これが初期イベントか。
火を囲んで三人。
まだ馬車にも数人居る。
馬車の方へ向き直り、再度唱える。
正しくは「鑑定」だっけか。
馬車の馭者台に一人。
盗賊Lv4
装備 銅のショートソード
幌の荷台に一人。
盗賊Lv40
装備 鋼鉄の剣 革の鎧 革の靴
・・・こいつに隠れてもう一人居る。
ロングヘアのため、よく顔が見えない。
村人Lv4
装備 サンダル
何かこれ、ヤバくない?
初期イベントって姫救出?
助けた時の状態によってボーナス変わるとかか?
悲鳴のような声が聞こえてきた!
「イヤ、嫌ぁ!」
「大人しくしろ!どうせ、こんな所誰も来やしねえ。諦めて俺のものになりやがれ!いい目見せてやんぜ」
何でこう、お決まりのセリフしか出てこないんだかね。
しかしまだ、ヤられてはいない様だ。
早く助けてあげよう。
幸い、まだ誰にも気付かれてはいないので、そうっと近付く。
確か、ワープってチェック入れたよな。
試しに、
「ワープ」
って念じてみた。
場所指定を要求された。
ちょうどここから幌の中、盗賊の背後が見えたので、あの馬車の幌の内側。って念じてみた。
大きな木の陰から念じたから?
その木の影に何だかモヤみたいなのが現れた。
これで繋がった?
指先をそっとモヤに触れさせてみる。
何の抵抗も無く指は暗いモヤに吸い込まれる。
ええい、ままよ。
意を決してモヤに入る。
気付かれない様にそうっとね。
成功だ。
失敗すれば良かったのに。
イヤ、何言ってんの!
上手く背後取ったんだから、早く助けなきゃ。
手にしたデュランダルを構えて盗賊の首を狙う。
剣道で言う突きの裏バージョンだ。
思いっきり体ごとぶつかっていった。
ちょっと不恰好だったが、見事盗賊の首を貫いた。
てか、全く抵抗も無くスッと剣が入っていったのには驚いた。
ドサっと男が前のめりに倒れる。
悲鳴も上げることなく、女の子に覆い被さるように。
「ヒッ」
小さな悲鳴が聞こえたが誰にも届かなかったようだ。
男の倒れる音に気付いた馭者台の男が振り向こうとしたがもう遅い。
首から剣を抜きざま横に薙ぐ。
今度はゴロンと首が落ちた。
流石にこれで外の連中に気付かれた。
足音が聞こえ、声がする。
「アニキ、どうかしましたか?」
(鑑定)
後ろから一人、前から一人、横に一人。分かれた。
1対1なら勝機は有る。
まずは一番近いLv15からだ。
素早く後ろに回り、男が顔を覗かせたところを横から胴体を払う。
首の位置が正確に分からないから一番動かない胴を斬る。
当たりはした。絶命したかどうかまでは分からない。
取り敢えず、行動不能に出来たらそれでいい。
次は馭者台に向かったLv6だ。
正直雑魚だ。
首のないLv4の馭者を盾にして押し込む。
倒れてきた男を受け止めて動けないLv6をLv4ごと刺し貫く。
残りはLv27だ。
剣を抜いて立ち上がる。
コイツ、レベルは高いが構えが素人だ。
殺れる。確信が持てると自然に笑みが浮かんだ。
それが不気味だったんだろう。
自分と相手のレベル差なんて奴には分からない。
あっという間に仲間全員屠られればビビりもするさ。
逃げ出さずにいるのは感心するが、足がすくんでいるだけかもしれない。
正眼に構えたままゆっくり近付く。
男は剣を両手に持ってガチガチに震えている。
ピクッと動いた瞬間、剣の上を握っていた右手を打ち落とした。
思わず「小手!」と叫びそうになったが恥ずかしいので我慢した。
「ギャアアア手が、俺の手がああ!」
叫んで転げ回ってる。
これでコイツも戦闘不能だろう。
少し深呼吸して転げ回っている位置から死角に入ってトドメをさす。
一応他の盗賊どももトドメをさして回って馬車の中へ戻る。
怯えさせないようにデュランダルのポイントを外して消しておく。
「大丈夫ですか?」
そして出来るだけ静かに優しく話しかける。
話しながら傍にあった毛布を掛けてあげる。
「あっ、あっ」
怯えとショックで上手く言葉が出ないようだ。
「無理に喋らなくていいよ」
そう言うとコクンと頷いた。
「これで全部かな?」
今度は首をフルフルと横に振る。
ここで初めて気がついた。
言葉が通じてる?自動翻訳?
ああ、確か言語の設定もしたっけか。
まあいいや、
「俺の話してる言葉、分かる?」
ウンウン。首肯した。
「まだ他に盗賊ども居るの?」
コクリ。
「何処?この辺には居なさそうだけど・・・」
そう言いながら一通り鑑定してみたが人らしきものは出てこない。
すると毛布の中から手を出すと風上の方、来た方向の逆を指差した。
まあ今から盗賊の拠点に帰ろうとしていたのなら当然か。
「女性も、たくさん」
マジかぁ。
初期イベントまだ有るのか・・・