キザマ村自宅
「今日、皇都のオークション会場へ行ってくる。どんな様子か見てくるだけだ。先に言っておくが、奴隷を買おうとか、そんな事を考えている訳ではないからな」
「はい、あの」
「ん?どうした、アイ?」
「あの、皇都へ行くのでしたら、図書館へ連れて行って貰っても宜しいでしょうか?」
「ああ、そうだな。鍛冶の勉強か?」
「はい、みんなの防具なんかを作るのに、何か近道などないかな?と思いまして」
「それは構わないが、無理しちゃダメなんだぞ?」
「はい、主様を泣かせる様な真似は致しませんので」
「分かった。待ち合わせをコイケ夫人宅前にしている。一緒に行きたい者は居るか?」
「はい!」
ミミ一人手を上げた。
みんな、村再建作業や銭湯営業が有るみたいだ。
俺の送迎が要るとは聞いていないので、大丈夫だろう。
コイケ夫人邸宅
「先にアイを図書館へ連れて行く。ミミは中に入るか?」
アイがミミに何か耳打ちしている。
「ミミも行く~」
と、着いてきた。
アイに、俺の警護役だとかなんとか言われたんだろう。
証拠に、終始ずっと俺と手を繋いだまま、放さなかった。
それでもこれは欠かさない。
「♪~お散歩、お散歩、うれしいな~。兄々と一緒でうれしいな~姉々も一緒でうれしいな~♪」
図書館へアイを送ったあと、再びコイケ邸宅に着いた。
「それじゃまた迎えに来るな」
「ヤ!兄々と一緒に行く~」
ミミがごねた。
「一緒に行ってもいいけど、中には入れないぞ?」
「いいもん。外で待ってるし」
「分かったよ。しょうがないな」
「へへ~ん」
まるで計ったかの様なタイミングでカナキ氏が現れた。
「お待たせしました。行きましょうか」
「はい」
「ここから遠いのですか?」
「直ぐですよ」
半時間ほど歩いて到着した。
「ここで、入場料を払います」
「じゃ行ってくるな、時間が掛かるだろうから、その辺で何か買って食べるといい」
と言って、銀貨1枚渡した。
「いいの?やった~。行ってらっしゃ~い」
促されて、受付で千ナール払い、会場に入る。
ほぼ、劇場だ。
前方中央に、舞台が在り、司会台が在る。ガベル(オークションハンマー)まで在るよ。
周りを扇状に客席が取り囲み、二階席も在る。
「出品物は上手、右側から運ばれ、中央で御披露目、競りが始まり、品にも因りますが、百ナール毎に投票、競る人が居なくなればハンマープライス、落札となります。で、左手に運び出されていきます」
「何が出品されるかは分かっているのですか?」
「大体何日か前から告知されていますが、稀に当日に告知されるなんて事もあります。なので、目当てのものが無くても、オークションの日はチェックを欠かしません」
「ふ~ん」
「次の出品物です」
「スキル結晶か」
「芋虫ですね。入場料回収の為にも入札しますか?」
「そうですね」
取り敢えず、一度手を挙げる。すぐに別の入札。
3400ナールを越えた辺りでペースが落ちる。
3800ナールで止まりそうになった。
手を挙げる。3900ナールだ。
3800を挙げたオジサンがまた手を挙げた。これで4000ナール。
もう、手を挙げるのを止めた。オジサンが競り落とした。
「なるほど。最近はどの位で落とされるのでしょうか?」
「最近だと大体、今位、4000以下ですね」
「フム、人気の商品なら高値が付く。という事ですね。いや、勉強になりました。カナキさんは何を目当てに?」
「私は薬です。エリクシールをご存知ですか?」
「どんな怪我でも治す事が出来る万能薬だとか?」
「そう、それです。そのエリクシール又はその原料となる、威霊仙を所望なさっている顧客がおりまして」
「幾ら位するものなのですか?」
「白金貨一枚ほどでしょうか」
「え?白金貨一枚って、つまり、100万ナール?」
「ですね~」
「どんな金持ちですか」
驚きと皮肉を込めて言った積もりだったが、
「何処にでも金持ちというものは居るものですよ」
と普通に返されてしまった。
次は奴隷だ。
「シン様は奴隷に興味は?」
「無い訳ではありませんが、もう既にパーティー枠は埋まっていますし、嫁が、ね」
「ハハハ。男のハウスメイドだっていますよ?」
「それは私が嫌です」
「これはまた、お熱いですなぁ」
「お、最初は狼人族ですね」
中年のムキムキな♂だった。
若くて美人の戦闘奴隷というのはなかなか手に入らないんだろうな・・・。
次は女性だが家事奴隷、
その次は女性、性奴隷だ。
最後は女性で戦闘奴隷だったが、戦闘のみ。夜の相手はしないらしい。
