ノサヨ村
「ファリー?」
ノサヨ村の東側、漁港から西に向かってしばらく、見渡す限り畑風景の所まで来た。
畑の畦道を歩く、見慣れた人影を見つけて声を掛けた。
その人物は後ろを振り向くや、
「シン?・・・シン!」
そう叫び、俺に飛び付き、抱きついてきた。
そのまま受け止めてしまうと、大ダメージを負ってしまうので、上手く受け止めつつ、くるっと回って力を逃がす様にした。
そして俺も負けない位、強く抱きしめ返した。
「ファリー。ファリー!」
お互い、それが自然な行動であるかの様にキスをした。
人が少ないとはいえ、無人という訳ではないし、五人、皆見ている。
そして、ここで、感動的なセリフが聞けるかと思ったら、
「遅い!」
だった。
「おまっ、久し振りに会って、一言目がそれかよ?」
「あれから何ヵ月経ったと思っているのよ。三ヶ月よ?」
「俺も忙しかったんだぞ?おまけにあんな回りくどい事しやがって」
「あんな所、少しでも長居したく無かったんだから、しょうがないじゃない」
「俺の所へ来れば良かったじゃないか」
「ゴメン。それはしたく無かったの」
「なんでだよ。カミサさんも心配してたんだぞ?
―――あの時はありがとうございました。カミサはずっと隊長がして下さった御恩、忘れません―――
だって。ちゃんと伝えたぞ」
「そ。」
その事について、ファリーはそれ以上、語らなかった。
「でも、ありがとう。来てくれて、とっても嬉しいわ」
「元気そうで何よりだよ」
「時間有るんでしょう?泊まっていってくれるのよね?」
「そりゃそうだけど、いきなり六人は泊まれないだろう?何処かに宿が」
「無いわよ。こんな田舎町」
「そうか、じゃ・・・」
「私ん家、泊まってってよ?」
「六人はキツイだろ?」
「田舎の民家ナメンナヨ?六人位、どうって事無いんだから」
「そうか、それは助かるよ」
「ま、ここで立ち話もなんだし、家に来て」
ファリーに馭者席に座って貰い、彼女の先導でファリーの家に向かう。
と言っても一本道だ。止まれ。と言われるまで真っ直ぐ行くだけだ。
ほんの少しの間だったが、フィナが真ん中にどっかと座った。
「フィーアちゃん、久し振りね。少し背、伸びたんじゃない?」
「ん~わかんない。そうかな?お兄ちゃん」
「ず~っと一緒に居ると、判らないな~」
家に着いた。周りに家は無いので、ここで合ってるんだろう。確かにデカイ。
華美では無いが、家の維持だけでも大変そうだ。
リビングに案内された。
ようやく、落ち着いて腰をおろせる。
ファリーがお茶を淹れてくれた。と言っても、アイとレナが手伝ってくれたものだ。
「さ、どうぞ」
「みんなも座って、戴こう」
「はい」
一口啜った所でやっとみんなを紹介した。
「ファリー。紹介するよ。俺の家族だ。左にレナ、アイ、テテ。右にフィナ、ミミだ」
「フィナ?確か、フィーアって記憶してたんだけど、ごめんなさい、フィナちゃん」
「いや、みんな愛称で呼んでいるんだ。だから、出来ればファリーもフィナって呼んであげてくれないか?」
「もちろんよ。フィナって呼んでもいい?」
「うん!」
「みんな、この人がファルステート・リヒテンフォルトさん。俺の命の恩人だ」
「ちょっと、何それ。やめてよ、そんな堅苦しいの。皆さんもファリーって呼んでね」
「取り敢えず、夕飯かしら。皆さん手伝ってくれる?」
そろそろ、日が沈みかけていた。
仲良くなるには共同で作業するのが一番だ。
厨房の方からキャッキャ笑い声がする。
早速、仲良くなった様だ。
ファリーは気さくな方だし、こっちにはフィナ、ミミが居る。
仲良くするな、と言う方が難しい。
テーブルに着く頃にはファリーの右にミミ、左にはフィナが座っていた。
「さ、そろそろ全部話して貰おうか」
「何よ、別に何も隠し事なんて無いわよ?」
「じゃあ、何で急に田舎に帰ってしまったんだよ?俺に一言ぐらい、あっても良かったんじゃないか?」
「貴方に言えば、貴方、なんとかしようとしちゃうでしょ?」
「そりゃな」
