次の日の朝
朝食を食べながら考えていた。
二人とも見知らぬジョブを獲得しているが、ジョブチェンジする方法も知らず、お金も無かったんだろう。
「ティナ、ミー。二人は自分の種族の固有ジョブを知っているか?」
「虎王!」
「存じません」
「成りたい?」
他の三人は気付いた様だ。
「成りた~い」
「私なんかでは」
本当に正反対だなぁ。
虎王 Lv1
効果 腕力小上昇 体力小上昇 HP微上昇
スキル キルスラッシュ オーバーロード
熊王 Lv1
効果 体力小上昇 防御力小上昇 腕力微上昇
スキル ディフェンダー フラッシュ
「今二人は虎王、熊王にしたよ」
「何それ?
「ご冗談を」
「ティナ、“ディフェンダー”って心の中で念じてみて?」
「え、何か呪文が目の前に!」
「じゃあ次は“フラッシュ”。さん、はい」
「え、えぇ?!」
「兄々、ミーも、ミーも!」
「はいはい。ミーはね。“キルスラッシュ”!」
「わっ、すご~い!他は?」
「あとはね、“オーバーロード”!」
「すごいすごい、兄々、神様?」
「呪文はちょっと難しいから、少しずつ練習しようね」
「うん!」
ミーは超ご機嫌だが、ティナは驚きと嬉しさのない交ぜになった表情で混乱ぎみだ。涙ぐんでいる。
「兄々、迷宮行く?今から行く?」
「ちょっと待て。ちゃんとご飯食べてからな」
「うん!お皿洗い手伝う~」
現金なヤツめ。
アイダ迷宮1階層
黒魔結晶を買い忘れていたので、先に買ってから迷宮に入る。
なんか、久し振りな気もする。
いや、確かに最近、迷宮に入って無いよな。
俺達の勘を取り戻す為にも、
「まずは一匹ずつね」
すぐ先にスローラビット発見。
「ミー、一人でイケるか?」
「行く~」
言うが早いか、飛び出した。
「わっ、わっ、体が軽~い」
スローラビットの攻撃を軽く交わしながら、攻撃を当てていく。
「ミー、俺が敵を引き付ける。キルスラッシュ、ヤレるか?」
「やってみる!」
「・・・・・・キルスラッシュ!」
恐らく、あと一撃通常攻撃が当たれば、煙化していたと思うが、気持ちよく決めて欲しい。
ビンゴ!スローラビットが沈んだ。
「やった。やったよ、兄々!」
「よくやった。偉いぞ、ミー怖く無かったか?」
「うん!ヨユー!」
この子達、何度も迷宮には入っている筈だが、嬉しいものは嬉しいらしい。
「次はティナね。またしばらく歩き回らないと、だけど」
「あの、左手の通路に居ますけど?」
「え、分かるの?」
「臭いで分かります。一般的には狼人族よりも熊人族の方が、嗅覚は優れていると言われています」
止めなさい、そう言う誰かに喧嘩を売る様な事言うのは。
しかし、これは僥倖だ。索敵能力の向上は時間短縮や、不意のバックアタック防止等、実に有用だからな。
「距離は?」
「左折して20メートル」
「よし、ではまずディフェンダー詠唱。のち、接敵直前にフラッシュしてヘイト集約。出来るか?」
「やります!」
「無理はするな。後ろにはみんながいる。落ち着いてやるんだ。いいな」
「はい。スゥ・・・行きます!」
最初の呪文に少し手こずりはしたものの、戦闘自体は実に安定して見ていて安心出来た。メインタンク決定かな?
こちらも難無く屠った。
「ティナもよくやった。怖く無かったか?」
「皆さんが後ろに控えて下さっていると思うと、安心感が全然違います。落ち着いてやれました」
「よし、では上の階層に上がろうか。ティナ、メインタンクやれるか?最初は俺がすぐ横に付いて指示する。不安だったり、分からない事が有ったら、その都度言ってね。疑問点を残したまま先に進むのは無しだ」
「はい、よろしくお願いします」
「では3階層に行こう。魔物はスローラビット、ニードルウッド、コボルトから最大2匹、ボスはコボルトケンプファーだ」
アイダ迷宮3階層
「スローラビット、ニードルウッド。右、左に進んで50メートル」
「いいか、ティナ。さっきと同じ、ディフェンダー、接敵前にフラッシュ。魔物が一瞬怯んだ隙にバックに回る。後はアタッカーにボコッて貰う」
「はい」
「余裕があれば攻撃してもいいけど、タンクはヘイト管理が一番の役目だ。多少、攻撃を受けても平気な筈だが、俺もレナも”手当て”が使えるし、危なくなる前にフォローに入る。思いっきりやればいいからな」
「はい」
「よし、行こうか。距離は?」
「右30メートル」
「よし、行くぞ。ディフェンダー!」
「はい!・・・ディフェンダー!」
「突撃しつつ、フラッシュ詠唱始め!」
「はい!・・・」
「全員、突撃!」
「「ヤアー!」」
「フラッシュ!」
「ティナ、ニードルウッドのヘイト弱い!もう一度フラッシュ!」
「はい!」
「ミー、そこはフィナと位置が被る。もう少し右に回れ。フィナもミーにスペースを空けて!」
「はい。兄々!」「はい。お兄ちゃん!」
「よし、レナ。“斬奸”!」「はい!」
「ミー。“キルスラッシュ”だ!」「はい」
「続けてフィナ。“フルスラッシュ”!」「はい!」
2匹とも霧と化した。
パチパチパチ~!
「凄いぞみんな。パーフェクトだったぞ」
「やった~」「やりましたね」「おめでとうございます」
「ティナ、初タンクであの立ち回りは素晴らしい!索敵も完璧で無駄な時間・体力の大幅削減が出来たよ」
「ありがとうございます。私もお役に立てたんですね」
「ミーは?ミーは?」
「ミーもキルスラッシュ、カッコ良かったぞ」
「エヘ、えへへ~ドヤ顔フンス」
「良し、んじゃ、このままボスまで行ってコボルトケンプファー倒すぞ!」
「オオ~!」
今日はウサギ肉のシチューだな。