※この作品はR-18です。

ワルキューレの迷宮騎行   作:葵翠

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061 万能薬

コイケ夫人邸

 

 

 客間のベッドに寝かされている、俺を中心にみんなが取り囲んでいる。

 

「兄様。エリクシールです。さっ、お飲み下さい」

 

 レナに渡された薬を飲み込む。

 こんな薬一つでほとんど全ての怪我、病気が治るなんて、やっぱり変な世界だよな~。

 

 しかし、体に何かが駆け巡る様な感覚がした、と思えば。

 

「うそ。本当に痛く無い。左手、動く。動くよ。レナ。みんな~!!」

 

「兄様ぁ!私の、私の兄様!!」

「兄々ぃ!兄々ぃぃ~!!怖かったよ~~!!」

「お兄ちゃん!ごめんなさい。守るって言ったのに、ご免なさい!!」

「旦那様!!良かった!私に生きる力をくれた、私の愛する旦那様!!」

「主様!!すみません、済みません!私がハサミに気付いてさえ居れば・・・!」

 

「サアサア皆さん?今日はシンさんの生還記念日ですよ。シンさん、今日はもう、ノサヨ村に戻る力、残って無いでしょう?今日はここで、ご飯、食べて帰りなさいな?皆さん手伝って?」

 

 いつもなら、一番張り切るミミが、俺から離れない。

 よっぽど怖かったんだろう。

 まあ、余り役に立たないので、ミミが参加しなくても大して変わらないが。

 ずっと抱きついて、俺に頭を撫でられている。

 

「皆さん、ご心配、ご迷惑をお掛けして済みませんでした」

 

 深々と頭を垂れる。

 

「本当よ、シンさん。向こうでどんな交渉をして来たのかは存じませんが、フィナちゃん、ミミちゃん、アイちゃんまでずっと泣いて話も出来ない程だったのよ?」

 

「レナが頑張ってくれましたので。幸い、以降に作成するキザマ刀の専売権と、この後に購入するエリクシール代、購入するまでの間、山姥切国広の貸与で済みました。作成する刀についても先方の意向に極力沿う様に。との事です」

 

「そう、そうなの?レナ。良く頑張ってくれましたね?」

 

 漸く、肩の荷が下りたのだろう。

 レナの目から大粒の涙がポロポロと流れ落ちた。

 

「姉様、ありがとうございます」

 

「ありがとうな、レナ。でも、みんな。本当に、本当にこんな俺の為に、自分の体まで差し出そうとしてくれて、ありがとう」

 ホント言うと、それだけは止めて欲しいんだけど、これは平行線なので、今は言うまい。

 

 みんな。俺も、コイケ夫人もみんな一緒に号泣した。

 少し遅めの晩御飯。今日のシチューはちょっと酸っぱかった。

 

 

 キザマ村にも、ノサヨ村にも、何も連絡出来ていない。

 心配しているだろうか?ゴメンよ。ファリー。

 

 今日はキザマ村にも、ワープしない方がいいだろう、と言う事で、コイケ夫人に教えて頂いた皇都の宿に泊まった。

 

 

 

翌朝、キザマ村。

 

 

 村へは、皇都からキザマ村まで、借りた馬車でみんな一緒に帰った。

 

 村長には昨日、温泉出来なかった事を詫び、しばらくはフィールドウォークサービスが出来ない事を了承して貰ったあと、ノサヨ村に戻った。

 

 

 

ノサヨ村ファリー宅。

 

 

 当然。

 

 怒られた。

 

 泣かれた。

 

 胎教にも良くない、とコスヤさんにも怒られた。

 

 みんな、ご免なさい。

 

 で、しばらくは左手に物を持つ事を禁止された。

 俺に拒否権、発言権も無いそうだ。目に涙を一杯にしてじっと見つめられると、何も言えなくなる。ズルいよ、みんな。

 

 みんなが出払う時はファリーの部屋にもう一台ベッドを置いて、二人とも、お互いに監視しあって余計な真似をしない様に、と厳命された。シュン。

 

 する事が無いので、改めて昨日の経緯を話した。

 

「そう、そうだったの。言っておけば良かったね。ご免なさい」

 

「止めてくれよ。もう、女性の涙は勘弁な!」

 

「分かったわ。もう泣かないから、許して。でも、本当に心配したのよ?」

 

「ご免な」

 こう言う時、ケータイもメールも無いのは不便だよね?

