紅宅
アイダ迷宮8階層に盗賊が居た。
こいつ等を討伐する事になったが、
「まず初めに、これだけは言っておく。綿密に計画を立てて、完封出来る目処が立たなければ決行しない。また、俺の命令には絶対に従う事。これが守れない場合、即作戦は終了する。いいな?」
「はい」
「では始めよう。まず最初に、敵の規模、人数だが、テテ、この前確認出来たのは?」
「はい、恐らく6人。人間4、狼人族1、猫人族1です」
「あの時確認出来たのはこれだけだが、恐らくもう1グループはいると、見ていいだろう。だが、実際確認は必要だ。これは2、3日掛けて調べよう」
「そんな悠長な」
「俺達は奴らのインテリジェンスカードを持っている。これは我々にとって大きなアドバンテージだ。つまり、俺達はある程度奴らの情報を持っている。そして奴らはそれらを何処かの騎士団へ運び込まれないか、当然気になる筈だ」
「なんで~?」
本当に軽いやつだなぁ。
「そこから自分達の身元がバレるからだ。そしてそこから騎士団が奴らを討伐するのに十分な戦力で、この迷宮に来られたら逃げるしかない。だから、何としても騎士団に来る冒険者の中から、俺達を見つけなければならない。そこで俺達は更に遠くから騎士団を監視する奴らを尾けて奴らの情報を集める」
「危険では?」
「勿論、十分な準備が必要だ。そこで、班を分ける。俺とフィナと碧で1班、ミーとテテとレナで2班だ」
「3班に分けるというのは?」
「ミー班はフィールドウォークが使えないので、本当はこれでも俺としては不満だ」
「分かりました。張り込むのは?」
「ミシフとオーゾだ」
「オーゾ・・・」
「オーゾには俺の班が行く。ミー班はミシフだ。ミーの気配を消して行動出来る機動力、人が多い中、大変ではあるが、テテの索敵能力、レナの判断力、それらの組み合わせに由る探偵力を評価しての配置だ」
オーゾに対する不快感については敢えて触れない。
「この時、どちらかに動きがあれば必ず1度家に戻る事。パーティー編成中ならどちらかが家に戻れば、気が付くだろう。ミシフからキザマの家までは少し距離があるが、ゆっくり帰るといい。俺が気付いた時点でワープで迎えに行く」
「家に戻ってしまってはアジトの特定が出来ませんが?」
「奴らの尻尾さえ掴めれば、後は全員で追跡すればいい。いいか?何度も言うが、安全第一だ。少しでも危険と判断したら途中でも手を引くからな」
「アジトを掴んだ後は?」
「敵の規模次第だが、迷宮内で始末する。奴らは迷宮内で俺達を捕捉出来れば罠に掛かったと油断するだろう。そこを叩く。迷宮内は狭いから1度に大勢で取り囲む事も難しい筈だ」
「なんだかヤレる気がしてきました!」
「絶対に油断は禁物だからな」
「はい」
斯くして、盗賊探しが始まった。
1日目
空振り
2日目 早朝
「主様。あれを」
「うん、そうだね、鑑定」
「間違いない。盗賊だ。よし、一旦引き上げよう。ミシフにミー班を迎えに行くぞ」
俺達がミシフに来た事を察知したミー達が合流した。
紅宅。
「明日は1日休みにする。悪いが明日1日キザマ村からは出ないでくれるか?」
「どうして日を空けるのですか?」
「少し焦らす。また、昨日、俺達が見られていた可能性も考慮して翌日に動くのは避けようと思う」
「そうですか。なら明日、少しお時間下さいませんか?」
「いいよ?」
紅宅、翌朝。
「碧、何をすればいいのかな?」
「はい。最近ずっと鍛冶をしていたのですが、一振り出来たので試し切りをして頂けないでしょうか?」
「なんだ、そんな事、お安いご用だよ」
いつの間にこんな試し切り用設備を作ったの?
そっちの方が気になる。
「まずはこちらを」
「うん、良いんじゃないかな?」
「それでは、次はこれを」
「あれ?一振りじゃなかったっけ?」
「最初のは前に作ったモノです」
「ん~、こっちの方が少し落ちるかな?」
「さすが主様。よく、お分かりに」
あれ?俺、試されてたの?
