朝。ミシフ騎士団本部
「ファルステート隊長は御存陣ですか?」
「ファルステート隊長?どちらの?」
オウム返しにされてしまった。
見習いっぽかったので、まだ分かっていないのか?
いや、隊長の名前知らないなんてあるか?
「いや、いい」
とだけ言って引いた。
他の受付を見回して、前にサンドイッチを作ってくれた受付嬢を見つけた。
カミサ 女 18歳
「おはようございます。以前、サンドイッチを作って貰った、シンです」
「あ、あの時の」
気付いてくれた。
「ファリーは居るかな?」
少し声を落として聞いてみたが、こちらも少し様子がおかしい。
女性は受付奥へ声を掛けて、受付から出てきた。
「こちらへ」
と言って俺の手を引き、騎士団本部の外へ連れ出した。
騎士団庁舎裏の少し広めの空き地、大きな木の下へ案内された。
なんで中の打ち合わせ室ではなく、外なのか?と思ったが、それはすぐに分かった。
「すみません、あまり聞かれたくないので」
と、断った後、話しだす。
「実は、ファリーさん、お辞めになったんです」
「は?なんで?俺に一言も無く?」
いやまあ、俺に連絡する余裕も無かったってのなら、しょうがないとしても、前にそんな事、微塵も言わなかったぞ?
「すみません、御理解下さい。隊長は貴方に類が及ぶ事を善しとされなかったんだと思います」
「どういう事?」
「ファリー隊長と本部長の確執は御存知ですか?」
「そう言えば、随分愚痴ってたな」
「あの後、また派手にやり合って、問題になったんです」
「それって、もしかして俺の事で?」
「そこまでは分かりませんけど、結構な騒ぎでした」
そもそも団長派、副団長派で対立していたらしいのだが、それが引き金となり、完全に分裂してしまったそうだ。
だが、団長派の方が多数派であり、皇都騎士団の覚えもいい団長派が完全に覇権を手にし、副団長派を潰しにきた。で、最初に槍玉に上がったのが、ファリーということか。
ほとんど言い掛かりの様な理由をでっち上げられ、副団長職、隊長職を解任され、左遷されそうになった所で辞職した。ということだ。
辞令はすぐ発行され、履行は来期以降になるという所を、内部からの協力者によって情報がもたらされたため、発行前に辞職出来たんだそうだ。
それにより、ファリーは副団長、三番隊隊長のまま、辞職出来、退職金を満額手にした。と。
ファリー恐るべし。
「所で、その内通者というのは?」
カミサさんドヤ顔してるし。
ま、それはいいとして、
「今は何処に居るか分かる?確か、住んでいたのは騎士団が買い上げたアパートって聞いた気がするんだけど、今もそこに?」
「いえ、そこは早々に引き払ったそうです」
「では今は?」
「それが・・・分からないんです。いえ、故郷の方へ帰ったらしい。という事までは分かっている様なのですが・・・」
「そんな、なんで?」
「あの方、割と古株で入団したのは、さる方からの推薦で、だったんですけど、今はその方も退団されているので、誰も入団前の隊長の事を知る人が居ないんです」
「で、その方っていうのは?」
「元団長のエウノ・インシ様です」
「その、エウノ様は今何処に?」
「皇都という所までしか」
う~ん、コリャ手詰まりか?
「待って下さい。もしかしたら、分かるかも知れません」
「どういう事でしょうか?」
「エウノ様は皇都でも有名な方ですので、皇都騎士団なら、誰か知っている人がいるかもです」
なるほどね。行ってみるか?
「色々ありがとうございました。行ってみます」
「はい。あの、もしファリー隊長に会う事がありましたら、お伝え下さいますでしょうか?」
「ええ、何と?」
「あの時はありがとうございました。カミサはずっと隊長がして下さった御恩、忘れません。と」
「承りました。貴女は平気ですか?こんな事しゃべって」
「私は平気です。お気をつけて」
「ありがとうございました。それでは、これで」
皇都。
エウノ様邸はすぐ分かった。
騎士団に行くまでも無く、道行く人に聞いたら簡単に教えてくれたのだ。
ちょっと高級そうで、小さな佇まいだ。
玄関でドアノッカーを叩いた。
すると、裏の庭の方から御夫人が現れた。
「どなた?」
とても上品で物腰の柔らかい、気品溢れる女性だった。
「私はミシフ騎士団副団長ファルステート・リヒテンフォルト隊長の友人で
俺が恭しく礼をすると、フィナもそれを真似てお辞儀した。
「まあまあ、これはこれはご丁寧にありがとうございます。フィナさんもこんにちは。私はコイケといいます」
庭の裏から客間へ通して頂いた。
紅茶を頂き、一息ついた所で、
「所でどういった御用かしら?」
と美しい所作で尋ねられた。
「はい。私はエウノ氏にお尋ねしたい事がありまして、参りました」
「そうでしたか。ですが申し訳ございません。生憎、主人は昨年、他界しましたの」
「こっ、これは重ね重ね申し訳御座いません。こちらの都合ばかりで。日を改めまして、お伺いさせて頂きます」
「まあ、いいのよ、そんな事。それよりももっとお話ししたいわ。実はね、主人が他界してからは来客も減ってしまうし、ファリーさんも忙しくなってしまって寂しかったんですよ」
「そうでしたか。エウノ様にはお悔やみを。実は氏にお尋ねしたかったのは正にそのファリーさんの事でして、今、どちらにいらっしゃるか御存知ではありませんか?」
「あら、そうでしたの。どういう事でしょう?」
事情を話した。
「そう。でも、彼女はミシフを去る時、貴方には何も話していかなかったのでしょう?それは貴方にはもう会わない。という事ではないのかしら?」
「私には、私を探して。と言っている様に思えます。少なくとも、彼女を探す事を拒絶するものでは無い、と、思い、思えます」
「なるほど。あの子はいいご友人を持っているのね。少し心配していたの。いいわ。お話しします。実はね、あの子、つい先日ここへ来たの」
「そうでしたか。では?」
「いいえ。何処へ行くかは言ってはいかなかったわ。だから、これは私の独り言。あの子の郷は北の村、ノサヨ。何処へ行くにも両親の墓前に報告するでしょうね」
「そうか。ありがとうございます。絶対見つけてみせます」
「おば様、ありがとう」
ずっと大人しくしていたフィナが、コイケさんにハグしてお別れした。
「ちょっとお待ち下さい」
俺達が辞そうとするのを呼び止められた。
夫人は俺達が座っていた後ろに飾ってあった槍を取り、俺に差し出して、
「これをお持ち下さい」
「これは?」
「これは主人の槍です。と同時にファリーの槍でもあります。あの子が正式入団が認められた時に主人があの子に渡した物。一応、我が家の家宝ですのよ」
「そんな大事なものを」
「要らなければ、あの子に返して下されば結構です」
「そうですか。そういう事でしたらお預かり致します」
そう言って受け取り、穂先の旗のみ夫人に返した。
「いつになるかは分かりませんが、必ずファリーさんにお渡し致します」
「またいつでも遊びにいらして」
夫人はずっと手を振っていた。
宝槍 フリッシュヒンメル 氷属性
スキル
詠唱中断 空き 空き
何これ、凄っ!武器にスキルが付いてるの?