「自分の希望に合う人を探すのって大変ですね~」
「そうですね。安い買い物ではありませんからね。妥協したくはないですし」
いよいよ、本日の目玉の様だ。
司会のアナウンスにも熱が入る。
「さて、お集まりの皆様。本日最後の出品物件となります」
中央の台に上品な絹の袱紗に包まれた丸薬が運ばれてきた。
「万病の治癒薬にして、あらゆる怪我の治療薬、エリクシールです!」
「おおお!」
会場内からどよめきが上がる。
カナキも少し緊張気味だ。
「まずは10万ナールから!」
カナキは動かない。
最初は静かだったが、やがて、
「12」
「15」
「17」
「20」
「23」
動き出した。
「30」
「35」
「40」
「50」
「60」
「70」
「80」
「85」
「90」
「95」
「97」
「98」
「99」
「100」
とうとう、百万ナールになった。
コールしたのはカナキだ。
おお、っと歓声が上がったが、それでも止まらない。
「102」
「103」
「105」
「106」
「110」
「111」
「120」
「121」
「130」
決まった。
残念ながら、カナキは競り負けてしまった。
「残念でしたね」
と言ったが、以外と、
「いえいえ、途中で相手に退く気がないのは分かりましたので。最後のはちょっとした意地悪ですよ」
おいおい、怖いなぁ。
「さて、帰りましょうか」
オークション会場を出た。
「兄々!」
ミミが飛び掛かってきた。もとい、抱きついてきた。
「ただいま」
ミミの頭を撫でながら、抱き返す。
「お帰り兄々。帰る?もう帰る?」
「待たせてゴメンな。お腹減ったか?家に帰ろうな」
カナキ氏に別れを告げて、アイの待つ図書館へ向かった。
自宅。
「ただいま~」
「お帰りなさい、ミミちゃん、兄様。何か収穫は有りました?」
「そうだな、勉強になったよ」
「それは良かったですね。ささっ、夕飯にしましょう」
「わ~い、ご飯~」
食事しながらオークションでの色々を話した。
エリクシールが100万越え、女性奴隷が売られていたが、条件の合う奴隷を探すのは結構難しいだろうという事も話した。
勿論、買う気なんて無いよ?
アイは図書館で調べた内容を話してくれた。
アイダ迷宮26階層
ここの魔物はタルタートル。大きなカメだ。
硬いが、動きは遅い。また、土魔法に弱い。アイダ迷宮で出る階層は判らなくても、魔物名が判れば、図書館情報は役に立つ。
硬いので、魔法中心に戦略を考える。
少々時間は掛かるが、困る程ではなかった。
ボスはトータルタートル。
待機部屋でもう一度ブリーフィング。
「12時にテテ、10時にレナ、2時にミミ、
7時にアイ、4時にフィナ。
6時に俺だ。いいな?行くぞ!」
「はい!」
ここで、事件です。
お供の雑魚を相手にしている内に少しフォーメーションがずれた。
ずれた、と言っても、レナが11時、フィナが3時に移動しただけだ。
一瞬、レナ、フィナ、アイの姿がゆらりと仄かに光った様に見えた。
なんだ?と思ったが、すぐ元に戻った。
その後、何事も無く、お供、ボス共に沈んだ。
何だったんだ、あれは?
アイダ迷宮27階層へ上がった所で聞いてみた。
「な、みんな、さっきのボス戦、途中、レナ、フィナ、アイの三人、ゆらっと光らなかった?」
「え?私は特に・・・」
「ミミもよくわかんな~い」
ん~、見間違いか?
「試しに・・・レナ、そこに立ってみて?」
「フィナはこっちね」
「アイはこの辺・・・ちょい右・・・ストップ」
「それぞれ、剣出して構えて?」
・・・やっぱり?と言うか、なんと言うか。
三人まとめて鑑定すると、三人の中央に《三剣豪》の文字が浮かび上がる。
「三人さ、心の中で三剣豪。って念じてみて?」
「え?見たこと無い呪文が?」
「なんでしょう、これ?」
「なんだろうね?今までも、この位置になった事はあるのにね?」
「三人とも同じ呪文の様です。兄様」
「アイ、脇差しに持ち変えてみて?」
消えた。
「消えました」
「んじゃ、これ、持ってみて?」
ボーナス武器三のクラウ・ソラスを渡した。
また出た。なんだ?クイズですか?
・・・つまり、何だ。
霊剣山姥切国広、魔剣レヴァンティン、宝槍フリッシュヒンメル。
いや、霊剣、魔剣、宝槍の三種の剣で正三角形作れって事?
しかも、宝槍が聖剣になってもいい。ってホンマかいな?
とにかく、試してみるしかないか?
「試すのは明日な。レナ、フィナ、アイ、呪文の解析はゆっくりでね?」
「「「はい!」」」