アイダ迷宮4階層
芋虫狩りをしている。
通常ドロップの糸と恐らくボスのレアドロップだろう、芋虫のスキル結晶狙いだ。
低下層だが雑魚も3匹出る。油断は禁物だ。
「みんな、ビビる必要はないが油断はするなよ?」
「はい」
「あと、レナは戦巫女になったばかりで一時的だがレベルが低い。しばらくは後方から回復に専念だ」
「はい」
「ヨシ。行こう」
とはいえ、糸は兎も角、スキル結晶はそんな簡単には出ない。
しばらく雑魚を狩って糸を集めたら、ボスを周回しようという事になった。
その頃にはレナも戦巫女に慣れてきたので、前線に加わる事に。とは言っても、
「レナは斬奸改だけな。それ撃ったら、すぐに後方に下がるんだぞ」
「はい」
「良し。いい娘だ。テテ」
「はい。行きます!」
なんと、レナの斬奸改でホワイトキャタピラーは煙と化した。
ま、その前に俺の魔法、パンダ攻撃があったので斬奸改一撃かどうかは判らないが。
しかし、それでも、スキル結晶は出ない。商人の伝手を探さないと駄目かな?
アイダ迷宮18階層
豚だ。旨そうな豚だ。ピッグホッグと言うらしい。
ずっと芋虫狩りも飽きるので、探索も進める事にしたのだ。
キャラクター再設定するのが面倒だけど、皆の集中力が落ちるのも怖い。
ボスのピックホッグはデカイが、ただそれだけだ。
油断さえしなければ問題ない。
さっくり倒して次、行こう。
アイダ迷宮19階層
ロートルトロールだ。
力は強そうだが、そんなに早くない。まだまだイケルな。
だがそんなに甘くは無かった。
ボス、ロールトロール戦。随伴雑魚はグラスビー。
「雑魚の蜂にも気をつけて。テテ、頼む」
「はい。行きます。ディフェンダー。ゴー!」
最初は特に問題無かった。
しかし、皆、ロールトロールに意識を集中させ過ぎていた。
雑魚の蜂にテテが横から刺された事に誰も気付かなかった。
「ぐっガッ」
ロールトロールに攻撃されている為、自分で薬を飲めない。声を上げようにも上手く声にならない。
堪らずテテが膝を折った。
と同時にロールトロールの左フックがテテの脇腹にクリーンヒットした。
悶絶しながらテテが倒れた。倒れたまま、動かない。
ロールトロールのスキル、麻痺攻撃によって痺れているんだ!
「姉々?!」
それを見たミミが、激昂した。
「オノレ!!」
目は血走り、体が震えている。
ミミの体から何か白い光が顕れ、ミミの体を包み込んだ。
みるみるミミの体が大きくなり、着ていた服は弾け破れた。
装備と下着は伸縮するため、無事だったが、なんだ、これは?!
「グオォー!」
ミミは怒りで我を忘れている。
体の発光は収まっているが、体全体真っ白で、まるでホワイトタイガーだ。
ロールトロールに襲い掛かり、殴り付けている。カトラスも持っていない。
「レナ、テテの手当てを!フィナは蜂を!」
ミミは凄まじいラッシュでロールトロールを倒してしまった。
しかし、それでもミミは、かつてロールトロールのいた場所を殴り続けている。
「ゴゥ、グオォ」
「もういい。やめるんだ。ミミ!」
我を忘れたミミは、床を殴り続けるのを止めない。
「ギィアアア!」
「兄様!テテさん、麻痺して意識が戻りません!」
「抗麻痺剤は持っていない。無理にでも解毒剤を飲ませて、回復を続けるんだ!」
ミミを抑えながら叫ぶ。
「はい!」
「お兄ちゃん!蜂は倒したよ!」
「お前もこっちへ!手伝ってくれ!ミミ。ミミ!もう終わったんだ。もう!」
フィナがこちらへ来て、ミミの後ろから抱きしめて抑えようとする。
「ミミ!こっちを!俺を見ろ!」
ダメだ。全くこちらを見ない。
仕方ない。キスして何とか意識を自分に向けさせようとした。