「私ね、貴方に迷惑掛けたくなかったの」
「何言ってんだよ。命の恩人の役に立ちたい、って思うのは当たり前だろう?」
「そういうのが嫌で、ね」
「君は俺を救ってくれた。俺が君にちょっと恩返しするぐらい、許してくれよ」
「私は任務ってのと、あとはお節介よ」
「俺がここまで来たの、只の義務感だけだと思っているのか?」
「だから、ありがとうって言ったでしょ。本当に嬉しいのよ?」
「わ~かったよ。んじゃ次な。ん~っと、はい、これ」
アイテムボックスから、フリッシュヒンメルを出して、ファリーに渡した。
「あら、懐かしい、フリッシュヒンメルじゃない」
「ああ。これ、凄いな」
「そうね。私もこれに随分助けられたわ」
「そうか、コイケ夫人に返す様、頼まれたんだ」
「騎士団を辞めるって決めた時に夫人に返したモノよ。もう私には必要無いモノだからお返ししたの。もし、良かったら使ってくれない?」
「いいのか?」
「今の貴方が有効に使ってくれるなら、嬉しいわ」
「そうか、なら、使わせて貰うよ」
こっちはやはり、海が近いからだろうか?魚料理が旨かった。
ミミがこれまでになく、がっついていた。
「・・・ご馳走様。美味しかったよ」
「お粗末様。っても、ほとんどアイさんたちに手伝って貰ったのよ」
「しっかし、今日は冷えるな~」
「今日はっていうか、この辺はこの時期、こんなもんよ?」
「そうだ。アイ、今日は予約入って無かったんだよな?」
「はい、午前の家族だけです」
「なぁファリー。キザマ村の温泉に入らないか?」
「温泉?キザマ村って温泉あるの?」
「ああ、今、俺たちが管理運営してるんだ。めっちゃ気持ちいいぞ~」
「ファリーお姉ちゃん、行こ。フィナが背中、流してあげる」
「ミミも。ミミも流してあげる~」
「いいわね、入らせて頂こうかしら?」
「良し、決まりだ」
「兄様はダメですよ?」
「ええ~!俺もええやん?!」
「まあまあ、今更、裸見たこと無い訳でもないんだし」
「ブーブー」
レナはムクレている。
お触り無しって事で何とか許して貰った。
みんなのテンションは最高潮だった。
俺は長距離ワープで少々お疲れモードだ。
湯船にはフィナ、俺、ミミ、ファリーの順に並び、浸かった。
正面にアイ、テテ、レナが並ぶ。
最高+1だった。
「アアア、いい気分だ~」
「ホント。ありがとう。シン。皆さん」
横並びだし、あんまりジロジロ見ると、本人以外からお叱りを受けるので、判らなかったが、何人かは気付いた様だ。
「ふわ~。いいお湯だった。ありがとう」
「どういたしまして。喜んでくれた?」
「ええ、とっても」
「また何度でも入りに来てくれよ。迎えに行くからさ」
「ありがと」
「さ、湯冷めしない様に、帰りも一度のワープでノサヨ村まで飛ぶよ?」
「は~い」
さて、また難問だ。みんな俺と一緒に寝る、と言う。
でも、
「みんな、ゴメン。今日だけは、俺の我が儘を聞いてくれないか?」
割と真面目な顔して言ったので、みんな、聞き入れてくれた。
ファリーと二人っきりになった。
「どうしたの?そんなに改まっちゃって」
「聞きたい事が有るんだ」
「何?私に答えられる事なら、何でも聞いて?」
「インテリジェンスカードの名前を変更する事は可能か?」
「何だ、そっちか。ええ、可能よ。色々条件が有るけどね」
「条件?」
「ええ、とね。
まず第一に、犯罪歴が無い事。実はこれ、騎士と奴隷商人は閲覧出来るの。
次に本人と保護者、奴隷商人や家族ね。の、了承が確認出来る事。
そして最後に。聖騎士のみ、変更が出来るって訳。
分かった?」
「聖騎士か・・・まだまだ遠いな~」
「貴方、騎士も持ってるの?悪食ね~」
「失敬な!君に追い付きたくてやってるんじゃないか!」
「フフ、そういう事にしておいてあげるわ」
「嬉しそうじゃないか?」
「皆さんの愛称を本名にしたいのね?」
誤魔化したな。
「ああ、そうなんだ」
「それなら、いっそ、みんな貴方の奴隷にしちゃえば?」
「なんでそうなる?」