 メール屋さんでも始めるかな?既に冒険者ギルドにそんなサービス無かったっけ?

 

 雰囲気で、キスしたくなった。ガマン我慢。

 

 その後3日間はちょっとした、お使いや、家の仕事を手伝う程度、

 更にその後3日間はリハビリ。

 

 こんだけ休めば、十分だろう。色々、返さないといけないモノがわんさと有る。

 

壱、エリクシール代。頑張って働かないと!ざっくり、あと百万は要るな。

弐、レナの刀、山姥切国広の代わり。当面は堀川国広かな?

参、キザマ刀の作成。アイお願い!

 

「主様、ご相談があるのですが・・・」

 

「ん?なんだい?」

 

「刀製造に関してなのですけど」

 

「あ、勝手に決めちゃってまずかった?」

 

「いえ、注文を承るのはいいのですが・・・材料が残り少ないんです」

 

「ああ、そうなのか・・・んじゃ、取りに行く?買いに行く?」

 

「あの・・・どちらもそう簡単には」

 

「え?」

 

「実は・・・足りないというのは、隕鉄なんです」

 

「隕鉄?あの、隕石の、隕鉄?」

 

「はい、流石は主様。隕鉄の存在までご存知とは」

 

「いや、偶々だよ」

 

「この隕鉄ですが、村に古くからあったモノで、代々それを使い続けてきたのですが、とうとうそれが」

 

「尽きてきた。と?」

 

「はい」

 

「う~ん。隕石か・・・流石に隕石が降ってくるのを待ってる訳にもいかないよな~」

 

「はい。迷宮ドロップ品でもあるので、ギルドに有る時もあるのですが、何せ、需要が有りませんので、売れないし誰も集めません」

 

「なるほど。でも誰も買わないなら、ずっと売れ残っているんじゃないの?」

 

「確かに、そうですが、店頭に並んでも、なぜかいつの間にか売れているんです」

 

「つまり、誰か集めてる?」

 

「かも知れません」

 

 

 ファリーに聞いてみた。

「知らない?」

 

「人を○●みたいに言わないで」

 

「聞いてみただけだって。怒んなって」

 

「知ってるかもしんないけど」

 

「っっ、どっちやねん」

 

「コイケおば様んとこに出入りしてる、カナキさんって商人なんだけど。知ってる?」

 

「ああ、色々、都合付けて貰ったりしてるよ?」

 

「あの人がミシフのギルドで珍しい石を買ってるの、見た事あるわ。それがその隕鉄?かどうかは分からないけれど」

 

「そうか、それはありがとう。聞いてみるよ」

 

「ううん、いいのよ」

 

 

「皇都の商人ギルドへ行ってみようか?」

 

「はい、主様」

 

「誰か一緒に行く?」

 

「ハイハイハ~イ。ミミ行く~」

 

「あー分かった分かった」

 カナキさん相手なら、ミミはちょうどいいかもな。

 

 

 

皇都商人ギルド

 

 

「カナキさん居る?」

 なんか、なあなあになってきてないかな?

 ちゃんと、礼儀正しくしないとな・・・。

 

「これはこれはいらっしゃい、シンさん」

 

「こんにちは、オジサン」

 だから、礼儀正しく・・・

 

「今日はまた何用でしょうか?」

 

「はい、実は、ある素材を探しておりまして。隕鉄をお持ちでは御座いませんか?」

 

「シンさん、貴方様は一体、何処からそれを私に繋げたのですか?」

 

「まあまあ、カナキさんならご存知かな?と思いまして」

 

「実は、もう隠しても余り意味無いかも知れないですね。トモツ様ですよ」

 

「え?トモツ様?」

 

「はい、あの方、あの鉱物が綺麗だからって、私に蒐集しろってんですよ?」

 

「何かに使えるんですか?」

 

「イエイエ、買った石は箱に入れてたまに眺めるだけで、転売したりもしないから純粋にコレクター魂ですよ。近々行きますので、その時、一緒に如何です?」

 

