※この作品はR-18です。

ワルキューレの迷宮騎行   作:葵翠

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030 帰郷

朝。ミシフ騎士団本部

 

 

「ファルステート隊長は御存陣ですか?」

 

「ファルステート隊長?どちらの?」

 

 オウム返しにされてしまった。

 見習いっぽかったので、まだ分かっていないのか?

 いや、隊長の名前知らないなんてあるか?

 

「いや、いい」

 とだけ言って引いた。

 他の受付を見回して、前にサンドイッチを作ってくれた受付嬢を見つけた。

 

カミサ 女 18歳

 

「おはようございます。以前、サンドイッチを作って貰った、シンです」

 

「あ、あの時の」

 気付いてくれた。

「ファリーは居るかな?」

 少し声を落として聞いてみたが、こちらも少し様子がおかしい。

 女性は受付奥へ声を掛けて、受付から出てきた。

「こちらへ」

 と言って俺の手を引き、騎士団本部の外へ連れ出した。

 騎士団庁舎裏の少し広めの空き地、大きな木の下へ案内された。

 

 なんで中の打ち合わせ室ではなく、外なのか?と思ったが、それはすぐに分かった。

 

「すみません、あまり聞かれたくないので」

 と、断った後、話しだす。

 

「実は、ファリーさん、お辞めになったんです」

 

「は?なんで?俺に一言も無く?」

 いやまあ、俺に連絡する余裕も無かったってのなら、しょうがないとしても、前にそんな事、微塵も言わなかったぞ?

 

「すみません、御理解下さい。隊長は貴方に類が及ぶ事を善しとされなかったんだと思います」

 

「どういう事?」

 

「ファリー隊長と本部長の確執は御存知ですか?」

 

「そう言えば、随分愚痴ってたな」

 

「あの後、また派手にやり合って、問題になったんです」

 

「それって、もしかして俺の事で?」

 

「そこまでは分かりませんけど、結構な騒ぎでした」

 

 そもそも団長派、副団長派で対立していたらしいのだが、それが引き金となり、完全に分裂してしまったそうだ。

 

 だが、団長派の方が多数派であり、皇都騎士団の覚えもいい団長派が完全に覇権を手にし、副団長派を潰しにきた。で、最初に槍玉に上がったのが、ファリーということか。

 

 ほとんど言い掛かりの様な理由をでっち上げられ、副団長職、隊長職を解任され、左遷されそうになった所で辞職した。ということだ。

 

 辞令はすぐ発行され、履行は来期以降になるという所を、内部からの協力者によって情報がもたらされたため、発行前に辞職出来たんだそうだ。

 それにより、ファリーは副団長、三番隊隊長のまま、辞職出来、退職金を満額手にした。と。

 ファリー恐るべし。

 

「所で、その内通者というのは?」

 

 カミサさんドヤ顔してるし。

 ま、それはいいとして、

 

「今は何処に居るか分かる?確か、住んでいたのは騎士団が買い上げたアパートって聞いた気がするんだけど、今もそこに?」

 

「いえ、そこは早々に引き払ったそうです」

「では今は?」

「それが・・・分からないんです。いえ、故郷の方へ帰ったらしい。という事までは分かっている様なのですが・・・」

「そんな、なんで?」

 

「あの方、割と古株で入団したのは、さる方からの推薦で、だったんですけど、今はその方も退団されているので、誰も入団前の隊長の事を知る人が居ないんです」

 

「で、その方っていうのは?」

 

「元団長のエウノ・インシ様です」

 

「その、エウノ様は今何処に?」

 

「皇都という所までしか」

 

 う~ん、コリャ手詰まりか?

「待って下さい。もしかしたら、分かるかも知れません」

 

「どういう事でしょうか?」

 

「エウノ様は皇都でも有名な方ですので、皇都騎士団なら、誰か知っている人がいるかもです」

 

 なるほどね。行ってみるか?