「まあ、通例ってだけなんだけどね。奴隷でも無い人が本名を変えたいってあまり居ないからね、勘繰られるのよ」
「でも奴隷なら。って事か?幾ら何でも」
「あら、言われた事、無い?」
「いや、有るけど?」
「ほら、みんな、最後まで言わないけど、貴方のモノになりたいのよ」
「そんな馬鹿な?自分から奴隷になりたいだなんて!」
「そうかしら?貴方と完全に同等の立場にいる方って居る?」
「いや、確かにみんなとはなんとなく、主従関係っぽくはなっているけど」
「ね?それに」
「いや、これ以上二人で話しても埒が明かない。みんなにも聞こう」
そう言ってファリーをリビングへ連れていった。
みんな嫌がるだろうと思っていたのに、
「是非、奴隷にして下さい」
帰ってきたのは、全て同じ答えだった。
「兄様?私たち全員、町でナンパされた事、有るんですよ?勿論、兄様に仕える様になった後ですよ?」
「え?ウソッ。なんで俺に言わな・・・」
「言ったら兄様、その男、殺しちゃうでしょ?」
「それに、主様は怒ると思って言いませんでしたけど、税額的にも、その方がお得なんです」
「税額?」
「庶民も奴隷も年3万ですが、奴隷は初年度のみ。次年度からは1万です。また、未成年、15歳以下は税金は掛かりません。ミミちゃんを今の内から奴隷にしておけば、来年には次年度となり、1万で済みます。私たちに否やが無いなら今の内に奴隷にしておかない手はありません」
「税金はともかく、みんな、他の男にナンパされていたなんて・・・」
これだけ美人さん揃いだ。声を掛けられない訳ないか。
「ほら、男でしょ?ハーレム欲しいって言ってたじゃない!この娘は俺んだ。って言ってあげなさいよ!」
「う・・・」
「「「「「お願いします」」」」」
「兄様」「お兄ちゃん」「兄々」「旦那様」「主様」
「わ~かったよ。でも俺、奴隷商人のジョブ持ってないぞ?」
「ああ、そっか。これも内緒なんだけど、特例として、聖騎士は庶民を奴隷にする事が出来て、その奴隷の所有権を人に与える事が出来るの。村長が出来て聖騎士に出来ないなんて事無いでしょ?ただ、聖騎士に奴隷の売買権は無いから、それで商売は出来ないの」
「じゃファリーにはこの内の誰かを、俺の奴隷に出来るって事か?」
「そうなるわね」
「そうか。じゃまずは・・・」
「はい!」
最初に手を上げたのはレナだった。
みんな、レナには一目置いている。
「じゃレナな。みんな、いいな?」
ミミですら、レナには気を使う。
ファリーがインテリジェンスカードを操作する。
「じゃ、いくわよ?紅。・・・・・・」
これでレナは奴隷となった。それから、
「紅、・・・レナ、・・・・・・。はい。終わり!」
《鑑定》
レナ ♀ 17歳 鬼人族
戦巫女Lv10
所有者 シン・ヒカミ
やった。とうとう、インテリジェンスカードの名前を変更出来たぞ。
続いて、
アイ ♀ 27歳 鬼人族
刀匠Lv10
所有者 シン・ヒカミ
フィナ ♀ 17歳 ダークエルフ
魔剣士Lv4
所有者 シン・ヒカミ
ミミ ♀ 14歳 虎人族
虎王Lv29 stages 2
所有者 シン・ヒカミ
テテ ♀ 23歳 熊人族
熊王Lv29 stages 2
所有者 シン・ヒカミ
「よし、これで全員、俺の奴隷で名前も一新したぞ!」
「はい、とっても嬉しいです。・・・ご主人様」
「ああ、そゆの、無し!全部、今まで通りでお願い!」
「はい!主様?」
「そう、それでいいんだ。ありがとう、ありがとうファリー」
「いいえ、どういたしまして」
「でも本当にいいのか?本名だけ変えておいて、一般庶民に戻したって」
「主様?本当に皆、そう思うのなら、主様の付けた名前を欲しがるとお思いですか?なんなら、名前をアイ・ヒカミにしますか?」
「それ、いいですね、姉様。兄様、私の名前を桧上麗奈にして下さい!
「私も。桧上風稲にして!」
「私も桧上啼帝がいいです」
「ミミは?ミミは~?」
「ミミちゃんはどうしましょう?桧上美衣とか?深弥なんてのも」
「え~ミミがいい。だから深弥!」
「この際ですから私も、藍衣」