「それは是非。製作する刀の注文も、そろそろ決まりましたかね?」

 

「ああ、そうですね。そろそろじゃないかな?あ、エリクシールはまだ待って下さいよ。そうそうすぐには出回りませんからね」

 

「そっちはこちらこそ、ですよ。そうそうすぐには工面出来ませんからね。ハハハ」

 

「そう言えば。以前オークションで出たエルフの魔法使いですが・・・80万でしたよ。奴隷とは言え、人の命が薬より安いなんて、どうなってんですかね~ハハ」

 

 彼は、何とも言えない悲しそうな顔で笑った。

 それらを売買する、自分に対する自虐の念もあったのかも知れない・・・。

 

「それでは、また」

 

「あ。今少しだけ、まだトモツ様に渡してない分が有りますけど、どうします?」

 

「是非」

 ダマスカス鋼よりかなり安かった。

 

 

 

ノサヨ迷宮19階層。

 

 

 リハビリである。

 

 1週間迷宮に入らなかったのは、初めてではないだろうか。

 余り長く入らないと、体が鈍る、という事もあるが、怖くなるのが怖い、という心配もあった。

 

 今日は午前休みの日だったが、もう十分休んだので、みんなで迷宮に入った。

 

 ここはトロール。

 一度通った道。油断も恐れ過ぎも無い。

 

 慎重に進む。

 テテもなるだけ数の少ない所を選んでいる様な気がする。

 いや、ボス部屋の逆を選んでいるのか?

 本当にウチの娘たちは・・・。

 

「堀川国広はどうだ?」

 

「そうですね。どうしても刃長の違いが間合いの違いとなるので、最初は戸惑いますが、大丈夫。対応します」

 

「そうか、もう少し試して無理そうなら、ちゃんと言うんだぞ?」

 

「はい!」

 

 それでも午前中にボスまで来た。

 

 ここをキレイに倒してお昼にしよう。

 

 

 

ノサヨ村ファリー宅

 

 

 お昼御飯を食べながら、フォーメーションについて話す。

 

「今はレナが霊剣を持ってないから俺が11時に入って・・・」

 

「それだと、旦那様、フィナちゃんの攻撃がサイドアタックにならない可能性が・・・」

 

「それに、魔法も使うお兄ちゃんのメリットが・・・」

 

「この際、しばらくの間は四天剣(クロスヒムリシェシュヴァート)は諦めて、三剣豪(トライソードマスター)のフォーメーションにしようか?」

 

「そうですね。それなら、レナ10時、フィナ2時、私6時、ってあれ?」

 

「うん、レナ。俺の聖剣、使うか?あれなら山姥切とさして間合いも変わらないだろう?」

 

「兄様は?」

 

「俺は脇差し堀川とワンドかな?俺も要、習熟訓練だな」

 

「昼からはレナちゃんが居残りの番ですよね?」

 

「ああ、だから、次は俺がレナの位置に入るよ」

 

 当分はこんな感じで行く。

 

 20階層はミミの好物がドロップするので隅々まで廻った。

 回廊がマーブリーム、ボスがブラックダイヤツナだった。

 

 

 

次の日。

 

 

 21階層はラブシュラブ、ボスはラフシュラブ。

 22階層はクラムシェル、ボスはオイスターシェル。

 

 

 

その次の日

 

 

 午前中、ミミが居残りの間に23階層は突破しておく。

 階層にノンレムゴーレム、ボスがレムゴーレムだったので。

 

 あまり縁起が良くないからね。

 

 

 

更に次の日

 

 

 午後からテテが居残りだ。

 

 正直、メインタンク不在が一番影響が大きい。

 

 俺とミミで交互にタンクを行う。

 が、俺がタンクをやるとどうしてもDPSが下がるのと、魔物に合わせた魔法攻撃が出来ないので、戦闘時間が伸びる。

 

 ミミに任せる事にした。

 

 ミミがメインタンクをする時は基本白虎なので、時々俺と交代して猫状態に戻って貰う。

 

 うちの娘はみんな頑張りやさんばかりなので気を付けないとな~。

 

 

 

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