「グッ!」
「ミミ!ミミちゃん!」
フィナも必死に呼び掛ける。
「う、ングッ!?」
唇を噛まれた。それでも止めずにキスを続ける。
漸く正気を取り戻しかけてきた。
「あ、ああ。アアア!」
「ミミ!ミミィ!」
ミミは脱力し、気絶した。同時に体の色も大きさも元に戻った。
すぐ振り返り、レナに問う。
「テテは?!」
「無事です!今、気絶して意識を失ってはいますが、麻痺はその内解けますから」
ふう。やっと落ち着いて、
「そうか、二人共、ありがとう。フィナ、ドロップ品とカトラスの回収頼む」
「はい」
「レナ、そのままテテを担げるか?」
「はい、兄様」
「頼む。一旦、20階層まで行ってから今日は帰宅するぞ!」
「お兄ちゃん、アイテム回収終わったよ」
「よし。帰ろう」
俺はミミを背負った。
自宅。
「お帰りな・・・キャアアッ!ミミちゃん!テテちゃん!一体、これは?」
二人、意識不明の状態で戻ってきたんだ。ビックリするのも当然だろう。
「すみません、アイさん。まずは俺の部屋に二人分の布団を敷いて貰えますか?フィナもお願い」
「はい」
並べて敷かれた布団に二人を寝かせる。
「実は19階層のボス戦で・・・」
アイに経緯を話した。
話し終わる頃、ミミが目覚めた。
「ん・・・あれ?兄々?ミミ、どうし・・・」
徐々に記憶が戻ってきた様だ。
「あ、アア。姉々!ねぇね?!ワー!」
イカン、また発作だ!
「姉々!姉々!わァ~ん!」
とにかく、落ち着かせないと!
ミミをしっかりと抱きしめながら、
「落ち着け、ミミ!テテは大丈夫だ。隣の布団を見ろ」
寝ているテテを見て、
「姉々は?姉々は?」
とまだ興奮しているミミ。
「ああ、勿論、大丈夫だよ」
漸く力を抜いて俺にしなだれてきた。
抱きしめる手でミミの頭を撫でてやり、
「さっきの事、覚えているか?」
「うん、何となく・・・姉々が倒れたの見て、コンニャロって思ったら、頭に“びゃっこへん”って浮かんで・・・」
「え?」
ミミを鑑定し直してみた。
虎王 Lv23 stages 2
効果 腕力中上昇 体力小上昇 HP微上昇
スキル キルスラッシュ オーバーロード 白虎変
は?「stages 2」って何だ?
さっきのは白虎変か。スキル増えてるし。
しかし、ステージ2とは・・・気付かなかったな。
虎王にあるなら、もしかして?
有った。
熊王 Lv23 stages 2
効果 体力中上昇 防御力小上昇 腕力微上昇
スキル ディフェンダー フラッシュ シールドバッシュ
上位ジョブ程では無いが、少~しパワーアップって事ね。
ついでに判った事だが、ミミが心配してテテの手を取った時だけ、鑑定すると、
合体技って事か。
落ち着いてきたかと思ったら、今度はまた泣きだした。
「にぃに、兄々。う、うぅ、うあぁん。怖かったよ。怖かったよ~」
「もう大丈夫。大丈夫だからな。よしよし」
頭を撫でてやる。
俺にしがみついて泣きじゃくる。
「良く頑張ったな。偉いぞ」
「ミミ、エライ?」
「ああ、偉いぞ」
「あ、でも兄々の口から血出てるよ?これ、ミミのせい?」
そう言ってミミは俺の口の端を吸った。
「ああ、これはモンスターにヤラレたんだ。ミミのせいじゃないよ」
落ち着かせる為にウソを付いた。
モンスターが悪いんだ。俺は悪くない。
大分、落ち着いた所でテテが目覚めた。
「あ、・・・はっ、すみません、すみません~。私、私はなんて事を~」
「顔を上げろ、テテ。良く頑張って持ちこたえてくれたな。ありがとうな。ちゅ」
どさくさに紛れてテテの頬にキスした。
レナの目元が一瞬ピクっと引き吊った気がしたが、きっと気のせいだ。
「そんな、私なんか」
