ミシフの街、防具屋。
「この娘の防具一式揃えたい。頭以外でお願いします」
アイの装備は硬革装備で固めた。頭は以前買った、角隠しのカチューシャが有る。
武器はフリッシュヒンメルだ。
ミミの服は半寝間着の麻のワンピースだ。腰の所を紐で結ぶモノなのだが、括らず、鎧やベルトなどで留めているだけなので、白虎変しても破れる事は無いらしい。
最近、肌寒くなってきたので、それだけでは寒いだろう?って言ったんだけど、迷宮内は暑くも寒くも無いので平気だと言う。
風邪引くなよ?全員にコートも買わないとな。
俺の武器は鋼鉄の剣に戻った。アイの脇差し堀川国広&ワンドにするかどうか、お試し中だ。
アイダ迷宮4階層
アイを戦闘に慣れさせる為、4階層に来た。フリッシュヒンメルでの詠唱中断の練習も兼ねてだ。
「今はキャタピラーのみに集中しろ。敵の下、床に魔法陣が浮かび上がったら槍で突くんだ。一撃でキャンセル出来るとは限らないから、魔法陣が消えるのを確認するまで突き続けるんだ」
「承知致しました。主様」
「あと、戦闘中は敬称も不要だ。出来るだけ略語を使って手短かに話すんだ。これが以外に難しい。略語を考えている間に、フルの言葉話した方が早い事もあるかも知れないし、家で呼び捨てになっても構わない。戦闘時を優先すれば良いからな」
「はい」
「そう、それで良いぞ」
「ミミは~?」
戦闘前のブリーフィングで自分にも何か指示して欲しいらしい。
「お前は白虎に慣れる事だ。虎状態で
「あい!」
「よし、行くぞ。テテ」
「少し向こうにキャタピラーが一匹だけ、左奥に居ます」
「そっちへ行くぞ。テテはヘイトのみ、ミミは白虎変、攻撃はなしだ。レナ、フィナは包囲して、動かない様に抑えてくれ。アイ、魔法陣が浮かび上がるまで待て。浮かんだら、槍で突くんだ。魔法陣が消えるまで突き続けるんだぞ!」
「「「「「はい」」」」」
「行こう。テテ」
「はい。ディフェンダー、ゴー!」
テテの号令と共に全員突撃し、位置に着いた。
「白虎変!」
「ミミ、攻撃衝動が湧いても抑えろ。・・・アイ、出たぞ。今だ!」
「やぁ!」
「魔法陣が消えるまで、突き続けろ!」
三発目で魔法陣が消えた。
「アイ、そのまま倒し切れ!」
更に二発入れた所で霧消した。
「アイ、良くやったな。ミミ、もういいぞ。テテ、レナ、フィナ。良くフォローしてくれた。ご苦労様」
「ふぃ~。兄々、疲れた~」
「あそこの広場で少し休憩しよう。ミミ、疲れたか?」
誰もいない広場で腰を下ろしながら尋ねた。
「うん。でもまだまだイケルよ~」
「そうか、疲れたら言うんだぞ?」
「あい」
「アイ、どうだった?」
「はい。イケそうです」
「お前も疲れたら言うんだぞ?」
「はい!」
「お兄ちゃん、フィナ、疲れた~!」
少し頭を押さえる挙動をするもんだから、
「何?体調悪いのか?何でもっと早く言わん?!」
すると、フィナは慌てて、
「ち、違う違う。お兄ちゃんに心配して欲しかっただけだよっ!」
こいつ。
「何だ、ビックリさせるなよ~」
片目を閉じて、舌をだし、
「ごめ~んね。テヘペロ」
ってしやがった。
テヘペロじゃね~よ!愛いやつめ。
その後、何度かキャタピラーを含む敵と遭遇したが、難なくクリアしたので、20階層に上がる事にした。
アイダ迷宮20階層
ここ、20階層の敵はマーブリームだった。
モンスターだ。と思う事にしよう。魚に足が生えてる、と思うと気持ち悪い。
ここも基本、テテタンク、レナ、フィナはDPS、ミミは白虎変継続、アイは詠唱中断しながら戦況観察、俺は脇差し&ワンドで後方から魔法詠唱。で行く。
「アイはまずは詠唱中断に集中、ミミは白虎変継続だ。イケルか?」
「「「「「はい」」」」」
「ミミは白虎変のまま、熊猫攻撃試してみてくれ。よし、テテ!」
「行きます。ディフェンダー。ゴー!」
「フラッシュ!シールドバッシュ!」
「ションマオ・・・ダメ、兄々、出ない!」
「ミミ、虎のまま、攻撃続行だ」
こいつも無事倒した。白身を落とした。今日は白身のフライかな?
