危険か?
なら、手元に置いて見える様にした方がまだ安全かも。
「迷宮内では絶対俺の命令を聞くか?」
「はい!」
「どんな命令でも?」
「はい!」
「脱げ」
「はい」
全く躊躇無く脱ぎ始めた。
「やめろ!すぐ装備しなおせ。分かった。認める」
紅は顔を紅潮させ、少し涙を浮かべながら衣服を整える。
「済まない、嫌な思いをさせた。戦闘は認めるが、本当に俺の指示には従ってくれよ?」
「はい。絶対にお役に立って見せます!」
「良し。じゃあ行くか?」
「「はい!」」
「碧さん、行ってきます。まだまだ安全な階層しか行きませんので、心配はご無用です。少し様子見して昼には戻ります」
「かしこまりました。お気をつけて」
再びアイダ迷宮1階層
紅は革の防具に、爺さんに貰った打刀の霊剣山姥切国広を装備している。見た目は立派な冒険者だ。
それどころか、妙に落ち着いている。
フィーアといい、紅といい、この世界の女子はみんな、こうなのか?幾ら幼少期にアイダの迷宮の魔物と戦った事が有ったとしても。
戦乙女のステータス補正、武防具、パーティーの安心感、色々有るだろうけど、ちょいと落ち着き過ぎてやいませんかね?
スローラビットなど瞬殺ですよ、奥さんっ。
次いで、ボスのラピッドラビットも別段、戸惑う事無くあっさりと屠ってしまった。
少し早いがいい頃合いなので、戻る事にした。
「只今~」
「碧さん、紅の初陣もとても立派でしたよ。斬奸も手当ても不要なぐらい1階層は余裕でした。少しずつ慣らしていこうと思います」
「そうですか、皆さんご無事で何よりです」
「碧お姉ちゃん、紅ちゃん、凄いんだよ。いきなりね・・・」
フィーアの方が興奮している。
「そうなの、凄いね~」
何故か碧さんも嬉しそうに聞いている。
「どうだ?紅、昼までにもう一戦、行けるか?」
「行けます!」
「いいか、紅。フィーアもだぞ。昼まで休みにして身体を休める。はオッケーだ。でも、無理して迷宮内で倒れる。は、絶対許さんからな。覚えておいてくれよ?」
「私は本当に大丈夫です!」
「フィーアも全然行けるよ~」
「良し。んじゃ午前後半の迷宮探索も頑張るぞ!」
「「お~!」」
「それでは碧さん、もう一度迷宮探索、行ってきます。昼には戻ります」
「分かりました。無事のお帰りをお待ちしております」
「はい、では、行ってきます~」
アイダ迷宮2階層
2階層はニードルウッドである。
「紅はどっちと戦ってみたい?」
「なるべく、色んなパターンを。ニードルウッドでお願いします」
「分かった。ニードルウッドが出たら紅優先で。行くぞ。紅が慣れてきたら、フィーアと交代な」
「「はい!」」
・・・
「兄様、ちょうどニードルウッドが2匹です」
「おあつらえ向きだな。一人1匹ずつ受け持て。危なくなったら俺がフォローに入る。自分の敵に集中しろ。いいな。行け!」
紅は正面左のニードルウッドに向けてダッシュし、フィーアはバスタードソードに魔力を込め始めた。
紅の方が接敵は早かったが、一撃では沈まなかった為、二の太刀に入る。
対してフィーアは魔力の注入が完成するや走り出し、一撃の下、ニードルウッドを沈めた。結果、ほぼ同時に終了した。
レベルは紅の方が上だが、経験はちょっとだけフィーアが上だ。あとは剣との相性で差が出るかも知れないが、魔物との相性もあるから、どっちの方がなんて揉める事も無いだろう。
その後、色んなパターンの敵と相対するが、何の混乱も無く順調に探索は進み、ボス待機部屋まで到着した。
「さて、ここのボスはウドウッドだが、俺が先頭で敵のヘイトを取るから、お前達は左右に展開してサイドアタック或いはバックアタックを取ってくれるか?」
「みんなで“袋“だね」
「そうだな、紅は斬奸、フィーアはフルスラッシュを狙ってみようか。くれぐれも、競争じゃ無いからな!」
「分かってるし」
「俺が先頭でヘイトを取る。あとから慌てずゆっくりくるんだぞ!」
ボス部屋の扉がゴゴゴとゆっくり開いた。
「行くぞ!」
そう言って俺は駆け出した。
二人とも上手くサイドを取って攻撃する。
俺は敢えて攻撃は当てずヘイト管理のみ行った。
ちょうどフィーアのフルスラッシュが当たった所でウドウッドは倒れた。
「良し、完勝。よくやったぞ、二人とも」
「やったね」
二人はハイタッチした。
そんな文化、こっちにも有るんだ。
あ、忘れてた。帰りに魔結晶、人数分買って帰ろう。