「何処か痛い所、苦しい事は無いか?」
「はい。レナさんの手当てと、旦那様の与えて下さった鎧のお陰で、もう何ともありません」
「だって。良かったな、ミミ?」
「うん、良かったね。姉々」
「心配かけてゴメンね。ミミ。所で、あの後は?」
心配そうに尋ねるが、
「・・・そこでミミの新必殺技が!・・・」
俺が大仰に身振り手振り加えて説明すると、
「マァ、ミミ、凄いのね~」
テテはミミの荒れ様を知らない。
「ただ、少しコントロールする練習が必要だな」
「うん、頑張って上手く使える様にするね?」
「よし、頑張ろうな」
テテ、ミミもみんな笑顔になった。
「でも、明日は休養の為、1日休みな」
テテとミミに焦点が当たらない様に、全員休みにしたのだが、ミミが
「ええ~休みぃ~?ブーブー」
と言ったのは良かった。今回はナイスだぞ。ミミよ。
「だが、これで判った。硬直系の防御について、本格的に検討しないといけないな」
「薬、装備、スキル結晶融合。ですね?兄様」
「そうだ。また、補助系の人員も欲しい。あまり、本意ではないが、アイ。パーティーメンバーとして戦闘に参加してくれるか?」
「主様、私は主様のモノです。お望みのままに」
「ありがとう。アイ。戦闘では後方から詠唱中断、戦闘指揮なんかをお願いしたい」
「精一杯、務めさせて頂きます」
「代わりに、家の事はアイだけに頼らない様に、みんなで分担してやろうな」
「はい」
「さて、晩御飯にするか」
そう言って立ち上がろうとすると、ミミがもじもじしながら、
「あのね、兄々」
と、言い出した。
「うん?どうした?ミミ」
「そのね、今日、一緒に寝ても、いい?」
「いいけど、今日は・・・?」
レナが手を挙げた。
「私です」
「ミミ・・・」
テテが諫めようとするが、レナが間に入ってこう言ってくれた。
「ね、ミミちゃん。私と順番入れ替えませんか?今日、ミミちゃんの番にして、明後日を私の日にするの」
ミミは破顔し、
「レナ姉々いいの?兄々?」
「レナ、ありがとうな。いいのか?」
「はい。ミミちゃんの為ですもの」
「レナ姉々、ありがとう。姉々、今日は姉々も一緒に!」
「私?いいけど、いいの?旦那様独占したくないの?」
「うん、一緒がいい」
何か企んでいるみたいなので、先に釘を刺した。
「ミミ、それはいいが、今日はえっち無しだぞ?」
「え?何で~!」
「何のために明日休みにしたと思っているんだ?駄目ったらダメ」
「ブーブー」
「テテ、それでも構わないか?」
「はい。ミミ、いい?」
「うん、いいよ」
えっちより、二人と一緒に寝るのが勝つみたいだ。
ミミとテテの布団の間に俺の布団を敷いた。布団は二組あればいい様な気もするが、まあいいか。布団並べてってのがいいんだろう。
幸い、今日は銭湯の予約も入って無かったらしく、ゆっくり、みんなで晩御飯を食べた。
夕方の事等すっかり忘れた様子で、ミミはニコニコしながら食べていた。
「美味しいね、兄々」
「ホントだな。ミミ」
夜。自室
えっち無しでもミミはニコニコだ。
俺とテテの間で二人の腕を取って満足そうだ。
「姉々?」
「はい?ミミ」
「兄々?」
「なに?ミミ」
「何でもな~い」
「フフフ、ミミったら」
「しようのないやつだな。ミミは」
「えへへ~」
さっきから、これを何度も繰り返している。
しかし、今日はテテへの労いも兼ねているので、場所を替える。
俺が真ん中に入った。
両手を拡げて二人を腕枕する。
手が痺れてきても、そこは男の子、我慢だ。
両手を引き寄せ、顔を近づけ、二人の頭にキスをした。
やがて、二人とも俺の懐に顔を埋ずめ、安らかな寝息を立て始めた。
「ありがとう。大好きだよ」