ボスはブラックダイヤツナであり、同様だ。赤身を落とした。
アイダ迷宮21階層
回廊にはラブシュラブ、ボスはラフシュラブ。
アイダ迷宮22階層
回廊にはクラムシェル、ボスはオイスターシェル。
アイダ迷宮23階層
回廊なのにデカイ!ここの魔物はノンレムゴーレムだった。
ドロップ品は岩。岩って何だよ?
ボスはレムゴーレム。
ここまで順調。詠唱中断の失敗も無し、ミミの白虎変も継続中だ。
そろそろ夕方。晩御飯の準備もあるから、ここいらで今日は終了だろうか?
よし、最後の一戦だ。
「行こうか、テテ?」
「はい。ディフェンダー、ゴー!」
そう、ここまでは順調だったんだ。
何かが崩れる時、大抵、最初はほんの小さなズレから生じる。
ミミがヘイトの外れたクラムシェルを追いかけてボスに対して背後を見せた時だった。
何の前触れも無く、ミミの体が揺れたかと思われた直後、一瞬動きが止まり、そこにゴーレムの凪払いが飛んできた。
ゴーレムの攻撃をマトモに喰らったミミは、ガンという大きな音と共に吹き飛ばされ、壁に激突した。
ドガッ!!
目の前で見ていた俺はパニックになり、ミミに駆け寄った。
「ミミ?ミミィー!!」
ミミを抱き抱え、懸命に呼び掛ける。
「ミミ!大丈夫か?ミミ!ミミ!」
「こんのぉ!!」
フィナが雷のバスタードソードで渾身の雷撃をゴーレムに喰らわす!
しかし、その威力は半減された。
ガッ!バリィン!!
雷のバスタードソードが砕け、飛び散ったのだ。
フィナ自身も反動で飛ばされる。
「なっ、そんな!?」
「ミミ!」
テテが動こうとするのを、アイが声のみで制した。
「テテ!あなたが動いちゃダメよ!」
「レナ!最大火力でボスを!その後、シンと交代してミミに全力回復!」
「斬奸改!」
「バイセンヴォルフ!」
レナがミミの所へ走り寄り、途中、自分の山姥切国広を柄を前にして、フィナに放り投げた。
「フィナ!使って!!」
フィナはジャンプして受け取ると、落下威力も合わせて、
「フルスラッシュ!」
を放った。
それを見たアイは、
「フィナ!ヘイトの外れたクラムシェルを、テテの居る場所へ誘導して!」
標的をクラムシェルに替えたフィナが、テテの所まで戻ると、
「テテ!クラムシェルにシールドバッシュ!」
アイが指示を出す。
「兄様どいて!」
無理矢理俺をひっ剥がし、
「あなたはボスを!」
「レナ。ミミが、ミミが!」
「今、あなたがしっかりしなくてどうするんですか!?」
そう言うレナの顔は涙でグショグショだった。
その様を見て、漸く我を取り戻した俺は咄嗟に、キャラクター再設定で経験値系を全て外し、デュランダルを出し、あと、残りを腕力に振り直す。
ファイヤーストーム、オーバーホエルミング、煌を繰り返す。
デュランダルを出しているので、ほぼ魔法、スキル、HPMP吸収の自転車操業だ。
何周目かのループを行った時、敵を殲滅した。
全員、大泣きしていた。
俺は近くまで駆け寄り、レナの逆に廻って、
「ミミ!目を開けて、返事をしてくれ!」
俺の呼び掛けに、一瞬気が付いたミミは、
「ミ、ミミ、まだ動ける、戦えるよ」
と、言って起き上がろうとした。
