これは迷宮だ。
再びポイントを振りデュランダルを出して、速歩きで迷宮内を探す。
しばらく歩くと行き止まりに着いた。
奥の方へ女性達を押し込んでいる。
なるほど、行き止まりなら一方向だけ封じてしまえばいい。
逃げ出せたとしても魔物に襲われるか、迷宮の出口に居る見張りに捕まる。
とはいえ、攻める方も楽だ。
出口を背に奥へ押し込めば良いだけだ。
背後さえ取られなければ挟撃される心配も無い。
捕まっているのはざっと5人。
見張りは1人。
一人ってのは良くないなあ。
基本、ツーマンセル以上でしょう。
こちらとしては都合いいけどね。
デュランダルを握り直してゆっくり余裕ぶって近付く。
さすがに気付いた。
「何だてめえ!」
「そこの人達を奪いに来た」
軽すぎた?いや、脱出が大事だから。
そう言ってデュランダルを構える。
「どっから入った!この」
言い終わる前に走りだし、袈裟斬りに振り下ろす。
男は断末魔の悲鳴をあげて絶命した。
「ふう」
と一息吐いて女性達に近付く。
そういや、この男のジョブもレベルも確認しなかったな・・・
まいっか。勝ったし。
「皆さんご無事ですか?助けに来ました」
皆、一様に安堵したようだが、すぐに表情は曇った。
ワープは大丈夫かな?
ワープって分かる?転移魔法って普通に知っているもの?
(ワープ)と念じ、あの馬車の幌の内側を思い浮かべた。
「私を信じてこのゲートをくぐって貰えませんか」
明らかに怪しんでいる・・・
まあこれが普通の反応だよね。
こちらに来てまだ1時間経っていない。
あの子があの場所に居なかった場合、ワープゲートは繋がるものだろうか?
とにかく今は信じるしかない。
一応、壁に黒いモヤは発現したので、繋がったと思おう。
駄目なら詰みだ。
最初の一人が恐る恐るゲートをくぐる。
弾かれたり、悲鳴が聞こえたりもしないので少しは信じてくれたのかな?
そこで漸く二人目の人が話してくれた。
「ありがとう御座います」
そう一言だけ言って二人目もゲートの向こうへ消えた。
続いて三人目がゲートをくぐった所で眩暈がして膝をついてしまった。
同時にゲートも消えた。
不味い。ゲートが消えたらすぐに逃げて。って言ったんだ。
でももう一度ワープを念じてもゲートは開かなかった。
くっそ!もう駄目だ。俺みたいなやつがカッコつけて正義の味方の真似しようなんざおこがましいんだよ。
家帰って布団潜って寝てろってんだ。
大体これ、ゲームだろ、失敗したんならやり直せばいいだろ。
「あの、大丈夫ですか?」
はっ、何だ?今のは。
急に気持ちが悪くなって変な方へ考えが向かったぞ?
「本当にどうかされたんですか?」
残りの二人が心配そうにこちらを見ている。
まだ二人残ってる。
何とかしなければ。
馬車が行ってしまったんなら、すぐ近くなら行けないか?
(ワープ、さっき来た岩陰へ)
黒いの出た!
「さっ、入って!」
ほとんど有無を言わさず黒いモヤに押し込んだ。
続いて自分もゲートをくぐり、抜けた先で膝を折る。
「ぐぼっ、げえ!」
吐いた。大して晩御飯食った訳ではないが、胃の中のもん全て戻した。
「あの、本当に」
まともに返事出来ないので手で制した。
「かはっ、だ、大丈夫。まだそんなに離れてないから静かに」
「先発した三人は大分先に逃げている筈だ。
・・・はあ、ふう。・・・」
深呼吸だ。
冷静になれ。
取り敢えず、さっき来た岩陰までは来れたようだ。
「・・・良し」
自分の声に落ち着きを見て、二人に向き合う。
ボーナス足装備を二(持久の靴)に変更する。
「今から走って逃げる。奴等まだしばらくは俺達が逃げた事に気が付かないだろう。今の内に出来るだけ遠くへ逃げるんだ」
「でも・・・」
まずは安心させてあげないと。
「もう少し頑張って。ね、タマミさん、フィーアさん」
これにはかなり驚いたようだ。