 

「色々ありがとうございました。行ってみます」

 

「はい。あの、もしファリー隊長に会う事がありましたら、お伝え下さいますでしょうか?」

 

「ええ、何と?」

 

「あの時はありがとうございました。カミサはずっと隊長がして下さった御恩、忘れません。と」

 

「承りました。貴女は平気ですか?こんな事しゃべって」

 

「私は平気です。お気をつけて」

 

「ありがとうございました。それでは、これで」

 

 

皇都。

 

 エウノ様邸はすぐ分かった。

 騎士団に行くまでも無く、道行く人に聞いたら簡単に教えてくれたのだ。

 

 ちょっと高級そうで、小さな佇まいだ。

 玄関でドアノッカーを叩いた。

 すると、裏の庭の方から御夫人が現れた。

 

「どなた?」

 

 とても上品で物腰の柔らかい、気品溢れる女性だった。

 

「私はミシフ騎士団副団長ファルステート・リヒテンフォルト隊長の友人で桧上慎(ひかみしん)と申します。こちらは私の連れ人のフィナと言います。不躾にも何のアポイントメントも取らず、押し掛けてしまい、申し訳ありません」

 

 俺が恭しく礼をすると、フィナもそれを真似てお辞儀した。

 

「まあまあ、これはこれはご丁寧にありがとうございます。フィナさんもこんにちは。私はコイケといいます」

 

 庭の裏から客間へ通して頂いた。

 

 紅茶を頂き、一息ついた所で、

「所でどういった御用かしら?」

 と美しい所作で尋ねられた。

 

「はい。私はエウノ氏にお尋ねしたい事がありまして、参りました」

 

「そうでしたか。ですが申し訳ございません。生憎、主人は昨年、他界しましたの」

 

「こっ、これは重ね重ね申し訳御座いません。こちらの都合ばかりで。日を改めまして、お伺いさせて頂きます」

 

「まあ、いいのよ、そんな事。それよりももっとお話ししたいわ。実はね、主人が他界してからは来客も減ってしまうし、ファリーさんも忙しくなってしまって寂しかったんですよ」

 

「そうでしたか。エウノ様にはお悔やみを。実は氏にお尋ねしたかったのは正にそのファリーさんの事でして、今、どちらにいらっしゃるか御存知ではありませんか?」

 

「あら、そうでしたの。どういう事でしょう?」

 

 事情を話した。

 

「そう。でも、彼女はミシフを去る時、貴方には何も話していかなかったのでしょう?それは貴方にはもう会わない。という事ではないのかしら?」

 

「私には、私を探して。と言っている様に思えます。少なくとも、彼女を探す事を拒絶するものでは無い、と、思い、思えます」

 

「なるほど。あの子はいいご友人を持っているのね。少し心配していたの。いいわ。お話しします。実はね、あの子、つい先日ここへ来たの」

 

「そうでしたか。では?」

 

「いいえ。何処へ行くかは言ってはいかなかったわ。だから、これは私の独り言。あの子の郷は北の村、ノサヨ。何処へ行くにも両親の墓前に報告するでしょうね」

 

「そうか。ありがとうございます。絶対見つけてみせます」

 

「おば様、ありがとう」

 ずっと大人しくしていたフィナが、コイケさんにハグしてお別れした。

 

「ちょっとお待ち下さい」

 

 俺達が辞そうとするのを呼び止められた。

 夫人は俺達が座っていた後ろに飾ってあった槍を取り、俺に差し出して、

 

「これをお持ち下さい」

 

「これは?」

 

「これは主人の槍です。と同時にファリーの槍でもあります。あの子が正式入団が認められた時に主人があの子に渡した物。一応、我が家の家宝ですのよ」

 

「そんな大事なものを」

 

「要らなければ、あの子に返して下されば結構です」

 

「そうですか。そういう事でしたらお預かり致します」

 

 そう言って受け取り、穂先の旗のみ夫人に返した。

 

「いつになるかは分かりませんが、必ずファリーさんにお渡し致します」

 

「またいつでも遊びにいらして」

 

 夫人はずっと手を振っていた。

 

宝槍 フリッシュヒンメル 氷属性

 スキル 白狼(バイセンヴォルフ)

     詠唱中断 空き 空き

 

 何これ、凄っ!武器にスキルが付いてるの?

 

 

 

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