それを優しく抱きしめて、
「もういい、終わったんだよ」
と言って顔を被って周りを見えない様にした。
何か言いたげだったが、瞼にキスをして、
「いいんだ、おやすみ、ミミ」
そう言うと脱力して、気を失った。
「レナ。ミミは?」
さっきまで手当てを続けていたレナは立ち上がり、
「大丈夫です。完全に回復して、眠っただけです」
アイ、フィナはドロップ品集めをしてくれている。
ミミが心配なテテはこちらへ来て、
「大丈夫ですか?旦那様?」
と声を掛けてくれた。
ミミの、まあ、眠っている様子を見て安心したのだろう。
「ありがとう、もう大丈夫だ。すまない、心配を掛けた」
テテはグシグシと涙を拭き、
「代わります」
と言って、ミミを抱き抱えた。
「アイ、砕けたバスタードソードの欠片を、出来るだけ回収して持って帰ってくれるか?」
「はい。主様!」
「ドロップ品を集め終えたら、24階層へ上がってから帰還しよう」
自宅、ミミの部屋。
今日はミミ、テテの当番の日だったが、みんなに手伝って貰い、炊事はテテ、アイが、レナ、フィナは銭湯に行って貰った。
俺は送迎のみ行い、あとはミミのそばにいた。
今は寝ているだけだが、目が覚めた時、傍に居てやりたい。
まもなく、ミミが目を覚ました。
ミミは、気丈に、
「あ、兄々?も、もうミミは元気だよ。すぐ戦えるよ」
と、起き上がろうとした。
「アイツらは全部、兄々と姉々達が倒したよ。もうゆっくり休んで良いんだぞ」
落ち着かせようとして言ったのに、ミミは泣き出し、
「ミミ、もう要らないの?迷宮に捨てられるの?」
と、言い出した。
「そんな訳無いだろう。それより、何が有ったんだ?」
「ミミ、兄々の言いつけ守って頑張ったよ?でもどんどんしんどくなってきて、そしたら急に目の前がザーってなって、それから、それから・・・」
“言いつけ“って、白虎変を出来るだけ続けてって言った事か!
「そんな、自分を犠牲にしてまで続けちゃダメだよ!」
「だって、出来なきゃ、兄々に嫌われるよ!?。お願いします。ミミを捨てないでぇ~!」
「俺は絶対に」
「あ~~ん!イヤ~!兄々と離れたく無いよ~!え~ん」
ほとんどパニック状態になっている。
俺はミミを強く強く抱きしめ、
「俺は絶対にミミの事は嫌いにならないし、要らなくもならない。死が二人を分かつまで、って言っただろ?」
「うん、兄々、言った」
「今だって、これからだって、ずっとお前の居場所は俺の胸の中だからな。勝手にどっか行くなよ?」
「うん、いいよ。ずっと兄々の傍に居るよ」
「良し、それじゃ、誓いのチューだ」
「兄々、こういう時は誓いのキスって言うんだよ」
「そうか、それじゃ、誓いのキス。な?」
「うん、ムムん」
ずっとキスし続けた。
「みんなと一緒に晩御飯食べよ」
「う、うん」
歯切れが悪いので、
「今晩は一緒に寝ようか?」
と言うと、
「うん!」
ニコニコになった。
みんなで楽しく食事した。
夜遅く、みんなで温泉に入る。
ポカポカに暖まって、ほわほわのゆるゆわになった。
寝る前に温泉の湯を入れた湯たんぽのお陰で、布団の中はとても暖かかった。
おやすみ、俺の可愛いミミ。