アイダ迷宮12階層
また迷宮探索に戻ったレナが
「本当に凄い。ミミ、こんなの、どうやって使えるようになったの?」
「えへへ~凄いでしょ」
相変わらずまともに説明出来ないミミをテテがフォローする。
「以前、二人で迷宮に入っていた頃、偶然、二人の頭に同じ呪文が浮かんできて、顔を見合せたら何か出来る気がしたんです。それ以来、出来る様になったんですけど、そもそも、どういう条件だったのか、良く判らなくて」
「でも本当に凄いですね」
フィナもハナマルな様だ。
「戦闘時間も随分、短縮したんだよ」
「えへへ~ミミ、凄い?エライ?」
「でも、やり過ぎてMP切らすなよ?」
「は~い」
今は12、13階層を周回している。
回復薬の元のドロップを目当てにしているからだ。
階層魔物のサラセニア、ボスのネペンテス。
13階層はフライトラップ、ボスはアニマルトラップ。
ある程度、階層を廻ったらボス。
階層を替えて、また階層を廻ってはボス。を繰り返す。
その内、探索者レベルが50に達した。
これで晴れて冒険者を名乗れる。
これを機にボス周回に切り替える。
何回か回してから終了にした。
結構、アイテムも貯まったので、ウコムの町に売りに行った。
そこで気になるアイテムを見つけた。
“万能丸”だ。値段を聞いたらビックリした。
店の人曰く、更に高価な薬なんかもあるそうだ。
到底、手の出せる額ではないのだろう。
それは金持ちのモンなのだそうだ。
なんとか、そんなモンが要らない様にしないとね。
その事は忘れて家に帰る事にした。
前に一度、14階層に行っているが、攻略再開はもう少し後だな。
「明日は一日休みにして明後日の開店に備えようか」
「何か休みの内に、買い足したりしておいた方がいい様な物とか無いかな?」
「タオルとか桶等はどうでしょうか?こちらで幾つかは用意しておいた方がいいのではないかと思います」
「成る程ね。俺一人だとあれだし、誰か付き合ってくれるか?」
と聞くと、全員同時に手を挙げた。
「いや、全員は要らない」
と言っても、誰も手を下ろさない。
「ミミは別にいいだろう?」
「や!絶対一緒に行く!」
ダメだ、コレ。
「判った分かった。みんなで行こう」
「やた~」
休みにする意味有った?
ウコムの町
「♪かっいもぉの、かっいも~の、うれしいな~。兄々と一緒でうれしいな~。姉々も一緒でうれしいな~♪」
ミミのテンション爆上がりである。
俺の左にレナ、右にミミはいつもと変わらないが、更にその右にフィナがいる。
横一列に四人連なって歩くので、通行の邪魔になるし、止めようと言ったんだが、ミミが許さない。
俺とフィナと手を繋ぐのが嬉しいらしい。
繋いだ手を挙げさせ、ぶら~んと、ぶらさがるのがいいんだそうだ。
完全に若い夫婦と一人娘だ。
俺の中身はオッサンだからまだいいが、フィナは17、ミミは14だぞ?
いいのか?それで。
そしてこの時、レナは?・・・左は見ない様にしよう。
楽しく買い物を済ませ、ランチを取ってから家に帰った。
明日は銭湯開店だ。朝も早いので早めに就寝した。
銭湯開店日。
「みんな、おはよう」
「おはようございます」
「まずは村長宅だね。準備はいい?」
「は~い」
「早いのお」
「ゆっくりでいいですよ。午前中は
「他に予約は入っているのか?」
予約受付票見てないのかよ。
「何か言ったか?」
ホントに地獄耳だな。
「いえ、昼に一件あるだけですね。あとは明日以降です」
「そうか、ならええ」
「お爺様、準備出来ました」
「おお、なら行こうかの」
「はい。ではこちらへ」
この家はかなり無防備だ。どの壁にも遮蔽セメントが使われていない。
レナの家も2階は使われていなかったし、アイの家もほぼ無防備である。
適当な壁にフィールドウォークのゲートを開いた。
うっかり遮蔽セメントが敷設してある壁にワープゲートを開かない為の用心だ。
「冒険者ってのは便利じゃのう」
「お褒め頂き、」
「誰も褒めとりゃせん」
言う途中を遮られたので、
「分かっています」
と、言ってやったが、
「分かっとるなら言わせるんじゃない」
と、言い返された。
爺さんには敵わんな。
爺さんなので、俺が背中を流した。
「紅に流して貰いたいのう」
セクハラか?!
「男は全員、俺が担当します。例外はなしです」
「ああ、そうかい」
爺さんのあがりをみんなが待っていた。
「湯加減、如何でしたか?」
「ふう~久しぶりにいい湯じゃったわ」
「良かった。何か要望等有りましたら、仰って下さいね?」
「ああ、おおきにな~」
「着替え済んだら帰りましょうか?」
「おう、頼むわ」
「では」
フィールドウォークで村長宅まで送り届けた。
昼からは子連れ家族だ。
昼まで時間も有るので、今の内に早い昼飯を済ませる。
「昼からの親子は、この前、ミミと一緒に廻った所だったか?」
「そなの?」
忘れとんかい。
「タイチの所だよっ」
「ああ、タイちゃんの所?迎えに行く~」
あの家族、家族と言っても母一人、息子一人の二人だ。
二人で少し歩きたいので、フィールドウォークでの送迎は不要だそうだ。
「もう向こうを出発してるかも知れないから、銭湯から迎えに行け。途中で会えるんじゃないか?」
「うん、分かった。じゃ兄々、フィールドウォーク。早く早く!」
「ちょっと待て。そんなに慌てるなって」
温泉にはまだ来ていなかった。ここから彼らの家に向かって丘を降りる。
挿入歌はもちろん、あの曲だ。
「♪おっ迎え、おっ迎え、うれしいな~。兄々と一緒でうれしいな~。姉々は居ないけどうれしいな~♪」
その姉々達は風呂場の掃除やら、湯加減調整なんかをしているそうだ。
子供に合わせて少し水を足して、湯温を下げるらしい。
大分、家近くまで行った所で、母子に会えた。
「あ、タイちゃんだ。タイちゃ~ん!」
「あ、ミミちゃんだ。お姉ちゃ~ん!」
成る程。お姉ちゃんと呼ばれたいのね。分かりやすいヤツだな。
「こんにちは、今日は来てくれて、ありがとうございます」
「そんな、こちらこそ、本当に宜しいのでしょうか?只だって言うのは」
「ええ。ですから、礼なら村長にお願いします。なに、あの方には今朝、一番風呂に入って頂きましたから、文句の出ようものなら、ご自身に返ってくるので、心配ご無用です」
「まあ、ウフフ」
「さ、行きましょう。ミミ~」
「は~い。行こ。タイちゃん」
「うん、お姉ちゃん」
男女、性別が異なる場合、予め、希望を聞いておくが、今回は女性スタッフが介助する。母親がどちらでも。と言うので、別に俺がやってもいいけど。って言ったら、全員に断固反対された。
待っている間、する事が無いので(有るけど)脱衣所の外にある椅子に腰掛け、黙想していた。
初めは色々考えが巡ったが、やがて意識が集中し、無になった。
「お兄ちゃん」
タイチ君の呼ぶ声でこっちに戻ってきた。
決して寝てたんじゃ無いんだからねっ。
神官のジョブを獲得していた。