「実はさっきのはスキルで作ったモノで、最初の方が以前鍛冶で作ったモノです」
「どゆこと?」
「つまり、スキルで作成した刀は鍛冶で作ったモノより質が落ちる。という事です。これでは売り物になりません」
「この質として、売っちゃ駄目なの?」
「村の名を堕とすわけには参りません」
「んじゃどうするの?」
「バラして作り直します」
「どうやって?」
「刃、柄、鍔に分解して単一素材に分けてしまえばまた利用出来ますから」
「でもこの先はどうする?」
「これを見て下さい」
碧は更にもう一振り刀を渡してきた。
「これは?」
「一番最初にスキルで作ったモノです」
「これは見ただけで良くないのが分かるね」
「はい。ですから、経験を積めばもっと良いモノが作れるのではないかと」
つまり、太鼓判が欲しいのね。
「いいね。これらが売れれば俺達の重要な資金源になる。碧、刀製作続けてくれるか?但し、無理しない様にね?」
「はい。ありがとうございます。それで、あの」
「ん?何?」
「あの、私も戦闘に参加した方が良いのではないかと・・・」
「・・・碧、気持ちは嬉しいけど今はダメだ。少なくとも盗賊退治が終わってからだな」
「少しでも戦力は多い方が」
「逆だな。ある程度人数は必要だが、少数精鋭の方が良い。いずれ参加して貰うとしても今はタイミングが悪い。今回は我慢してくれないか?」
「・・・はい」
シュンとしてしまった。
「大丈夫。きっと碧が必要になる時が来る」
「お待ちしております」
「絶対だ。約束な」
「あ、んん。ずるい。主様」
キスで誤魔化せなかった。
「はは。約束は本当だよ」
「みんな~明日は夕方に出陣するよ。それまで十分体を休めるように!」
「は~い」
翌日夕方。
「みんな~準備はいい?」
「はい!」
俺はキャラクター再設定で経験値系を外してデュランダル、無音のブーツ、決意の指輪を装備し、残りを敏捷とMPに振り直した。
「では手筈通りに。迷宮から少し離れた木にワープする」
「居た。オーゾで見た盗賊だ」
「よし、9階層へ行くぞ!」
しばらく進むと、
「旦那様、早速来ました。後ろから4人」
「来たな」
「この先丁字路有り、左に5人、右、更に右に1本道、突き当たりが袋小路になってます」
「ほぼ予想通りだな。1度左に行く振りをして右に引き返す」
歩いている最中、レナが、
「この辺一帯遮蔽セメントで被われています」
フィナが、
「あの角辺りのみ被われていない箇所があります」
あそこから更に応援が来る、って事ね。
そして、引き返して右、右の突き当たりまで来た。
「合わせて9人、更に後ろにも6人居ます」
敢えて聞こえる様に、
「しまった。行き止まりに追い込まれたぞ!」
「ヘッヘッヘ。金と女、大漁だぜ」
どこまでも阿保な奴らめ。
「オイ、お前ら。俺の盾になれ」
俺も合わせて馬鹿なふりをする。
そう言って俺の前にみんなを集め、俺の姿を見えなくしてから真後ろの壁にゲートを開き、丁字路手前の壁に移動する。この辺り一面遮蔽セメントで被い尽くした筈だ。俺達が消えた事にさぞ驚いただろう。
最後に、一番体の大きいテテがゲートを抜けた事を確認してから、立ち位置の入れ替わった奴らをメテオクラッシュで一網打尽にする。
メテオクラッシュの被害を避ける為、隕石が見切れる所へ飛び出して来た奴らには、丁度の所にファイヤーウォールを置いておく。
これでほぼ片付いたが、討ち洩らした奴らは、俺が悉く誅した。
「頼む。ほら、俺はもう無防備だ」
そう言って跪き、両手を挙げる奴らには、
「そう言って無抵抗な相手をお前達は何人殺した?」
俺がお前らの話をまともにとりあう訳ないだろう。
「死んで彼らに詫びるんだな」
何の感傷も無く、事務的に奴らの首をはねた。
「生き残りは俺の前に引っ立てい!」
その後、テテの指示で、ミーが2人、フィナが1人連れて来たが、そいつら全て俺が殺した。恐らく、俺も死ねば地獄に落ちるのだろう。
その中に迷宮入り口に居た見張り役も居た。
こんな奴ら、俺の可愛い娘達の手を汚す価値も無い。
「テテ」
「はい。他に魔物以外の匂いはしません」
「よし、片付いたな。みんな、済まないが、こいつ等を身ぐるみ剥いでくれないか?左手首も切り落としてくれ。気分が悪くなったりしたら休んでくれて構わない」
・・・終わった。何より、こちらの被害がゼロだった。
本当に、あんな奴らのせいで、みんなの美しい肌に傷がつくなんてあり得ないからな。
「みんなお疲れ様。ああ、こんな時、温泉にでも浸かってのんびりしたいな~」
「行きますか?温泉」
「有るの?温泉」
「有りますよ、少し歩きますけど」
「どのくらい?」
「そうですね、歩いて10分くらいでしょうか?」
「そのくらいなら行かないか?みんなでさ」
「行きたい!」
ミーはノリノリである。